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太田述正コラム#7154(2014.9.1)
<現代哲学におけるアングロサクソンと欧州(その6)>(2014.12.17公開)

 他方、「分析哲学」の射程(scope)も、年とともに、同様、拡大して行った。
 1950年代には、それは、典型的には、論理実証主義(logical positivism)<(注25)(コラム#1697)>ないしは日常言語哲学(ordinary-language philosophy)<(注26)>の形態をとったが、どちらも、実質的な(sbstantive)哲学的諸見解とともに、特定の分析モード・・あらあら、カルナップかウィトゲンシュタインに追随していた・・に対するコミットメントを伴っていた。

 (注25)「経験論の手法を現代に適合させ、形而上学を否定し、諸科学の統一を目的に、オットー・ノイラート、ルドルフ・カルナップなどのメンバーで活動したウィーンを中心とした運動である。その特徴は、哲学を数学、論理学を基礎とした確固たる方法論を基盤に実験や言語分析に科学的な厳正さを求める点にあり、その後の認識論及び科学論に重大な影響を与えた。
 この思想ないし運動には、イギリスのアルフレッド・ノース・ホワイトヘッド及びバートランド・ラッセル・・・とオーストリア生まれのルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン<(但し、その初期の著作)>・・・の影響が大きい。・・・
 ナチスの台頭で学団のメンバーが<米国>に亡命した影響でその主張は英米で発展した。・・・
 <なお、>カール・ポパー・・・は、論理実証主義者たちの「検証可能性」の基準は科学の基準としては厳しすぎるので、それに代えて反証可能性の基準を使うべきだと主張した。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AB%96%E7%90%86%E5%AE%9F%E8%A8%BC%E4%B8%BB%E7%BE%A9
 (注26)「1950年代にイギリスで形成された,日常言語の分析を中心にすえる哲学の学派。哲学的問題は,たとえば存在とは何か,いかなるものが善か,という問いに示されるように,ことばの意味にかかわるところが大きい。そこで哲学の諸問題をその表現に用いられる言語を分析することによって解こうとする学派が生まれた。日常言語学派はその一つである。それは近代論理学に依拠して言語を再構成し,このような形式的言語を用いて問題を再定式化しようとする人工言語学派と対立する。」
http://kotobank.jp/word/%E6%97%A5%E5%B8%B8%E8%A8%80%E8%AA%9E%E5%AD%A6%E6%B4%BE
 なお、「分析哲学<は、>・・・「人工言語学派」と「日常言語学派」に大別される。●人工言語学派
 ・人工言語を積極的に案出してそれによる分析を行う 
 ・記号論理学を用いた論理分析を重視する
 ・前期ウィトゲンシュタイン、カルナップなど
●日常言語学派(オックスフォード学派)
 ・日常言語の実際の使用形態を注意深く記述するという方法によって分析を行う
 ・後期ウィトゲンシュタイン、ライル、オースティンなど 」
http://note.masm.jp/%CA%AC%C0%CF%C5%AF%B3%D8/
 ついでながら、日常言語学派についての日本語ウィキペディアは、「言語」(日本語)になっておらず、読むに堪えない。↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E5%B8%B8%E8%A8%80%E8%AA%9E%E5%AD%A6%E6%B4%BE

 これらの諸見解は、多くの伝統的哲学・・とりわけ、形而上学と倫理学・・を本質的に無意味であるとして拒絶することを伴った。・・・
 種々の諸形態の経験主義(empiricism)と自然主義(naturalism)<(注27)>が<英米では>依然として過半の諸見解だが、いかなる哲学的立場であれ、分析哲学の諸道具を用いることによって、益する形で(profitably)発展させることができる。

 (注27)「<哲学においては、>存在や価値の根本に自然を考える立場の総称。
 一般に,超自然的なもの(理想・規範・超越者など)の独自性を認めず、自然的なもの(物質・感覚・衝動・生命など)を基盤にして物事をとらえる。
 ア 倫理学で,善や規範を超越的な原理からではなく、感覚的経験から導出する説。また、内的あるいは外的自然に即した生活を旨とする主義。
 イ 宗教上では、「神即自然」というスピノザの思想のような汎神論にほぼ同じ。
http://kotobank.jp/word/%E8%87%AA%E7%84%B6%E4%B8%BB%E7%BE%A9
 ポパーも自然主義哲学者の一人。
http://en.wikipedia.org/wiki/Naturalism_(philosophy)

 分析哲学者であるトマス主義者達(Thomists)<(注28)>やヘーゲル学派(Hegelians)<(注29)>がいるし、主要な大陸哲学者達を分析哲学的諸言辞でもって解説したもの(exposition)もいくつもあるくらいだ。

 (注28)「トマス主義(・・・Thomism)は、トマス・アクィナス<(コラム#546、547、552、568、1026、1150、1559、3128、4222、4226、5100、5406、5882、6024、6312、6338、6445、6451、6487、6725)>の思想ないし教説を奉じる学派をいう。
 トマスの直接の弟子には、トマスの思想を真に理解する継承者はおらず、死後わずか3年の1277年にトマスの思想の一部がカンタベリー大司教キルワービーによって公式に異端として非難されるようになった<が、>・・・ドミニコ会は、トマスの教説を修道会の公式教説として擁護し、研究・普及に尽力するようになった。・・・その後、トマス派とヨハネス・ドゥンス・スコトゥス<(コラム#6312、6338、6725、6991)>を奉じるスコトゥス派は対立して長らく論争を繰り広げたが、やがてオッカム<(コラム#552、6338、6723、6725)>派の唯名論が台頭すると、スコラ学は<一旦、>崩壊した。
 16世紀になると、スペインのサラマンカ大学を中心にドミニコ会士のフランシスコ・デ・ビトリアらの研究をきっかけに復興の兆しを見せ、・・・やがてイエズス会士のフランシスコ・スアレスの手によって大きな発展を見て、トマスの学説を中心に総合的に体系化し、神学・哲学・法学にわたって大きな影響を与えた。彼らは「後期スコラ学」あるいはサラマンカ学派と称された。・・・
 デカルト、ロックなどに代表される近代哲学が発展をみると、トミズムはまたもや衰退し、18世紀には急激に衰えた。
 19世紀末になると、新トマス主義と呼ばれる復興運動が起り、近代哲学の成果を取り込みつつも、現代的問題の解決にあたるという研究が始まった。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%9E%E3%82%B9%E4%B8%BB%E7%BE%A9
 (注29)「ヘーゲル学派(・・・Hegelian)とは、狭義には、1830年代を中心に・・・ヘーゲルに直接師事<し、>あるいは多大に影響され、・・・哲学を展開した人々のことである。・・・広義には、ヘーゲル哲学に何らかの形で影響<を受け、>あるいは研究をした人のことで、前述の第一次のグループの他、19世紀後半の第二次、20世紀前半の第三次(新ヘーゲル主義)、そして第二次世界大戦後から現在にいたる第四次のグループである。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%AB%E5%AD%A6%E6%B4%BE
 ちなみに、ヘーゲルの死後、ヘーゲル学派は、同派の神学者 ダーフィト・シュトラウスの言によれば、「福音書の中の全歴史を史実<と>して受け入れるべきであると・・・した・・・<老ヘーゲル派あるいは>右派、部分的には受け入れられるとした・・中央派、まったく受け入れるべきではないとした・・・<青年ヘーゲル派あるいは>左派」に分裂した。・・・青年ヘーゲル派は・・・やがて唯物論的な実践的な立場となり、国家批判への道を進み始めた。・・・青年ヘーゲル派の哲学者として、・・・フォイエルバハ・・・などがいるが、さらにこの青年ヘーゲル学派の影響下にあった人物としてカール・マルクスやキルケゴール、アナキストのバクーニン<(コラム#2264、2267、2270、3280、3682、4242、4471、5374)>、詩人のハイネ<(コラム#3673、4996、5232)>が挙げられる・・・。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%92%E5%B9%B4%E3%83%98%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%AB%E6%B4%BE
 また、「新ヘーゲル主義は、ヘーゲル哲学の全体を再構築することではなく、歴史的世界の総体的な把握という形でヘーゲル<を復興し>たものである。・・・、「復興」であったのはかつての・・・ヘーゲル学派が唯物論的な立場に向かい、観念論哲学が没落したという経緯があるからである。・・・<こ>の運動<は>、ドイツのみならず、イギリス、イタリア、フランスなど諸外国にも波及した」
 新ヘーゲル主義運動のきっかけになった人物にヴィルヘルム・ディルタイ等、新ヘーゲル主義者としては、ドイツのフランツ・ローゼンツヴァイク<(コラム#202、205)>等、イタリアのベネデット・クローチェ<(コラム#1602)>等、フランスのアレクサンドル・コジェーヴ<(コラム#5238)>等、イギリスのトーマス・ヒル・グリーン、ウィリアム・ウォレス、アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド<(コラム#1022、5236)>等がいる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E3%83%98%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%AB%E4%B8%BB%E7%BE%A9
 
(続く)

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