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太田述正コラム#3565(2009.10.5)
<イギリス女性のフランス論(その1)>(2009.11.5公開)

1 始めに

 ルーシー・ワダム(Lucy Wadham)というイギリス人女性によるフランス論、'The Secret Life of France' が上梓され、英国で大きな話題になっているので、書評をもとにその内容の上澄みをご紹介したいと思います。

A:http://www.ft.com/cms/s/2/8df42d4c-aee3-11de-96d7-00144feabdc0.html
Debra Ollivier, What French Women Know: About Love, Sex and Other Affairs of the Heart、Michael Simkins, Détour de France: An Englishman in Search of a Continental Education、John Dummer, Serge Bastarde Ate My Baguette、の書評を兼ねる)
(10月3日アクセス。以下同じ)
B:http://www.guardian.co.uk/books/2009/jun/21/secret-life-of-france-lucy-wadhamChttp://itsacrime.typepad.com/its_a_crime_or_a_mystery/2009/06/the-secret-life-of-france-lucy-wadham-noncrime.html
D:http://www.telegraph.co.uk/culture/books/bookreviews/5650926/The-Secret-Life-of-France-by-Lucy-Wadham-and-Au-Revoir-to-All-That-by-Michael-Steinberger-review.html
(Michael Steinberger, Au Revoir to All That、の書評を兼ねる)
E:http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/books/reviews/the-secret-life-of-france-by-lucy-wadham-1739626.html
F:http://www.independent.ie/entertainment/books/the-french-paradox--its-still-a-mystery-1891144.html?service=Print
(Debra Ollivier, What French Women Know: About Love, Sex and Other Affairs of the Heart、Catherine Sanderson, French Kissing by、Janine di Giovanni, Cafe Luxembourg、の書評を兼ねる)

 著者のワダムは、オックスフォード大学の学生だった時にフランス人男性と結婚し、22年前にフランスに渡り、彼との間に設けた4人の子供達を育て上げ、20年後に離婚し、なおフランスにとどまっているという女性です。

 正直、今回のシリーズは、ホネです。
 というのは、フランス人の思考様式は、アングロサクソンの思考様式に比べて我々日本人にはなじみが少なく、しかも本来的に分かりにくいところ、著者のワダムが、私には、フランス人化している部分があるように思える点が第一、また、この本の英国の書評子達が、この種の分野を扱う場合特有の韜晦気味の文章を書いている点が第二です。
 よって、果たしてうまく料理して皆さんに提供できるかどうか、心許ない限りですが、とにかく始めましょう。
 フランスに詳しい方々からのコメントを期待しています。

2 イギリス女性のフランス論

 (1)序

 「・・・アングロサクソンは、・・・彼等のガリア人たる(Gallic)隣人達を慰みと恐怖の入り交じった思いで見守ってきた。・・・
 フランスは、我々が憎むために愛し、愛すために憎みつつも、愛し、憎み足らない国なのだ。
 我々<イギリス人>は、フランスに向けて驚異的な数で、休暇を過ごし、移住する。(このところの景気後退によりちょっと勢いがにぶっているが・・。)
 そして、フランスのささいな弱点(foibles)をジョークやTVシリーズに仕立て上げる。
 更に、いかにフランス人達がかくも腹立たしいほどに<我々と>異なっているのかについて本を書く。・・・
 英国人のフランス人に対する畏敬的無理解(awed incomprehension)は、3年前に改めて披露されて広範囲の慰みものになったところの、1944年の在仏英国兵士達に対する指示なる諸マニュアルに体現されている。
 このマニュアルの一つは、「フランス人の可愛い女の子が君にほほえみかけてきたとして、彼女がカンカンを踊るつもりや君を寝台に誘おうとするつもりがあるなどと想像するようなことがあれば、自分に、そして英国とフランスとの関係に、数多の悶着を引き起こす危険性がある」と警告している。・・・」(A)

 「在仏英国人には二つのタイプがある。
 第一のタイプは、パリの南西かピエ・ダ・テール(pied a terre)に家を買って、リュクサンブール(Luxembourg)公園で食べ、飲み、歩き回る。
 こういう人々は、フランスに対する愛情を失うことは決してない。
 というのは、彼等は決して日常生活の核心に対処する必要がないからだ。
 第二のタイプは、ワダムが言うように、「土着化」し、彼女のように真の「秘密の」フランスについて学ぶ。
 ワダムがフランスを修得(master)するには5年かかった。
 そして彼女は、(ジャーナリストとして働いていた時に知り合った秘密の警察官の助けを借りて)修得するや否や、MI6の要員のような粘り強さでもってフランスの言語と文化に身を投じたのだ。・・・」(B)

(続く)

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