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太田述正コラム#6549(2013.11.2)
<映画評論40:インサイド・ジョブ(その1)>(2014.2.17公開)

1 始めに

 半年以上映画評論コラムを書いていなかったこともあり、本日のディスカッションで言及した映画、『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実』(原題: Inside Job)を急遽取り上げることにしました。
 制作(2人のうち1人)・監督はチャールズ・ファーガソン(Charles H. Ferguson)です。
 2010年にアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した(A)ことを含め、この映画の存在が今まで私のレーダーにひっかからなかったことは面目ないことである、と思っています。
 
A:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%96_%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%B8%8D%E6%B3%81%E3%81%AE%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%96%E3%82%8B%E7%9C%9F%E5%AE%9F
B:http://en.wikipedia.org/wiki/Inside_Job_(film)
C:http://online.wsj.com/news/articles/SB10001424052970203436904577148940410667970
D:http://movies.nytimes.com/2010/10/08/movies/08inside.html?_r=1&pagewanted=allEhttp://www.vulture.com/2010/05/is_matt_damons_narration_of_a.html?imw=Y&f=most-viewed-24h10
F:http://www.theguardian.com/film/2011/feb/17/inside-job-review
G:http://spectator.org/archives/2010/11/03/inside-job

 ちなみに、ファーガソン(1955年〜)は、サンフランシスコ生まれで、カリフォルニア大バークレー校卒(数学)、MIT博士(政治学)で、映画制作会社経営者、ソフトウェア事業家、著述家、テクノロジー政策専門家、という人物です。
http://en.wikipedia.org/wiki/Charles_H._Ferguson

2 総論

 「<リーマン・ショックを始めとする世界金融危機>はどのように起きたのだろうか?
 ファーガソン氏は、陰謀論者ではない。
 彼は、構造的ないしシステム的諸説明をやろうともしていない。
 <というのも、>諸市場は、地殻変動するプレートのように、自分自身で変化するわけではない<からだ>。
 <すなわち、>見える手(Visible hands)が諸法を立案し取引をするわけであり、本件の場合、歪められた(warped)諸価値と集団思考(groupthink)の組み合わせが、極めて知的能力の高い人々・・しかもその大部分は男性・・を愚行へ駆り立てたように見える。」(D)

3 責任者達

 (1)金融行政

 「1980年代において、諸市場と金融諸サービスが規制緩和(deregulate)されたが、この自由化の中心となったのはアラン・グリーンスパン(Alan Greenspan)<(コラム#1145、2069、2559、3703、3955、4807、6117、6526)>だった。
 彼は、1987年から2006年にかけて、米連邦準備制度理事会の恐るべき議長を務めた。
 <規制緩和の結果、>諸銀行と融資諸企業は自分達の預金者達のお金をより自由に投機に使うことができるようになったし、借金をするのもより自由になったし、涎の出そうな高利回りを提供する、いわゆる「サブプライム」<(注1)>市場が高リスク借金者達に提供された高利の住宅融資等の、異なった<種類の>諸債務が束ねられたものから生じる所得の流れを伴うところの、くらっとするくらい複雑な金融諸手段(instruments)を提供するのも自由になった。」(F)

 (注1)「主に<米>国において貸し付けられるローンのうち、サブプライム層(優良客(プライム層)よりも下位の層)向けとして位置付けられるローン商品をいう。通常の・・・ローンの審査には通らないような信用度の低い人向けのローンである。狭義には、住宅を担保とする住宅ローンを対象とするが、広義には、自動車担保など住宅以外を担保とするものを含む。一般的に他のローンと比べて債務履行の信頼度が低く、利率が高く設定される。これらのローン債権は証券化され、世界各国の投資家へ販売されたが、米国において2001〜2006年ごろまで続いた住宅価格の上昇を背景に、格付け企業がこれらの証券に高い評価を与えていた。また、この証券は他の金融商品などと組み合わされ世界中に販売されていた。しかし、2007年夏ごろから住宅価格が下落し始め、返済延滞率が上昇し、住宅バブル崩壊へと至る(サブプライム住宅ローン危機)。これと共にサブプライムローンに関わる債権が組み込まれた金融商品の信用保証までも信用を失い、市場では投げ売りが相次いだ。この波紋から2008年終盤にはリーマン・ブラザーズ倒産によるリーマン・ショックなどが引き起こされ、高い信用力を持っていたAIG、ファニーメイやフレディマックが国有化される事態にまで至った。その後も幾度もの大幅な世界同時株安が起こった。この事から世界中の金融機関で信用収縮の連鎖がおこり、CDSと並び、世界金融危機 (2007年〜)発生の種をまいた。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%96%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%B3
 「クレジット・デフォルト・スワップ (Credit default swap、CDS) とは、クレジットデリバティブ(信用リスクの移転を目的とするデリバティブ取引)の一種であり、一定の事由の発生時に生じるべき損失額の補塡を受ける仕組みをとるもの。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%82%B8%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%AF%E3%83%83%E3%83%97

(続く)

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