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太田述正コラム#6805(2014.3.10)
<江戸時代における外国人の日本論(その15)>(2014.6.25公開)

 (4)最近における外国人の日本評

 まず、サティアブラタ・パル(Satyabrata Pal。1949年〜)です。
 彼は、1972年、インド外務省入省、駐ボツワナ、南ア、パキスタン高等弁務官(=大使)を歴任した後、2009年退官、
http://www.hindu.com/2009/03/03/stories/2009030360161200.htm
そして、あのラダビノード・パル(Radhabinod Pal)判事の孫<(注11)、という人物です。

 (注11)パル博士の息子のプラシャント・パル(Prashanto Pal)
http://www.afpbb.com/articles/-/2271294?pid=2039460
の息子であると考えられる。

 以下は、「孫が明かす東京裁判パール判事の気概」(「正論」2006年12月号)からです。
 ちなみに、パルは、当時、駐南ア高等弁務官でした。

 「人間は西欧文明の中心でもあるが、西欧キリスト教社会においては、世界は神から与えられたもので、従って都合よく利用すべきものである。日本では、地域社会は幾世代にもわたって根気強く形作られ、それを理解し、守るべき義務とともに、先祖から伝えられた遺産なのである。日本が何故アジアの国で最初に西欧の産業文化を取り入れたかを知るのは容易であるが、第二次世界大戦までは、アジアの静寂主義と西欧の物質主義の間でサムライの刀の刃の上を歩いていた。ダドゥ<(アダビノード・パル)>はこの見事なバランスに惹きつけられ、且つ魅せられたのである。」

→近現代のインドも支那も、「静寂主義」とは基本的に無縁ですし、そもそも、「アジア」と「西欧」といった雑駁な2分法はナンセンスなわけですが、彼のお爺さんが、そしてパル自身も恐らくは、日本の二元性・・私の言葉に置き換えれば、縄文モードと弥生モードの二元性・・に気付いていたようですね。
 このことに気付いた外国人も、意外に少ないのではないでしょうか。(太田)

 次に、リシャール・コラス(Richard Collasse。1953年〜)です。

 彼は、「フランス出身の小説家。・・・1972年、自身が18歳のときに・・・初来日。・・・1975年にパリ大学東洋語学部を卒業。同年より2年間、在日フランス大使館に勤務する。1979年、ジバンシィ入社。1981年のジバンシイ日本法人会社<に>・・・4年間代表取締役として勤めた。1985年、シャネル株式会社<[日本法人]>に香水化粧品本部の本部長として入社する。1995年には、シャネル株式会社代表取締役社長に就任した。・・・日本に暮らし始めて約40年・・・妻は日本人である」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%82%B9
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%8D%E3%83%AB ([]内)

 以下は、「ゴーン夫人とシャネル社長 ゴーン家の「夫操縦法」教えます」(「文藝春秋」2006年9月号)中のコラスの発言からです。

 「<1971年>頃の日本人は、英語は話せなくても心をこめて迎えてくれました。僕はあのとき、自分が“ガイジン”だという思いをした記憶がまったくない。出会う人、出会う人がみんな親切で『泊まる場所が決まってないなら、うちにおいで』『どこかに連れていってやろう』と言ってくれる。四十日間の旅で、ひと晩ユースホステルに泊まった以外は全部、日本の民家に泊めていただきました。夜行バスの後ろの席に座っていた青年に誘われて、彼の故郷の瀬戸内で盆踊りしたこともあった・・・
 日本人の深い理解力、洞察力は、世界中を見渡してもほかにない美点ですよね。・・・日本の大工さんというのは職人であるとともにアーティストなんです。木材を選ぶのにも『この樹齢七百年の木の声を聴くんですよ』とおっしゃる。私は彼と話すたびに、その森羅万象に耳をすまし、理解しようとする態度に、日本文化の厚みを感じるんです。この深い理解力は、日本企業のビジネスマンの中にも生きているのではないでしょうか」

→まさに、現代の日本人も、基本的に相変わることなく(対人、対自然両面において)人間主義者達であることが、観察力のある外国人の証言で裏付けられたと思います。(太田)

(完)

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