太田述正ブログは移転しました 。
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太田述正コラム#5121(2011.11.19)
<皆さんとディスカッション(続x1384)>

<太田>(ツイッターより)

 大学を出ておらず、王妃が(姉妹の)4人いた先代国王・・ブータンの立憲君主化を決定・・から譲位されて国王に就任した現ブータン国王、英(元宗主国)オックスフォード大修士で恐らく王妃は一人にとどめるのだろうが、わずかの間の大変な変化だよね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%B0%E3%83%9F%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%BB%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%A5%E3%82%AF

 中共のゴビ砂漠の中の20マイル圏内に数年前から三つの巨大な模様が出現。
 その目的が取りざたされている。
http://thelede.blogs.nytimes.com/2011/11/18/formations-in-china-desert-are-still-a-mystery/?hp
 キミの推理は?

<TA>

≫この<私の司法制度改革>案に対し、どしどしコメントをくれたまえ。≪(コラム#5121。太田)

 この案の場合、裁判員制度は廃止でしょうか。

<さいへん>

≫さて、話は司法制度の問題に戻るが、結論的には、日本の裁判制度は一審制にすべきじゃないかと思ってるんだ。つまり、検察と同じく、官僚制(稟議制)にしちゃうのさ。≪(コラム#5121。太田)

 ↑この制度では、市民感覚をどのように裁判所に持ち込むのでしょうか。
 陪審が有罪無罪を決定し、有罪の場合、量刑を現場の裁判官たちが合議して判断し、上の決裁を仰ぐ……私のイメージはこんな感じなのですが。

<太田>

 さいへんさんのおっしゃるようなイメージで結構だと思います。

<TA>

 あと、当然裁判官(裁判官僚?)の人数は増やさなければならないのでしょうが、どの程度増えるのでしょうか。また、今現在、それを担える法律の専門家の人数は足りているのでしょうか。

<太田>

 三審制を一審制にするのですから、裁判所の運営に携わる裁判官僚の数は減らせるはずですし、判事たる裁判官の数そのものも、必ずしも増やす必要はないのではないかと思います。

<TA>

 日本の司法制度に関するご発言(コラム#5105、#5107、#5117)は、「日本は憲法
のみならず、法律にも規範性がない」と理解しました。ちなみに、ここでいう「規範
性がない」とは、「制定法という裁判所の外から与えられる規範への適合性を重視す
るという、大陸法圏における審理態度」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AD
%E3%83%BC)が日本には合わない、といった意味でしょうか。
 「規範性がない」原因は、遵法精神の欠如といった類の、「欠点」と表現すべき類
のものではなく、制定法というやつが(何らかの理由で)日本には合わないからなの
でしょうか。

<太田>

 法律には規範性がない、とまでは言えないでしょう。
 大綱しか定めない法律が多い・・例えば、民法の不法行為の規定がその典型・・とは言っても、詳細に定められた法律・・例えば税法・・も存在し、その場合は当該法律は遵守されるからです。
 まさに、このことが裏付けられたのが、今年2月に出た武富士贈与税脱税事件最高裁判決です。
http://moriri12345.blog13.fc2.com/blog-entry-840.html
 しかし、このブログ主たる税理士のぼやき↑を読むにつけ、あなたがおっしゃるように、「制定法というやつが(何らかの理由で)日本には合わない」部分があるのかもしれませんね。

<フリンジドピンク>

 久々に投稿します。

≫防衛庁(現在は防衛省)は、秘密保全法制が十分整備されていない現在の日本で、大量の武器と秘密を持っている組織であり、「どこの企業や役所」より、部外者による内部情報へのアクセスには警戒しなければならない立場にあることを申し上げておきます。
 つまり、件の3佐(当時)は何も悪いことをしておらず、≪(コラム#4977。太田)

 そもそも太田さんは、現行の情報公開制度がどのような制度かご存知でしょうか。
 太田さんは知らなくても「知っている」と答えるでしょうからこの質問は不毛なのですが、太田さんは情報公開法施行直前に退職されているのでご存知ない可能性もあるので一応説明します。
 現行の情報公開制度は、「全ての人に見せられる状態で行政文書を開示する」制度です。
 仮に行政文書の中に「一般国民には見せてよいが、防衛対象国やそれとつながっている人間には見せられない情報」が含まれているとすれば、その部分は非開示情報になります。
 そして、その部分を非開示(黒塗り)にすれば秘密は保護されます。
 すなわち、現行の情報公開制度の下では、情報開示請求者の身辺調査をすることは、情報公開のためにはもちろんのこと、秘密保全上も全く無意味なのです。
 防衛庁の調査報告書(平成14年6月11日)によれば、3等海佐からリストの配布を受けた内局・各幕の情報公開担当者はもちろんのこと、海幕調査課情報保全室の担当者も、海上自衛隊中央調査隊の担当者も、リストにほとんど関心を示さず、リストを全く業務に活用しませんでした。
 太田さんは「ウソだ」と言うのかも知れませんが、私はこの調査報告書の記述を理解できます。
 3等海佐の作成したリストは、情報公開上も、秘密保全上も、全く役に立たないものだったからです、
 (なお、中央調査隊の担当者は、平成13年12月と平成14年1月に3等海佐からリストが入ったフロッピーを受領しています。
 平成13年12月にはプリントアウトして上司に回覧しましたが、上司が全く関心を示さなかったので平成14年1月にはプリントアウトせずそのまま自分の机の引き出しにしまったということです。
 このことは裁判所の検証で裏付けられています。)。
 また太田さんは、「件の3佐(当時)は『何も』悪いことをしておらず」と、強調の副詞を使っておられるところから見て、情報開示請求者に対する身辺調査が悪事となる余地はないと考えておられるかのようです。
 しかし、仮に百万歩譲って情報開示請求者に対する身辺調査が秘密保全上必要だと解しても、次のような要件を満たす必要があると思われます。
一、必要性
 秘密にあたらない情報の開示請求をしてきた者に対する身辺調査は慎むべきでしょう。
二、相当性
 情報公開制度は、国民による行政監視の観点から極めて重要な制度であり、それを牽制するような運用は慎むべきでしょう。
 具体的には、防衛庁・自衛隊の違法行為や不正行為を追及すべく情報開示請求をしてきた者に対する身辺調査には特に慎重になるべきでしょう。
三、徹底的な情報管理
 仮に情報開示請求者に対する身辺調査を行い、情報を集積するとすれば、そのような情報は「存在しないはずの情報」なのですから、防衛省・自衛隊の秘密保全制度の枠内で管理するわけにはいきません。
 防衛省・自衛隊の秘密保全制度・秘密保全体制を活用せず、厳重に管理していく必要があるでしょう。
 仮にそのような情報を集積していこうと考えた人間は、防衛省・自衛隊の秘密保全制度・秘密保全体制に相当する枠組みを自分で作るぐらいの覚悟でやるべきでしょう(まず無理だからあきらめるべきだと思いますが。)。
 また、そうした情報は「思想・信条など、センシティブ情報の塊」「プライバシー情報の塊」ですから、厳重に管理するとともに、保有は最小限とすべきでしょう(対象者があやしい人間でないとわかった時点で、リストから抹消する等を徹底すべきでしょう。)。
 結局、情報開示請求者に対する身辺調査が秘密保全上必要だという立場に立ったとしても、具体的事情によっては悪事となりうると言えます。
 一連のやり取りを通じて、太田さんはリスト事件の具体的事情についてほとんどご存知ないということがわかりました。
 具体的事情もご存知ないのに、「何も」という強調の副詞を使っているところをみると、やはり、「情報開示請求者に対する身辺調査が悪事となる余地はない」というお考えなのでしょうか。
 そして、具体的事情に照らした場合、3等海佐の行為は「情報開示請求者に対する身辺調査が秘密保全上必要だ」という立場に立ったとしても十分悪事と言えるものでした。
一、必要性
 平成14年5月29日付毎日新聞朝刊によれば、情報開示請求者全員がリストに載せられたということです。
 中には秘密でも何でもない情報について開示請求した人もいたでしょうから、全員をリストに載せたのは行き過ぎでしょう。
二、相当性
 リスト訴訟の原告の一人である新潟の弁護士は陸上自衛隊の不正経理を追及するために情報開示請求していました。
 彼のような人物について身辺調査するのは特に慎重であるべきだったでしょう。
 なお太田さんは、たとえ天下りや談合の実態について調べるために情報開示請求する場合であっても、開示請求者は徹底的に身辺調査を受けなければならないというお考えでしょうか。
 それによって天下りや談合について調べようとする者が牽制されることになっても止むを得ないというお考えでしょうか。
三、徹底的な情報管理
 3等海佐はリストをハードコピーやフロッピーでばらまいていましたが、当時防衛庁が持っていた程度の技術でも、コピーすれば真っ黒になる紙を使うとか、ファイルに暗号をかけるとかは可能だったでしょう。
 また情報開示請求者のうちあやしくない者をリストから削除するといったことはしていない。
 そして他人にリストを渡した場合には渡された側にリストの管理を「丸投げ」しており、新しいリストを渡したときに古いリストを回収するとか、自ら確認の上破棄させるといったこともしていない。
 こうして見て来ると、仮に「情報開示請求者に対する身辺調査が秘密保全上必要だ」という立場に立ったとしても、3等海佐には情報の拡散・漏洩について一定の責任があると言えるでしょう。
 太田さんは3等海佐について「何も悪いことをしておらず」「可哀そう」としていますが、情報の拡散・漏洩について彼に一厘の責任もないというお考えなのでしょうか。

≫責められるべきは、この3佐が親切心で持ち込んだデータを部内LANに公開した内局の人間と、このLAN上のデータを見て、それを部外者にリークした(恐らくは)内局の人間なのです。≪(コラム#5013。太田)

 まず「親切心」と言えるかどうか疑問です。防衛庁の調査報告書を見ると、リストを受け取った側にとっては「有難迷惑」だったことがうかがわれる。
 特に陸幕情報公開室にリストを持っていったときは、当時の陸幕情報公開室長から二度に渡り「そのようなものを持ってくるな」と注意されており、陸幕情報公開室長との関係では「有難」がとれるぐらいのレベルだったと言えるでしょう。
 「親切」とは、相手のためを思って、相手のためになることをするということであって、相手にとって迷惑な行為を敢えてするのは「親切」とは言わないでしょう。
 また、「3等海佐が作成したリストがそのまま内局LANに載せられ、それを見た内局の人間がそれをそのまま(プリントアウト等して)新聞記者に渡した」という事実がないことは以前指摘したとおり(後に太田さんは「訂正」していますが、あれは全く「訂正」になっていません。)。
 太田さんは「テーミス」平成14年8月号の記事の中で、「平成13年11月に海上自衛隊に打撃を与えうる2つの情報を知った内局の高官が、それぞれを別の新聞(朝日新聞と毎日新聞)にリークし、半年後に記事にさせた」というシナリオを描いておられます。
 このシナリオが成立するためには、平成13年11月に内局の高官が問題のリストを目にしなければなりません。
 「3等海佐が作成したリストがそのまま内局LANに載せられた」のだとすれば、それを見た内局の人間がそれをそのまま(プリントアウト等して)新聞記者に渡すことが可能ですが、そのような事実がない以上、太田さんが上記のような持論を維持するのであれば、リストがどのようなルートで誰に渡ったのか、具体的根拠とともに示すべきでしょう。
 防衛庁の調査報告書によれば、内局では問題のリストを目にしたのは情報公開室の係長ただ一人です。
 太田さんが「防衛庁の調査報告書など信じない」と言うのは勝手ですが、それなら、一、リストが係長以外の内局の人間にも渡された、二、係長から別の内局の人間に渡された等々、具体的根拠とともに主張すべきでしょう。具体的根拠もなく、ただ「ウソだウソだ」と騒ぐだけでは、問題の係長に対してのみならず、太田さんが敬慕する件の3等海佐に対しても失礼でしょう(なお太田さんのシナリオは、内局の高官がリストを見た事実がないことが発覚した場合はもちろんのこと、内局の高官が仮にリストを見たとしてもそれが「平成13年11月」以外だった場合には破綻することをお忘れなく。)。

≫本件について、私と感覚とほぼ同じ人がいるのをネット上で見つけました。↓

 「防衛庁が情報公開請求者の情報をリストにまとめて、LAN で共有していたという話だ。正直な話、「何を騒いでいるのか」と思った。情報公開請求かどうかはともかく、似たようなことは、どこの企業や役所でもやっていることではないのか。・・・企業が自社の不利益になるようなことをしている個人や団体の一件書類をまとめていたって、何も不思議はない。・・・問題は、件のリストを LAN で共有していたという話だと思う。リストを作るのは勝手だが、それは当然ながら個人情報の塊だから、取り扱いには厳重な注意が必要だ。」
http://www.kojii.net/opinion/col020610.html ≪(コラム#4977。太田)

 このページは私も読みましたが、あまり適切な例えとは思えません。
 「自社の不利益になるようなことをしている個人や団体の一件書類をまとめてい」る企業があるにしても、自社の製品について問い合わせの電話をしただけでその人を直ちにブラックリストに載せるような企業がそうそうあるとは思えません。
 ましてや、情報開示請求はそれ自体は無色透明な適法行為であり、かつ国民による行政監視のために必要かつ有益な行為です。
 仮にリスト事件を民間企業の行為に例えるとすれば、「たまたま会社の前を通りかかった人間を片っ端からブラックリストに載せた場合」にあてはまるでしょう。

≫≫せめてこれぐらいは読んでから発言すべきではないでしょうか(←私の指摘)
≫検索用語の入れ方で欲しいものがヒットする場合もあればヒットしない場合もある。 今回の件ではヒットしなかったということです。≪(コラム#5011。太田)

 改めて伺いますが、本当に事件発覚直後に出された防衛庁の調査報告書を読んでいないのですか?「テーミス」の記事では6月11日の報告書について触れられているので、太田さんがその存在には気づいていたことが伺えますが、手に入れて読んでみようとは思わなかったのですか?
 翌日の主要各紙朝刊に出た調査報告書の概要さえ読んでいないのですか?
 ある組織で不祥事が起きた場合に、その組織がまとめた調査報告書の類を読まずにその事件について語るというのは信じられません。
 太田さんが「防衛庁の報告書などウソばかりだから読むに値しない」と考えるのは勝手ですが、普通は読んだ上で批判的に検討すべきだろうと思います。
 事件についての一次情報・一次資料に最もアクセスできるのは防衛庁であり、たとえウソが混入しているにせよ、大量の一次情報・一次資料を基に作成された報告書を無視するという手はない。
 それに、100パーセントのウソをゼロから作り上げるのは難しく、9割の真実に1割のウソを混ぜるような形になるから、組織の調査報告書を批判的に読んだ上で、矛盾を突く等して1割のウソを見つけ出すことが重要でしょう。

≫それより、質問するあなたの方でインターネット上のこの種の文書を最初から引用すべきだったのでは?≪(コラム#5011。太田)

 私が「質問者」ではないというのは、以前<コラム#5013で>述べたとおり。

≫今、この文書を読んでいる時間がないけど、それはそれとして、申し上げておくと、例の「テーミス記事」を書いた時にはまだお示しのインターネット上の文書は存在せず、私は海幕と陸幕の自衛官から直接話をメールで「取材」してこの記事を書いたのです。≪(コラム#5011。太田)

 まず、「存在せず」というのがウソだというのは以前指摘したとおり。
 「テーミス」の記事が6月11日の報告書に言及しているので、記事を書いた時点で存在していたのは明白です。
 また、防衛庁が出した調査報告書を読まずに、事件について特段詳しいわけでもない自衛官から「取材」して記事を書くという発想がどうしても理解できません。
 「取材」対象の自衛官から聞き取った情報の中には、平成13年11月に内局にリストが持ち込まれたという事実や、内局・各幕の情報公開室の人間の中で個人情報保護法の詳細について知っている者の人数がありますが、これらの情報がどこから出てきたか聞いてみなかったのでしょうか?
 これらの情報は「調査報告書」に書いてあることであり、おそらく太田さんの「取材」を受けた自衛官はそれを見ながらメールを書いたのでしょう。
 「調査報告書」はマスコミや自民党に配られているぐらいであり、秘でも何でもないだろうに、「防衛庁ホームページにアップされているかも知れない。探してみよう」とは思わなかったのでしょうか?
 ホームページにアップはされていないにせよ、「入手できるかもしれない、してみよう」とは思わなかったのでしょうか?
 おそらく太田さんの「取材」を受けた自衛官は「自宅で」調査報告書を見ながら「自宅から」メールを送ったのでしょう。「調査報告書」は、自宅からダウンロードできるか、部内LANからダウンロードして容易に持ち出せるか、いずれかの状態であったと思われます。
 直接ダウンロードするか、その自衛官に送ってもらうかして、簡単に入手できたでしょう。
 なお、(まさかとは思いつつ、一応聞くのですが)太田さんは「この自衛官たちは平成13年11月に内局にリストが持ち込まれたという事実や、内局・各幕の情報公開室の人間の中で個人情報保護法の詳細について知っている者の人数など、細かいことを知っている。この人たちは、リスト事件に精通している人々に違いない。」などと思ったのではないでしょうね?もしそうだとしたら、滑稽としか言いようがありません。

≫当時、制服サイドであのようにあの事件を見ていたことは事実です。≪(コラム#5011。太田)

 そうでしょうか?「テーミス」の記事を読んでも、「実名告発 防衛省」を読んでも、「取材」を受けた自衛官が「3等海佐の作成したリストがそのまま部内LANにアップされた」と勘違いしていたというのは読み取れません。
 太田さんが勝手に勘違いしていただけではないでしょうか。
 また、「制服サイド」とは誰のことを言っているのでしょうか?
 制服組全員でしょうか。その大多数でしょうか。
 仮に「取材」を受けた自衛官が「あのようにあの事件を見ていた」としても、リスト事件についてよく知らない自衛官が2人ほど事件に係る基本的事実関係を勘違いしていたということであり、それ以上でもそれ以下でもないのではないでしょうか。

≫その後、この「事実」の全部または一部が否定されたことがあったとしても、私が関知するところではありません。(少なくとも、当時、『テーミス』にあの記事に防衛省等からクレームがついたという話は全く聞いていません。)また、『実名告発 防衛省』は、基本的に私の過去コラムの切り貼りで編纂されたものであり、時点修正した部分はありません。≪(コラム#5011。太田)

 「テーミス」の記事からは「3等海佐のリストがそのまま部内LANにアップされている」という太田さんの勘違いは読み取れず、防衛省が抗議する理由が無いというのは、以前述べたとおり。
 その点は措くとしても、本を出版するにあたって、本で取り上げた事件について最新の情報をフォローしないというのは信じられません。
 「実名告発 防衛省」が出版されたのは平成20年の10月ですが、この時点ではリスト事件に関する2つの民事訴訟はいずれも確定していました。
 太田さんが「日本の裁判所など信じない」などと言うのは勝手ですが、裁判を経れば、時に誤判等もあるにせよ、不十分ながら強制的に証拠を出させる制度等もあり、一般には真実に近づきます。
 まさか本書を手に取った読者は、著者がリスト事件の確定判決をフォローしていないとか、リスト事件に関する基本的事実関係の把握を誤っているなどとは、夢にも思わないでしょう。
 また、「実名告発 防衛省」においては「時点修正した部分はありません」とのことですが、実際には同書の中には「補遺」という形で最新情報をフォローした記事がいくつかあり、リスト事件に関する記事でもその方法を用いることは可能だったと思います。
 そして、同書のリスト事件に関する記事は「テーミス」の記事を下敷きにしているものの書き下ろしと見られ、最新の情報をフォローして反映させることは可能だったと思います。
 なお、「実名告発 防衛省」にはこうあります。「(リスト事件は)個人情報保護法…に違反するものであり、国民を不当に監視しようとする防衛庁の意図が露呈した一件だった。」「防衛庁側から見ると、脅威は外からは来ない…という認識の結果、『防衛庁にとって自分たちの存在意義を認めない日本国民…こそが脅威だ』という心理状態に陥っていった。」「防衛庁が情報公開要求者を『敵視』したリストを作成し…たのは…国民こそが防衛庁にとっての脅威だと考えた結果だった。」実は私はこれらの記述には全面的に同意なのですが、なぜ太田さんはこの本を書いてからわずか3年でリスト事件を全面的に肯定するように考えを変えてしまったのでしょうか。

≫あなたが言及した「報告書」は、てっきり、私の書いた「記事」ないしあなたのメールに対して私が記した「感想」と矛盾する内容のものに違いない、と受け止めたので、「記事を書いた時にはまだお示しのインターネット上の文書は存在せず」と返事をしたのです。≪(コラム#5013。太田)

 「感想」と矛盾する内容なのは確かですが、そこからなぜ「従って『報告書』はテーミス記事より後に出されたものに違いない」という発想になるのか理解できません。
 御自分の事実関係把握が間違っているとは思わなかったのでしょうか。
 御自分の理解力や記憶力にそんなに自信があるのでしょうか。
 そうだとしたら本日以降は認識を改めた方が良いと思います。
 現にリスト事件について、基本的事実関係の把握が間違っていたわけですから。

≫それなら、あなた、何のために、私がそれをも参照しつつ「記事」を書いたであろう「報告書」を私にもう一度読めなどと言ったのですか?≪(コラム#5013。太田)

 正確には「報告書そのもの」を読めと言ったわけではありません。
 太田さんが基本的事実関係の把握を間違っておられたので、基本的事実関係を確認できるものを読めと言ったのです。
 基本的事実関係が確認できる代表的な文書として、防衛庁の調査報告書を挙げたまでです。

≫そもそも、防衛省が出した「報告書」・・その要約ないしは「報告書」に関する報道?・・記載の事実をも踏まえて書いた私の「記事」に防衛省がクレームをつけるわけがないじゃないですか。≪(コラム#5013。太田)

 そうですよ。だから「防衛省からクレームが無い」からと言って「3等海佐の作ったリストを内局がそのまま部内LANに載せたという把握が正しい」ということにはならないと言っているのですよ。
 一体何を言っておられるのですか?

≫内局は、A:防衛省全体の中央組織であるという側面と、B:陸海空自衛隊を除く防衛省全体(防衛大等)の統括組織であるという側面と、C:内局それ自体、という三つの側面を持っています。執筆当時は分かっていたのでしょうが、今となっては、内局がLANにアップしたリストがAに係るリストだったのか、それともB(ないしC)に係るリストだったのか私には分かりません。「感想」を書いた時は、Aであるという認識であり、従って海上自衛隊分のリストも・・その精粗はともかくとして・・その中に含まれていた、という認識でした。≪(コラム#5013。太田)

 色々とわけのわからないことを言って煙に巻こうとしておられるようですが、「内局」をABCいずれの意味に定義したとしても、内局が3等海佐の作成したリストをそのまま部内LANに載せたという事実はありません。

≫「件の3佐(当時)は何も悪いことをしておらず、責められるべきは、この3佐が親切心で持ち込んだデータを部内LANに公開した内局の人間と、このLAN上のデータを見て、それを部外者にリークした(恐らくは)内局の人間なのです。」(コラム#4977)には、「記事」をきちんと読み返さなかったことと、コラム#4977を書く時に引用したサイトの論調に引きずられてしまったことに由来する誤りがあったので、これを、「件の3佐(当時)は何も悪いことをしておらず、責められるべきは、この3佐が親切心で持ち込んだデータを(、そのうち「違法」でない部分を部内LANに公開した(?)ことはともかくとして、)部外者にリークした(恐らくは)内局の人間なのです。」に改めさせていただきます。≪(コラム#5013。太田)

 これは全然「訂正」になっていません。3等海佐が作成したリストと内局が部内LANに載せたリストは全く別物であり、「3等海佐が作成し、内局に渡したリストの中に違法なものと違法でないものがあり、違法でないものが部内LANに載せられた」というような事実はありません。
 それにこのように改説するとしたら、内局の高官が3等海佐の作成した違法なリストを見るに至った経緯はどのように説明するのでしょうか。

≫まだ、お示しのURL上の「報告書」は読んで(読み返して?)いませんが、「3等海佐が作成したリストの存在を知っていたのは内局では情報公開室の係長だけ」といったようなことを読んだ記憶が全くないことから、私が「記事」執筆当時にこの「報告書」そのものを読んでいなかった(読むことができなかった)可能性が高くなったと思います。ただ、そういった記述が「報告書」にあったとすると、かえって言い訳めいていて怪しいですね。その係長の上司・・といっても相当エライ上司だと私は踏んでいます。そこまで言えば、誰のことを言っているか明らかですが、言わぬが華でしょう・・を庇っている、と行間を読むべきでしょう。≪(コラム#5013。太田)

 具体的根拠も示さず、ただ「怪しい怪しい」というだけでは失礼だ、というのは先に述べたとおり。

≫さて、誤りはただしましたが、まだ何かおっしゃりたいこと、あります?
 ああそうそう。そもそも、あなたが本件で最初に投稿された時、あの「記事」は既にお読みになっていたのでしょうか。お読みになっていたとすれば、このようなボタンの掛け違いのようなやりとりにならなかったはずなのですが・・。あなたに限りませんが、投稿される時は、私の関連コラムにある程度目を通してからにしてくださいね。≪(コラム#5013。太田)

 「自分は『テーミス』の記事の段階では事実関係を正確に把握していた」と言いたげですが(私も最初はそう思っていた)、そうではありますまい。
 仮に基本的事実関係を最初は正確に把握していたとすれば、後から頭の中でそれが変化するということは考え難い。
 太田さんは最初から基本的事実関係の把握があいまいだったのでしょう。
 ただ「テーミス」の記事ではそれが露見しなかったというだけでしょう。

≫あなたがたとえ全文を私に提供したとしても、私がその全文を公開でもしない限り、著作権法違反になるワケないでしょ。いずれにせよ、あなたが読解力のあまりない方であることは良く分かりました。だから、ご自分が書かれた文章が他人にどう「読解」されるかも想像できないわけですね。≪(コラム#5015。太田)

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