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太田述正コラム#7964(2015.10.11)
<中共が目指しているもの(その9)>(2016.1.26公開)
習のこの宣言を、その2年も前に先取りしていたのではないか、と、このところ、米国で注目を浴びているのが中共の劉明福(Liu Mingfu)退役陸軍大佐(現在64歳)
https://en.wikipedia.org/wiki/Liu_Mingfu
だ。
彼は、2010年に出版された『支那の夢--ポスト米国時代における中共の大国的思考と戦略的位置付け(China Dream: The Great Power Thinking and Strategic Positioning of China in the Post-American Age)』・・序文を李先念(Li Xiannian)(1909〜92年。国家主席:1983〜88年)
https://en.wikipedia.org/wiki/Li_Xiannian
の義理の息子である陸軍中将が寄せていることと、この本の販促が大々的に行われたことは、中共当局がこの本にお墨付きを与えていることを示唆している・・の中で、「日本軍国主義、世界覇権国、及び、全球的テロリズム、が平和への脅威であり続けている」、と述べている。
「「全球的覇権国」とは、もちろん、米国を指している。・・・
⇒中共当局は日本軍国主義は復活していないとの認識
(「<2014年7月>9日付の<中共>人民解放軍機関紙・解放軍報によると、房峰輝・軍総参謀長は・・・「歴史を振り返れば、教訓は深刻だ。われわれは日本軍国主義復活の危険に警戒し、共に地域と世界の平和・安定を維持しなければならない」と訴えた。」
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2014070900537 ←リンク切れ
http://ai.2ch.sc/test/read.cgi/newsplus/1404888693/ から孫引き)
なので、劉は、ということは、中共当局も、米国とテロリズムを、現在の中共にとっての二大脅威としている、ということだ。
もう一つ、注意すべきは、かつての日本軍国主義の頃より前には米国が支那の脅威でなかったということでは必ずしもない点だ。(太田)
この本は、米国の全球的権勢(dominance)を詳細に吟味し、東アジアにおいてのみならず世界全域にわたって平和を確保するために、それを打倒(overturn)する必要性を擁護した。
「世界最強の国になるのは中共の21世紀における目標(goal)だ」、と彼は記した。・・・
「・・・いかに中共が「平和的興隆」に徹したとて、中米関係において紛争は必然だ(inherent)」<、とも。>・・・
「アジア中に炎が存在し、アジアの全ての場所が将来の戦場たりうる」、と<訪米した>彼は語った。
「その全ては、米国の見えない手によって引き起こされるものだ。米国の黒い手なかりせば、アジアはもっと平和的で安定的になることだろう」、と。
「米国政府のアジアに対する政策は、「棍棒」政策だ」、と彼は付け加える。
「大きな竹製の檻があり、米国は、全ての諸国がその檻の中で蟹達のように互いに噛みつきあうことを欲している」、と。・・・
習主席は、権力の座に就いてから、軍部に対してより厳格な諸規則を課した」、と彼は付け加えた。
「今や、兵士達は、毎日訓練を行うようになり、戦争のこと以外について考えることはなくなった。将軍達や大佐達を含むところの、私の同僚達の若干は、太り過ぎで青白かったが、今や、彼らは、強制的に行われる訓練のおかげで、日焼けし細くなっている」、と。・・・
⇒劉は触れていないが、軍部に対しても、習は腐敗撲滅に乗り出しているところ、このこととも相俟って、訓練をサボりつつカネ儲けに明け暮れるに至っていた将校達の意識改革による中共軍の再建に、習が真剣に取り組んでいることが窺える。(太田)
「中共が今日直面している最大の脅威は軍事的危機だ」、と劉大佐は述べた。
「軍事力において、中共と米国の間には巨大な格差(gap)がある<からだ>」、と。・・・
⇒だからこそ、日本を米国から「独立」させることによって、米国が東アジアで勝手に動きづらくさせるとともに、中共軍が日本の自衛隊の教義や錬度の移入を図れるようになること、を中共当局は希っているわけだ。
なお、下掲のようなことは、それまでの間、万一米国が中共に手を出すようなことがあれば窮鼠猫を噛むぞ、という雄叫びを、あえて米国に流しているのだ、と思えばよかろう。
「・・・2007年1月、米紙「ニューヨーク・タイムズ」は中国が秘密裏に自分たちの気象衛星を撃ち落として、通信を遮断する実験を行ったと報じました。・・・
ロシアが自国の衛星にミサイルを撃ち込んだことは過去、一度もありません。・・・
米ソ間では、相手の衛星を撃ち落とさないという約束をしていた<からです。>・・・
<また、ある時、中共軍の将校が米空母の弱点について質問した時、>米軍将校<が>「・・・空母の側面は非常に厚みがあるので、いかなる攻撃にも耐えられるが、底が薄い。私たちの空母は、爆弾をすべて底に保管しています。空母には5000人近くの乗員がいるため、そのスタッフから少しでも距離を置くためです」と回答したというのです。・・・
その後、<中共>はロシアが「船跡追尾魚雷」という特殊な魚雷を造っていること突き止めたといいます。これは発射されると、空母が通った跡の波である船跡を感知して、その空母の下に入ってから上に向きを変え、攻撃するという魚雷です。・・・」(B)
1998年から2011年に退役するまで、彼は、国防大学で政治軍事戦略を教え、同校の軍事力整備調査研究所の所長を務めた。・・・
「米国の対中政策は破滅的(disastrous)だ。
米国政府は、13億の人々を敵対者達と見ている。
米国政府は中共を敵であると見ており、その結果として、中共が米国の敵になるよう強いている(push)」、と劉大佐は述べた。」
http://www.nytimes.com/2015/10/03/world/asia/chinese-colonels-hard-line-views-seep-into-the-mainstream.html?ref=world&_r=0
(10月3日アクセス)
⇒劉のこの米国観は、何も、現在、ないしは、戦後だけでなく、支那の人々が、米国と交流が始まって以来、抱き続けてきたものであることを我々は忘れてはなるまい。
私が何度も指摘しているように、一貫して、米国は、支那の最大の敵なのだ。
ところで、劉が、退役後、大学や研究所に勤務している様子がないことが気になる。
まさか、(戦後の日本は論外だが、)応用自然科学の面を除いて、軍事と非軍事の選良達の教育及び研究に係る制度を分断した戦前の日本の悪弊までも、中共当局が見習っている、とは想像し難いのだが・・。(太田)
-------------------------------------------------------------------------------
(完)
<中共が目指しているもの(その9)>(2016.1.26公開)
習のこの宣言を、その2年も前に先取りしていたのではないか、と、このところ、米国で注目を浴びているのが中共の劉明福(Liu Mingfu)退役陸軍大佐(現在64歳)
https://en.wikipedia.org/wiki/Liu_Mingfu
だ。
彼は、2010年に出版された『支那の夢--ポスト米国時代における中共の大国的思考と戦略的位置付け(China Dream: The Great Power Thinking and Strategic Positioning of China in the Post-American Age)』・・序文を李先念(Li Xiannian)(1909〜92年。国家主席:1983〜88年)
https://en.wikipedia.org/wiki/Li_Xiannian
の義理の息子である陸軍中将が寄せていることと、この本の販促が大々的に行われたことは、中共当局がこの本にお墨付きを与えていることを示唆している・・の中で、「日本軍国主義、世界覇権国、及び、全球的テロリズム、が平和への脅威であり続けている」、と述べている。
「「全球的覇権国」とは、もちろん、米国を指している。・・・
⇒中共当局は日本軍国主義は復活していないとの認識
(「<2014年7月>9日付の<中共>人民解放軍機関紙・解放軍報によると、房峰輝・軍総参謀長は・・・「歴史を振り返れば、教訓は深刻だ。われわれは日本軍国主義復活の危険に警戒し、共に地域と世界の平和・安定を維持しなければならない」と訴えた。」
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2014070900537 ←リンク切れ
http://ai.2ch.sc/test/read.cgi/newsplus/1404888693/ から孫引き)
なので、劉は、ということは、中共当局も、米国とテロリズムを、現在の中共にとっての二大脅威としている、ということだ。
もう一つ、注意すべきは、かつての日本軍国主義の頃より前には米国が支那の脅威でなかったということでは必ずしもない点だ。(太田)
この本は、米国の全球的権勢(dominance)を詳細に吟味し、東アジアにおいてのみならず世界全域にわたって平和を確保するために、それを打倒(overturn)する必要性を擁護した。
「世界最強の国になるのは中共の21世紀における目標(goal)だ」、と彼は記した。・・・
「・・・いかに中共が「平和的興隆」に徹したとて、中米関係において紛争は必然だ(inherent)」<、とも。>・・・
「アジア中に炎が存在し、アジアの全ての場所が将来の戦場たりうる」、と<訪米した>彼は語った。
「その全ては、米国の見えない手によって引き起こされるものだ。米国の黒い手なかりせば、アジアはもっと平和的で安定的になることだろう」、と。
「米国政府のアジアに対する政策は、「棍棒」政策だ」、と彼は付け加える。
「大きな竹製の檻があり、米国は、全ての諸国がその檻の中で蟹達のように互いに噛みつきあうことを欲している」、と。・・・
習主席は、権力の座に就いてから、軍部に対してより厳格な諸規則を課した」、と彼は付け加えた。
「今や、兵士達は、毎日訓練を行うようになり、戦争のこと以外について考えることはなくなった。将軍達や大佐達を含むところの、私の同僚達の若干は、太り過ぎで青白かったが、今や、彼らは、強制的に行われる訓練のおかげで、日焼けし細くなっている」、と。・・・
⇒劉は触れていないが、軍部に対しても、習は腐敗撲滅に乗り出しているところ、このこととも相俟って、訓練をサボりつつカネ儲けに明け暮れるに至っていた将校達の意識改革による中共軍の再建に、習が真剣に取り組んでいることが窺える。(太田)
「中共が今日直面している最大の脅威は軍事的危機だ」、と劉大佐は述べた。
「軍事力において、中共と米国の間には巨大な格差(gap)がある<からだ>」、と。・・・
⇒だからこそ、日本を米国から「独立」させることによって、米国が東アジアで勝手に動きづらくさせるとともに、中共軍が日本の自衛隊の教義や錬度の移入を図れるようになること、を中共当局は希っているわけだ。
なお、下掲のようなことは、それまでの間、万一米国が中共に手を出すようなことがあれば窮鼠猫を噛むぞ、という雄叫びを、あえて米国に流しているのだ、と思えばよかろう。
「・・・2007年1月、米紙「ニューヨーク・タイムズ」は中国が秘密裏に自分たちの気象衛星を撃ち落として、通信を遮断する実験を行ったと報じました。・・・
ロシアが自国の衛星にミサイルを撃ち込んだことは過去、一度もありません。・・・
米ソ間では、相手の衛星を撃ち落とさないという約束をしていた<からです。>・・・
<また、ある時、中共軍の将校が米空母の弱点について質問した時、>米軍将校<が>「・・・空母の側面は非常に厚みがあるので、いかなる攻撃にも耐えられるが、底が薄い。私たちの空母は、爆弾をすべて底に保管しています。空母には5000人近くの乗員がいるため、そのスタッフから少しでも距離を置くためです」と回答したというのです。・・・
その後、<中共>はロシアが「船跡追尾魚雷」という特殊な魚雷を造っていること突き止めたといいます。これは発射されると、空母が通った跡の波である船跡を感知して、その空母の下に入ってから上に向きを変え、攻撃するという魚雷です。・・・」(B)
1998年から2011年に退役するまで、彼は、国防大学で政治軍事戦略を教え、同校の軍事力整備調査研究所の所長を務めた。・・・
「米国の対中政策は破滅的(disastrous)だ。
米国政府は、13億の人々を敵対者達と見ている。
米国政府は中共を敵であると見ており、その結果として、中共が米国の敵になるよう強いている(push)」、と劉大佐は述べた。」
http://www.nytimes.com/2015/10/03/world/asia/chinese-colonels-hard-line-views-seep-into-the-mainstream.html?ref=world&_r=0
(10月3日アクセス)
⇒劉のこの米国観は、何も、現在、ないしは、戦後だけでなく、支那の人々が、米国と交流が始まって以来、抱き続けてきたものであることを我々は忘れてはなるまい。
私が何度も指摘しているように、一貫して、米国は、支那の最大の敵なのだ。
ところで、劉が、退役後、大学や研究所に勤務している様子がないことが気になる。
まさか、(戦後の日本は論外だが、)応用自然科学の面を除いて、軍事と非軍事の選良達の教育及び研究に係る制度を分断した戦前の日本の悪弊までも、中共当局が見習っている、とは想像し難いのだが・・。(太田)
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(完)
太田述正ブログは移転しました 。
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