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太田述正コラム#7702(2015.6.2)
<キリスト教の原罪思想のおぞましさ(その1)/私の現在の事情(続x61)>(2015.9.17公開)

1 始めに

 今度は、ジェームズ・ボイス(James Boyce)の『悪しく生まれて--原罪と欧米世界の形成(Born Bad: Original Sin and the Making of the Western World)』のさわりを書評類に基づいてご紹介し、私のコメントを付すシリーズです。

A:http://www.washingtonpost.com/entertainment/books/born-bad-how-the-idea-that-were-all-sinners-has-shaped-western-culture/2015/05/20/70bb32ec-fd7b-11e4-805c-c3f407e5a9e9_story.html
(5月23日アクセス(以下同じ)、書評(以下同じ))
B:http://australianfriend.org/af2768
C:http://paigelovesbooks.blogspot.jp/2014/09/review-of-born-bad-original-sin-and.html
D:http://publicchristianity.org/opinion/born-bad#.VWCEGZWJiUk
E:http://insidestory.org.au/after-the-fall
F:http://www.utne.com/mind-and-body/st-augustine-and-original-sin-ze0z1505zken.aspx
(この本からの抜き刷りと投稿)
G:http://www.theguardian.com/culture/australia-culture-blog/2014/jul/23/how-original-sin-led-to-a-western-obsession-with-self-help
(著者による解説)
H:http://www.eurekastreet.com.au/article.aspx?aeid=41920#.VWCHGJWJiUk
(書評と投稿)

 なお、ボイスは、豪タスマニア大で博士号を取得し、その著作でこれまで豪州の数々の賞を受賞してきており、現在、同大学の地理・環境研究大学院の名誉リサーチ・アソシエイツ、という人物です。
http://www.blackincbooks.com/authors/james-boyce

(続く)
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           --私の現在の事情(続x61)--

1 始めに

 昨夜のコンサート&パーティの話です。

2 1曲目

 最初の曲は、作曲家の生誕百周年を記念して(コンサート・パンフレット)、(既に、一人題名のない音楽会で何度も登場したところの、)シベリウスのヴァイオリン協奏曲でしたが、ミソは、オリジナル版(1903年)であるところです。
 ヴァイオリン:Leonidas Kavakos、オケ:Lahti Symphony orchestra(フィンランドのオケ(パンフレット)) によるオリジナル版の演奏をお聴きください。
https://www.youtube.com/watch?v=2RNSmJU0ymk
 今回のヴァイオリン奏者はヴェンゲーロフ(Maxim Vengerov)(注1)であったわけですが、上掲ユーチューブ映像の投稿中に、誰かが、ヴァイオリンの音がオケに負けているとの指摘があり、それに対し、むしろ、演奏会場における本来の相対的音量はそんなものだ、と窘める投稿があるところ、今回のヴェンゲーロフの演奏はもっとオケに負けている印象を受けました。

 (注1)1974年〜。「ロシアのヴァイオリニスト、指揮者。ユダヤ系で、イスラエル在住。・・・10歳でポーランドのリピンスキ・ヴィエニヤフスキ国際コンクールジュニア部門で優勝。・・・右肩の故障のために、・・・2008年から演奏活動の休止を宣言し、以降は指導者、指揮者としての活動に専念していた。2011年から再びヴァイオリンの演奏活動を再開し、2012年2月にはロンドンの王立音楽アカデミーの<客員>教授に就任した。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%95
 1997年に、クラシック音楽家としては初めてユネスコ親善大使に任命された。
http://en.wikipedia.org/wiki/Maxim_Vengerov

 サントリーホールの音響には定評があり、しかも、そのS席
http://blog.goo.ne.jp/bravo_opera_classica/e/2aed87bece66ef66b1cde680290793a3
なのですから、会場のせいであるはずはないでしょう。
 (右肩の故障でしばらくヴァイオリン演奏活動から遠ざかっていたヴェンゲーロフ(前出)、再発を恐れて軽く弾いている、という可能性もなきにしもあらずですが・・。)
 私は、日本でコンサートに行った経験は、殆んどなく、ヴァイオリン協奏曲のコンサートに至っては、カイロ時代を含め、皆無だったのですが、ヴァイオリン協奏曲等、弦楽器の協奏曲は、むしろ、YouTubeやCDや「ハイレゾ」のダウンロードで聴いた方がよい、と思いました。
 (専用マイクで拾ったソロの音が強調される形で録音される、ということです。 
 ピアノ協奏曲の場合は、弦楽器を中心としたオケの楽器群とは音質が全く違うので、この問題は起きにくいと思われます。)
 この際、同じヴェンゲーロフによる、この曲の改訂版(1905年)(注2)の演奏も比較のためにどうぞ。

 (注2)シベリウスは、オリジナル版に比して、「独奏楽器の名技性を抑えて構成を緊密化、凝縮し、より交響的な響きを追求した」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%82%B7%E3%83%99%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%82%B9)
 私は、やはり、改訂版の方が好きだ。

 指揮:バレンボイム、オケ:Chicago Symphony Orchestra、です。
 ソロの部分が大きく鳴り響いています。
https://www.youtube.com/watch?v=YsbrRAgv1b4

 今回の演奏は、指揮:新田ユリ、オケ:東京フィルハーモニー交響楽団で行われたのですが、指揮者(女性)はシベリウス研究家・・日本シベリウス協会会長!(パンフレット)・・でもあり、今回の指揮は、ピンチヒッターとしてのものであったようです。(パンフレット)
 以下は、軽口です。
 指揮者が女性であって全然構わないのですが、燕尾服なので当然スラックス姿・・まさか、上が燕尾服で下がスカートというわけにはいかなさそう・・は、女性には向いてないですね。
 ところで、日本発で、そもそも、オケの団員は黒の燕尾服を纏わねばならない、という悪習を止めたらどうなんでしょう。
 背広は、19世紀のイギリスで生まれ、それが米国でビジネス服として使われるようになり、世界のビジネス服になったわけです
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%83%8C%E5%BA%83
が、ビジネス服として機能的である、とは必ずしも言えません。
 燕尾服もまた、イギリス起源であり、その乗馬服がフランスで現在の形の燕尾服になった、という経緯があります。
 また、燕尾服が黒なのも、燕尾服の起源である乗馬服とは関係なく、当時、イギリスで流行していた色である黒が、欧州大陸で燕尾服に用いられるようになったのです。
https://www.tmso.or.jp/j/question/vol9.php
 ことほどさように、先進国イギリスから、後進地域である欧州大陸の諸国は、ありとあらゆるものを取り入れた、というわけです。
 この燕尾服、肉体労働でもあるところの、演奏用には全く向いていません。
 ヴァイオリンやヴィオラの演奏には、ネクタイが邪魔になるので、とりわけそうです。
 ヴェンゲーロフが、今回、色こそ黒でしたが、詰襟チックな服装をしてヴァイオリン演奏も指揮も行ったのは、好感が持てました。
 団員の中に女性が半数近くいたけれど、色こそ黒でも、燕尾服を着ている人はなく、全員ドレス姿でしたし、中にはスラックスの人もいました。
 (スラックスの女性達は、膝を開き気味にしており、体が安定し、演奏し易いような印象を受けました。)
 だから、男性の団員も燕尾服を捨て、次いで、男女とも、色も自由にすればよろしい。
 
3 2曲目

 20分間の休憩をはさみ、次は、ヴァイオリンを指揮棒に持ち替えたヴェンゲロフの指揮による、同じオケの、ベルリオーズ『幻想交響曲』(1830年)です。
 マリス・ヤンソン指揮、オケ:ベルリンフィル、によるものをお聴きください。
https://www.youtube.com/watch?v=e4nRB9yQWLo
 これ、結構、知られている曲ですが、作曲の背景は知らなかったので、今回、知って驚きました。
 「1827年、ベルリオーズはパリで、イギリスのシェイクスピア劇団による『ハムレット』を観た。その中でオフィーリアを演じたハリエット・スミスソンに熱烈な恋心を抱<くも振られてしまう。>・・・<そこで、彼は、>)。「恋に深く絶望しアヘンを吸った、豊かな想像力を備えたある芸術家」の物語を音楽で表現し」た曲を作曲し、1830年12月にパリで初演したところ、その初演を聴きに来ていたハリエットと1832年に再会し、彼は再度求婚し、今度は彼女が受け入れ、1833年に結婚した、というのです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%BB%E6%83%B3%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2
 「百万本のバラ」では、ロシア版の歌詞の元になった画家の片思いは、実際、ついに実らなかったらしいけれど、ベルリオーズの場合は実ったことになります。
 (1827年時点では売れない作曲家だったので振られてしまったベルリオーズは、幻想交響曲の大当たりで1832年時点では押しも押されぬ大作曲家になっていたおかげで、恋を成就させることができた、というわけであり、ハリエットの計算高さが窺えますね。)
 何度も申し上げているように、芸術って基本的に性衝動を昇華させたものだと私は考えているので、別段驚くべきことではありませんがね。
 で、ヴェンゲーロフの指揮ですが、音楽的にも、パーフォーマンスとしても、なかなか良かったのではないでしょうか。
 (私の右隣に座っていた青年、私同様、招待なのでしょうが、2曲目はずっと小さい鼾をかきながら爆睡していました!)
 ヴェンゲーロフ、ヴァイオリンの演奏の時もダイナミックに身体を使うので、ダイナミックな指揮も、演技というよりは地なんでしょうね。
 (だから、彼、肩を痛めたのかもしれませんが・・。)
 なお、彼、動作がダイナミックなだけじゃなく、(背は高くありませんが、)胸板が厚いがっしりとした体格であり、オケの男性団員達の体格が貧弱に見えて仕方がなかったのと、もう一つ、支那系や朝鮮系の人もいるのかもしれませんが、欧米人らしき約1名を除いて団員の全員が日本人顔であったこと、が印象に残っています。
 これじゃあ、日本のオケ、日本の大学よりも国際化が遅れてるじゃないですか。

4 パーティ等

 終演後、サントリーホールの前の広場の向かい側のアーク森ビル内のレストランでパーティが行われ、ヴェンゲーロフ、奥さん、女のお子さん、そして、新田女史、も出席しました。
 彼が、my lovely wife と自分の奥さんを紹介したのはご愛嬌でした。
 ビュッフェスタイルの食事は、量質ともにまずまずで、飲み物が何でもありというのも大変結構でした。
 この日も、声が出にくくなって往生したのですが、AKJさんとは、色々な話ができました。
 彼、友人である有料読者から奨められて太田コラムを知り、無料読者だが、4月までの全公開コラムを、少しずつまとめて印刷し、読破してきたとのこと。
 22:00過ぎに、まだまだ賑わっていた会場を一緒に後にしました。
 防衛庁が六本木にあった頃は、アークヒルズあたりも、ぎりぎり昼飯圏内であり、久しぶりに馴染の界隈を訪れ、ちょっぴり想い出に耽ることもできました。
 というわけで、AKJさんに、厚く御礼を申し上げます。

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