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太田述正コラム#3234(2009.4.24)
<パキスタン解体へ(?)(その1)>(2009.6.5公開)

1 始めに

 パキスタン内で、タリバンが戦略的要衝を制したというのに、4月17日に東京でパキスタンに対する支援について討議する国際会議「パキスタン・フレンズ閣僚会合」を開催し、宗主国米国に「指示」されて、パキスタンに対し、今後2年間で最大10億ドル(約1,000億円)の支援実施表明をした
http://mainichi.jp/select/world/news/20090417dde007030072000c.html
(4月24日アクセス。以下同じ)ばかりの日本の主要マスコミの電子版では、このニュースは碌に取り上げられていません。
 当然のことながら、パキスタンを対テロ戦争遂行の要と見ているところの、米国と、(その上同国の旧宗主国でもある)英国の主要マスコミの電子版では大々的に取り上げられています。
 どのような報道ぶりであるか、ご紹介しましょう。

2 パキスタン解体へ?

 「・・・タリバンがパキスタン<全土>を支配しようとしていることは、今週、約100万人が住む、首都<イスラマバード>からわずか70マイルの所にあるブーネアー(Buner)地区を奪取したことで、明確なものになった。
 米国の軍人のトップであるマイク・マレン(Mike Mullen)<統合参謀本部議長>は、イスラマバードにあって<パキスタン側と>緊急会議を行ってい<る。>・・・
 就任してからわずか8ヶ月の間に、アシフ・アリ・ザルダリ(Asif Ali Zardari)<パキスタン>大統領は、パキスタンの土地の大きな一部をタリバンに割譲し、史上最も危険な核拡散実行者たるアブダル・カディーア・カーン(Abdul Qadeer Khan)を釈放し、その泣き声が世界中の人々の脳裏に現在のパキスタンの司法のイメージを焼き付けたところの、17歳の少女への公開鞭打ち<の実施を許容し>、パンジャブ州の政府の建物内でのパキスタンのクー・クルックス・クラン(KKK)に相当する団体の集会の開催の経費を負担する、といったことをやってのけた。
 こんなことは、彼の殺された妻のベナジール・ブット(Benazir Bhutto)なら、民主的に選ばれた指導者としての矜持から、決して認めはしなかっただろう。
 パキスタンの政治家達は、彼らの選挙民に対するすべての義務感を放擲してしまった。
 死活的サービスを提供したり不可譲な市民権と人権を守ったりといったことは擲って、無制限の権力を追求することが彼らの唯一の目的であるように見える。・・・
 皮肉なことに、ザルダリ氏のダメ指導者ぶりは、現在の陸軍司令官のアシュファク・カヤニ(Ashfaq Kayani)の、軍部を政治に関与させないことへの瞠目すべきコミットメントによって支えられている。・・・」
http://www.csmonitor.com/2009/0424/p09s01-coop.html

 「・・・<実際のところ、>ザルダリ政権は、それ以外のパキスタン国内の政治的混乱への対処にかかりきりなのだ。
 最近の世論調査では、彼の人気は二桁の低い数字にまで落ちてしまったが、彼の政敵である、元首相のナワズ・シャリフ(Nawaz Sharif)の人気は83%まで高まっている。・・・」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/04/23/AR2009042304114_pf.html

 「・・・22日には、パキスタン首相のユースフ・ラザ・ギラニ(Yousuf Raza Gilani)は、天敵であるインドとアフガニスタンが画策しているとして、ずっとくすぶっているところの、バルチスタン州における分離独立運動を激しく批判する声明を発した。
 同州の指導者達の不可思議な死がこの数週間に頻発していることで、パキスタンからのバルチスタンの独立要求が改めて出てきている。・・・
 <米国の対テロ専門家の一人は、>パキスタンは崩壊に直面していると警告する。
 「アフガニスタンのことは心配していない」と<彼>は12日に・・・言明した。「しかし、パキスタンについては心配している。仮にパキスタンが崩壊したら、我々が対テロ戦争と呼んできたものについて、我々がこれまで経験した何物にも比べようもないほどの打撃を我々が被る、という事実を直視すべきだ」と。・・・
http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1893370,00.html

 「・・・<パキスタン>軍は、同国の最大の敵であるインドと戦うために兵士達を訓練し配備することだけに引き続きとらわれている。
 軍は、叛乱に対処する態勢ができていないと分析者達は言う。また、高級将校達は、多くのパキスタン人達と家族的、民族的、そして宗教的紐帯を有する叛乱者達に対する作戦を強いられることについて、深いわだかまりを持っている。・・・
 ワシントンでは、国防省のパキスタンの担当者が、<パキスタン政府は、>碌に訓練されていない治安部隊(constabulary force)を23日に<ブーネアーに>送り込んだ<ものの、タリバンに蹴散らされ、一人が死亡した>のは、パキスタン陸軍<には、すぐ送り込める>部隊がなかった上、パキスタンの将軍達が、米国の担当者達の慫慂にもかかわらず、インドとの境界から部隊を転用することをしぶったからだ、と言っている。・・・
 ・・・<パキスタン>軍は、アフガニスタンとの国境沿いの地域に薄く引き延ばされた形で配備されているところ、<叛乱者達との戦いではなく、>交渉の方を好んでいる。そのことを<ザルダリ>文民政府もやむを得ないことと思っている。・・・
 パキスタン軍だって叛乱者達と戦うこともないわけではないが、叛乱者に対処する訓練を受けていないため、乱暴な戦術をとって、住民多数の命を奪っておきながらタリバンをやっつけることができない、と地元住民達の怒りをかっている。・・・
 ブーネアー・・・は、北西辺境州の中心部に位置し、他の7つの地区と接していることから、ここを制したことは、タリバンをして首都<イスラマバード>近くにまで進出せしめただけでなく、タリバンに、そこから四方に触手を伸ばすことができる枢要なハブ的な地区を与えたことになる。・・・」
http://www.nytimes.com/2009/04/24/world/asia/24pstan.html?hp=&pagewanted=print

(続く)

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