太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/

太田述正コラム#9363(2017.9.26)
<アングロサクソンと仏教--米国篇(その15)>(2018.1.9公開)

-------------------------------------------------------------------------------
[鎌倉仏教]

 前回記したのは、端的に言えば、空海が鎌倉仏教の祖である、ということだ。
 かかる主張は奇をてらっていないか、また、空海の「新宗教」についての説明ぶりも皮相的過ぎはしないか、との批判が予想される。
 前者の批判については、この「新宗教」の総本山の金剛峯寺の墓域(奥の院参道)・・石塔の数は10万基とも20万基とも言われ、皇族から名もない人々まで、あらゆる階層の人々<の>墓碑<が>建立」されている・・「佐竹義重霊屋、松平秀康及び同母霊屋、上杉謙信・景勝霊屋(たまや)の建造物として重要文化財に指定されているものを始め、平敦盛、熊谷蓮生房、織田信長、明智光秀、曾我兄弟、赤穂四十七士、法然、親鸞、初代 市川團十郎、俳優の鶴田浩二など古今の様々な人物の墓碑や、関東大震災・阪神淡路大震災・東日本大震災などの大規模な自然災害の犠牲者、太平洋戦争の戦没者らを慰霊する為の供養碑・供養塔がある。また芭蕉や高浜虚子の句碑もある」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E5%89%9B%E5%B3%AF%E5%AF%BA
を、私のように、実際に訪れてみれば、批判が当たらないことに得心がいくことだろう。
 そして、何よりも、鎌倉仏教の主要諸宗派の創始者達はいずれも日本の天台宗から出発しているところ、法然と親鸞の墓碑が、金剛峯寺の奥の院参道にある(上述)こと、栄西が、この新宗教(日本の真言宗)の印信を受けている
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%8E%E8%8F%B4%E6%A0%84%E8%A5%BF
こと、日蓮が、金剛峯寺の子院、及び、この新宗教のもう一つの総本山たる東寺、に遊学している
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E8%93%AE
こと、に注目すべきだろう。
 後者の批判者に対しては、累次申し上げているように、世の中、深淵で複雑な原理では動いていない、人々はそんなものでは動かされない、という反論で足りよう。

 その上で、鎌倉仏教の個々の宗派を概観することにしよう。
 私見では、空海の「新宗教」は、「呪文を軸として、・・・現世利益と人間主義実践とを車の両輪とする」(前出)ものであったわけだが、私見では、日蓮系は日本人全体をターゲットにしてこの全体を踏襲した・・但し、呪文→題目・・のに対し、浄土系(浄土宗・浄土真宗)は縄文人を主ターゲットにして、このうち「呪文(→念仏)+現世利益」だけを重視し、、禅系(臨済宗・曹洞宗)は弥生人を主ターゲットにして、このうち「現世利益+人間主義実践」だけを重視し、たものだ。

 補足すると、浄土系の「現世利益」とは、弥生モード(非人間主義的社会)特有の不安解消・・例えば、弥生人だが、平敦盛を殺害した熊谷直実の法然への帰依、出家・・
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%86%8A%E8%B0%B7%E7%9B%B4%E5%AE%9F
に加えて恋愛・結婚の奨励・・法然の「女難」による承元の法難、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%95%E7%84%B6
及び、親鸞の妻帯
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%AA%E9%B8%9E
・・であり、禅系の「現世利益」とは、弥生モード(非人間主義的社会)特有の不安の解消であり、また、「人間主義実践」とは、養生手法の普及
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%8E%E8%8F%B4%E6%A0%84%E8%A5%BF 前掲
だ。
 養生手法の普及・・茶と桑の普及・・は、栄西だけの事績だが、道元は栄西の孫弟子
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%93%E5%85%83
であり、栄西という大始祖の事績の精神は、臨済宗、曹洞宗両宗派に受け継がれている、と私は見ている。
 なお、この禅系2宗派については、空海の「新宗教」の系譜ではなく、支那の禅宗の継受ではないか、という批判が予想されるが、後に譲る。
-------------------------------------------------------------------------------

(続く)

太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/