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太田述正コラム#8152(2016.1.13)
<映画評論47:スター・ウォーズ/フォースの覚醒(その2)>(2016.4.29公開)

3 古代ローマにおける共和制と帝政…

 これについては、歴史オタクらしいアメちゃんのブログを引用しましょう。
 (言い訳がましくて恐縮ですが、今回の映画のパンフレットや日本語及び英語のウィキペディアには、「天使と堕天使…」だの、「古代ローマにおける共和制と帝政…」だの、といった話は一切出てこない・・過去のシリーズの映画群やシリーズそのものに係るウィキペディアまではあたっていないことをお断りしておきます・・のであって、私が自ら考え付き、その上でネットにあたったところ、先ほど引用したブログや今から引用するブログがヒットした、ということですからね。)

 「いかなる<スターウォーズ・シリーズ>ファン達でも、スターウォーズと古代ローマとの間には様々な類似諸点(parallels)が存在することを、実際、見出すことができる。・・・
 古代ローマを考察するならば、人は、(皇帝(Caesar)達によって統治された)帝国の前にはそれが(執政官と同僚執政官達<が率いたところ>の)共和国があったことを知るところとなる。
 スターウォーズでは、銀河(Galactic)は、まず、銀河共和国ないし古共和国として知られていたものが、やがて、皇帝(Emperor)によって統治された帝国になる。
 <古代ローマの>ユリウス・カエサルと<ギャラクシーの>元老院議員パルパティーン(Palpatine)<(注1)>は、どちらも、その地位に本来よりもはるかに長くとどまった。

 (注1)「ダース・シディアス。本名シーヴ・パルパティーン(Sheev Palpatine)は、<元老院議員を経て、スターウォーズ・シリーズにおいては、>銀河共和国最後の元老院最高議長であり、銀河帝国の初代皇帝でもある。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%82%B9
 (ダース≒堕天使、であり、シティアスは堕天使としての名前。(太田))

 ところが、この二人は、どちらも、大志ないし虚栄心にとらわれ、より多くの権力とより高い称号の追求を続けた。
 パルパティーンとユリウス・カエサルのどちらも、彼らが信頼していた誰か・・それぞれ、ブルータス(Brutus)とベイダー(Vader)・・によって殺された。
 ローマ帝国とスターウォーズ映画群のもう一つの類似性は、この二つが、それぞれ、帝国になった経過(way)だ。
 どちらも共和国だったが、どちらの文明にも、すなわち、スターウォーズの銀河、及び、古代ローマのどちらにおいても、共和国が永久に続く、という強い自信があった。
 また、どちらの文明においても、征服と拡大への共和国の欲望によって燃料をくべられたところの、一連の諸戦争が生起した。
 古代ローマの歴史においては、これらの諸戦争の主たるものはカルタゴ(Carthage)とのポエニ諸戦争(Punic Wars)だった。
 スターウォーズの伝説群においては、異なった一連の諸戦争、すなわち、旧シス諸戦争(Old Sith Wars)、新シス諸戦争(New Sith Wars)、そして、クローン諸戦争(Clone Wars)があった。・・・
 パルパティーンは、ユリウス・カエサルよりもアウグストゥスに、より類似している。
 彼に対して、元老院は、更なる共和国内諸危機を回避するという希望の下で、諸名誉、諸特権、及び権力を集積させたのだ。」
http://blogs.transparent.com/latin/star-wars-ancient-rome/
(1月12日アクセス)

 さて、このブロガーの言っていることは、全てその通りであるところ、あえて、というよりは、恐らく、余りに当たり前なので言及するのを忘れただけなのでしょうが、彼は、肝心なことを言っていません。。
 それは、今回の映画、ひいてはスターウォーズ・シリーズの製作陣は、マーケティングの観点から、古代ローマにおける、共和制から帝国への移行期における、それぞれの支持者達相互のせめぎ合いを、この映画(群)の中で彷彿とさせることで、古代ローマを理想視し、古代ローマと同定しつつ、古代ローマ的な共和制的要素と帝国的要素とがせめぎあってきたところの、米国において、その国民達に、この映画(群)に、(先述したキリスト教的な、いわば形而上学的な親近感に加えて、)形而下的な親近感を覚えさせることによって、映画館に足を運ばせようとしてきた、ということです。
 米国人達が、その建国の父達以来、古代ローマを理想視し、古代ローマと同定してきたことは、大昔にシリーズ的に取り上げたことがあります。
 それを、大急ぎで、つまみ食い的に振り返ってみましょう。

 「米国建国の父達が、帝政ローマならぬ共和制ローマ(the Roman republic)に強い影響を受けていたことは、共和制ローマ(と帝政ローマ)の国章として用いられた鷲を米国の国章とした・・・こと、1792〜93年に、主要政党として共和党が創立されたことや1788年に発効した米国憲法の第9条に「各州に共和的政体(Republican form of Government)を保証する」という規定・・・が設けられたこと・・・のほか、 同じく憲法において、元老院(senate)、拒否権(veto)、総督(governor=州知事)、といった共和制ローマの政治制度由来の言葉を多数採用した・・・こと等から明らかです。」(コラム#1755)
 「共和制ローマも米国も、虐げられた弱者が圧制者の軛から解放されるべく、悪であるところの帝国に戦いを挑み、それに成功した、という・・・自由の神話<を持っています。>
 米国の建国の父達は、独立した米国を共和制ローマになぞらえていた・・・からこそ、憲法を策定するにあたって、先達であるところの共和制ローマの国制を参考にしたのです。・・・
 このこととも関連していますが、米国の建国の父達は、権力の抑制と均衡を重視しました。
 1人の大統領を置くか、共和制ローマに倣って2人の執政官(consul)を置くか、等々侃々諤々の議論が行われた上で、三権分立制、上下両院制、大統領選挙人制、連邦制が導入されたのです・・・。・・・
 やっかいなことに、上述のような勇壮なる自由の神話を持つ国は、帝国主義的に領土の拡張をしがちであるところ、自分達の行動を帝国主義的であるとは決して認めようとはしません。・・・<要するに、古代共和制ローマも米国も、>反帝国主義的帝国主義<なのです。>」(コラム#1756)
 「共和制ローマは、「本来の」ローマ領の回復をめざす、相手の内紛に介入する、相手の地域にいる自分の市民を「保護」する、軍事的挑発を行って相手に戦いの火ぶたを切らせる、といった手口で次々に戦争を始め、領土を拡大して行った<のですが、>・・・この共和制ローマとほぼそっくりの手口を使って領土を拡大して行ったのが米国です。」(コラム#1758)

 以上は、古代共和制ローマの理想視、古代共和制ローマとの同定ですが、古代ローマ一般の理想視、古代ローマ一般との同定も見られるところです。
 これについても、大昔のコラムから拾いますと、まず、米国の奴隷制は古代ローマ直系と言ってよさそうです(コラム#1761)し、ローマと米国の類似性として、自己例外視、強大な軍事力と経済力と文化力、ノーブレスオブリージュ(とその漸減)を挙げている米国人識者もいます。(コラム#1767)
 更に、付け加えれば、古代ローマ同様、米国も王政を打倒して共和制を樹立した歴史を持っています。
 古代ローマがエトルリア王家から独立したのに対し、英領北米植民地はイギリス王家から独立したわけです。(コラム#1756)

(続く)

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