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太田述正コラム#8739(2016.11.18)
<ナチス時代のドイツ人(その3)>(2017.3.4公開)
この戦争についても、この大尉は答えを知っていた。
「ユダヤ人達がこの戦争を始めたのだ」、と彼は彼女に説明した。
彼らは「<我々の>最後の血の一滴を吸ったのだ」、と。
しかし、ドイツは適時に目が覚めたし、その使命を完遂する準備も整えていた。
「この疫病神(plague)のせいで、ドイツは全世界のために闘い、血を流さなければならなくなった」、と彼は彼女に語った。
「かわいそうなドイツ、だけど、ドイツは勝つだろうし勝たなければならない!」、と。
彼は、彼女に、ドイツの害虫駆除業者達は、「スイスのユダヤ人達もまた「根絶させる」ことだろう」、と約束した。
それでもって、彼の「政治的プロパガンダの奔流」は枯れ果て、彼は暇乞いを告げたが、その前にヒットラーの『我が闘争』を手渡すことは忘れなかった。
彼女は、好奇心をそそられたが、自分が口が軽いことを知っており、ドイツ人達を怒らせたくはなかった。
「あなたが何を質問しようと率直かつ誠実に答える用意がある」、と親衛隊の大尉は彼女に請け合った。
<そこで、>彼女は、<まず、>その親衛隊について尋ねた。
勇敢さと犠牲的精神で知られた同隊は、「新しいドイツの核心」を代表している、と彼は彼女に語った。
「我々は、恐れが我々の最大の敵であると考えている」、と。
この大尉は、彼女に、自分の「恐れを知らない」2人の娘について語り始めた。
「彼女達は、あらゆるものに対して武装している(be armed against)ところの、完全で自由で、かつ、進取の気性に富んだ人々へと成長しなければならない」、と。
しかし、彼は、自分の妻が怖がり屋で、「暗い地下室へ一人で」階段を降りていこうと<さえ>しないことを嘆いた。
その時、彼女は、あえて、スイス中で行き交っている「諸恐怖物語」について尋ねた。
婚外の「アーリア人」児童達の面倒を見、その誕生さえも奨励したプログラムであるところの、「生の泉(fountain of life=Lebensborn)」<(注5)>の話を持ち出した時、「彼は、信じ難いほどの憤怒に陥った」。
(注5)本来は、洗礼のアレゴリー
https://en.wikipedia.org/wiki/Fountain_of_Life
だが、ここでは、ナチスドイツで親衛隊によって始められた、人種的に純粋で健康な男女を婚外性交をさせて、優れたアーリア人種を増やそうとした試み
https://en.wikipedia.org/wiki/Lebensborn
、を指している。
「ドイツ人ほど女性達を敬う人々はない」、と彼は執拗に主張した。
そんな話は、全て、「ユダヤ人のプロパガンダ」だ、と。
お蔭様で、「<そんな>ユダヤ人達は今や駆逐されつつある」、と付け加えた。
ユダヤ人の気配(figure)が、常にドイツ人の喉まで出かかっていた。
この大尉は、より十全な説明を行おうと試みた。
彼は、彼女に、「<そもそも、>ドイツ人は、」いつも「外交官」たりえないとはいえ、「憎むことができない人々なのだ」、と。
このくだりで、彼の言語は恥の形跡を示した。
彼は、その件について熟考していた。
それは、ドイツ人がスイス人と出会った時に説明をどのようにひねり出すかの一例だ。 この大尉は、もう一度<説明を>試みた。
ユダヤ人達は復讐にのみ執心している。というのも、「「目には目を、歯には歯を」とユダヤ人達は言っているではないか」、と。
では、最近、ソ連の通信社であるタス(TASS)が報じたところの、諸病院列車の中で不具になった兵士達を、諸トンネルを通過する際にガス殺することについては?
「それもまた大きな嘘だ」、とこの親衛隊の男は言い返した。
但し、彼は、「我々は、諸精神病院を、御承知のように(obviously)、人道的なやり方で空っぽにした。…我々は、精神的不具者達を、彼らの役に立たない苦悩に満ちた生存から解放するのだ。もっとも、傷痍不具者達は神聖だが・・」、と。・・・
(続く)
<ナチス時代のドイツ人(その3)>(2017.3.4公開)
この戦争についても、この大尉は答えを知っていた。
「ユダヤ人達がこの戦争を始めたのだ」、と彼は彼女に説明した。
彼らは「<我々の>最後の血の一滴を吸ったのだ」、と。
しかし、ドイツは適時に目が覚めたし、その使命を完遂する準備も整えていた。
「この疫病神(plague)のせいで、ドイツは全世界のために闘い、血を流さなければならなくなった」、と彼は彼女に語った。
「かわいそうなドイツ、だけど、ドイツは勝つだろうし勝たなければならない!」、と。
彼は、彼女に、ドイツの害虫駆除業者達は、「スイスのユダヤ人達もまた「根絶させる」ことだろう」、と約束した。
それでもって、彼の「政治的プロパガンダの奔流」は枯れ果て、彼は暇乞いを告げたが、その前にヒットラーの『我が闘争』を手渡すことは忘れなかった。
彼女は、好奇心をそそられたが、自分が口が軽いことを知っており、ドイツ人達を怒らせたくはなかった。
「あなたが何を質問しようと率直かつ誠実に答える用意がある」、と親衛隊の大尉は彼女に請け合った。
<そこで、>彼女は、<まず、>その親衛隊について尋ねた。
勇敢さと犠牲的精神で知られた同隊は、「新しいドイツの核心」を代表している、と彼は彼女に語った。
「我々は、恐れが我々の最大の敵であると考えている」、と。
この大尉は、彼女に、自分の「恐れを知らない」2人の娘について語り始めた。
「彼女達は、あらゆるものに対して武装している(be armed against)ところの、完全で自由で、かつ、進取の気性に富んだ人々へと成長しなければならない」、と。
しかし、彼は、自分の妻が怖がり屋で、「暗い地下室へ一人で」階段を降りていこうと<さえ>しないことを嘆いた。
その時、彼女は、あえて、スイス中で行き交っている「諸恐怖物語」について尋ねた。
婚外の「アーリア人」児童達の面倒を見、その誕生さえも奨励したプログラムであるところの、「生の泉(fountain of life=Lebensborn)」<(注5)>の話を持ち出した時、「彼は、信じ難いほどの憤怒に陥った」。
(注5)本来は、洗礼のアレゴリー
https://en.wikipedia.org/wiki/Fountain_of_Life
だが、ここでは、ナチスドイツで親衛隊によって始められた、人種的に純粋で健康な男女を婚外性交をさせて、優れたアーリア人種を増やそうとした試み
https://en.wikipedia.org/wiki/Lebensborn
、を指している。
「ドイツ人ほど女性達を敬う人々はない」、と彼は執拗に主張した。
そんな話は、全て、「ユダヤ人のプロパガンダ」だ、と。
お蔭様で、「<そんな>ユダヤ人達は今や駆逐されつつある」、と付け加えた。
ユダヤ人の気配(figure)が、常にドイツ人の喉まで出かかっていた。
この大尉は、より十全な説明を行おうと試みた。
彼は、彼女に、「<そもそも、>ドイツ人は、」いつも「外交官」たりえないとはいえ、「憎むことができない人々なのだ」、と。
このくだりで、彼の言語は恥の形跡を示した。
彼は、その件について熟考していた。
それは、ドイツ人がスイス人と出会った時に説明をどのようにひねり出すかの一例だ。 この大尉は、もう一度<説明を>試みた。
ユダヤ人達は復讐にのみ執心している。というのも、「「目には目を、歯には歯を」とユダヤ人達は言っているではないか」、と。
では、最近、ソ連の通信社であるタス(TASS)が報じたところの、諸病院列車の中で不具になった兵士達を、諸トンネルを通過する際にガス殺することについては?
「それもまた大きな嘘だ」、とこの親衛隊の男は言い返した。
但し、彼は、「我々は、諸精神病院を、御承知のように(obviously)、人道的なやり方で空っぽにした。…我々は、精神的不具者達を、彼らの役に立たない苦悩に満ちた生存から解放するのだ。もっとも、傷痍不具者達は神聖だが・・」、と。・・・
(続く)
太田述正ブログは移転しました 。
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