太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/

太田述正コラム#7149(2014.8.30)
<皆さんとディスカッション(続x2370)>

<太田>(ツイッターより)

NATOは露がウクライナの主権を侵害し領土内に軍隊を侵入させたと宣言、ウ首相はNATO加盟のために必要な法的措置をとると言明、NATO事務局長はウ政府の決定を尊重すると発言。
http://www.bbc.com/news/world-europe-28984241
 プーチンの選択肢は大中小の三つだが、東南部だけの小だろなあ。

<JHted2dA>

 【阿比留瑠比の極言御免】防衛庁長官時代から自衛隊を“軽侮”していた加藤紘一氏 MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140829/plc14082912590014-n1.htm
 こういった大臣が来たら、仕える官僚も大変だったろうね。

<太田>

 いやなに、「仕える官僚」の方も大部分は吉田ドクトリン信奉者だから、思いはおんなじ。
 だから、全然大変じゃなかったよ。
 第一、加藤は元官僚だしね。
 気心もしれている。
 一番大変だったのは、久保田某
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%85%E4%BF%9D%E7%94%B0%E5%86%86%E6%AC%A1
とか、答弁能力のない大臣さ。


 それでは、その他の記事の紹介です。

 この未開さ、無知さをいかんせん。↓

 「慰安婦問題で国連委員会「責任者に法の裁きを」・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140829-OYT1T50119.html?from=ytop_main3

 何はともあれお目出度いことで・・。↓

 「宮崎駿監督「光栄です」日本人24年ぶり米アカデミー名誉賞!・・・」
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20140829-OHT1T50382.html?from=ytop_ymag

 それにしても、お嬢は不思議な人だ。↓

 「小保方氏 STAP研究費で理研と“銭闘”・・・」
http://news.livedoor.com/article/detail/9195807/

 自由市場改革、ソフト・ナショナリズム、アジア主義が安部首相とインドのモディ首相を結び付けているとさ。
 (アジア主義の中身をもっと追求しな!(太田))↓

 Why Japan's Abe and India's Modi are Asia's new best friends・・・
 Abe and Modi share political values ¬– free-market reforms, soft nationalism, and Asianism,・・・
http://www.csmonitor.com/World/Asia-Pacific/2014/0829/Why-Japan-s-Abe-and-India-s-Modi-are-Asia-s-new-best-friends-video

 慈悲深いプーチン大統領が、取り囲まれたウクライナ軍部隊を逃がしてやるように「叛徒」達にご託宣。↓

 ・・・Mr. Putin asked the fighters of Novorossiya to open a humanitarian corridor to allow a large grouping of Ukrainian soldiers trapped behind the lines of the new advance to retreat to the west・・・
http://www.nytimes.com/2014/08/30/world/europe/ukraine-conflict.html?hp&action=click&pgtype=Homepage&version=LedeSumLargeMedia&module=a-lede-package-region®ion=top-news&WT.nav=top-news&_r=0 

 対ロシアを念頭に、編成しつつあった英仏連合即応部隊を中核に、これに更に6か国の兵員を加えたNATO即応部隊が創設されることになった。↓

 Britain and six other states are to create a new joint expeditionary force of at least 10,000 personnel to bolster Nato’s power in response to Russian aggression in Ukraine. ・・・
  The model for the new JEF will be Britain’s expeditionary force with France, which has been years in the making and is due to be fully operational by 2016.・・・
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/5335d904-2f98-11e4-87d9-00144feabdc0.html?siteedition=intl#axzz3BpHVvImi

 黒人青年射殺事件は、黒人の白人に対する怒りではなく白人の黒人の「進歩」に対する怒りを浮き彫りにした、と指摘するコラムだ。↓

 Ferguson isn’t about black rage against cops. It’s white rage against progress.・・・
 <今回のは、オバマの大統領当選、再選に対する恐怖と怒りだと。↓>
  Obama’s election and reelection have unleashed yet another wave of fear and anger.・・・
 <事実上、黒人の多数を排除することとなるところの、写真付身分証明書提示を投票の条件とする動きが広まっており、最高裁もそれを認めた。
 Now, under the guise of protecting the sanctity of the ballot box, conservatives have devised measures — such as photo ID requirements — to block African Americans’ access to the polls. A joint report by the NAACP Legal Defense and Educational Fund and the NAACP emphasized that the ID requirements would adversely affect more than 6 million African American voters. (Twenty-five percent of black Americans lack a government-issued photo ID, the report noted, compared with only 8 percent of white Americans.) The Supreme Court sanctioned this discrimination in Shelby County v. Holder , which gutted the Voting Rights Act and opened the door to 21st-century versions of 19th-century literacy tests and poll taxes.・・・
 <現在の不況の前の黒人の資産は白人の4分の1、現在は6分の1。↓>
 Right before the recession, white Americans had four times more wealth than black Americans, on average; by 2010, the gap had increased to six times. This was a targeted hit. ・・・
 <茶会の大きな政府に対する攻撃は、黒人を平等に公務員に登用している現状に対する不満が背景にある。>
 Add to this the tea party movement’s assault on so-called Big Government, which despite the sanitized language of fiscal responsibility constitutes an attack on African American jobs. Public-sector employment, where there is less discrimination in hiring and pay, has traditionally been an important venue for creating a black middle class.・・・
http://www.washingtonpost.com/opinions/ferguson-wasnt-black-rage-against-copsit-was-white-rage-against-progress/2014/08/29/3055e3f4-2d75-11e4-bb9b-997ae96fad33_story.html?hpid=z3

 バートランド・ラッセルは、歴史上のあらゆる主要な知的前進はアリストテレスを認めるか論駁するでなされてきたと喝破したところ、ついにしゃぶりつくされたか、最近では言及する人が殆どいなくなったが、彼を改めて振り返った本についての書評だ。↓

・・・Only a minority of his 200-odd treatises survived, yet they made Aristotle the giant whom everyone had to acknowledge or battle against. Bertrand Russell observed that almost every major intellectual advance in history had begun with an attack on some Aristotelian doctrine. Aristotle seemed big enough to absorb it all but perhaps now he really is exhausted at last. Few still read him at length, and scientists are unlikely to cite him. Famous though his name is, he is no longer a living presence. ・・・
 <彼は、先験的真実を強調したプラトンを批判し、観察を重視したとさ。↓>
 Aristotle’s great innovation was his initial leap away from his teacher Plato, who thought natural observations were the very things we must ignore if we want to know transcendental truth. Aristotle rejected that. He started with phainomena or appearances, which he amassed in quantity and then sorted into whatever order looked meaningful. Out of these orderings came speculations about cause and purpose. ・・・
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/08edd00a-2d08-11e4-8105-00144feabdc0.html?siteedition=intl#axzz3BpHVvImi

 (後は、明日に回したい。)
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           第3回 アメリカって何だろう

★前置き

 米国の政治学者の故ハンティントン・ハーヴァード大教授は、その『文明の衝突』(1996年)の中で、日本文明の存在を所与のものとした。
 しかし、遺憾ながら、日本文明が中心的テーマにはなっていない。
 いずれにせよ、世界史や国際情勢を理解するためには、文明論的アプローチが不可欠。
 国際情勢については言えば、イスラム世界、とりわけ中東イスラム世界の惨状、ウクライナの悲劇的現況、英国のEUからの離脱問題、スコットランドの英国からの分離問題等、あらゆる問題がそうだ。
 これまで、日本文明、アングロサクソン文明、欧州文明について説明をしてきたが、本日はアメリカ「文明」について説明したい。
 ところで、先回りして申し上げておくが、アメリカ「文明」の話が奴隷問題、ないしは、人種主義の問題に偏り過ぎている、と思われるかもしれない。
 しかし、奴隷の問題が当該社会の文明の在り方を規定する、というのは何もアメリカに限ったことではない。
 ロシアもアフリカ(但し、サハラ以南)もそうなのだ。
 ロシアについては次回触れるが、アフリカについて言えば、欧米の近代の黒人奴隷制が西アフリカを中心に残した爪痕は深刻なものだ。
 アフリカの人口は、世界に占めるアフリカの人口という相対的な意味では、いまだに当時の水準を回復していない
http://en.wikipedia.org/wiki/Atlantic_slave_trade
し、奴隷狩りの対象となった側と奴隷狩りをした側の間に生じた反目は、全般的な信頼関係の欠如となって現在にまで尾を引いている、と私は考えている。

★IIIの補足

 その前に、前回の補足をしておこう。

 ・集団的自衛権の閣議決定について
 表の見方。

 ・啓蒙主義について
 イギリスには啓蒙主義はなかった。啓蒙主義があったのは、欧州(含むスコットランド)においてのみ。
 というのも、啓蒙主義なるものは、アングロサクソン文明継受の試みだからだ。

 ・イギリスの議会主権について
 戦士・戦費の提供者である、財産所有者たる男性に投票権。
 三権分立なし。(二権分立になったのは2009年!
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E6%9C%80%E9%AB%98%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%89%80 )

IV アメリカ

 1 20世紀における最悪の蛮行国

 日中戦争も太平洋戦争も日本は横井小楠コンセンサスに基づき、ロシア(ソ連)抑止のために戦った。
 その日本を敗北させたことで、20世紀において、最も大勢の人々を直接的間接的に殺害したのは、毛沢東の中国でもヒットラーのドイツでもスターリンのソ連でもなく、ルーズベルトのアメリカ、ということになった。(スライド参照)
 すなわち、太平洋戦争は、アメリカにとって、最も醜悪な戦争だったということ。

 「<日中>戦争/太平洋戦争は、全球的覇権国化という妄想的な目的を抱いた米国が、ローズベルトを首魁として米国の指導者間で共同謀議を行いつつ、発動し、戦争犯罪を繰り返しながら遂行することによって、その目的を達成したところの、米国が率いる、キリスト教的(双極性障害的・産業)文明と日本本土が率いる人間主義的(尋常的・プレ/ポスト産業)文明との間の、空前絶後の規模で闘われた、文明の衝突たる戦争であった」(コラム6403)(この話は、最終回に再度取り上げる。)

 2 その背景としての本来的人種主義性

●赤色人種迫害

「推定1000万人いたインディアンは白人の直接・間接虐殺により実に95%が死に絶えた。・・・
インディアンはアメリカ政府との間で、一方的な条約に署名させられ、さらに政府側が一方的にそれを破ることの繰り返しとなる。・・・
<コラム#7006
http://www.slate.com/blogs/the_vault/2014/06/17/interactive_map_loss_of_indian_land.html >
1881年、アメリカ連邦議会はインディアンのあらゆる宗教儀式を非合法化した。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%B3

●黒色人種虐待

「1860年のアメリカ合衆国の国勢調査では、奴隷人口は400万人に達していた。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB%E7%B3%BB%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%BA%E5%85%AC%E6%B0%91%E6%A8%A9%E9%81%8B%E5%8B%95
「黒人の95%は南部に住んでおり、南部の人口に対しては3分の1に達していた。これに対して北部における黒人の人口比率は1%に過ぎなかった。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E3%81%AE%E5%A5%B4%E9%9A%B7%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2
「ジム・クロウ法(・・・Jim Crow law)は、1876年から1964年にかけて存在したアメリカ・・・南部の<黒人等差別>州法。」(インディアンも対象)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%A6%E6%B3%95

(参考:ジェノサイドとしてのアメリカ等の奴隷制)

 「少なくとも1200万人の奴隷がアフリカを15から19世紀の間に出発したが、船上でその10〜20%が死亡した・・・
 <なお、>奴隷を実際に調達する際に失われた人命は、定かではないが、実際に奴隷にされた人数に匹敵するかそれを上回る可能性がある。・・・
 <それは>1000万人<とも言われている>。
 <ある歴史家は、>「…この推定1000万人の黒人の死者のうち、恐らく600万人が、南北アメリカに輸送するための奴隷を確保することを狙いとするアフリカの部族戦争や徒党による襲撃に際して他の黒人達によって殺害された。」(コラム#5122)

●褐色人種差別

「米国人達は、メキシコ人達は混血種であって、「低脳で臆病な人種」であるとして、解放奴隷やインディアンよりも蔑んだ」(コラム#2937)

●黄色人種差別

「建設労働者の標準的な日当は3ドルであったが、中国人移民の日当はずっと安く抑えられた。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%99%B8%E6%A8%AA%E6%96%AD%E9%89%84%E9%81%93
「第二次世界大戦が勃発すると、日系人は敵性民族として強制収容所に送られその私的財産が没収された(⇒日系人の強制収容)。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E3%81%AE%E4%BA%BA%E7%A8%AE%E5%B7%AE%E5%88%A5#.E3.82.A2.E3.83.95.E3.83.AA.E3.82.AB.E7.B3.BB.E4.BD.8F.E6.B0.91.E3.81.AB.E5.AF.BE.E3.81.99.E3.82.8B.E5.B7.AE.E5.88.A5

3 それまでにも大義なき戦争ばかり繰り返してきたアメリカ

・独立戦争(1775〜83年):後述

・米英戦争(1812〜14年)

 「アメリカ国内において、入植白人はインディアンの土地を狙っていたが、激しく抵抗するインディアンたちの背後でイギリスが扇動していると考えていた。そのため反英感情が高まっており、根本的解決のためにはイギリスと戦争するしかないと考えられた。この戦争においてインディアン達はアメリカ人の侵略活動による西進を防ぐ為、イギリスと手を組んだ。
 <また、>ナポレオン戦争に関わっていたイギリスには新大陸に戦力を向ける余裕が無く、アメリカはその隙を狙っていわば火事場泥棒的にカナダをイギリスから奪おうとした。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B1%B3%E8%8B%B1%E6%88%A6%E4%BA%89

・米墨戦争(1846〜48年)

 「スペイン帝国の女性は、<当時のアメリカとは違って、>夫の保護下にある妻の地位(coverture)・・最初は父親、次いで夫の法人格に隷属する・・にはなかった。
 独立後の米国では、結婚した女性は財産を所有できず、地方政治に参加できず、陪審員になれず、遺言を書けず、契約に署名できず、自分の子供達に対する親権も行使できなかった。
 スペインの制度では、これとは対照的に、女性は名前、財産、法人格を保持していた。
 彼女達は、同等の地位の男性達と平等ではなかったことは確かだが、アングロ・アメリカ社会では与えられていなかった法的諸権利を保持していたのだ。
 スペインの植民地であったルイジアナとフロリダでは、奴隷達も若干の権利と機会を有しており、後に米国領となるとそれらを失った。
 主人によって(「通常」認められる暴力を超える)ひどい扱いを受けたと感じた奴隷達は、地域の軍司令官に訴え出る権利を有しており、彼等は時には勝利した。
 また、奴隷達は、戦争に関わると自由を得ることができた。だから、数百人の奴隷達が兵士、伝令、スパイ、労働者として戦争に関わった。
 米独立革命の後は、訴え出ると勝利することがより容易になり、スペイン領内の1,000人以上の奴隷達が自らを買い受け、あるいは家族や友人によってカネを支払われ、自由を得た。」(コラム#3375)

 (その前史)テキサス独立・併合(1835〜36年・1845年)

 「米国人を相手の好意につけ込んでその領内に入植させ、次いでその地域の割譲を求め、容れられないと阿吽の呼吸で入植者達に叛乱を起こさせ、独立させた上で、最終的にその地域を併合した・・・。しかも、入植者達の叛乱の主要な理由の一つがメキシコでの<1824年の>奴隷制廃止だった」(コラム#1759)

(参考)リメンバー・アラモ(1836年)→リメンバー・メイン(1899年)→リメンバー・パールハーバー(1941年。チャーチル、フライングタイガース、経済制裁)

 「アメリカはこの地域での英国の野心を断ち切るために、太平洋岸のカリフォルニアに自国の港を持ちたかった。・・・テキサスを併合したアメリカは、メキシコとの国境をリオグランデ川 (Rio Grande) 以北としていた。一方メキシコは同様にリオグランデ川の北側を流れるヌエセス川 (Nueses River) 以南としており、両国の主張には相違があった。時のアメリカ大統領ジェームズ・ポークは、アメリカの主張するテキサス州の土地を確保するよう軍に命じた。これを受け<て米軍>・・・は、ヌエセス川を南に超えて、メキシコの非難にも関わらずブラウン砦 (Fort Brown) を築いた。1846年4月24日にメキシコの騎兵隊がアメリカの分遣隊を捕らえたことから戦闘状態となった。…<敗れた>メキシコは国土の 1/3 を失った。・・・アメリカは・・・18,250,000ドル(現金15,000,000ドルと債務放棄3,250,000ドル)を支払った。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B1%B3%E5%A2%A8%E6%88%A6%E4%BA%89

・南北戦争(1861〜65年)
 
 反奴隷制の北部と奴隷制の南部の対立?
 むしろ、新領土における南部の奴隷所有者たる大土地所有者達による農地適地買占めによって自分達が農地を確保できなくなることへの北部の危惧。
 保護貿易の北部対自由貿易の南部の対立
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E5%8C%97%E6%88%A6%E4%BA%89
http://en.wikipedia.org/wiki/American_Civil_War

・米西戦争(1898年)

 「<キューバは独立戦争のさなかだったが、>アメリカ海軍は開戦の1年以上前にフィリピンでスペイン軍を攻撃するための計画を作成していた。西部への拡張およびアメリカインディアンとの大規模交戦の終了はアメリカ陸軍の任務を減少させ、軍の指導陣は新しい任務を望んだ。早期からアメリカ人の多数はキューバが彼らのものであると考えており、・・・何人かの財界人は、開戦を同様に要求した。・・・
 1898年2月15日にハバナ湾でアメリカ海軍の戦艦メイン(USS Maine・・・)が爆発、沈没し266名の乗員を失う事故が発生した・・・。・・・爆発原因<は>・・・燃料の石炭の偶然の爆発によるものとするのが一般的であ<る。>・・・ウィリアム・マッキンリー大統領は開戦に同意せず世論に対して長い間持ちこたえた<が、結局、>・・キューバの自由と独立を求<めてスペインと戦争状態に入った。>・・・
 <他方、スペイン領>フィリピン独立運動の指導者エミリオ・アギナルド率いるフィリピンの民族主義者はアメリカ軍の支援と相互連携してスペイン軍を攻撃し、・・・1898年6月にはルソン島中部を制圧し、アギナルドはフィリピン共和国の独立を宣言し<たが、米国はこれを認めず、フィリピンを植民地化した。>・・・
 アメリカはフィリピン、グアムおよびプエルトリコを含むスペイン植民地のほとんどすべてを獲得しキューバを保護国として事実上の支配下に置いた。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B1%B3%E8%A5%BF%E6%88%A6%E4%BA%89

 なお、「19世紀から20世紀の変わり目に、米国が領土拡大を止め、その代わり軍事基地を海外に展開する形の帝国主義へと変貌したように見えるのは、単に、それ以上領土拡大すると有色人種を抱え込みすぎるようになる、と判断したからに他なりません。」(コラム#3110)

・第一次世界大戦への参戦(1917〜18年)

 「1917年の初めに・・・ツィンメルマン電報事件が発覚したことで、ドイツに対する世論の怒りが湧き上がり・・・、1917年4月・・・にアメリカはドイツへ宣戦布告した。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E6%AC%A1%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%A4%A7%E6%88%A6
 「ツィンメルマン電報・・・は第一次世界大戦中にドイツ<外相の>・・・ツィンメルマンによって1917年1月16日にメキシコ政府に急送された電報。・・・<その内容は、>もしアメリカ合衆国が参戦するならば、ドイツはメキシコと同盟を結ぶという提案だった。さらに、アメリカへのメキシコの先制攻撃はドイツが援助し、大戦でドイツが勝利した場合には米墨戦争によってアメリカに奪われたテキサス州、ニューメキシコ州、アリゾナ州をメキシコに返還するというものであった。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%84%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%A1%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%B3%E9%9B%BB%E5%A0%B1

4 失敗国家アメリカ

 (1)アメリカとカナダの現状

 アメリカは、カナダ(≒イギリス)と比較して失敗国家そのもの。(スライド参照)
 なお、イギリスが奴隷貿易を禁止したのは1807年、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%B4%E9%9A%B7%E8%B2%BF%E6%98%93
「(英領)カナダが黒人奴隷制を廃止したのは1834年」(コラム#4189)。アメリカは1861年、但し、その時点では部分的廃止にとどまる。しかも、その後も法的な黒人差別を1960年代まで続ける。

 (2)失敗国家アメリカの原点

・英領北米植民地人が独立革命を起こした低劣な理由(コラム#7055〜)

国税免除特権剥奪反対(「思いやり」反対)
 フレンチ・インディアン戦争(7年戦争)勝利で脅威減少
 代表なきところに課税なし・・ウソ
奴隷制廃止警戒
インディアン迫害禁止措置反対

・その結果生まれた悪しきアメリカ憲法

反民主主義性:法律よりも改正の困難な憲法、大統領選挙人制度、三権分立、連邦制、女性・黒人参政権なし。(コラム#304)
反動性:議会主権(権威と権力の分離)から大統領制(権威と権力の一致)へ(コラ
ム#2473)

 なお、男性普通選挙権については、「奴隷制の下で労働者階級が合法的に無権利状態に置かれていたからこそ、英本国のように労働者階級による支配を恐れることなく、米国は民主主義的立憲主義の追求ができた」(コラム#225)ということ。

 (3)アメリカが輩出した醜悪な著名大統領達

 ワシントン、ジェファーソン、リンカーン、ウィルソン、ルーズベルトの醜悪さ。(スライド参照)
 どうして彼らの醜悪な面だけに着目するのか?
 アメリカの良い面はアングロサクソン(イギリス/英国/拡大英国)の良い面に過ぎない。
 (ただし、アングロサクソンの良い面すら日本の良い面には劣ることに注意。)
 だから、アメリカをアングロサクソンの劣等生(できそこないのアングロサクソン)にしたもの、アメリカを失敗国家にしたものだけに着目すれば足りるということ。
 それを体現しているのがワシントンらの醜悪さ。

 5 日本はそんなおぞましいアメリカの属国

 「日本は文字通りの米国の属国(保護国)なのです。
 英語版のウィキペディア<(2007.6.20当時のもの)>・・・は、「保護国(protectorate)とは、主権国家<等の>・・政治的存在(political entity)が、宗主国(protector)と称されるより強い国家と公式に条約によって不平等な関係を取り結び、この宗主国が外交的にあるいは必要に応じ軍事的に、この政治的存在を第三国等から守ることを約束し、その見返りとして、この政治的存在が宗主国に対し、両国の関係の実態に応じ大いに異なるところの、特定の諸義務を通常負うものを指す」としており、この保護国を日本、宗主国を米国、条約を日米安保条約と読み替えれば、ぴったりあてはまることがお分かりいただけると思います。
 米国の保護国日本が、宗主国にいかに「搾取」されているか挙げてみましょう。
 まず、日本の首都圏は、米国の他の同盟国では考えられないことですが、米軍の基地だらけです。しかも、首都圏の空域の航空管制権は米軍がほぼ全面的に握っています。
 <ちなみに、>米国の同盟国であるドイツの首都ベルリン圏にも、同じく同盟国である英国の首都ロンドン圏にも米軍基地は<ありません>。あの38度線近くの韓国の首都ソウルからさえ、米軍の移転が決まってい<ます。>・・・
 ところが、日本の首都圏には、東京の通勤圏内に在日米軍司令部、陸軍司令部、海軍司令部(原子力空母母港)、及び空軍司令部等の米軍基地があ<ります。>・・・
 <すなわち>、日本は米国の保護国どころか、終戦当時から引き続き米国の占領下にあると<さえ>言える<かもしれません>。
 次に、やはり米国の他の同盟国ではまず見られないことですが、日本は在日米軍駐留経費を(半分も)負担させられています。米軍基地の土地借料分を計算に入れると、日本は米軍の駐留経費の実に8割を負担している勘定になるのです。
 しかも日本は、米軍基地の正規の日本人労働者のほか、米軍基地内の独立採算制のハンバーガー店等の日本人労働者の給料まで負担しています。
 その結果、米軍は減っているのに基地労働者はどんどん増えている、という笑い話のようなことが生じています。」(コラム#1823)

その帰結:長崎の原爆慰霊祭式辞と朝日の慰安婦報道訂正。
 前者では、市長や被爆者代表が集団的自衛権の行使に批判的発言を行い、後者では、自分の記事の本質的な正しさを主張する朝日が総スカンを食っている。
 前者は、平和志向の縄文性が原爆投下等の戦争犯罪を犯したアメリカが押し付けた戦争放棄を墨守させているということだし、後者は、芸者・郭文化称揚の縄文性が国連(クマワスラミ報告書)/韓国/アメリカ/朝日の慰安婦問題の捉え方、遡れば、やはりアメリカが押し付けた性意識/売春・売春宿禁止に強い違和感を覚えさせているということ。
 (日本は、かつて、性を謳歌(国産み)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E7%94%A3%E3%81%BF
する、一夫一婦制の観念が希薄な
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%9C%E9%80%99%E3%81%84
女性優位(お「カミ」さん)
http://zokugo-dict.com/06ka/kamisan.htm
の妻問婚
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A6%BB%E5%95%8F%E5%A9%9A
・・いわば女性は総売春婦・・社会だった。源氏物語の世界を思い起こせ。(「契る」が「セックス」と「結婚」の両義性を有する
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/141381/m0u/
ことも。)これが、第一次弥生モードの時代に「崩れ」てからも、農村では夜這い文化
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%9C%E9%80%99%E3%81%84 上掲
が続いたし、郭の高級娼婦はスター扱いだったし、彼女達と床入りするにあたっては婚姻的儀式を経なければならなかったし、浮世絵は春画抜きでは語れないし、現在でも、例えば、AV女優業は、米国等におけるそれとは違って、賤業ではない。
 このように、日本人の性意識は、一貫して基本的に維持されてきているのだ。
 だから、売春婦たる慰安婦は賤業に就いていたわけではなく、事実上国営(軍営)の売春宿たる慰安所を設置・運営したことは、(強姦防止目的も含め、)極めて適切なことだった。
 ところが、キリスト教では、本来、男性優位(女性差別)の下での離婚を禁ずる一夫一婦制が鉄則。よって、キリスト教社会では、現在でも、快楽としての性も、婚姻外での性の売買を行う売春も、売春宿も悪、という観念が残っている。
 現に、米国の大部分の州では、売春も売春宿も違法、英国でも売春こそ合法だが売春宿は違法。売春宿は必然的に人身売買を生起させるという発想。
 この二つの文明・・進んだ文明と遅れた文明・・の衝突であることから、話は全く噛み合わないわけ。
 日本政府は、民間人の発意の形を取って、対外的に、このような日本の売春・売春宿観を粘り強く説明して行く必要がある。) 

(注)誰が日本をアメリカの属国にしたのか?・・最終回のセミナーで説明。

 6 アメリカ「文明」の起源

 アングロサクソン文明と欧州文明のキメラとしてのアメリカ「文明」、(スライド参照)

(参考1:キリスト教は奴隷制を容認)

 「キリスト教の聖書には、新約聖書も含め、奴隷制を批判する記述は皆無です。
 ・・・あの有名な聖アウグスティヌス(Augustine of Hippo。354〜430年)のように、奴隷制を認めるどころか、奴隷制に聖なるお墨つきまで与えた聖職者が少なくありません。・・・
 キリスト教会は、奴隷の避難所に任ずるどころか、自ら奴隷を保有していました。
 欧州における奴隷制は、12世紀前後に経済的理由から、農奴制(serfdom)に転換して行く形でほぼ自然消滅する・・・のですが、教会だけは奴隷の保有を続け、フランス革命直前の時点でフランスだけで、教会は5万から6万人の奴隷を保有していました。・・・
 キリスト教(カトリック)原理主義のスペインは、15世紀末の新大陸発見以前からアフリカの非キリスト教を奴隷にしてきており、この習慣をそのまま新大陸に持ち込みます。
 このようなスペインや、これに続いたフランスによる新大陸での奴隷制を横目で見て、アンチ・キリスト教的であったイギリスも、躊躇しつつも自らの北米植民地において奴隷制を認めるとともに奴隷貿易に乗り出して行くことになるのです。」(コラム#1761)

(参考2:欧州文明の人種主義性)

 「カントは、白人は完全への進歩に必要な全ての属性を持っていると判断したが、アフリカ人は奴隷たるべく定められているとし、・・・「アフリカのネグロはつまらぬことに拘泥し、それを超えようとする感覚を生来持ちあわせていない」とした。・・・
 人種的偏見は大昔からのものかもしれないが、人種主義は啓蒙主義が生み出したものなのだ」(コラム#3702)
 「カントは、ユダヤ人は、存続する権利などなく、安楽死させられるべきだと主張した。」(コラム#6031)

・アメリカ人:敬虔なキリスト教徒、裸の個人主義者、妄想的、ギャンブラー、暴力・戦争志向、人種主義者、生来的外国音痴

(注)アメリカのリベラルキリスト教と原理主義的キリスト教については、(「敬虔なキリスト教徒」が「妄想的」となることの説明を含め、)次回のセミナーで改めて説明。
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 一人題名のない音楽会です。
 ボリス・シュトコロフ(Boris Shtokolov)(注)の歌唱をシリーズでお送りします。

(注)1930〜2005年。現在のエカテリンブルグ生まれのロシアのバス歌手。ウラル国立音楽学校に入るも一旦軍のパイロットを志願、結局歌手になる。
http://en.wikipedia.org/wiki/Boris_Shtokolov

 --ロシア民謡--

Tol'ko raz (Only Once) (P. Gherman) (コラム#3981(シュトコロフ))
https://www.youtube.com/watch?v=dV_ihMddwIQ

Letter to Mother Esenin(注)原詩 作曲者がお分かりの方はご教示願いたい。
https://www.youtube.com/watch?v=-EX7gd184n8
 Alexander Menshikov歌唱でもどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=yjJBJWhIWfs
 素人の弾き語りだが素晴らしい。原詩の英訳が載っている。
https://www.youtube.com/watch?v=Q10D9iCMxGI

(注)セルゲイ・エセーニン(Sergei Alexandrovich Yesenin。1895〜1925年)。「20世紀のロシアで最も人気があり有名な詩人である。・・・学外生としてモスクワ大学に入学し、1年半学んだ。・・・革命はより良い生活をもたらすと信じられ、エセーニンもしばらくはそれを支持したが、すぐに幻滅し、・・・詩の中でしばしばボリシェビキの支配を批判している。・・・盛大な国葬が行われたにもかかわらず、彼の著作のほとんどはヨシフ・スターリンとニキータ・フルシチョフの政権下でクレムリンにより禁書とされた。ニコライ・ブハーリンによるエセーニンの批判がこの決定に大きな影響を及ぼした。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%82%B2%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3

Alone I pass a lonely road(I Walk Out Alone Upon My Way)(コラム#6143)
https://www.youtube.com/watch?v=Id3rKjgpkrc

Vecherniy zvon (Those Evening Bells) (注)
https://www.youtube.com/watch?v=43EWbWDxA5Q

(注)アイルランド人Thomas Moore(1779〜1852年)
http://en.wikipedia.org/wiki/Thomas_Moore
のロシアを題材にした原詩を1828年にIvan Kozlovが露語に意訳し、それに更にAlexander Alyabyevが曲を付けたもの。Kozlovの意訳詩の再英訳も載っている。
http://en.wikipedia.org/wiki/Evening_Bell_(song)

黒い瞳(DARK EYES)(コラム#3841,3985、5739、6095)
https://www.youtube.com/watch?v=keSKEiUswOU

The Misty Morning(コラム#6075)
https://www.youtube.com/watch?v=s2eFN6mRyDk

Ya vas liubil (I Loved You)  原詩プーシキン 作曲B.Sheremetev
https://www.youtube.com/watch?v=Okcr7gcCM9o ←原詩の英訳も載っている。

Oh, Anastasia!(注)
https://www.youtube.com/watch?v=xhigorPxiOQ

(注)歌詞の英訳が載っている。
http://lyricstranslate.com/en/eh-nastasia-ekh-nastasya-eh-nastasya.html

(続く)
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太田述正コラム#7150(2014.8.30)
<現代哲学におけるアングロサクソンと欧州(その4)>

→非公開

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