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太田述正コラム#3854(2010.2.26)
<米国での軍事論争2題(その2)>(2010.3.31公開)

 そのいくつかをご紹介しましょう。

a:かくも大勢の兵士達が必要とされる一つの理由は、一つの地域を適切に警邏する(police)には一定の数が必要だからだ。・・・
 筆者が、敵を「発見する」ことについて語る時、連中を発見すること自体が大事なのではない。
 大事なのは、住民を保護することであり、この住民をしてこっちの側が最善だという気持ちにさせることなのだ。・・・

→「戦い」に勝利するには小兵力で足りるとしても、占領するためには大兵力が必要になるということ。この批判は適切です。(太田)

b:・・・<筆者が提起した>話題は、大局的に言えば、数多のドイツの戦略家や戦術家達によって約90年前<、すなわち、第一次世界大戦の時>に既に論じられている。
 彼等は、暴れまくり主導的な(with violence and initiative)数多い自律的な混成武器部隊群を推奨し採択した。
 その結果は、(パンツァー1と2という)劣った技術<の戦車>が連合軍の、より高度な武器を搭載しているけれどより遅くて受動的な(reactive)戦車群を、何年にもわたって包囲し驚愕(gobsmack)させた。・・・
 機動(maneuver)を用いるのは特段目新しいことではない。
 「群がること」は「主導的であること(using initiative)」に新たな装いをさせた言葉に他ならないのだ。・・・

→はーそうだったの? とこのあたりは、この投稿者の蘊蓄に耳を傾けるほかありません。(太田)

c:・・・ドイツ軍が戦争の時にあれほどうまくやったのは、彼等は失敗した者よりも主導的でなかった者をもっぱら罰したからだ。・・・

→このあたりは、「太平洋戦争」の初期における帝国陸軍をちょっと彷彿とさせますね。(太田)

d:・・・支那や台湾上空の空戦の初期段階において、蝟集する小艦艇群のネットワークでもってどうやって勝利するというのだ。
 その答えだが、航空母艦なしでは勝利することはできない。
 そして空戦に勝利できなければ、海軍は<いいように狙い撃ちされる>座っているアヒルの群に堕してしまう。

→この批判も適切です。(太田)
 
e:私が最初にこの論考を読み始めた時、私は、ベトラユース(Petraeus<。前在イラク米軍司令官、現米中央軍司令官>)の対叛乱努力とアフガニスタンにおける民事/法執行/種族民兵、そして米軍との間の緊密な連携(cohesion)の必要性に関連する事項が書かれているものと期待した。
 ところがそうではなかった。
 <書かれていたの>は、ラムズフェルト<前米国防長官>とウォルフォヴィッツ<前米国防副長官>によるひどい<米軍>管理の失敗についての開き直り(excuse)だった。
 <この筆者>がラムズフェルトの元顧問だと知り、それで読めたぞ、と思った。・・・
→ここ、笑っちゃいますね。繰り返しになりますが、「戦い」に勝利することだけにラムズフェルトらは努力を傾注し、その後のことをほとんど考えなかったわけです。(太田)

f:・・・もし君が叛乱者たる弱者であったならば、君の強みは、見つけ、戦うこと(engaging)が困難で、かつ機会をとらえて、諸目標をネットワークないしネットワーク抜きで襲うところの、小部隊に存する。
 だからといって、米国がその敵対者達の戦術をそっくりそのまま採択すべきだということにはならない。
 そんなことをしたら、自分の強みを蔑ろにし、敵にその強みを発揮させることになってしまう。
 一つだけ<筆者が言っていることで>正しいのは、最近の戦争では、発見することが戦うことよりも重要だという点だ。
 我々が(<開戦後>最初の一週間が経過した後の)イラクとアフガニスタンで直面した困難性は、敵がどこにいるのかが分からなかったことだ。
 一旦敵を見つけさえすれば、我々は(、それがF-22であれ巡航ミサイルであれドローンであれ良く訓練され良く武装した部隊であれ、)我々の力を発揮して彼等を極めて容易に打ち破ることができる。・・・

→この投稿者の言っていることも説得力がありますね。(太田)

 全般的に、筆者の分が悪い印象を受けます。
 それにつけても、米国の比較的上澄みの人々の軍事リテラシーの高さが改めて推し量れますね。
 とりわけ羨ましいのは、(投稿者が匿名であるという点では太田コラムの投稿者達と同じですが、)相当程度噛み合ったディスカッションが成立している点です。
 これは、米国の社会がディスカッション社会であることもあり、米国の人々がディスカッション教育を初等教育の時からずっと受けているからです。(太田)

(続く)

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