太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/

太田述正コラム#3071(2009.2.2)
<皆さんとディスカッション(続x386)>

<ドイツゲーマー>

≫「内閣が日常的に遂行した政策は、全て天皇の意思を反映して(少なくとも忖度されて)いた可能性が濃厚だ」とおっしゃられても、「社会科学」という学問の世界の中ではおもしろいかもしれないけれど、現実世界では「推定」ではまともな「議論」にならないでしょう。≪(コラム#3069。Nelson)

天皇擁護派の立論をまとめます:

 <昭和天皇の実質的責任に関し、>
「天皇は国家の意思決定を日常的には大臣に任せていた」
(よって「問題となる一連の意思決定は天皇の意思とは無関係だった」)
よって「天皇に責任はない」

左翼の法学者さんは,この立論の論理的不備を指摘しています.すなわち,天皇擁護派は()でくくった二行目を暗黙のうちに仮定しているが,これは必ずしも成立しない可能性がある,ということです.(「問題となる一連の意思決定は天皇の意思を体現していた」よって「天皇に責任はある」とも言えるではないか!)このような盲点を指摘することは,あなたのおっしゃる「現実世界」では「まともな議論」のうちに入らないのですか?あくまで推定にとどまるから?でも,()内も証拠がない点で五十歩百歩ではありませんか.あなたがなすべきは,左翼の法学者さんの指摘を真正面から受け止めて,「()内は確かに成立していた,その証拠は…だ」と示すことです.そうすることによって初めて反天皇擁護派を説得することができます.

なお,<昭和天皇の>形式的責任について,みなさまに新たにご紹介したい話などもあるのですが.また日を改めて行います.

<太田>

 Ms.Nelson、お疲れのようですね。
 彼女の提起したところの、形式的責任論と実質的責任論とを分別したアプローチの眼目は形式的責任論にあって、実質的責任論は参考までの付けたりみたいなものだ、と私は受け止めています。

 いずれにせよ、私が「左翼の法学者」さんだったら、1935年の2度にわたる国体明徴声明によって、天皇が統治権力の主体であると宣言された・・公定憲法解釈が変更された・・
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E4%BD%93%E6%98%8E%E5%BE%B4%E5%A3%B0%E6%98%8E
ことによって、爾後の日本政府の政治的行為すべてについて、昭和天皇は(形式的)責任を負うに至ったと主張するでしょうね。

 このような主張に対する私の見解ですが、肝心の昭和天皇が、国体明徴声明について、これが単に政争がらみの政治的声明であって、これでもって政府憲法解釈が変更されたとは受け止めなかっただけでなく、国民もまた同様であったと考えられる、というものです。

 まず、昭和天皇についてですが、同天皇は、
 「主權が君主にあるか國家にあるかといふことを論ずるならばまだ事が判ってゐるけれども、ただ機關説がよいとか惡いとかいふ論議をすることは頗る無茶な話である。君主主權説は、自分からいへば寧ろそれよりも國家主權の方がよいと思ふが、一體日本のやうな君國同一の國ならばどうでもよいぢやないか。……美濃部のことをかれこれ言ふけれども、美濃部は決して不忠な者でないと自分は思ふ。今日、美濃部ほどの人が一體何人日本にをるか。ああいふ學者を葬ることは頗る惜しいもんだ」と語っています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E7%9A%87%E6%A9%9F%E9%96%A2%E8%AA%AC
 これは、「統治権の主体は国家であり、天皇がその国家の一機関であって国家意思に拘束されるのは自明。主権すら国家に存すると言いたいところだが、天皇は国家の象徴だから、天皇主権も国家主権も同じようなものだ」という趣旨でしょう。

 次に、一般国民が政府憲法解釈の変更とは受け止めなかったのではないかという点ですが、翌1936年に起こった2.26事件の首謀者達が、上記国体明徴声明を発表したばかりの岡田内閣の首相、蔵相、内相等を含む重臣達の殺害を図り、もって天皇親政・・天皇を統治権の主体とする!・・を実現しようとしたこと一つとっても明らかではないでしょうか。
 統治権の主体を国家とする違憲状態の是正を図るためと称して起きたこのクーデターに対し、(行政)戒厳令が内閣の輔弼の下、最高機関たる昭和天皇によって敷かれ、このクーデターが粉砕されたことで、爾後、天皇を統治権の主体にしようとする試みは2度と起きることはなかった、というのが私の理解なのです。

 それにしてもこの議論、結構面白いですね。
 いつもお馴染みの軽過ぎるノリで議論を提起した、michisuzuちゃんの怪我の功名ってところかな。
 
<michisuzu>

≫カウンセラーのmichisuzuちゃん、分かりましたか。 耳たこだろうけど、投稿する時には、少しはインターネット等で調べるようにしようね。≪(コラム#3069。太田)

 はいはい^^
 でも典拠が正しいかどうかの基準は何処で決めるのですか?太田様は同様な意見が多数あればそれは典拠になりうる正しいとお考えなのですね?

<太田>

 いんにゃ。
 どこまで行っても、典拠がしっかりしている典拠であるかどうかが決め手です。
 実体験のみを典拠としている典拠については、その筆者の経歴、現職等を見て判断します。
 とにかく、記憶だけで書かないことです。
 人間の記憶なんてまことに不確かなものだってのは、守屋証言一つとっても明らかでしょ。

<VincentVega>

≫10〜50年のうちには、プロの将棋や囲碁の棋士やプロの器楽奏者等はいなくなっている可能性が高い・・・という話が今回のオフ会でも出ました。≪(コラム#3070(未公開))

 チェスの世界チャンピオンだったカスパロフ氏をIBMのチェス専用スーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」が番勝負で破ったのが1997年。
 もっとも、ディープブルーはカンニング疑惑もあったようですが。
 今ではパソコンソフトですらトッププロと互角以上に戦う実力を普通に持っています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%81%E3%82%A7%E3%82%B9

 しかしチェスのプロ棋士も、プロ棋士参加の大会などもいまだに健在で、世界中のファンに楽しまれています。
 囲碁将棋に関しても名人等のトップ棋士がちゃんとした持ち時間の長い番勝負で、負けこすのも時間の問題でしょうけれど、特にそれが原因となって早ければ10年後に棋士が居なくなるという予想はちょっとどうかなと。

 すでに終盤の詰め将棋の分野ではどんなプロ棋士よりもコンピュータソフトのほうが圧倒的に強いのですが、それでも詰め将棋の早解き大会が毎年アマプロ織り交ぜて開かれ、その筋のファンの間では話題が盛り上がって楽しまれています。
http://toybox.tea-nifty.com/memo/2008/11/post-ffd4.html

 男性棋士よりも実力的には弱い(トップレベルの男性アマチュアよりも弱い)けれど、それでも女流棋士独自のプロ組織も頑張って運営されています。
http://joshi-shogi.com/

 なので、他の何者よりも強いという事だけがプロの存在意義というわけでもないと思います。
 日本で囲碁将棋のプロが居なくなる恐れがあるとすれば、機械の問題よりも、メインスポンサーである新聞社が財政事情で支援を降りてしまうことのほうがあり得そうな気はします。

<太田>

 こういった話は考え出すと訳が分からなくなるところがありますね。
 北京五輪でもドーピングとか水着とかが話題になりましたが、スポーツに限らず、人間の裸の実力とは何かということが、これからますます判然としなくなっていきそうな予感がします。
 スポーツ等で男女別とか体重別等に仕分けすることについても、考え出すときりがありません。
 知能別なんてのがどうしてないのかなんてね。

<999>(http://society6.2ch.net/test/read.cgi/mass/1196337365/l50x

太田氏の本質は、机上の空理空論。
論理の飛躍。観念論。KY。
彼は社会科学やるより、理論物理学なんかやった方が向いてるんじゃないか?
まあ、キャラ的には面白いけどな。ww

<998>(同上)

それと、鼻持ちならないエリート意識も持ってるな。w

<997>(同上)

ま、エリートだし。
おーたん、東大合格記でも書いてくれないかな・・・
学生を一気に取り込めるぞw
学生を啓蒙するのが一番効果がある。

<996>(同上)

アメリカをよく馬鹿にしたような口をきくのは、アメリカ留学中にいじめられたのかな。w
太田の意見って、基本的に実用的じゃないものばかりだ。

<995>(同上)

太田は、よく言えば発想が奇抜。だけど、何か役に立つ訳ではない。
厳しく言えば、緻密な論理思考ができない。詭弁の論理が得意。
トータルで、本格的にあたま悪い人だと思う。
<先>日、彼のチャンネル桜に出てた彼の意見みて、マジで久しぶりに笑いが止まらなかった。
彼は、評論家というより、コメディアンに近いな。

<994>(同上)

太田さんは脱藩官僚の会に入らないの?

<993>(同上)

週刊金曜日から本だした時点で、太田さんの生涯色物あつかいはほぼ決定したからな。
まともな人はもう寄ってこないよ。

<992>(同上)

>995

何か、情緒的要素や複合的な事情が絡んだ結果起きている事象等、本来そう簡単に割りきれない物事を、単純に「解明」してしまう癖があると思う。
「それもあるかも知れないがそれだけじゃないだろう?」と思うことが良くある。
太田光に突っ込まれてたのもそこだと思う。

<991>(同上)

いや、学問的に見たらそうなんだろう。
マクロ的な視点というか。

<990>(同上)

う〜ん、でもそれが実社会でどれだけ通用するかは疑問だと思うなぁ

<989>(同上)

 おーたんが論じてることって、実社会で話題になるような話題かねえ?
 男女関係みたいな話はそうだろうけど、財政・外交・軍事問題とか?

<988>(同上)

 話題も何も世直しを目指してるって何度も言ってる訳だが。

<987>(同上)

 内容よく知らんから本当のところはどうも言えないが、実社会の射程範囲を超えるような世直し論なら、そりゃ実社会では通用しないだろ。

<太田>

 ウヒヒ。

 さて、記事の紹介です。

 ・・・For the first time in the Republicans' history (and for only the second time in the history of America's two major parties) an African American has been elected party chairman.
Michael Steele - who won on the sixth ballot at an election in Washington's Capitol Hilton hotel - will now head the effort to rebuild morale, raise funds and develop a strategy to win back majorities in the House and Senate and to retake the White House. ・・・
http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/7862239.stm
(2月1日アクセス。以下同じ。)

 どうやら米国の人種差別克服への動きはホンモノです。
 なお、スティールは、共和党の中では「左」の人物です(BBC上掲)。

 オバマの提起したボーナス問題の続きが出てます。
 評論家達による金融・保険業界で、政府支援を受けながらボーナスをしこたまもらった連中への批判は、ものすごい。
http://www.slate.com/id/2210243/pagenum/all/#p2
 ・・・Senator Chuck Grassley urged the administration to snatch back the bonuses. “They ought to give ’em back or we should go get ’em,” the Republican told me. “If this were Japan and a corporate executive did what is being done on Wall Street, they’d either go out and commit suicide or go before the board of directors and the country and take a very deep bow and apologize.”・・・
http://www.nytimes.com/2009/02/01/opinion/01dowd.html?ref=opinion&pagewanted=print
(2月2日アクセス)
と日本人経営者の責任の取り方まで引き合いに出されてますよ。
 面はゆいねえ。

 世界で初めてレスビアンの首相がアイスランドで誕生しました。

 Johanna Sigurdardottir, a former flight attendant and union organiser, could be sworn in as Iceland's first female prime minister - and the world first openly gay leader - by the end of this week. ・・・
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/7859258.stm
・・・In Iceland itself, however, the new prime minister's sexual orientation appears to be causing less excitement than it is abroad.
What is really historic about this new cabinet, says Skuli Helgeson, the general secretary of Ms Sigurardottir's Social Democratic Alliance, is not the fact that its leader is a lesbian, but that for the first time in Icelandic history it boasts an equal number of men and women. ・・・
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/7862804.stm
 それだけじゃなくて、閣僚の半数が(フランス同様)女性だって。
 何て日本は遅れてるんだ!

 ・・・In the polluted sprawl of Ulan Bator ・・・ there are some 200 churches and an estimated 200 more in the mountains, steppes and desert beyond. ・・・
http://news.bbc.co.uk/2/hi/programmes/from_our_own_correspondent/7860539.stm
 韓国、中共に続いてモンゴルよ、お前まで原理主義キリスト教化する懼れが出てきたとは・・。

 From the late 19th Century up to the 1970s, an estimated 150,000 native children in Canada were seized from their parents and sent far away to state-funded, church-run schools to learn how to think, speak and act like white people. ・・・
 With an estimated 80,000 former pupils still around today, many of whom witnessed or suffered sexual, physical and mental abuse,・・・
 It is accepted knowledge that a large proportion of the children, some estimates run into tens of thousands, died of tuberculosis in the cold, filthy schools.
 But recently, the story has taken a darker turn, as allegations of secret burials in mass graves, death by torture and fatal medical experiments have begun to surface. ・・・
http://news.bbc.co.uk/2/hi/programmes/from_our_own_correspondent/7860552.stm
 原住民文化根絶やし政策をとったのは、オーストラリアだけじゃなかったのね。

 Half of British adults do not believe in evolution, with at least 22% preferring the theories of creationism or intelligent design to explain how the world came about, according to a survey.
The poll found that 25% of Britons believe Charles Darwin's theory of evolution is "definitely true", with another quarter saying it is "probably true". Half of the 2,060 people questioned were either strongly opposed to the theory or confused about it.・・・
http://www.guardian.co.uk/science/2009/feb/01/evolution-darwin-survey-creationism
 およよ。英国人の半数が進化論を信じてないとは!
 米国人よりちょっとでだけマシな程度なのね。

 「・・・江戸時代は封建制で競争がないとのイメージを持たれるが、競争原理があらゆる分野で働いていた。商人同士、産地間の競争はもちろん、役人組織でもそう だ。北町、南町に分かれた江戸町奉行は1カ月ごとの交代制。仕事ぶりの良い方に江戸町民の支持が集まる。現代風に言えば「勤務評定」されていた。・・・幕府が 決めた金利や両替比率ではなく、マーケットが決める市中金利が支配していった。先物取引も活発だった。・・・
 江戸時代に学ぶべきもう一つの特徴は「公共の意識」だ。コメ、酒、塩、木綿、銭などを扱う江戸の商人たちは「問屋株仲間」を結成した。問屋株仲間という と既得権にしがみつくという悪いイメージがあるが、もともとは同業者の相互監視による生活必需品の価格高騰抑制が目的だった。問屋株仲間が制定した「仲間定法(じょうほう)」や「仲間掟書(おきてがき)」は、悪徳業者や行き過ぎた競争によって市場が混乱するのを防ぐ役割も果たした。問屋株仲間は今で言う企 業の社会的責任(CSR)を担っていた。競争と強調、取引の安定に寄与していたのだ。
 公共の意識は教科書や精神論から生まれるのではない。市場メカニズムが生み、支える。「企業の永続性」を重視した商家や問屋株仲間は長期的視点を持って 行動した。業界団体の一員として上手にやっていけるかが参入者にも問われる。店主の養子縁組も勝手にはできない。どら息子や遊び人の跡取りは放逐されてし まう。跡取りがいない店には、業界の世話人がこれはと見込んだ人を世話する。当時の企業人は財産的な責任とともに、人格的な責任も問われた。商家の継承者 の地位は公的な性格を帯びていたのだ。・・・」
http://netplus.nikkei.co.jp/forum/kosaten/t_420/e_1690.php
 江戸時代ってホントに面白いですね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

太田述正コラム#3072(2009.2.2)
<読者によるコラム:中性化論のまとめ>

→非公開

太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/