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太田述正コラム#1726(2007.4.9)
<例の訴訟の私の弁護士へのメール(その2)>(控訴審終結まで非公開)(2012.1.13公開)

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 2012.1.13公開。2012.1.21の「講演」の関連で、このタイミングで公開することにしました。
 下掲の「案内」も、後段は3千円→5千円に変わっていますが、そのままにしました。↓(太田)
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2 論点の整理

 (1)本件提訴は創価学会のための代理訴訟ではないのか

 千葉氏と創価学会との密接な関係については、証明できそうであり、証明すべき重要なポイントではないでしょうか。
 それは、どうして千葉氏がこの訴訟を提起しているか、という根本問題と関わってくるからです。
 千葉氏が創価学会の意向を受け、あるいはその意向を忖度して動いている可能性が極めて高いということを裁判官に印象づけられれば、裁判官の心証形成は大いに異なってくるのではないでしょうか。

 創価学会がらみの訴訟は、弁護士の方々は引き受けたがらないと、アンチ創価学会のキャンペーンを張っておられる乙骨正生さんから聞きました。逆に言うと、大変僭越ですが、貴殿らが私の弁護を引き受けてくださったのは、千葉氏による私の提訴の実態が、創価学会による弱者たる一市民の人権侵害である、と認識されたからではありませんか。
 この提訴の実態は創価学会による人権侵害である、といったことを私はこれまでコラムに書いたことはなかったにもかかわらず、千葉氏による提訴を知った私の読者は、一様に上記のように受け止めたものです。(証明できます。)

 私がコラムで典拠としたあの本を始めとする乙骨・矢野ご両名等による創価学会批判に対抗すべく創価学会によって行われている提訴の状況・・ほとんど提訴していない?・・と千葉氏による「濫訴」の提起状況、更には私が件のコラムの中で言及した千葉氏以外の3名(うち2名は創価学会員)による訴訟の提起状況・・ほとんど提訴していない?・・を把握し、整理するだけでも、そこから以上の構図が透けて見えてくるのではないでしょうか。

 もう一度、はっきり申し上げましょう。
 千葉氏が、この訴訟を提起することであえて寝た子を起こしたのは、創価学会の意向を受け、あるいはその意向を忖度したからであって、千葉氏自身の「侵害」された権利の回復のためではないのではないか、ということです。

 (2)果たして名誉棄損は成立しているのか

  ア 提訴まで

 件のコラム上梓から千葉氏による提訴までの2年4カ月という長期間にわたって、上記の私の誤りを指摘する読者が一人も出てなかったということは、東村山事件を知らなかった人で、私のコラムを読んで、この事件のことを調べてみる気になった人が一人もいなかったことを推測させます。
 要するに、この副署長が千葉なる人物のことだ、と認識するに至った人は一人もいなかったと推測できるのです。
 このことの傍証となるのが、提訴があったと私がコラムで記して、初めて私が典拠とした本を読む気になった一人の読者が、私に対してただちに、千葉氏が創価学会員であるとの記述はこの本にはない、と注意喚起してくれたことです。(証明可能)

 他方、(コラムを書いた当時は全く知りませんでしたが、)東村山事件について以前から関心を持っていたネチズンは数多くいました。
 その中には、私のコラムの読者もいたのではないかと推察されます。
 当然彼らは、千葉氏が創価学会員ではないことを知っていたはずです。
 しかし、その中の誰も私の誤りを指摘しようとはしてくれなかったことになります。
 これは、(創価学会シンパの人であれアンチ創価学会の人であれ、)彼らは、千葉氏を創価学会と密接な関係のある人物として認識しており、私が彼を創価学会員とした「誤り」などとりたてて問題視し、指摘すべき誤りではない、と考えたからではないでしょうか。

 いずれにせよ、一審の私の準備書面でも記したように、件のコラムに関しては、この訴訟が提起されるまでの間、投稿もメールも、ただの一つも寄せられなかったのであり、いかにこのコラムが注目を集めなかったかは明らかです。

 以上から、名誉棄損は、むしろ、千葉氏がこのコラムにたまたま気がついて提訴したことによって、初めて成立する条件が整った、と言えるのではないでしょうか。
千葉氏は、創価学会の意向を受け、あるいはその意向を忖度し、自分の名誉が棄損される危険をあえて冒して寝た子を起こした、と私は勘繰っているのです。                                   

  イ 提訴以降

 では、提訴以降には名誉棄損が成立したでしょうか。

 2チャンネル上の「太田述正について語ろう」での私に対する悪罵の数々をご披露しましたが、あれだけ虎視眈々と私のアラ探しをして悪罵を投げつけて楽しんでいるネチズン達・・もっとも、彼らの大部分はアンチ創価学会と考えられる(たぶん証明可能)・・が、私が件のコラムで千葉氏を創価学会員云々と記したことに対し、千葉氏から提訴され、そのことを私がコラムで披露したというのに、このことで、彼らから私に対し、依然として一切悪罵が投げかけられないまま現在に至っている(注2参照)ことをどう解釈するかです。
 同様、上記提訴以降、創価学会員シンパも私のコラムを読んでいる(証明できる)というのに、彼らからもまた、この件で非難めいた投稿やメールは一切ありません。(投稿については証明可能。)
これは、創価学会員たるAV女優の出演ビデオを学会員達が誇らしげにみんなで見ている、という週刊新潮の記事をコラムで紹介した(上述)時には、創価学会員とおぼしき人物からただちに抗議のメールがあったことと対照的です。

 いずれにせよ、これらのことから、千葉氏による提訴以降も、名誉棄損は成立していないと考えるべきではないでしょうか。
 上記提訴に係る事情に通じている人で、私の件のコラムが名誉棄損を構成すると考えているのは、現在のところ日本中で、千葉氏と一審の裁判官3名中の2名ないし3名の計3〜4名だけだ、という見方もできないわけではない、とさえ思うのです。

 (3) 二つの損害は区別すべきではないか

 私の件のコラムで問題になっている箇所は、

 創価学会員であったところの(当時の)副署長、刑事課員、地検支部長、及び担当検事が、「公僕としての義務よりも創価学会への忠誠を優先させ、創価学会の組織防衛に走ったと思われます。しかし、彼らの画策したでっちあげや隠ぺい工作は、・・」

ですが、これには誤りが含まれていることから、例えば、

 創価学会員であり、「公僕としての義務よりも創価学会への忠誠を優先させ」た地検支部長と担当検事が、(当時の)副署長、刑事課員と共謀して「創価学会の組織防衛に走ったと思われます。しかし、彼らの画策したでっちあげや隠ぺい工作は、・・」

と記すべきだったわけです。

 私の問題意識は、「典拠の要約として妥当な部分が相手に与えた損害」=A と、「誤った要約である部分が相手に与えた損害」=B とは区別すべきではないのか、というものです。

 というのは私は、書籍等のこの種の引用に関して、どのような引用の仕方なら許されるのか、明確な判例がないのではないか、という認識を持っているからです。
例えば、創価学会員たるAV女優の出演ビデオを学会員達が誇らしげにみんなで見ている、という週刊新潮の記事をコラムで紹介した(上述)だけでも名誉棄損になるのか、ということです。
 ですから私としては、本件がそのような判例(の一つ)になって欲しいと願っており、両者が混在したままでは、判例にはなりにくいのではないか、と懸念しているのです。

 本件に関しては、両者を区別すべき理由がもう一つあります。
 それは、この訴訟には、千葉氏によるところの、創価学会のための代理訴訟であるという(上述の)側面のほか、私が件のコラムで言及した(千葉氏以外の)3名のための千葉氏による代理訴訟であるという側面があるからです。
 この訴訟が確定して、私がC(=A+B)という損害賠償を命じられたとして、この3名が新たに私を提訴してきた場合、私は創価学会員たる2名にはそれぞれAを、創価学会員ではない1名にはCを支払うことを判決で命じられる可能性が高い以上、私はこのような腹積もりをするための情報を、この訴訟の判決によって与えられる「権利」がある、と言いたいのです。

 以上から、一審判決が、両者を区別しないまま、総額50万円の損害賠償を私に命じたのは残念なことでした。

3 所感 

 改めて、本訴訟は単純な名誉棄損の成否をめぐる争いではないという思いを新たにしています。
 千葉氏に対しては、むしろ反訴してしかるべきではないか、とまで思うに至っている昨今です。

(完)
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 (私の考えや当コラムに対するコメントをお寄せになった場合、お断りすることなく、私のHPの掲示板や当コラムに転載することがあります。なおその際、時候の挨拶的な部分を削除したり、筆者のアイデンティティーを隠すために必要な範囲で、文章に手を入れたり部分的に文章を削除したりさせていただきます。
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<読者BH>
 これは↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%BE%E6%8A%97%E8%A8%80%E8%AB%96

 このニフティーサーブ現代思想フォーラム事件というのは太田先生の事件と非常に似通っていると思いますね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%95%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%96#.E3.83.8B.E3.83.95.E3.83.86.E3.82.A3.E3.82.B5.E3.83.BC.E3.83.96.E7.8F.BE.E4.BB.A3.E6.80.9D.E6.83.B3.E3.83.95.E3.82.A9.E3.83.BC.E3.83.A9.E3.83.A0.E4.BA.8B.E4.BB.B6
 結局、名誉毀損を問われた人は負けたようですが。

 この事件に関連して「対抗言論」という概念について高橋和之という元東大の法学者がいろいろ論評しているみたいです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%A9%8B%E5%92%8C%E4%B9%8B
権威っぽくないですか?「対抗論文」で参照されているジュリストの論文と「インターネットと法」という本は読んでみる価値ありそうです。more speechと英訳する人もいるようですが、検索にはひっかからないですね

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