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太田述正コラム#3852(2010.2.25)
<米国での軍事論争2題(その1)>(2010.3.30公開)
1 始めに
米フォーリンポリシー誌(電子版)が、二つの軍事記事を同時に掲載し、読者の間で活発な論議を呼んでいます。
それぞれの記事の内容をかいつまんでご紹介しましょう。
2 ネット時代の軍事力のあり方
「・・・米軍の造兵廠(arsenal)において最も欠落しているのは、ネットワーキング・・それは、新しい種類の集団的な諜報、力、そして良いものであれ悪いものであれ、抱くべき目的、をもたらすところの、人々の間の緩やかだけど活発な相互接続・・についての深い理解だ。・・・
ルール1:「多数の小さいもの」は「少数の大きなもの」を打ち破る。
・・・
例えば、米海兵隊はわずか3つの現役師団しか持っていないし、米陸軍は10個だけだ。
また、米海軍はわずか11の空母襲撃(strike)群を持つのみだし、米空軍は約3ダースの攻撃航空団を持つのみだ。・・・
ルール2:側翼<攻撃>よりも事実の発見の方が大切なり。
・・・
伝統的に、軍隊は己をおおむね「射撃(firing)組織」と見てきた。
しかし、この時代には、軍隊は「感知(sensory)組織」にもならなければならない。・・・
望ましいのは、<イラクやアフガニスタンにおけるような>つかまえどころのない敵に対する大規模な遠征で消耗するのではなく、小規模なネットワークで結ばれた「発見者(finder)」軍団群によって成功を成就することだ。・・・
この、「発見すること」への・・・移行は、ルール1によってつくられる必要が生じたところの、「多数の小さい」部隊群を大いに強化する潜在力を持っている。・・・
ルール3:群がること(swarming)は新たな兵力増強(surging)<方法>なり。
・・・
様々な方向からの同時攻撃は、紛争におけるすこぶるつきの最先端<の現象>かもしれないが、その歴史(lineage)は極めて古い。・・・
この種の戦い方の絶頂は、恐らくは13世紀のモンゴルの登場によってもたらされたと考えられる。
彼等は、この教義に「カラスの群(Crow Swarm)」という名前をつけていた。
<モンゴル軍の>攻撃が近接した地域で騎兵の突撃によって実施されず、蝟集した敵目標に対して弓矢を雨のように降らせるやり方で実施された場合は、汗達はそれを「流星群(Falling Stars)」と呼んだ。・・・
しかし、群がることは、15世紀に銃が登場することによって廃れるようになった。
というのは、大量の小銃による一斉射撃の方が優ったからだ。
産業過程は、集結(massing)を一層奨励した。
そして、機械化は、巨大な<敵部隊の>側翼<攻撃のための>機動を、小さな群(swarm)<による敵への攻撃>よりも優位にした。
しかし、先端的ITに溢れた全球的相互依存の時代となった今では、再び、極めて小規模な戦闘者チーム群でさえもが、大いなる攪乱をもたらすことができるようになった。
「40人の男がいれば世界を震撼させることができる」という古いモンゴルの諺がある。
アルカーイダがその半分にも満たない人数で2001年9月11日にやったことを見よ。・・・
リデル・ハート(Liddell Hart)は、1935年の著述において、ある時点で「古からの軍事力の集中が軍事力のつかみどころのない遍在的な分散・・あらゆる所に圧力をかけるけれどそれに対して攻撃のしようのない・・によって取って代わられる可能性が高い」と予言した。・・・
どのように群れるべきかを知っているところの、ネットワークで結ばれた米軍は、はるかに小規模の・・今日200万人以上に達しているそれよりも3分の2減じることも不可能ではない・・、しかし多様の軍種から構成される、より小さな部隊群数百へと再編された現役マンパワーを持つことになるだろう。
軍事的介入のモデルは、2001年末のアフガニスタンでタリバンとアルカーイダを打ち破った200人の特殊部隊たる「騎乗兵士達(horse soldiers)」だ。
このようなチーム群は、潤沢な予備を保持しておくことで、「第一波」を交替させたり、その他の様々な危機に対処させたり、といった具合に、迅速かつ致死的に展開させることができよう。
海においては、火力を一つかみくらいの数の、大きな、どんどん脆弱化しつつある超空母群に集中させる代わりに、米海軍は、その能力を、極めてスマートな諸兵器を装備した何百もの小さな舟艇に分散させるべきだ。
その隠密性と汎用性にかんがみ潜水艦群は維持されるべきだが、空母群は退役させるべきだ。
そして空においては、航空団は、機数を一つかみくらいの数ずつにまで減らしつつも数を増やすべきだ。
言うまでもないが、ネットワーキングは、これらの小さな一片一片が、一緒になって群として大きな、あるいは小さな敵にあたることを引き続き可能にしている。・・・」
http://www.foreignpolicy.com/articles/2010/02/22/the_new_rules_of_war?print=yes&hidecomments=yes&page=full
(2月25日アクセス。以下同じ)
案の定、この論考に対しては、読者の間で議論が沸騰しました。
(続く)
<米国での軍事論争2題(その1)>(2010.3.30公開)
1 始めに
米フォーリンポリシー誌(電子版)が、二つの軍事記事を同時に掲載し、読者の間で活発な論議を呼んでいます。
それぞれの記事の内容をかいつまんでご紹介しましょう。
2 ネット時代の軍事力のあり方
「・・・米軍の造兵廠(arsenal)において最も欠落しているのは、ネットワーキング・・それは、新しい種類の集団的な諜報、力、そして良いものであれ悪いものであれ、抱くべき目的、をもたらすところの、人々の間の緩やかだけど活発な相互接続・・についての深い理解だ。・・・
ルール1:「多数の小さいもの」は「少数の大きなもの」を打ち破る。
・・・
例えば、米海兵隊はわずか3つの現役師団しか持っていないし、米陸軍は10個だけだ。
また、米海軍はわずか11の空母襲撃(strike)群を持つのみだし、米空軍は約3ダースの攻撃航空団を持つのみだ。・・・
ルール2:側翼<攻撃>よりも事実の発見の方が大切なり。
・・・
伝統的に、軍隊は己をおおむね「射撃(firing)組織」と見てきた。
しかし、この時代には、軍隊は「感知(sensory)組織」にもならなければならない。・・・
望ましいのは、<イラクやアフガニスタンにおけるような>つかまえどころのない敵に対する大規模な遠征で消耗するのではなく、小規模なネットワークで結ばれた「発見者(finder)」軍団群によって成功を成就することだ。・・・
この、「発見すること」への・・・移行は、ルール1によってつくられる必要が生じたところの、「多数の小さい」部隊群を大いに強化する潜在力を持っている。・・・
ルール3:群がること(swarming)は新たな兵力増強(surging)<方法>なり。
・・・
様々な方向からの同時攻撃は、紛争におけるすこぶるつきの最先端<の現象>かもしれないが、その歴史(lineage)は極めて古い。・・・
この種の戦い方の絶頂は、恐らくは13世紀のモンゴルの登場によってもたらされたと考えられる。
彼等は、この教義に「カラスの群(Crow Swarm)」という名前をつけていた。
<モンゴル軍の>攻撃が近接した地域で騎兵の突撃によって実施されず、蝟集した敵目標に対して弓矢を雨のように降らせるやり方で実施された場合は、汗達はそれを「流星群(Falling Stars)」と呼んだ。・・・
しかし、群がることは、15世紀に銃が登場することによって廃れるようになった。
というのは、大量の小銃による一斉射撃の方が優ったからだ。
産業過程は、集結(massing)を一層奨励した。
そして、機械化は、巨大な<敵部隊の>側翼<攻撃のための>機動を、小さな群(swarm)<による敵への攻撃>よりも優位にした。
しかし、先端的ITに溢れた全球的相互依存の時代となった今では、再び、極めて小規模な戦闘者チーム群でさえもが、大いなる攪乱をもたらすことができるようになった。
「40人の男がいれば世界を震撼させることができる」という古いモンゴルの諺がある。
アルカーイダがその半分にも満たない人数で2001年9月11日にやったことを見よ。・・・
リデル・ハート(Liddell Hart)は、1935年の著述において、ある時点で「古からの軍事力の集中が軍事力のつかみどころのない遍在的な分散・・あらゆる所に圧力をかけるけれどそれに対して攻撃のしようのない・・によって取って代わられる可能性が高い」と予言した。・・・
どのように群れるべきかを知っているところの、ネットワークで結ばれた米軍は、はるかに小規模の・・今日200万人以上に達しているそれよりも3分の2減じることも不可能ではない・・、しかし多様の軍種から構成される、より小さな部隊群数百へと再編された現役マンパワーを持つことになるだろう。
軍事的介入のモデルは、2001年末のアフガニスタンでタリバンとアルカーイダを打ち破った200人の特殊部隊たる「騎乗兵士達(horse soldiers)」だ。
このようなチーム群は、潤沢な予備を保持しておくことで、「第一波」を交替させたり、その他の様々な危機に対処させたり、といった具合に、迅速かつ致死的に展開させることができよう。
海においては、火力を一つかみくらいの数の、大きな、どんどん脆弱化しつつある超空母群に集中させる代わりに、米海軍は、その能力を、極めてスマートな諸兵器を装備した何百もの小さな舟艇に分散させるべきだ。
その隠密性と汎用性にかんがみ潜水艦群は維持されるべきだが、空母群は退役させるべきだ。
そして空においては、航空団は、機数を一つかみくらいの数ずつにまで減らしつつも数を増やすべきだ。
言うまでもないが、ネットワーキングは、これらの小さな一片一片が、一緒になって群として大きな、あるいは小さな敵にあたることを引き続き可能にしている。・・・」
http://www.foreignpolicy.com/articles/2010/02/22/the_new_rules_of_war?print=yes&hidecomments=yes&page=full
(2月25日アクセス。以下同じ)
案の定、この論考に対しては、読者の間で議論が沸騰しました。
(続く)
太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
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