太田述正コラム#6379(2013.8.9)
<日支戦争をどう見るか(その19)>(2013.11.24公開)

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<脚注:人種主義について>

人間は、以下のことから、本来的には人種主義的ではない。

 「人類史の過半を、人々は他の人種には全く遭遇することなく、狩猟採集団(band)の中で生きた。
 一番近くの他人種の人は何百、いや何千マイルも遠くにいたはずだ。
 進化的観点からは、極めて最近になって、初めて、人間は他の人種と遭遇するほど移動できるようになったのだ。」
http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-sapolsky-brain-and-race-20130728,0,2153443.story
(7月29日アクセス)
 (このコラムには、人種主義の脳内メカニズムとその克服方法も紹介されているが、省略する。)

 ところが、例えば、米国人は、以下のように人種主義的になってしまう。

 「人々のある集団が他の人々の集団を250年間にわたって所有して、一方の生(life)が他の一方の生よりも価値が低いという文化を生み出した・・・。」
http://opinionator.blogs.nytimes.com/2013/08/07/a-cold-current/?ref=opinion
(8月8日アクセス)

 以上も踏まえた私の仮説は次のとおりだ。(典拠を完全には付していないことをお断りしておく。)
漢人は、西域の白人との接触が相当昔からあったものの、漢人とともに生きた白人の数は19世紀に至るまで極めて少なく、日本人は、白人との接触が16世紀に至るまでなく、また、朝鮮人は、白人との接触が19世紀に至るまでなかったし、この3者とも、黒人との接触が殆んどないまま現在に至っているので、人種主義が希薄である・・日本人の場合は、基本的に人間主義者なので、この3者の中では、というより、世界で一番人種主義とは無縁だ・・のに対し、地理的意味での欧州の白人は、アメリカ大陸に渡った者を中心に、黄色人たる原住民と征服者として大量に接触し、その後、黒人奴隷を輸入して用いたことで黒人との奴隷所有者としての接触が大量に生じ、人種主義的となったと考えられる。
 なお、地理的意味での欧州の人々中、欧州人は階級社会に長く生きてきたので、有色人種を低階級的な存在とみなすことで人種主義を募らせたのに対し、アングロサクソンは個人主義社会であり、かつ人間主義的であったので、人種主義を基本的に早期に克服し、米国人は、欧州人とアングロサクソン人のキメラなので、その人種主義度は、おおむね両者の中間に位置づけられる。
 (欧州のポルトガル出身者が支配者となったブラジルは、世界でもっとも遅く、1888年まで黒人奴隷制を維持している。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E7%A8%AE%E5%B7%AE%E5%88%A5 )
 ちなみに、アラブ人は、基本的に白人である
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%96%E4%BA%BA
ところ、かつてその大部分がオスマン人に支配されたが、オスマン人(その後継がトルコ人)は混血により白人化した黄色人であり、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%B3%E4%BA%BA
また、その後、アラブ人は、その大部分が地理的意味での欧州人に支配されたが、欧州人は白人であり、そのどちらも、基本的に人種主義を伴わない支配であった。
 そのアラブ人自身は、黒人に対して人種主義的である。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E7%A8%AE%E5%B7%AE%E5%88%A5 前掲
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<脚注:米国のヒスパニック移民問題>

 「<民主党の>オバマ大統領は、第一期オバマ政権<の時、>・・・<米国>で育った不法移民の子供が<米>市民権を得られやすくした。第二期オバマ政権では、この権利を、不法移民にも拡大しようとしている。
 <そうなれば、>・・・1,100万人の不法移民が恩赦で市民権を得る・・・こと<になりうる>。
 一方、共和党は、不法移民が市民になること<に>・・・警鐘をならしている。・・・
 共和党の下院は、労働許可は認めるが、容易な市民権の拡大には反対すると言う立場で<ある>。・・・
 現在のオバマ政権下で・・・オバマケア<等、>・・・市民が「政府にただ乗り」できる制度が確実に積み重ねられている・・・。・・・
 <だから、>不法移民に市民権獲得の道を容易にすることは、それだけ、政府の費用が圧倒的に嵩むことになる。・・・
 オバマ大統領は、女性、ヒスパニック、同性愛といったマイノリティに優しい政策で選挙を制したが、この方針が続けば、<米国>の予算は崩壊することにな<りかねない、と。>・・・
 野党の共和党は<このような>危機感を募らせている<わけだ>。・・・
 <他方、>ここ20年、<米国>ではヒスパニック移民が驚異的に伸びている。1990年代は、10%にも届かずアフリカ系<米国>人よりも少なかったが、現在は、アフリカ系12%に対してヒスパニック16%にまで増えている。
 つまり、選挙での影響力を拡大している。・・・
 <また、>共和党支持が多い<原理主義的なプロテスタントたる>クリスチャン・グループ・・・が多い南部には、ヒスパニック移民の数が多い。しかも、ヒスパニックは<カトリックだが、>厳格なクリスチャンであ<る。>」
http://www.heritage.org/research/commentary/2013/2/immigration-reform-is-heating-up

 上掲は、今年2月に日本人によって書かれたコラムだが、それ以前から共和党内にはオバマ政権に歩み寄りを見せる動きがあった
http://newsphere.jp/world-report/20121112_
ところ、昨日付のロサンゼルスタイムスが、福音主義・・要するに原理主義的・・キリスト教徒の人物に下掲のような準社説(OP-ED)を書かせていることは興味深い。

 「7月25日に27州から300人の福音派キリスト教徒達が、その大部分彼らの米議会における共和党の代表者達との間で110もの集会を持ち、政治的恐れを個人的信仰(faith)によって置き換えるよう求めた。・・・
 我々は、政治的諸考慮によっても、いや、移民改革がもたらすであろう経済的諸便益によってすら、主として動機づけられてはいない。
 我々を鼓吹するのは、「見知らぬ者(stranger)を歓迎せよ」との聖書の呼びかけと「最も恵まれない人々(the least of these)」に対するイエスの心配(concern)なのだ。
 それが道徳的に正しいことであるが故に、米議会は、移民改革を通過させなければならない。・・・
 旧約聖書の中で、神はこう命じられている。
 「よそ者(foreigner)がお前達の地でお前達の間に住んでいる時、彼らを虐待してはならない。
 お前達の間に住んでいるよそ者をお前達はそこで生まれた者のように扱わなければならない。
 自分達自身のように彼らを愛せ。」(レヴィ記19:33-34)・・・
 新約聖書の中では、見知らぬ者や全ての弱き者(vulnerable)が福音の中核に存する。
 マタイの福音書の中で、イエスは、彼らの世話をする(care for)ことが神の王国を規定する証(defining mark)であるとのヴィジョンを提供している。
 「私が飢えていたらあなたは私に何か食べる物をくれ、私が喉が渇いていたらあなたは何か飲むものをくれ、私は見知らぬ者であるがあなたは私を中に入れと招き、私が着物が必要なら着物を着せてくれ、私が病気だったらあなたは私の看病をしてくれ、私が牢に入っていたらあなたは私を訪れてくれた。」(マタイ25:35-36)・・・
 我々の信仰は、常に、同情心(compassion)についてであり、それはあなたに何かをするよう強い(compel)ている。
 もしあなたが同情心や同情心の原則を聖書から取り去ったとすれば、聖書はズタズタになってしまうことだろう。
 なぜなら、それは聖書のあらゆる箇所に散りばめられているからだ。」
http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-wallis-immigration-evangelicals-pro-reform-20130808,0,6044735.story
(8月8日アクセス)

 (福音主義キリスト教徒の代表として筆者がこの中で強調する利他主義は、無限定のものではなく、その大部分が、キリスト教徒たる、しかも、カトリックとはいえ原理主義的である点において相通じるところがある、ヒスパニックであるからこそ、利他主義の対象たりえた、ということに注意が必要だ。
 また、これはあくまでのタテマエ上の話であり、筆者については詳らかにしないが、福音主義キリスト教徒の多くがホンネではヒスパニックに対する差別意識を抱いていることにも注意が必要だ。)
 いずれにせよ、このことは、キリスト教原理主義者が、聖書の文面に基づき、一種の不動点、ないし不動規範、を米共和党に与えていることを示している。
 だからこそ、共和党は余りぶれないのだ。
 他方、民主党はぶれる。
 それが両党、そして両党のそれぞれの中心的支持者達、の最も大きな違いなのだ、と私は考えるに至っている。
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(続く)