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太田述正コラム#3564(2009.10.5)
<皆さんとディスカッション(続x618)>

<KT>

 「ソーカル事件」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%AB%E4%BA%8B%E4%BB%B6
という事件で、論文をきちんと理解せずに雑誌に載せた編集者は愚かだったのでしょうか。
 啓蒙に真摯でないと、相手に伝える言葉は何も響かせないのですね。

<太田>

 投稿は、原則として、過去のコラムにひっかけてもらう必要があるので、コラム#3041に言及してくれたらよかったですね。
 ま、ともかくこの事件は傑作です。

<サヨク>

 失礼しました<(コラム#3562)>。ぼくは本は持ってない、パソコンは持ってない、壊れかかった携帯一台と云う状態で、さらに心もとない記憶で書いてしまいました。ご容赦下さい。ネ!

<太田>

 フツー、前回のような投稿は、コラムに転載しないんですが、転載するに足りる投稿を将来に向けて増やすために、かねてより勝手知ったるサヨクさんに生け贄の山羊の役を務めていただいた、という次第です。
 あしからず。
 しかし、上記ソーカル事件にコラム#3041で言及されたサヨクさん、本やパソコンをお持ちでないなどととんだご謙遜を。

<ταατ>(「たった一人の反乱」より)

・・・
 オバマ政権も実は東アジア共同体には反対
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/1247405/
 東アジア共同体の鳩山提案は時代遅れ――アメリカの専門家が語る
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/1247892/
 鳩山首相「中国とは兄弟」 → 東アジア共同体に対する中国人の意見
http://blog.goo.ne.jp/dongyingwenren/e/60f68d04e0a67bfc15f324c449097503

 新政権の硬直性と強権主義(丸山公紀)
http://archive.mag2.com/0000013290/20091002000000000.html

 「鳩山民主党」に欠落する「政治的リアリズム」
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20090928-01-1501.html

<太田>

 ヘイユー、コメントを頼んま!

<kt2>

 自民党のHPで「憲法の改正のポイント」を見ると、
「憲法9条では、戦力の保持は禁止され、日本には軍隊はありません。しかし、日本は独立国である関係から、国を防衛するために自衛隊があります。」
「私たちの目指す9条の改正は、まず自衛隊を軍隊として位置付けることです。次に、集団的自衛権の行使も可能となるようにする必要があります。」
「自衛のための戦力保持の明記」
http://www.jimin.jp/jimin/jimin/2004_seisaku/kenpou/index.html

 先の大戦の教訓は、軍隊は要らない、ということだ。国民に膨大な犠牲を強いるからだ。
 自民党の「憲法の改正のポイント」」を見るまでもなく、憲法上、自衛隊は軍隊で有り得ない。
 国の説明によれば自衛隊は、戦前のような軍隊ではなく、侵略戦争から国民を守る部隊という位置付けだ。
 だからこそ、侵略戦争を恐れる人たちは違憲だと思っていても自衛隊に反対しないのだ。
 自衛隊という名称が紛らわしいのなら、警察予備隊に戻すなり武装警察と改名するなりすればよい。

<太田>

 次の1と2は、議論の余地がない。

1.「国民に膨大な犠牲を強い」たにもかかわらず、日本以外のすべての大戦参戦国の「教訓」は、「軍隊は要」る「ということ」だった。
2.「侵略戦争から国民を守る部隊」は、それを「自衛隊」と呼ぼうが「武装警察」と改名しようと、また、日本国憲法の文面や解釈がどうなっていようと、国際法上は軍隊だ。

 さて、どうやらあなたも「自衛隊に反対しない」人の一人らしいが、2を前提にすれば、あなたは日本は軍隊を持つべきだって主張してることになるんだよ。

<kt2>

≫国際的な常識みたいね。↓
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009092902000231.html≪(コラム#3554。太田)

 東京新聞の誤った記事に基づく誤解だ。
 医療制度ランキングではないことは、ニュースソースに当たれば、すぐ分かることだ。
"It is important to note that the Conference Board is not attempting to rate Canada’s health-care system. "
http://www.conferenceboard.ca/hcp/details/health.aspx

 採用されている指標からも明らかだが、彼らの目的はカナダ人の健康状態を評価することだ。
 ほとんどの指標は死亡率なのだから、当たり前のことだが、評価結果A−Dは平均寿命ランキングとほぼ同じだ。

 先進国の平均寿命は生活習慣病(心疾患、脳血管障害、癌)によってほとんど決まるものであって、医療制度の良否は一要因に過ぎないことは理解すべきだ。
 癌を除いて、突然死につながる疾患だからだ。

<太田>

 なるほど、ここはおっしゃるとおりだね。
 こういう杜撰な記事が多いから、国内ニュースを除き、原則として私は日本の主要メディアは典拠としないのだけど、魔が差したと言うべきか。
 ただし、後述するけど、少なくとも日本については、このランキングは日本の医療制度(保健制度を含む)の高さの指標なんだな。

<kt2>

 幹部官僚と呼ばれる素人がオソマツ厚生行政を担っているにもかかわらず、わが国の平均寿命が世界一であるのは、幸運(食習慣)以外の何物でもない。
 欧米並の医療水準、公衆衛生水準になれば、ダントツの長寿国になるポテンシャルを秘めている。

≫英国はサッチャー政権の医療費抑制により医療崩壊した国だ。わが国は80年代の英国と同じ道を辿っている。≪(コラム#3536。kt2)

 ひどい医療崩壊が進行していることを理解している人はどれ位いるのだろう。
 公衆衛生も戦前からダメなままだ。
 「国際的な常識みたいね。」のような無理解であると官僚天国が続くだけだ。
 病気になってからでは遅いのだ。

<太田>

 日本の公務員数、就中国家公務員数の対人口比が先進諸国中有数の低さ(典拠省略)なのは、エージェンシー関係の重層構造を特徴とする日本型経済体制の下、日本在住者たる潜在的・顕在的患者に至るまで、行政の一端を担っているからだ。
 ですから、国家公務員、とりわけ幹部国家公務員が無能であったり退廃していたとしても、中間に介在するエージェントや末端のエージェントたる日本在住の一人一人の住民がこの無能さをカバーできる程度に有能であれば、当該行政はおおむね効果的・効率的に営まれる、ということもありうる。
 医療/保健行政の分野はその典型的な例なのではないか、と私は申し上げているワケ。
 (だからと言って、今後とも日本の医療/保健行政が効果的・効率的に営まれるかどうかは別問題。私自身も、大変懸念を抱いているところだ。)

<KY>

 御無沙汰しております。
 英国よりポーランドに移住して暫く経ちますが、随分と扱き使われておりましたので、自国の事情どころか、さして遠くも無い英国の事情にも疎くなるような状況で、最近の議論は殆ど読めておりません。情け無い限りであります。

 実に7年に及んだ英国生活にも終止符を打って、惜別の情絶ち難くも永遠に離英した心算だったのですが、1年で辞職してさっさと戻る事にしました。
 恐らくキャリアが潰れますが、今更どうでも良いです。
 理由は天文学的に多いですが、その一つはあまりに度外れた人種差別であります。
 とにかく、道を歩いていると、やたらと「ちんちゅんちゃん」だの、「おい、ちゃんころ」だの、色々と言われます。
 一杯やって上機嫌で歩いていると、”White Power”などと叫びながら殴り掛って来る類人猿の親戚がいます。
 飲み屋に行けば、自分の目を横に引っ張りながら「こんな細い目で本当に見えるのか?」なんて言い出す馬鹿者がいます。
 実に辛気臭い糞田舎の文化亡国です。
 バスを待っている時にスキンヘッドの大群の襲撃があり、自分は上手く身を隠して遣り過ごしたものの、目の前でヒッピーや黒人観光客やら何やらがボコボコにされるのも見ました。飲み屋や飯屋でも、あからさまに無視されたりします。数日前にも路上で突然に唾を吐き掛けられました。
 それで、憂さ晴らしに女はどうかというと、金髪の女子大生と飯でも食って一緒に歩いていると、見るからにIQの低そうな馬鹿者に絡まれます。以前ロシア語を齧ったもので、ポーランド語も徐々に解るようになって来ましたが、周囲の会話の理解度が上昇するに従って不愉快度が増して来るのが、これまた何とも耐え難いです。実はポーランド語の授業も暫く取っていたのですが、ある晩に路上で、「おい、モンゴル、ケバブ1つくれ。ハッハッハ」と言われて、即座に止めました。
 ポーランド人が「ポーランドの古都」とか「文化的首都」と呼ぶ大学町でこのザマですから、他は推して知るべし。この街には若干の支那人や越南人がいて、多くはポーランド国籍を持ち、色々な商売をしておりますが、別に具体的な悪い話は聞かないし、実際に悪くも無く、英国の貧民窟の一部少数民族の様に、徒党を組んで世紀末的無茶苦茶をやる事も無く、何故に嫌悪されるのか不明です。
 ある人曰く、「あいつら不法移民だから」だそうですが、ポーランド人が不法移民を非難するなぞ実に「風上に唾」の笑止千万で、いまだに彼等が渡米時にヴィザを要求されるのが何故か、自分達で忘れているのでしょうか。
 最近では渡英したポーランド人が人種差別問題を起こすというオチまでついています。
 要するに勘違いのレイシストなだけでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=3OFbD7hYkWg
http://islam-west.com/2007/04/immigrantion-racism-and-polish.html

 侮辱的な事を言っておきながら、日本人と分かると突然に愛想が良くなる奴は多いのですが、「お前等はOKだ」と言われると、「自分の民族について、貴様等に許可を貰う理由は無い」と思います。「じゃあ訊くが、俺が仮に支那人だったら、一体どうだって言うんだ?それで突然俺の価値が下がるのか?」と訊いた事もありますが、そういう発想自体を理解して貰えない。
 これが黒人や中東系、インド人になると、大抵は私なんかとは比較にならぬ程に酷い目に遭っております。
 何ともおぞましい限りです。私の周りでも、ボコボコにされたナイジェリア人の医学生とか、ナイフを持ったゴリラ野郎の集団に追い掛け回されて、必死に逃げたインド人だとか、チラホラ見掛けられます。
 しかし、こういう事態は殆ど報道もされないし、一般の民衆は知りもしないし、恐らく知りたくも無いし、問題だとも思わないのでしょう。
 私がそういう話をしても、”It can’t be true” “You’re making it up” “Come on. It isn’t Ukraine”という感じか、或いは ”Stop bitching and behave like a man”という様な反応が多いのが、野蛮な経験そのもの以上に腹が立ちます。

 人種差別と言えば、いまだにユダヤ人差別が存在します。
 街外れを歩いていると、フットボールファンの仕業でしょうが、ダビデの星を吊るしている落書きが沢山あります。
 何も1930年台のミュンヘンの話じゃありません。現在の欧州です。
 英国ではこんな醜悪な代物は一度も見ませんでした。
 それがポーランドでは、例えば飲み屋の客なんかに、私は実際に何回か「俺はユダヤ人が嫌いだ」と言われた事があります。
 一体彼等がポーランド人に何をしたというのでしょうか?
 ある人曰く、”They don’t really mean it. They haven’t even seen any real Jews”だそうですが、そんな訳は無いし、本当にそうだったら完全な馬鹿者でしょう。そこらで “Polska dla Polakow (Poland for Poles)” という落書きを見掛けるんですが、だったら ”Britain for Brits”じゃないのか、来るんじゃねえよ(苦笑)って言いたくもなります。
http://4.bp.blogspot.com/_5OhwJUeC4G0/SX9jyyhfiNI/AAAAAAAAAhw/raV3_9pxVmI/s1600-h/racist+football.jpg
http://www.diplo.jp/articles07/0704.html
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/northamerica/usa/barackobama/3473953/Poland-denies-Barack-Obama-cannibal-joke.html
http://www.washingtontimes.com/weblogs/kralev-diplomacy/2008/nov/10/another-polish-thorn-in-obamas-crown/

http://www.youtube.com/watch?v=GUg54zFCC-M
 (この高名な坊主は自分のラジオ局を持っていて、似たような発言を垂れ流しているが、放送免許停止等の措置は一切無い。)
http://en.wikipedia.org/wiki/Radio_Maryja

 さらにもう一点挙げれば、救い難い宗教的狭量があります。
 ちょっとした教養人に、”I think people who don’t believe in Jesus are fundamentally evil”とか言われた時は、あまりの中世振りに軽く眩暈がしましたが、これに類する事を言う連中は多く、最後の”evil”が”unhappy”や”unfaithful”や “untrustworthy”やら、適当に替わる事に、後々気が付きました。
 元々が日本人な上に、組織化された宗教や固定化された教義(フランス的な世俗主義教や原理主義的無神論なども含めて)に対するイングランド的な懐疑と嘲笑に慣れてしまった私には、実に度し難く野蛮に見えます。

 以前ゲイ・パレードがありました。これが右翼とゲイの衝突になったのは予想通りで、野次馬と酒を飲みながら遠くから見物しましたが、その頃街の至る所に、某カトリック団体による、”Do not bring deviation to Cracow!”という黄色いポスターが貼られていました。これが尋常じゃない枚数なんで、費用を考えれば支持者というか出資者も非常に多数なんでしょう。
http://www.piotrskarga.pl/ps,3541,8,0,1,I,informacje.html

別に個人的に何を嫌っても勝手ですが、わざわざ大金を投じて少数派に対する憎悪と排撃を広告するという、何とも情熱に満ちた宗教的善意は、ナチの活動家のそれと重なって見えます。
 やはりナチズムは欧州大陸的な発想なのでしょう。
 個人的にも、ある信心深い工学修士の男に、「イギリスではなんでホモが許されているんだ?俺の町ではリンチが普通だ」と、堂々と言われて絶句しました。もう異端審問の世界です。
 こういう狭量で粗暴な未開の連中が跋扈しない国に住むのは実に快適ですが、心からの感謝を込めてヘンリー八世の墓に献花でもしましょうか。

 これは全くの推測で、典拠は一切有りませんが、実は本来の欧州大陸諸国では、これが常態であって、たまたま共産主義の鉄のカーテンで遮蔽されていた為に、西欧では一応行われた諸々の内省が起きなかったから、元来の性格が保存されているだけでは無いのでしょうか。
 旧共産圏であるドイツ東部でもスキンヘッドの暴力が酷いという他に、何も根拠はありませんが。

 最後にもう一点。
 ポーランドでは「我々は常に被害者であった」というデマが堅持されています。
 これも実際は大嘘な訳ですが、自国の受難が民族的アイデンティティーの基盤になっていますから、誰も否定出来ない。
 実際はポーランド貴族(シュラフタ)は人口の10パーセント以上も居ましたから、食い扶持を探すためにウクライナのかなり広範囲に出掛けていって、堂々と居座って、農奴を収奪していました。
 この連中の強欲のゆえにウクライナの農民が反乱し、これに乗じて諸外国が攻め込むものの、それでも自分勝手な大貴族(マグナート)は纏まらず、紆余曲折の末に国が消滅します。
 そもそも国王の「ポニャトフスキ」自体が、ロシアの女帝の元愛人な訳です。これじゃ被害者が聞いて呆れるってものです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Catherine_II_of_Russia#Poniatowski
http://en.wikipedia.org/wiki/Targowica_Confederation

 あまり知られてはいませんが、第一次大戦の終了後に、ポーランドは英仏に植民地の割譲を要求して無視されました。
 しかし、そもそもポーランドが独立出来たのは、この両国の流血で中央同盟が倒れ、ドイツ帝国とオーストリア・ハンガリー帝国が潰れたからの筈です。
 シレジア蜂起だって応援したのはフランスです。この国では、”We were betrayed by the West”という一言がやたらに聞かれます。それこそ枕詞みたいです。
 しかし、独立の恩人たる両国に向かってこういう無礼な態度で臨みながら、その次の大戦では自分は尊重されるべきであると言う発想は、いささか傲岸不遜かつ間抜けではないか。
 1930年代の英仏の政治家だって若い頃に塹壕戦で死ぬ思いをした人物は多かった筈です。そんな彼らが、危険を冒してまでモロトフ・リッベントロップ協定に介入して、こういう外交的不確定要素そのものの国を守る理由なんて無いでしょう。
http://en.wikipedia.org/wiki/Maritime_and_Colonial_League
http://en.wikipedia.org/wiki/Silesian_uprisings
http://www.jewishvirtuallibrary.org/jsource/judaica/ejud_0002_0013_0_12983.html

 本来ポーランドは非常に豊かな国だったのですが、その国富は貴族の簒奪と浪費で消えてしまい、まともなインフラが出来上がったのは、皮肉な事に列強による分割統治が理由な訳です。
 ワルシャワなんて、ロシア人が来るまでは碌な下水道もありませんでした。
http://en.wikipedia.org/wiki/Sokrates_Starynkiewicz
http://en.wikipedia.org/wiki/Frederick_II_of_Prussia#First_Partition_of_Poland

 “Frederick quickly began improving the infrastructure of West Prussia, reforming its administrative and legal code, and improving the school system. However, Frederick looked upon many of his new citizens with scorn. He had nothing but contempt for the szlachta, the numerous Polish nobility, and wrote that Poland had "the worst government in Europe with the exception of Turkey". He considered West Prussia as uncivilized as Colonial Canada and compared the Poles to the Iroquois.“

 ただ、そういう話は一切考慮されないし、ユダヤ人迫害は全てナチの責任にして恬として省みない訳です。
 とにかく、ポーランドは欧州の道徳と信仰の防波堤として、神によって造られた国で、受難の運命にあると勝手に思い込んでいる奴等が結構見掛けられます。
 こちらは一応そういう歴史的な話を踏まえているんで、頭の悪い連中に延々と「受難の歴史」についてお国自慢を食らうのが、何とも耐え難いです。

 それでは、なぜ自家撞着と自己欺瞞と偏狭がこれほど見られるのかと言えば、これは私には解かりません。あまりに想定の範囲から逸脱しております。
 もしかして近代が到達しなかったのでしょうか?元々ドイツだったシュレジエンと東プロイセンとポンメルンを領有する一方で、ウクライナ領東ガリチアやリトアニア南部はポーランドに返却されるべきだし、戦後のドイツ系市民の追放は当然だし、1968年のユダヤ人追放は共産主義者がやったから、自分たちは無関係だし、ナチスと一緒にチェコスロバキアに侵攻して、占領地域で民族浄化をしたのは大した事じゃないと言ってのけて、全く矛盾を感じない所謂「知識人」が私の周辺で時折見掛けられるのは、要するに国際法も合理主義もウェストファリア条約も彼等の頭の中に存在しないと言う事です。
http://en.wikipedia.org/wiki/Zaolzie#Part_of_Poland_.281938.E2.80.931939.29

 成文法や教会法以前に、天然自然の人倫があるという発想も恐らく無いのでしょう。
 ですから、「言論の自由」だの「反共」だの「キリスト教国の伝統」だのを盾にして、一番基本の身体の自由を冒涜する様な発想が平気で出て来る。
 日本人と分かると突然に愛想が良くなる奴がいるのも、結局は支那人もユダヤ人もドイツ人も余所者であって、日本人も余所者だが、一応は大国で、利害関係の対立も歴史的遺恨も無いから、文明国民たるキリスト教徒の自分達には及ばないけれども、今のところはOKという発想で、基本的には余所者なら自国籍だろうが合法的就労者だろうが、嫌がらせをしても構わないし、いきなり殴っても良いし、場合によっては追放して殺しても当然だと。
 利害関係の対立が無いと言っても、そりゃ日本がアメリカの属国で、外交が存在しないのだから当然な訳です。

 此処の連中は、アカの他人相手には容赦しません。
 釣銭を誤魔化し、行列に割り込み、不良品を平気で売りつけ、道路を横断する歩行者に向かって自動車を加速させます。
 その話を在英パキスタン人の学友にしたところ、「終わっている国(a fucked-up country)だと、何時誰に騙されるか分からないから、他人を全然信用出来ない。俺の国と一緒さ。そりゃ日本やイギリスじゃないんだから」と、さも当然の様に言っていました。
 やはり、その通りなのでしょう。
 そんな訳で、私の初めての欧州大陸生活は、銭が少々貯まったのと、元々の大陸に対する微妙な懐疑が、非常に明確な軽蔑と悪意に深化しただけで終了の様です。
 ともかく、私はこの国には二度と寄り付かないつもりですし、可能な限りポーランド語も忘れようと思います。立派な辞書も躊躇無くゴミ捨て場に放り込みました。

 そこで何とも慙愧の念に耐えないのは、もし私が日本から直接来ていたら、「支那人じゃなくて日本人と分かると態度が非常に良くなる」という事で感動して、「ポーランドは親日」などと匿名痰壺で与太を垂れ流して喜ぶ、非近代的でオメデタイ連中の一人で終わったであろうという事です。

 以上、肝心の所には典拠らしい典拠は一切無い駄文の上に、強烈な私怨で目が曇っておりますので、学問的価値は皆無ですが、どうしても言わざるを得なかったのです。

 それでは、無事に懐かしいランカシャーに辿り着くまで色々と雑事がありそうで、再び暫く御無沙汰になりそうですが、御元気で。

<太田>

 イヤーこりゃ傑作ですな。
 たまたま本日から「ポーランド史」シリーズ(コラム#3282〜)の公開を始めたところですが、大変面白かった。
 私の欧州観が裏付けられた思いです。
 もっとも、僭越ながら、あなたの欧州観の形成に、若干なりとも私のコラムも貢献したのかもしれませんね。
 今度は、再び英国からの投稿をお待ちしています。
 半年2〜3回、これくらいの分量の投稿をしていただければ、それぞれをコラム扱いとし、名誉有料読者にさせていただきますよ。

 本日の記事の紹介は一つだけです。

 ここが英国(イギリス)のすごいところです。↓

 UK science continues to be the most productive and efficient in the G8・・・
 the UK ranks first among G8 nations on the ratio of citations to public spending. ・・・
 The study found that the UK produced 91,723 scientific papers - just under 8% of the world's total, and third only to the US and China. ・・・
 UK scientists produce a quarter of the papers by EU researchers.
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8285791.stm 
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太田述正コラム#3565(2009.10.5)
<イギリス女性のフランス論(その1)>

→非公開

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