太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/

太田述正コラム#3080(2009.2.6)
<日進月歩の人間科学(続x3)>(2009.3.22公開)

1 始めに

 米国の、どちらも心理学者であるところの<カリフォルニア大学バークレー校の>キャロライン・ペープ・コーワン博士とフィリップ・コーワン博士夫妻は、1991年、一般に、第1子が誕生すると、婚姻満足度が急激に低下し、婚姻上の紛争が増大することを発見しました。
http://query.nytimes.com/gst/fullpage.html?res=9D0CE0DD1530F937A15754C0A967958260&sec=&spon=&pagewanted=print
(2月6日アクセス。以下同じ)

 さて、両親が離婚した子供はそうでない子供に比べて2〜3倍感情面や行動面で問題を抱えていることが、当時から明らかになっていました。(NYタイムス上掲)
 
 「・・・ジョンズ・ホプキンス大学の社会学者のアンドリュー・J・チャーリン(Andrew J. Cherlin)<は1999年、>離婚前の家庭諸問題(後に<彼は>・・・「前障害的(pre-disruptive)諸効果」呼ぶこととなった)こそ、離婚家庭の男の子達が<そうでない家庭の男の子達に比べて>追加的に抱えることになるところの、行動面及び学業成績面の諸問題の原因の約半分であることを発見した。・・・
 <この結果、夫婦仲がうまくいかなくなったらむしろ離婚すべきだという声が米国で高まった。しかし、これに異議を唱え、やはり離婚はよくないという声が高まるきっかけをつくったのが>経済学者のリチャード・ギル(Richard T. Gill)だ。・・・
 ギルは、離婚率の高い社会では、うまくいかなくなった結婚が離婚にまで至る可能性が高いだけでなく、よりたくさんの結婚がうまくいかなくなり不幸になりがちなのではないかと考えた。
 すなわち、結婚の永続性観念が弱化するにつれ、かつまた、円満な結婚が実際に少なくなってきたように見え出すと、人々はどんどん、結婚のリスクヘッジを行い出す。すなわち、結婚へのコミットメントがより不十分となり、離婚のオプションをより用意しがちになる。・・・
 <このギルの異議を補強したのが、>離婚した両親の子供が成人になると、そうでない両親の子供との精神的健康度の格差が顕著に増大するという事実だ。・・・」
http://72.14.235.132/search?q=cache:hkniTS_olFcJ:www.propositionsonline.com/html/the_shift__cont__.html+Philip+%EF%BC%9B+Carolyn+Cowan,&hl=ja&ct=clnk&cd=29&gl=jp

2 新しい発見

 冒頭で紹介したように、「子供ができると、婚姻生活の質が、しばしば急速に劣化するというのは・・・定説だ。だから「巣立ち後」症候群なんてものは忘れて良い。子供達が家を去ると、配偶者達の結婚の幸福度は増大するのだから。・・・
 <このたび>・・・フィリップとキャロライン・コーワンは、・・・一般的に見られるところの、結婚満足度の低下のほとんど全てが、配偶者達が子供をつくることについて意見が食い違っていたり、どっちつかずの気持ち(ambivalent)であったケースであることを<新たに>発見した。
 他方、配偶者達が計画的に、または喜んで妊娠した場合は、子供が生まれてから結婚満足度が維持され、増加する場合さえありがちなのだという。
 また、結婚の質は、両親が伝統的な性役割に退行した場合も劣化しがちなのだという。
 子供が生まれると、有給育児休暇がとれない場合、妻は仕事を辞め、夫は仕事を増やすことになりがちだ。これが双方に不満を生む。妻は夫が子育てと家事に参加しないことを怒るし、夫は、家族を支えるために長時間働いていることへの感謝の念が妻にないことを怒る。・・・
 <ただし、>一緒に子供をつくることを決め、子育てに共に携わったとしても、それで結婚が安泰というわけでは必ずしもない。・・・彼らはしばしば子育て中心の生活をやってしまう結果、お互いへの注意を払うことを怠りかねないからだ。

 今日の両親達は、40年前に比べてはるかに長い時間を子供のために費やしている。
 社会学者の・・・<の3人は、>2000年の母親達は1965年の母親達より子供達と過ごす時間が20%も増えたことことを明らかにした。また、結婚している父親達は、子供達と2倍も過ごすようになったと。・・・これらの増加は、母親達がより多く働くようになったにもかかわらず起こったのだ。
 配偶者達は、このための時間を捻出するため、子供がおらず二人だけであった頃、友人達や親戚を訪問したり、クラブの活動に関わったりしていた時間を削っているのだ。
 しかし長い目で見ると、子供達のために大人向けのこのような諸活動を削ることは結婚にとって良いことではない。
 そもそも、・・・が発見したところによれば、大部分の子供達は、両親が思っているほど両親と一緒にいたいと思っているわけではない。彼らはただ、両親達と一緒にいる時に、両親達がもっとくつろいでいて欲しいと願っているだけなのだ。
 配偶者達は二人の関係を刷新するためには二人だけの時間が必要なのだ。
 彼らはまた、友人達や家族による支援網を維持する必要がある。それをやらずに、子供達にばかり投資して結婚に十分投資しなかった配偶者達は、子育て中心の生活が終わった時に、共に子供をつくろうと望んだ当初の時点の二人の関係を回復することができなくなるのだ。・・・」
http://www.nytimes.com/2009/02/05/opinion/05coontz.html?ref=opinion&pagewanted=print
(2月6日アクセス)

3 終わりに

 結婚しようと思っている相手のいてかつ子供が欲しいと思っている人、結婚してまだ子供がいないけれど子供が欲しいと思っている人、そして結婚していて子供が生まれようとしている人は、特に以上を熟読玩味してくださいね。

太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/