太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/

太田述正コラム#8050(2015.11.23)
<鄭大均編『日韓併合期ベストエッセイ集』を読む(その9)>(2016.3.9公開)

 「朝鮮もの<の>・・・陶磁器・・は大体から言って二つに分かれる。
 高麗のものと、李朝のものと<(注9)>。・・・

 (注9)「12世紀になると中国の磁の影響を離れ、「翡色」と呼ばれる澄んだ青緑色の気品に満ちた高麗青磁が作られるようにな<った。>・・・
 <次の>李朝にな<り、>・・・16世紀後半になると、ほとんどの窯が白磁窯に転向していき・・・ます。
 16世紀末、豊臣秀吉の侵略によって、国全土が戦火にまみれ、各地の窯は大きな打撃を受けました。多数の陶工が日本に連行され、生産は著しく停滞しました。・・・
 19世紀後半になると・・・朝鮮陶磁器の伝統は衰退の一途をたどっていきました。」
http://potteryporcelain.blogspot.jp/

⇒「一般に「李朝陶磁」の名で知られている朝鮮時代の陶磁器の真価を、広く世に知らしめたのは柳宗悦の功績であった。柳はそこにこそ「朝鮮固有の美」を見出したのである」http://www.mingeikan.or.jp/collection/korea01.html
のだそうです。
朝鮮の陶磁器の衰退は秀吉のせいだけではありませんが、いずれにせよ、柳ら日本人による、朝鮮、とりわけ、李朝ものの陶磁器の芸術性の「発見」は、秀吉の「罪」を償って余りある朝鮮への貢献であったと言えそうです。(太田)

 朝鮮では官窯はあるが、個人窯はない。
 それ故何れも無銘である。
 理由を二つに数えたい。
 李朝では器物の殆んど一切が実用の品である。
 只見るために作ったものなく、茶器から食器、室内具等に至るまで何れも用途を旨としている。
 之が理由の一つ。
 陶工は職人である。
 窯業は下賤な業である。
 かかる者を美術家と思う心はない。
 又美術家たるものが、かかる下賤な職に身を下すべきものではない。
 そう考えられたのである。
 之が個人陶工の無い理由の二つである。
 朝鮮では日本の様に焼物を愛玩する風習はない。
 蒐集家もなく又茶礼の様なものもない<(注10)>。

 (注10)「朝鮮半島では、高麗時代に茶文化がある程度普及していたが、朝鮮王朝になると儒教を国教としたため仏教文化の茶文化は衰えていった。・・・
 近代の韓国では茶文化が皆無に等し<い。>」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8C%B6%E3%81%AE%E5%84%80%E5%BC%8F
 なお、支那には茶文化はもちろんあるが、茶芸はあっても茶道はない、と言うべきか。
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/8121922.html

 器物は遥かに現実的である。
 日々の用具である。
 この事は李朝の焼物の美を解する上には重要な性質である。・・・

⇒上出の支那の茶文化も実用的なものであって、日本のそれのように求道的なものではありません。
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/8121922.html 上掲
 一事が万事であり、だからこそ、支那や朝鮮とは違って、日本では、ありとあらゆる分野において、求道を旨とするところの、匠や家元的な人々が活躍しているのでしょうね。(太田)

 概して絵附のものは上等品であって、法令によって民衆の使用を禁じてある。
 一つには回青<(注11)>の如きものが当時得難かったからでもある。

 (注11)「明代にイスラム圏から輸入された、青花(染め付け)に用いる青色のコバルト顔料。回回青。」
https://kotobank.jp/word/%E5%9B%9E%E9%9D%92-457715

 一般の庶民は白沙器を用いる事を強要された。
 さもなくば鉄釉<(注12)>の器物である。」(390〜391、393〜394・柳宗悦)

 (注12)「鉄釉陶器は、釉【うわぐすり】に含まれている鉄分によって黒色、茶色、黒褐色、柿色などに呈色する陶器の制作技法である。鉄釉陶器は、別に天目【てんもく】とも呼ばれ、東洋独特の焼物として独自の発展を示した技法であり、古来、中国各地で作られ、その影響で日本や東南アジアなどでも作られるようになった。」
http://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/161601

⇒生活様式や生活用品に関し、余程の目利きでもない限り、上下間格差が殆んどないように見えた江戸時代の日本(典拠省略)と、そうではなかった支那や朝鮮、という図式ですね。(太田)

(続く)

太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/