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太田述正コラム#2131(2007.10.18)
<ブッシュとイラン・北朝鮮の核問題>

1 始めに

 ブッシュ大統領は17日の記者会見で、北朝鮮とイランに対する厳しい見解を表明しました。
 それぞれをどう受け止めるか、私見を申し述べたいと思います。

2 対北朝鮮

 ブッシュ米大統領は、北朝鮮の核問題に関し、「北朝鮮は核拡散活動に関するすべての申告とともに、プルトニウム、(核)兵器をどれくらい生産したのか完全な申告を行<わなければならない>」と述べるとともに、「6<か国>協議では、拡散問題は兵器の問題と同等の重みを持っている」と強調し、「北朝鮮が合意を守らなければ、代償を払うことになる」とくぎを刺しました(注1)(
http://www.asahi.com/international/update/1018/TKY200710170368.html
。10月18日アクセス)。

 (注1)10月3日に発表された6か国協議の合意文書では「すべての核計画の完全で正しい申告を年内に行う」とされたが、具体的な中身には触れていない。北朝鮮の6か国協議首席代表の金桂寛外務次官は、先月の6か国協議の際に開かれた韓国との協議等で、年内に行う申告に核兵器を含めない考えを示していた。

 朝鮮日報は、「最近米国で北朝鮮に対しあまりにも譲歩し過ぎているのではないかという世論が巻き起こっているのを意識した<発言の>ようにみえる。」と論評しています(
http://www.chosunonline.com/article/20071018000000
。10月18日アクセス)。
 しかし私は、このブッシュ発言は、北朝鮮が核計画の全貌を明らかにしなければならないということを明確に述べたものであり、シリアへの核協力といった弱みを抱えている北朝鮮としては、日本人拉致問題の全貌を明らかにすること以上の要求を突きつけられていることを意味するものである、と受け止めています。
 これまで(コラム#2123等で)何度も申し上げていることですが、この発言は、ブッシュ政権が一貫して北朝鮮の体制変革を追求してきているとの私の指摘を改めて裏付けるものです。

2 対イラン

 一方、イランの核問題については、ブッシュ大統領は、「もしイランが核兵器を保有することになれば、世界平和にとって危険な脅威となろう。だから私は、第三次世界大戦を予防しようというのなら、彼らが核兵器をつくるために必要な知識を獲得することを防止しようとすべきだと主張してきた。・・私は核兵器を持ったイランの脅威を極めて深刻に受け止めている」と述べています。
 「第三次世界大戦」というのは極めて強い表現であり、イランに対して軍事行動をとる選択肢を留保していることを示唆したものであると受け止められています。
 (以上、
http://www.nytimes.com/2007/10/17/washington/17cnd-prexy.html?hp=&pagewanted=print
(10月18日アクセス)による。)

 しかし、これまた(コラム#2123等で)何度も申し上げてきているように、ブッシュの残任期中の米国の対イラン攻撃はありません。
 ありえないのです。

 現在米国の軍部には、反ブッシュ政権の気運が漲っています。
 一番最近では、2003年半ばから約1年間在イラク米軍総司令官を勤め、現在は退役しているサンチェス元米陸軍中将が、10月12日、ブッシュ政権の指導者達を無能で腐敗しているとし、イラク占領政策の失敗は、職務怠慢の極みであり、軍人であったら軍法会議にかけられてしかるべきだと激しく非難したことが話題になりました(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/10/12/AR2007101202459_pf.html
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/7042805.stm
(どちらも10月14日アクセス)による)。

 それに以前(コラム#2074で)、「仮にブッシュ=チェイニー・ラインがイラン攻撃を命じたとしても、ゲーツ<米国防長官>は自らこのことをリークし、或いは制服幹部達がこのことをリークするのを黙認することによって、この命令を覆すことを目論むでしょうし、それで覆せなければ、今度はファロンが公然と異論を唱えて辞表を叩き付けることでしょう」と述べたところ、私の指摘を裏付ける、要旨以下のようなコラムがスレート誌に掲載されました。
 
 イラクの反省の上に立ち、今度、(将官達の間では絶対にやってはならないというコンセンサスができているところの)イラン攻撃を大統領から命ぜられた時にどうすべきか、侃々諤々の議論が米軍人達の間でなされてきた。
 合法的な命令には服さなければならないので、命令に服するのを頭から拒否するわけにはいかないというのが大前提だが、その上でどうすべきかについて、ようやく以下のようなコンセンサスができつつある。
 この種の軍事的にばかげた命令(注2)を大統領から受け、その命令に服すことが米国の安全保障を危うくすると信じた場合、軍人は、大統領に翻意を促す、プレスにリークする、学術論文を上梓してその中に主張を織り込む、議会でやらせ質問をしくんで言いたいことを証言する、こういったことを多数が一緒になってやる、と次第にエスカレートさせていき、それでもダメなら、辞任(resigning)するか何人かで一斉に退役(retiring)すると大統領に訴える(注3)、この辞任ないし退役を実行する、更に辞任ないし退役後速やかに声を挙げる、というものだ。
 (以上、
http://www.slate.com/id/2176122/
(10月18日アクセス)による。)

 (注2)「政治的に」ばかげた命令ではないことに注意。なお軍事的にばかげた命令には、誤った情報ないし歪曲された情報に基づいて大統領が発出した命令を含む。
 (注3)辞任と退役は全く違う。退役する場合は、医療サービス受給資格や士官クラブ会員資格等の便宜供与を引き続き受けることができるが、辞任すればこれら一切を擲つことになる。だからこそ、この40年来、辞任した将官は一人もいない。

 イラン攻撃はありえない、と信じていただけましたか?
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 有料版のコラム#2132(2007.10.18)「報道の自由「後進国」の日本・再訪」のさわりの部分をご紹介しておきます。
 コラム全文を読みたい方はこちらへ↓
http://www.ohtan.net/melmaga/
・・・・今年も国際的NGOの「国境なき記者団」が「2007年世界報道自由度ランキング」を発表しました。
 それによると、調査対象169カ国中、昨年51位だった日本が37位に上昇し、31位だった韓国は39位に下がりました。
 ・・
 「2007年世界報道自由度ランキング」の原典・・にあたってみたところ、・・日本には閉鎖的な記者クラブ制度があること<等>が挙げられていました。
 これらは一貫して日本が批判されている点です(コラム#936参照)。
 ・・
 記者クラブの存在による病理であると最近思えてならないのが、防衛記者クラブ会員社であるところの新聞社やTV局等の主要マスコミが、どこもほとんどと言ってよいほど防衛省不祥事を取り上げていないことです。
 ・・
 その結果、おかしなことが起こっています。
 民主党が、・・防衛省の守屋武昌前事務次官の証人喚問を要求したのですが、守屋氏を証人喚問する理由が、氏が防衛局長時代に海上自衛隊のインド洋での給油活動での給油量の訂正や航海日誌の破棄などが相次いだことへの責任を問うためだけだというのです・・。
 ・・せっかく守屋氏を証人喚問するのであれば、少なくとも併せて防衛省不祥事についても問い質すべきでしょう。
 ・・
 民主党が取り上げようとしない最大にして唯一の理由は、主要マスコミが本件をいまだに報道していないことだと私は見ているのです。
 ・・
 コラム全文を読みたい方はこちらへ↓
http://www.ohtan.net/melmaga/

太田述正コラム#2084(2007.9.25)
<新悪の枢軸をめぐって(続)>

1 始めに

 イランのアフマドネジャド(Mahmoud Ahmadi-Nejad。本稿中では「アフマ」と呼ぶ)大統領が国連総会出席のために訪れたニューヨークで9月24日、コロンビア大学を訪問し、講演を行ったこともあり、米国が彼についての話題で盛り上がっています。

2 コロンビア大学にて

 アフマが講演を始める前、コロンビア大学のボリンジャー(Lee Bollinger)学長が手厳しい紹介を行いました。
 すなわち、アフマ政府が批判者を弾圧し、バハイ(B'hai)教徒や同性愛者を迫害し、イスラエル国歌の破壊を口にし、イラクで米軍に対する代理戦争を遂行している、と述べた上で、「大統領閣下。あなたは賤しい狂った独裁者のように見える。」と続け、そのホロコースト否定論は「無学で無知な」馬鹿はだませるかも知れないが、「このような場所においては、あなたはまことに馬鹿げた人物に写ってしまう」のであって、「ひどく扇動的でないとすれば驚くほど教育程度が低い」のではないか、とまでこきおろしたのです。

 この間、アフマは笑みを浮かべ続け、その笑みを講演が始まってからも絶やすことはありませんでした。
 彼は、最初にまず、招待主によってこのような扱いを受けるなんてイランでは考えられないと苦情を呈し、学長の発言「侮辱」であり「遺憾至極なほど不正確」であると述べました。

 講演の中身は「哲学的」なものであったようで、省略しますが、講演終了後のアフマの応答の主なものをご紹介しておきましょう。
 
 アフマは、自分はホロコーストが全くなかったと言っているわけではないとし、ホロコーストについては、別の角度からも研究がなされなければならないと言っているのであって、欧州において、このような研究を行っている人々が処罰されていることは非難されるべきであるし、パレスティナの人々がホロコーストのように彼らが何も関わっていないことの対価を支払わせられるべきではない、と述べました。
 また、本当にイスラエルを破壊するつもりなのか、と問われたのに対し、直接答えず、パレスティナ人の自決の必要性に言及した上で、自分達はユダヤ人を含むあらゆる民族を愛しているのであって、現にイランで多数のユダヤ人が平和にして安全な生活を営んでいる、と述べました。
 コロンビア大学の国際・公共問題大学院の学長臨時代理のコーツワース(John H. Coatsworth)が、イエスかノーかで答えて欲しいと畳みかけると、アフマは、「表現の自由はどこに行ったのだ」とかわしました。
 更にアフマは、イランにおける同性愛者の処刑について問われ、「イランには米国におけるような同性愛者は存在しない。・・誰が皆さんに同性愛者がいると言ったのだ」と答えて失笑を買いました。

 (以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/09/24/AR2007092400168_pf.html
http://www.nytimes.com/2007/09/24/world/worldspecial/24cnd-iran.html?_r=1&hp=&oref=slogin&pagewanted=print
(どちらも9月25日アクセス。以下同じ)による。)

3 アフマのアラブ世界とイランでの評判

 (1)始めに

 アフマは、9.11同時多発テロのターゲットとなった世界貿易センタービル跡地を訪問して犠牲者の追悼をすることを希望したけれど、警備上の理由でこれを断られ、コロンビア大学でも、以上のようにさんざんな目に遭ったのですが、彼のアラブ世界と自分の国イランでの評判はどうなのでしょうか。

 (2)アラブ世界での絶大な支持

 アフマの反米・反イスラエル的言動は、何と民族が異なり、しかもイランと違ってスンニ派が多数を占めるアラブ世界の大衆の間で拍手喝采されています。
 これは、どちらもイランの息がかかっているところのヒズボラやハマスのイスラエルへの抵抗がアラブ世界の大衆の間で拍手喝采されるのと同じ現象です。
 アフマ人気が特に高いのがエジプトです。
 エジプトの大衆には、米国の経済制裁にもかかわらずアフマが追求しているイランの核計画が、英仏の圧力にもかかわらず故ナセル大統領が追求したスエズ運河国有化とだぶって見えるのです。

 (以上、
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-ahmadinejad24sep24,1,7323213,print.story?coll=la-headlines-world
による。)

 (3)イランにおける不評

 このようなアラブ世界の大衆のアフマへの拍手喝采に当惑しているのがイランの大方の国民です。
 アフマはその独断専行ぶりと経済面での失政により、イラン国内で不評を買っています。
 アフマが2005年に大統領に就任して以来、既に2人の閣僚と中央銀行総裁がアフマの独断専行ぶりを批判して辞任していますし、最高裁長官も同様の批判を行っています。
 また、アフマの公約である腐敗根絶と石油によって形成された富の再分配も、抵抗勢力によって全く実現していません。
 そのアフマが大統領の職にとどまっておられるのは、最高指導者・・国家元首でありかつ軍の最高司令官でもある・・のハメネイ師(Ayatollah Ali Khamenei)が彼を見捨てていないことと、彼が米国やイスラエルを挑発する発言を連発することで、アラブ大衆やイランの一部国民の目を眩ませているからだ、と言っても過言ではありません。

 ですから、イランの心ある人々は、そんな、イラン国内では完全に浮き上がってしまっているアフマの言動などに、一々欧米が過敏に反応して大仰な非難などしないで欲しいと願っているのです。

 (以上、
http://www.nytimes.com/2007/09/24/world/middleeast/24iran.html?ref=world&pagewanted=print
による。)

4 終わりに

 アフマの言動は無視するとしても、中東における大国であるイランの動向は無視できません。
 核計画もさることながら、それ以外に懸念されることが二つあります。

 一つは、イランが国家の体をなしていないことです。
 上記のように、イランの国家運営についての責任の所在が不明確な上に、イランの中央政府が地方をコントロールし切れていない様子が窺えるからです。
 例えば、つい最近、タラバニ大統領が懸念していた(コラム#2080)イラクのクルド地区との国境の閉鎖をイランは断行しましたが、これは地方政府の判断で行われたようなのです。
 (以上、
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-iraq25sep25,0,1332947,print.story?coll=la-home-world
による)。

 もう一つは、イランの自由民主主義が一層後退しつつあることです。
 アフマが就任して以来、むしろ腐敗は増加しており、コネのある買い手に安く国有資産を払い下げることが横行するとともに、石油収入の国庫への納入の遅延が続いています。
 表現の自由への抑圧もひどくなってきており、若い人々を中心にジャーナリストに対しむやみに逮捕と拘留が行われるようになってきており、外国と接触のある学者やNGOに対する弾圧も次第にひどくなってきています。
.
 (以上、
http://www.ft.com/cms/s/0/692acca6-6ad8-11dc-9410-0000779fd2ac.html
による。)
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 コラム#2085(2007.9.25)「ミャンマー動く(続)(その3)」のさわりの部分をご紹介しておきます。
 ・・
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<その後の進展>

 ・・
 ・・の24日、ヤンゴンでのデモは、一般市民も加わり、10万人規模に膨れあがりました。
 ・・
 これに対し、軍部がついに脅しをかけ始めています。
 宗教相のトゥーラ・ミンマウン・・准将が国営ラジオで、抗議行動は「この国の平和・安定・前進を望まぬ破壊的分子」によって行われているとし、「宗教上の教えが彼らを押しとどめることができないのであれば、僧侶達の抗議行進に対してわれわれは法律に則って行動をとることになるだろう」と述べました。
 ・・
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 ・・
 米国はかねてよりミャンマー産品の全面輸入禁止措置をとってきていますが、ブッシュ大統領は25日の国連総会での演説の中で、軍事政権の指導者達の金融取引や彼らやその家族に対するビザ発給禁止といった追加的経済制裁を発表するとともに、他国にもミャンマーでの抗議活動への支援を呼びかける予定です。
 ・・
 しかし、一番ミャンマーの軍事政府への影響力を持っているのは隣国の中共です。
 ・・
 その中共は、米英を中心とする国連での対ミャンマーの動きを邪魔し、今年1月にも国連事務総長により積極的にミャンマーに取り組む権限を与える安保理決議にロシアとともに拒否権を発動しました。
 ・・
 だからといって、ことここに至って、中共はなお漫然と軍事政権への支援を続けるわけにはいきません。
 ・・
 軍事政権が、武力で僧侶達のデモを弾圧するようなことがあれば、天安門事件の前科のある中共が、軍事政権が同じことをするのに手を貸した、と国際世論が受け止めることが避けられないだけに、中共は何とかそんなことにならないように軍事政権に働きかけています。
 つい先だって、中共・・は、北京を訪問したミャンマーのニヤンウィン(Nyan Win)外相に対し、「中共はミャンマーがミャンマーにとって適切な民主的プロセスを推進することを心から願っている」と伝えています。
 ・・
 中共に次いで大きな影響力を持っているのは、やはりミャンマーの隣国であるインドです。
 インドも、ミャンマーとの経済関係と、ミャンマーとの国境地方における叛乱分子掃討のためのミャンマーとの協力関係を重視して、ミャンマーの人権問題や民主化の問題には目をつぶってきた経緯があります。
 そのインドも、国際世論の動向いかんによっては、姿勢を転換する可能性があるのです。

(一応完)

太田述正コラム#2080(2007.9.23)
<新悪の枢軸をめぐって>

1 始めに

 ブッシュ政権は、イラク・イラン・北朝鮮を悪の枢軸と呼びましたが、イラクのフセイン政権打倒後は、シリアがイラクに代わり、シリア・イラン・北朝鮮が新悪の枢軸と目されて現在に至っています。
 この三者をめぐる、最新の動きをまとめてみました。

2 最新の動き

 (1)始めに

 最初に、読者との対話を掲げておきます。

<読者(KS)>

 私は専門家ではないので、米国によるイラン空爆はない、との太田様の分析(コラム#2074)に関して明確に反論することはできませんし、するつもりもありません。
 ただし、軍部上層部が軍の最高司令官である大統領に対して反旗を翻すことが、米国のイラン攻撃に対する抑止力になりうるか、については疑問を感じます。
 私はより本質的な問題として、イラン空爆の日本への石油供給の影響は如何か?ということに関心があります。
 仮にイスラエルがイランの核施設と思われる施設への限定空爆を行ったとして、この空爆が日本への石油供給に影響を及ぼす可能性はあるのでしょうか、それともないのでしょうか?

<太田>

 イスラエル空軍機のシリア攻撃について、アラブ諸国は沈黙を保っています(典拠省略)。
 核疑惑が報じられ、しかも対イラン核施設等への攻撃の予行演習を兼ねて行われたといった報道がなされているにもかかわらずです。
 というより、だからこそ、アラブ諸国は、アラブの国であるシリアが攻撃を受けても、(少なくともシリアが主張しているように領空を侵犯されても)沈黙を保つことによって、事実上イスラエル側に立った、ということだと私は理解しています。
 イラン国民の大部分はアラブ人ではありませんし、イラン国民の大部分は、アラブ諸国では少数派のシーア派です。
 ですから、イスラエルのイランの核施設等への攻撃に対し、イランがペルシャ湾の封鎖を行ったりすれば、アラブ諸国、とりわけ湾岸諸国は強く反発し、イランに対して軍事力を行使するとまでは思いませんが、米軍による封鎖解除、及びそれに関連する対イラン攻撃には積極的に賛成するのではないでしょうか。
 また、イランが、イスラエルに対する報復としてはいささか的はずれですが、イラク内の過激派やアフガニスタンのタリバンに手を回してイラクとアフガニスタンの米軍等に攻撃をしかけさせるようなことがあれば、ファロンだって喜んで対イラン攻撃の指揮をとることでしょう。
 すなわち、イランとしては、せいぜい報復としてイスラエルに地対地ミサイル攻撃を加えるぐらいでお茶を濁さざるを得ない、と思うのです。
 以上から、イランによるペルシャ湾封鎖はないし、いわんや湾岸諸国の石油施設への攻撃などありえない、という結論になります。
 また、イスラエルが攻撃したとしても、イランの核施設等が破壊されるだけなのですから、イランの石油関連施設は被害を受けず、イランにおける石油生産・石油輸出には影響は出ないでしょう。

 (2)イラン

 ファロン米中央軍司令官は21日、イランの革命防衛隊が強力かつ精緻な徹甲路傍爆弾の部品をアフガニスタンの叛乱分子に供給しているとし、これが続くようなら「断固とした対応をとる(act decisively)」と述べました。
 この発言は、ブッシュ政権内の対イラン強硬派のガス抜きをするために、とにかくイラン非難声明を出す必要があったけれど、イランがイラク国内の過激派を支援していることを証明できないので、より根拠のある上記事例を持ち出してイランを非難する、というねらいでなされた、と私は見ています。

 イランがイラク国内の過激派を支援していることの証明を米国ができていない証拠として、20日にイラクのタラバニ(Jalal Talabani。クルド人)大統領が、駐イラク米国大使宛に、米軍がクルド地方において、過激派に武器を提供し、訓練を施しているとの容疑で拘引した自称商業使節のイラン人をただちに解放するように求める書簡を送ったことが挙げられます。
 タラバニは、拘引されたイラン人はクルド地区への正規の商業使節である上、イランが拘引に怒ってクルド地区との国境閉鎖を口にしており、閉鎖されればクルド地区は大きな経済的打撃を受けるし、そもそもクルド地区で勝手に米軍が外国人を拘引するのは遺憾である、と記しているのです。

 このことと、ファロンの側近がわざわざ後で、ファロンが「断固とした対応をとる」と言ったのは軍事行動をとることを示唆したものではなく、アフガニスタン領内での、違法物資の差し押さえ活動を強化する可能性に言及しただけだと述べたことと、ファロン自身が、発言の際、イランはアフタニスタン西部に対して開発援助を行っていてこれには助かっているとも述べていることから、ファロン発言がガス抜きであったことは明らかだと思うのです。

 (以上、
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-afghan22sep22,1,3783082,print.story?coll=la-headlines-world
http://www.cnn.com/2007/WORLD/meast/09/22/talabani.letter/index.html
(どちらも9月23日アクセス)による。)

 (3)北朝鮮とシリア

 北朝鮮が射程約435マイルのスカッドDミサイルをシリアが開発するのを助けたのは確かなのですが、シリアが核装備計画も追求しているかどうかは、ブッシュ政権内でかねてより議論が続いてきたところです。
 ボルトンが国務次官当時、2002年から2003年にかけて、米国政府としてシリアの核計画に公式に言及すべきだと主張し、それに対し諜報諸機関が確証がないとして反対したことが知られています。
 この主張のために、米連邦議会議員等は2005年にボルトンが正式に国連大使になることに反対したのです。
 ボルトンは、今回のイスラエル空軍機によるシリア攻撃によって、自分のこの主張が裏付けられたと述べていますが、米国政府もイスラエル政府も公式には何も言わないので、真偽の程を確かめようがないという状況が続いています。
 最近の目新しい話としては、米政府筋から、この夏、北朝鮮とシリアの間で2つ以上の技術貿易に係る協定が締結されているところ、これが核と関係したものであった可能性がある、という疑惑が語られたことくらいです。
 ニューヨークタイムスに、米国のアジアにおける密接な同盟国の2人の上級の外交官が、米国からいつも北朝鮮情報をもらっているが、今回の件では何もくれないとこぼしている、という話が出ています。
 これは、恐らく日本の外交官なのでしょう。
 この記事は、米国政府のこのようなガードの堅さは、情報の確度に自信がないせいか、それとも情報源の秘匿のためなのか分からない、と記しています。
 謎は深まるばかりです。
 6か国協議における米国の出方を注視しましょう。

 (以上、
http://www.nytimes.com/2007/09/22/world/middleeast/22weapons.html?_r=1&hp=&oref=slogin&pagewanted=print
http://www.chosunonline.com/article/20070922000017
(9月23日アクセス)による。)
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 コラム#2081(2007.9.23)「ミャンマー動く(続)(その1)」のさわりの部分をご紹介しておきます。
 ・・
 昨日、ミャンマーにおける反政府活動は、新たな次元に達したことが判明しました。
 僧侶達とアウンサン・スーチ女史との連携の兆しが現れたのです。
 ・・
 ヤンゴンで22日、雨の中を反政府デモに参加した少なく見積もっても約2,000人の僧侶達のうち約1,000人が、・・軟禁中の民主化運動指導者アウンサン・スーチー女史の自宅に向かいました。
 ・・
 女史が大勢の人の前に姿を見せたのは、2003年5月の拘束以来初めてであり、僧侶達が、反軍事政権の象徴である女史と連携する兆しが現れたことで、反政府の機運が一気に広まる可能性が出てきたのです。
 ・・
 翌23日の日曜日には、約10,000人の僧侶達がデモを行い、このデモを守るように約10,000の一般市民が人垣をつくりました。
 ・・
 軍部が頭を抱えているらしいことは、24日に開催を予定していた20人の地域軍司令官達による四半期ごとの会議を取りやめたことからも窺えます・・。
 ・・
 僧侶達はミャンマーに50万人近くいると見られています。
 ・・。
 ・・僧侶達は喜捨を受けて生活をしているために、ミャンマーの状況が一番良く分かっています。
 ・・
 次はスーチー女史についてです。

(続く)

太田述正コラム#2074(2007.9.20)
<米国の対イラン攻撃はない(続)(その2)>

 (2)米国の対イラン攻撃はないと思う根拠

 私が現時点で一番重視しているのは、ゲーツ米国防長官の存在です。
 9月17日、ゲーツは次のような趣旨の講演を行いました。
 
 米国においては、建国以来、対外政策に関し、現実主義者(realist)と理想主義者(idealist)の間で議論が続いてきた。
 例えば、フランス革命について、アダムス(John Adams)は向こう見ずな過激主義と見たのに対し、ジェファーソン(Thomas Jefferson)は自由の勝利と見た。
 爾来米国は、他の暴君(tyrant)達に勝利するために暴君達と取引をしたり、人権の旗手を任じながら、人権蹂躙の権化のような連中と手を携えたりしてきた。
 自由を熱烈に信奉しつつ時と場合によって自由を推進するために異なったアプローチをとることは偽善でも冷笑主義でもない。
 大事なことは、歴史の悲劇的な皮肉は善をなすためには悪と妥協しなければならないことと、民主的改革には時間がかかるのであって忍耐強く待つ必要があることを理解することだ。

 これだけでもゲーツは決して単なる現実主義者ではない一方で、ブッシュよりもはるか国際問題に通じている印象を受けます。
 そしてこの講演後のニューヨークタイムスとのインタビューで、ゲーツは、(ハーバード大学のナイ教授の言う)ソフト・パワーの重要性を繰り返し説き、冷戦後に米国が犯した二つの最大の誤りは、国際開発庁(Agency for International Development)の縮小と米情報庁(U.S. Information Agency)の廃止だ、と答えています。
 また、イランに係る安全保障上の脅威を勘案しながら、そのイランにおいて自由を推進するにはどうしたよいかとの質問に対し、ゲーツは、ソフトパワーを用いることを強調し、イランの体制が自ら掲げるレトリックの達成に失敗していることをイランの大衆に気付かせる必要がある、と答えています。
 最後にゲーツが、現在米国が遂行しているイラク駐留米軍増強戦略が決まる際に、反対意見のリークがなかったことを指摘し、この戦略についていかに国防省内でコンセンサスが成立しているかに注意を喚起していることはイミシンです。

 (以上、
http://www.nytimes.com/2007/09/19/opinion/19brooks.html?ref=opinion&pagewanted=print
(9月20日アクセス)による。)

 このゲーツが米国の対イラン攻撃の鍵を握っているのであり、しかも、対イラン攻撃の際の現地最高司令官は、あのファロン海軍大将(コラム#2067)です。
 仮にブッシュ=チェイニー・ラインがイラン攻撃を命じたとしても、ゲーツは自らこのことをリークし、或いは制服幹部達がこのことをリークするのを黙認することによって、この命令を覆すことを目論むでしょうし、それで覆せなければ、今度はファロンが公然と異論を唱えて辞表を叩き付けることでしょう。

 これに加えてガーディアンが論説で、ライス米国務長官もゲーツの側になびきつつある、と指摘しています(
http://commentisfree.guardian.co.uk/simon_tisdall/2007/09/tehrans_misguided_defiance.html
。9月19日アクセス)。

 これでは、いかにブッシュ=チェイニー・ラインが頭に血が上ろうとも、対イラン攻撃など容易に行えるはずがないと思いませんか。

 イランは、宗政国家ですが、民主主義的要素もあり、民度も必ずしも低くない、一筋縄では捕らえきれない国です。
 そのイランでは、政府も国民も、イラクで泥沼に陥っている米国が対イラン戦を敢行することはありえないと思いこんでいる(
ガーディアン上掲及び、
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/6999513.stm
(9月19日アクセス))のは、当たらずといえども遠からずといったところでしょうか。
 もっともこれまた私同様、イランは、イスラエルがイランの核施設等を攻撃する可能性はあると見ているようで、イランの空軍副司令官は19日、イスラエルの攻撃に対しては、イランの防空戦闘によって飛来戦闘機の30%は撃墜できるし、イランはミサイルと戦闘機でイスラエルに報復攻撃をする、と精一杯虚勢を張ったところです(
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-iran20sep20,1,5503100,print.story?coll=la-headlines-world
。9月20日アクセス)。

3 終わりに

 イランが一筋縄では捕らえきれない国である証拠を一つご紹介しておきましょう。

 一昨年アフマドネジャド(Mahmoud Ahmadinejad)大統領がホロコースト否定論を何度も口にし、昨年12月には同大統領のお声掛かりでテヘランでホロコースト否定論者による国際会議が開催されたイラン(コラム#1552)で、1940年代のナチス占領下のパリで当時のイラン大使館がユダヤ人の脱出を助けるために500冊のイランのパスポートをユダヤ人のために発行したという史実を踏まえた連続ドラマが現在、国営TV局で放映されています。
 その中で、「ファシスト達はユダヤ人を強制収容所に送ろうとしている」といったセリフが飛び交い、イラン大使館員とユダヤ人女性(いずれも想像上の人物)との恋、そしてこの大使館員がユダヤ人達をパレスティナに逃がそうとする、という話が展開するのです。
 実は、イランにはユダヤ人25,000人が居住しており、イランは中東におけるイスラエルに次ぐユダヤ人「大国」なのです。
 国営TV局は、イランの最高指導者のハメネイ師(Ayatollah Ali Khamenei)の直轄下にあり、このドラマの訪映がハメネイ師の了承を得て行われていることは確かなのです。

 (以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/09/16/AR2007091601363_pf.html
(9月18日アクセス)による。)

(完)

太田述正コラム#2070(2007.9.18)
<米国の対イラン攻撃はない(続)(その1)>

<KS>

 仏在住の者ですが、日本はやれ安倍退陣だ、やれ福田総理だ、等と相変わらず緊張感がなく、がっくりしています。
 仏外相が昨日、イラン攻撃も最悪ありうると発言していました。
 このところ不気味に沈黙を守っている米国ではなく、仏がこのような発言をしたことはかなり危険な兆候だと私は見ています。
 日本の石油需要の8割以上を依存している中東湾岸地域で仮にイラン空爆が実施された時のリスク、またそのようなリスクに対し日本は国としてどのように対応するか、日本の政治家や官僚が果たして考えているのでしょうか?非常に気になるところです。

<太田>

1 イランをめぐる情勢

 フランスのクーシュナー(Bernard Kouchner)外相が16日ご指摘のような発言をしたことは事実です。その際、外相は、フランスのトタール(Total)やルノーのような大企業にイランと契約を締結しないように働きかけていることも明らかにしました。(
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/6997935.stm
。9月17日アクセス)
 しかも同外相は翌17日、国連安保理は(ロシアや中共の反対により)より厳しい対イラン経済制裁措置をとることは恐らくないであろうから、フランスは英国やオランダらとともに、米国が既にとっている措置と同様の追加的対イラン経済制裁措置を独自にとることを考慮していると言明しました(
http://www.nytimes.com/2007/09/17/world/middleeast/17cnd-iran.html?_r=1&hp=&oref=slogin&pagewanted=print
。9月18日アクセス)。
 そもそも先月、フランスのサルコジ大統領が、イラン問題は現時点における「最大の危機」であって、世界は「イランの<核>爆弾かイランに爆弾を落とすか、という究極の選択」を迫られている、と述べて物議を醸したばかりです。

 また、17日には、英国の政府筋が、フランスの外相が「述べたのは当たり前のことだ」と言明したことで、ますますきな臭さが漂ってきました。

 (以上、
http://www.guardian.co.uk/international/story/0,,2171395,00.html
(9月18日アクセス)による。)

 フランスや英国よりもともとイランに対してより強硬な米国では、対イラン慎重派のライス国務長官から、対イラン強硬派のチェイニー副大統領に対外政策の実権が再び移りつつあるとされています(
http://observer.guardian.co.uk/world/story/0,,2170382,00.html
。9月17日アクセス)。

 IAEAのエルバラダイ(Mohamed ElBaradei)事務局長は、先月イラン政府との間で、IAEAとしてイランがこれまで核物資を平和目的以外に転用したことがないことが確認できたとした上で、ウラン濃縮中止に言及しないまま、IAEAが提示したいくつかの疑問にイランが回答する、という了解に達したところです。
 ところが米国だけではなく、このところフランスの首相や外相のほか英国の政府筋によってIAEAのハシゴをはずすような発言が行わ始めたことにエルバラダイは危機感を強め、17日、対イラン攻撃などもってのほかであり、そんなことをすればイラクで一般住民70万人が死んだ二の舞になる、と警告しました(ガーディアン及びオブザーバー上掲)。

 またイラン外務省の報道官は17日、フランスの外相をたしなめる発言を行いました(
http://www.cnn.com/2007/WORLD/europe/09/17/france.iran/index.html
。9月18日アクセス)。

2 私の判断

 (1)私の判断

 このように昨今、フランスや英国まで、対イラン戦を口にしているわけですが、フランスや英国が対イラク攻撃を行うことは将来ともおよそ考えにくい上、米国もまた、ブッシュ大統領が在任中に対イラン攻撃を決行するようなことはない、と私は考えています。
 米国がイランを攻撃しないであろう理由は、以前(コラム#1676、1680で)も述べたところですが、現在でもこの判断を改める必要があるとは思いません。
 ただし、その時にも述べたように、イスラエルが単独で、この一両年中にも対イラン攻撃・・ただし核施設に目標をしぼった攻撃・・を決行する可能性は排除できません。
 9月6日にイスラエルがシリアの、恐らくは核施設を攻撃し、破壊したことからも、このことはお分かりいただけると思います。なおこれは、イランへの警告であると同時に対イラン攻撃の予行演習であったと考えられています。(
http://observer.guardian.co.uk/world/story/0,,2170188,00.html
。9月16日アクセス)

 それにしても、先月末、ブッシュ大統領が、今年米軍がイランの工作員によってイラクの過激派に提供されたイラン製の240ミリロケット弾を発見・押収した、と述べた(
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/6968186.stm
。9月17日アクセス)り、アフガニスタン駐留NATO軍が、イランからタリバンに渡されようとしていたところの、(路傍爆弾に用いられる)徹甲成型弾等を9月6日に押収したと発表する(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/09/15/AR2007091500803_pf.html。9月16日アクセス)等、イランが米国の敵に対する支援を活発に行っている可能性が取り沙汰されているというのに、なにゆえ私が米国による対イラン攻撃はないと考えているかを、この際改めてご説明しておきたいと思います。

(続く)

太田述正コラム#2060(2007.9.13)
<イスラエル空軍機のシリア攻撃>

 (本篇は、即時公開します。)

1 始めに

 イスラエルの空軍機が9月6日、シリア領空内に侵入し、シリア北東部の目標を少なくとも一箇所爆撃してから帰還しました。
 この空軍機は5機であり、地中海からトルコとの国境沿いにシリア空域に侵入したとされ、ラッカ(Rakka)という町の北方約100マイルで目撃されたとの情報があります。
 シリアはこのイスラエルの領空侵犯行為を非難しましたが、イスラエルは沈黙を保っています。
 このイスラエル空軍機の目標が何であったのかについて、三つの説が出ています。

2 三つの説

 (1)北朝鮮がらみの核施設

 ブッシュ政権筋が主張している説なのですが、ここ半年間、とりわけこの一ヶ月間の衛星画像をイスラエルが解析して、北朝鮮が協力していると思われるシリアの核施設らしきものを見つけたという情報が前米国連大使のボルトン(John Bolton)らによって流布していたところ、実際、北朝鮮が核物資をシリアに売却した可能性があり、その倉庫をイスラエル空軍機が爆撃したのではないか、というのです。
 なお、これは単なる倉庫ではなく、北朝鮮から移設された濃縮ウラン製造施設である可能性があるとする説もあります。
 2003年に北朝鮮が、核物質を第三国に移す(transfer)するかもしれないと脅した際、米国が北朝鮮が核技術を第三国に提供するようなことがあれば、一線を越えたと判断する、つまりは対北朝鮮攻撃もありうる、と警告したことがあることを覚えておられるでしょうか。
 ちなみに、シリアは核拡散防止条約に調印していますが、IAEAによる強化査察を受け容れるとの追加議定書にはまだ同意していません。

 (2)ヒズボラ用武器施設

 2006年6月にイスラエル空軍機がシリア領空に侵入し、アサド・シリア大統領の夏の邸宅の上を低空飛行した上で、イスラエルが、これはシリアのハマスへの支援に対する警告のメッセージであると発表したことがあることを引き合いに出し、国連安保理決議で禁止されているにもかかわらず、シリアがレバノンのヒズボラへの武器供給を行っていることへの警告のメッセージとして、イスラエルがレバノンのヒズボラ(Hezbollah)用の地対地ミサイルの倉庫ないし製造工場を爆撃した可能性がある、というのです。

 (3)防空ミサイル施設

 最近のロシア製の防空ミサイルの導入により、シリアの防空能力が強化されたかどうかを見極めるためにイスラエルが空軍機を侵入させた、という見方もあります。
 この説は、類似の防空ミサイルを導入しているイランの核施設を近い将来イスラエルが空軍機で爆撃するための予行であるとする説と、近い将来ヒズボラ用の武器の集積所等を爆撃するための予行であるとする説に分かれています。

 (以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/09/12/AR2007091202430_pf.html
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/6991718.stm
http://www.guardian.co.uk/israel/Story/0,,2163764,00.html
http://www.nytimes.com/2007/09/12/world/middleeast/12syria.html?pagewanted=print
http://www.dailymail.co.uk/pages/live/articles/news/worldnews.html?in_article_id=481446&in_page_id=1811&ito=1490
(いずれも9月13日アクセス)による。)

3 コメント

 一つの事件についてこれだけ沢山の説が乱れ飛ぶのは、情報が寸時に全世界を駆け巡る昨今では極めてめずらしいことです。
 シリアがはっきりしたことを言わないのは、またもイスラエルに鼻を明かされた屈辱からでしょうが、イスラエルが完全黙秘を貫いていること、米国の関係者も極めて口が重いことは、北朝鮮がらみの核施設攻撃説またはイラン攻撃予行説のどちらかが正しいのではないか、ということを推測させます。
 いずれにせよ、イスラエルによるシリア本格攻撃のための予行である、という説だけは出ていないことは、興味深いところです。

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