太田述正コラム#3872(2010.3.7)
<中共のネチズン恐るべし(その2)>(2010.4.7公開)

 中共のインターネットについて、欧米でもっぱら話題になっているのは、検閲のことだ。・・・
 <しかし、>中共で人々の大部分がインターネットでやっていることは、大部分の人肉捜索活動を含め、検閲官達から無視されており、かつ政府の諸規則によって足かせをはめられてはいない。・・・
 最近実施された不法行為法改革によって<ネットに係る名誉毀損等の>裁判が増えるかもしれないが、これまで中共で認められた損害賠償額が余りにも少ないため、裁判が人肉捜索に大きな影響を与えるとは考え難い。・・・
 ニュース・サイトや個人のブログは中共ではそれほど影響力がないし、ソーシャル・ネットワーキングも本格的に離陸したとは言い難い。
 <結局、>極めて重要なものとして残るのは、おおむね匿名によるオンライン・フォーラムであり、そこから人肉捜索が始まる。
 これらのフォーラムは、英語圏のインターネットのどんなものよりも参加的で動的でポピュリスト的で、恐らくはより民主主義的であるところの、公共空間へと進化してきた。・・・
 出版物やテレビ網は国家統制の下にあって、多くの議論を呼ぶ事案を扱うことができない。
 BBS<=Bulletin Board System=電子掲示板システム
http://ejje.weblio.jp/content/BBS (太田)
・・中共では、日本で言えば、かつてニフティー等が提供していたBBSを、インターネットが本格化した現在のオンライン・フォーラムを指す言葉として用いている・・>は、そこでおいしい(juicy)話が出現するわけだが、その話が十分大きくなると主流メディアによって更に広汎にばらまかれる。・・・
 ・・・中共では、誰もがかつて到底想像もできなかった速度で生活が変化しているところ、その各コミュニティーにおいて、人々は、彼等が直面する諸問題を何とかしたいという願望を抱いている。・・・
 この国では、誰もがかつて到底想像もできなかった速度で生活が変化しているのだ。
 政府にはこの種の話が消えてしまうようにするテクノロジーと力があるけれど、政府は、ネチズン達に対して立ち上がろうとはしてこなかった。
 それは、多分、人肉捜索が地方レベルの官吏に狙いを定めてきたからだろう。
 その多くが腐敗していると考えられてきたにもかかわらず、北京にいる中央政府の官吏や彼等の子供達に対しては、公然たる人肉捜索はなされたことがないのだ。・・・
 ・・・大衆に嫌悪感を抱かせることで地方の官僚機構を管理するという観念は、民主主義的伝統というよりは毛沢東主義的伝統に属する。・・・
 文化大革命<(1960年代後半〜1970年代前半)>中、毛沢東<(1893〜76年)>は、市民達に向かって、ブルジョワ的であったり腐敗していたりする地方官吏に対して蜂起することを奨励した。
 だから、人肉捜索のことを紅衛兵バージョン2と呼ぶ者がこれまでいるのだ。・・・
 人肉捜索エンジンは、政府に対する様々な圧力が上昇する一方の社会において、安全弁として機能することができる。
 ・・・<当局は、>怒りを止めたり、全員を黙らせたり、インターネットを止めたりはできないので、最善の努力をして<これらを>水路に流してやろうと試みるわけだ。
 <すなわち、>水力発電のプロジェクトにおける水路のようなものを企画し、管理するわけだ。・・・
 それは気(qi)、すなわち怒りを、中央政府の正統性を傷つけることが最も少ない場所へと逸らす素晴らしい方法なのだ。・・・
 中共政府は、市民達、とりわけ、憤青(fen qing)、すなわち怒れる青年と支那の人々が呼ぶ市民達、のナショナリスティックな熱情を、制御し(harness)、管理し、必要が生じた時には押さえ込むこと、に特に長けていることを証明してきた。
 2008年の北京オリンピックの準備期間における、中共のチベットへの対処ぶりを世界がどうしてかくも不快に思っているかについて、思いをめぐらす代わりに、中共における民衆感情は、異議申し立てをする個人を裏切り者呼ばわりする方向の水路へと<政府によって>流されたのだった。」
http://www.nytimes.com/2010/03/07/magazine/07Human-t.html?ref=world&pagewanted=print

4 終わりに

 日本のネチズン達は、最近、もっぱら韓国のネチズン達と不毛な中傷・ハッキング「戦争」にあけくれているようですが、そんな非生産的なことより、中共のアマ・ネチズンを相手に、彼等の政府批判は褒め、個人のつるし上げについては是々非々で評価し、広義の政府迎合的言辞はおちょくる、という「戦い」を挑んで、彼等を善導してやって欲しいものです。
 プロ・ネチズンに対しては?
 危なすぎるので「戦い」など挑まない方が良さそうです。

(完)