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太田述正コラム#2907(2008.11.11)
<オバマ・黒人差別・米国・欧州>(2008.12.19公開)
1 始めに
オバマの当選で見えてきたことのうちの一つが、米国と欧州における黒人差別の根深さです。
2つの記事を通してこのことを認識していただきたいと思います。
2 米国における黒人差別の根深さ
・・・<今回の大統領選挙で、>オバマは全投票数のうち53%を得たが、白人の全投票数のうち43%しか得ることができなかった。・・・
にもかかわらず、このことについて米国のメディアはほとんどとりあげていない。・・・
<2004年の>ジョン・ケリーや<2000年の>アル・ゴアの時よりもオバマの白人得票率は高かったのだから、一見人種差別が克服されたように見える。白人が嫌いなのは黒人じゃなくて民主党だ、というわけだ。・・・
<果たしてそうだろうか。>
ジミー・カーターは、白人で共和党に投票する人と民主党に投票する人との差を4%にまで縮めた。ビル・クリントンは更にそれを2%という瞠目すべき差まで縮めた。しかし、この2人とも南部出身の白人だったから若干人気を集めることができたた、と考えるべきだろう。南部こそ、共和党が白人票を最も固く手中に収めている地域だからだ。
ジョンソンが、白人票の多数を獲得した最後の民主党大統領候補となったことは何の不思議もない。というのは、彼は1964年の市民権法と1965年の投票権法を成立させたからだ。前者に<大統領として>署名した際に、ジョンソンは、「われわれ<民主党>は一世代にわたって南部を失った」と語ったものだ。(実際には、それは2世代にわたった。それが3世代にわたったとしても誰も驚かないだろう。)・・・
<しかし、燭光が見えている。>
オバマが18歳から29歳の白人の全投票数の65%を得たのに対し、マケインは44%にとどまったからだ。・・・
http://www.slate.com/id/2204251/
(11月11日アクセス)
2 欧州における黒人差別の根深さ
・・・イタリアの首相のシルヴィオ・ベルスコーニ<は、>木曜、モスクワ訪問中にオバマを「若くてハンサムで日焼けもしている」と称えた。
ベルスコーニのこの発言はイタリアで論議を呼んだ。・・・しかし、同首相は意に介さない風だった。「何が問題なんだ? あれは褒めたんだぞ」と彼は翌日記者達に語った。「あの冗談が分からん奴はバカだ」と。・・・
<しかし、これはまだタチが良い方だった。>
<ドイツのネオナチの発言は掲げるのを止めるが(太田)、>社会党や左翼を支持しているベルリンの新聞のディー・ターゲンスツァイトゥング(Die Tageszeitung)は、6月、・・・第一面にホワイトハウスの大きな写真を、「バラクおじさんの小屋」という見出しの下に掲げた。・・・
オーストリアでは、・・・有名なジャーナリストのクラウス・エメリッヒ(Klaus Emmerich)<が、>「米国人達は依然人種差別主義者であって、黒人を、黒人の大層な美人で頭の良い女性とともにホワイトハウスに送るはめになったことで、彼らが大いにガックリ来ていることは請け合いだ。いやこれは疑う余地がない」と公共テレビ網であるORFの番組で言ってのけた。
そう言ったのに続けて彼は、「西側世界が黒人によって指図されるのはいやだな」と言い、更に「これが人種差別的コメントだと言うのならその通りだ。間違いなくそうだ」と締めくくった。
80歳のエメリッヒは、かつてワシントンを拠点にドイツのテレビや新聞のためのレポーターを長く勤めた。後にオーストリアの新聞デア・シュタンダルド(Der Standard)とのインタビューで以上の発言を撤回する機会を与えられた時、彼は、「黒人は政治的に文明化していない」と述べ、撤回するのを拒否した。彼はオバマを危険だとし、オバマの「修辞的素晴らしさ」とオバマの「人々にカリスマ的にアピールする」能力に言及することで、暗黙のうちにオバマをヒットラーに比定した。・・・
ポーランドでは、下院でオバマの当選について似たような解釈が、法と正義党の議員であるアルトゥール・ゴルスキ(Artur Gorski)によって語られた。
水曜に行われた演説で、ゴルスキは、オバマを「新左翼の黒人の救世主」にして「秘密共産党員」と呼び、オバマの選出は「災害」であったことが間違いなく証明されるだろうと語った。それに加えて彼は、「アルカーイダはこの新大統領が戦争でなく平和を欲していることで、喜びながら両手をこすり合わせている」とも言った。更に、「これで白人文明の終焉が画された。米国は遠からず、この民主主義の急展開に対して高い代償を支払うことになるだろう」と続けた。
ポーランド政府とゴルスキの党は、この暴言について後で謝罪した。ゴルスキも謝罪したが、彼は、自分のこの発言は人種差別的なものではなく、単に「政治的」な発言だったと釈明したのだ。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/11/10/AR2008111002810_pf.html
(同上)
3 終わりに
米国が、アングロサクソン文明と欧州文明のキメラから、欧州文明的要素を拭い去って純粋なアングロサクソンへと脱皮しつつあるけれども、米国の中で白人の脱皮が一番遅れていることがお分かりいただいたと思いますが、欧州文明の本家本元の欧州の方は、いつまで経ってもその文明の桎梏から逃れられないままであり、およそ矯正不可能かもしれない、という感を深くしますね。
<オバマ・黒人差別・米国・欧州>(2008.12.19公開)
1 始めに
オバマの当選で見えてきたことのうちの一つが、米国と欧州における黒人差別の根深さです。
2つの記事を通してこのことを認識していただきたいと思います。
2 米国における黒人差別の根深さ
・・・<今回の大統領選挙で、>オバマは全投票数のうち53%を得たが、白人の全投票数のうち43%しか得ることができなかった。・・・
にもかかわらず、このことについて米国のメディアはほとんどとりあげていない。・・・
<2004年の>ジョン・ケリーや<2000年の>アル・ゴアの時よりもオバマの白人得票率は高かったのだから、一見人種差別が克服されたように見える。白人が嫌いなのは黒人じゃなくて民主党だ、というわけだ。・・・
<果たしてそうだろうか。>
ジミー・カーターは、白人で共和党に投票する人と民主党に投票する人との差を4%にまで縮めた。ビル・クリントンは更にそれを2%という瞠目すべき差まで縮めた。しかし、この2人とも南部出身の白人だったから若干人気を集めることができたた、と考えるべきだろう。南部こそ、共和党が白人票を最も固く手中に収めている地域だからだ。
ジョンソンが、白人票の多数を獲得した最後の民主党大統領候補となったことは何の不思議もない。というのは、彼は1964年の市民権法と1965年の投票権法を成立させたからだ。前者に<大統領として>署名した際に、ジョンソンは、「われわれ<民主党>は一世代にわたって南部を失った」と語ったものだ。(実際には、それは2世代にわたった。それが3世代にわたったとしても誰も驚かないだろう。)・・・
<しかし、燭光が見えている。>
オバマが18歳から29歳の白人の全投票数の65%を得たのに対し、マケインは44%にとどまったからだ。・・・
http://www.slate.com/id/2204251/
(11月11日アクセス)
2 欧州における黒人差別の根深さ
・・・イタリアの首相のシルヴィオ・ベルスコーニ<は、>木曜、モスクワ訪問中にオバマを「若くてハンサムで日焼けもしている」と称えた。
ベルスコーニのこの発言はイタリアで論議を呼んだ。・・・しかし、同首相は意に介さない風だった。「何が問題なんだ? あれは褒めたんだぞ」と彼は翌日記者達に語った。「あの冗談が分からん奴はバカだ」と。・・・
<しかし、これはまだタチが良い方だった。>
<ドイツのネオナチの発言は掲げるのを止めるが(太田)、>社会党や左翼を支持しているベルリンの新聞のディー・ターゲンスツァイトゥング(Die Tageszeitung)は、6月、・・・第一面にホワイトハウスの大きな写真を、「バラクおじさんの小屋」という見出しの下に掲げた。・・・
オーストリアでは、・・・有名なジャーナリストのクラウス・エメリッヒ(Klaus Emmerich)<が、>「米国人達は依然人種差別主義者であって、黒人を、黒人の大層な美人で頭の良い女性とともにホワイトハウスに送るはめになったことで、彼らが大いにガックリ来ていることは請け合いだ。いやこれは疑う余地がない」と公共テレビ網であるORFの番組で言ってのけた。
そう言ったのに続けて彼は、「西側世界が黒人によって指図されるのはいやだな」と言い、更に「これが人種差別的コメントだと言うのならその通りだ。間違いなくそうだ」と締めくくった。
80歳のエメリッヒは、かつてワシントンを拠点にドイツのテレビや新聞のためのレポーターを長く勤めた。後にオーストリアの新聞デア・シュタンダルド(Der Standard)とのインタビューで以上の発言を撤回する機会を与えられた時、彼は、「黒人は政治的に文明化していない」と述べ、撤回するのを拒否した。彼はオバマを危険だとし、オバマの「修辞的素晴らしさ」とオバマの「人々にカリスマ的にアピールする」能力に言及することで、暗黙のうちにオバマをヒットラーに比定した。・・・
ポーランドでは、下院でオバマの当選について似たような解釈が、法と正義党の議員であるアルトゥール・ゴルスキ(Artur Gorski)によって語られた。
水曜に行われた演説で、ゴルスキは、オバマを「新左翼の黒人の救世主」にして「秘密共産党員」と呼び、オバマの選出は「災害」であったことが間違いなく証明されるだろうと語った。それに加えて彼は、「アルカーイダはこの新大統領が戦争でなく平和を欲していることで、喜びながら両手をこすり合わせている」とも言った。更に、「これで白人文明の終焉が画された。米国は遠からず、この民主主義の急展開に対して高い代償を支払うことになるだろう」と続けた。
ポーランド政府とゴルスキの党は、この暴言について後で謝罪した。ゴルスキも謝罪したが、彼は、自分のこの発言は人種差別的なものではなく、単に「政治的」な発言だったと釈明したのだ。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/11/10/AR2008111002810_pf.html
(同上)
3 終わりに
米国が、アングロサクソン文明と欧州文明のキメラから、欧州文明的要素を拭い去って純粋なアングロサクソンへと脱皮しつつあるけれども、米国の中で白人の脱皮が一番遅れていることがお分かりいただいたと思いますが、欧州文明の本家本元の欧州の方は、いつまで経ってもその文明の桎梏から逃れられないままであり、およそ矯正不可能かもしれない、という感を深くしますね。
太田述正ブログは移転しました 。
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