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太田述正コラム#2836(2008.10.7)
<アフガニスタンの憂うべき現状(その2)>(2008.11.24公開)
3 アフガニスタンの憂うべき現状
(1)総論
では、英国政府が以上のような画策を行うのはどうしてなのか。
アフガニスタンの憂うべき現状をご紹介しましょう。
(2)憂うべき現状
「・・・2001年に米国主導の対アフガニスタン戦が始まって以来、ブッシュ政権はアフガニスタンにおける麻薬取引に対して積極的な措置をとることを怠ってきたとの批判に晒されてきた。それは、一つにはカルザイ政権が反対するからであり、もう一つには、米国の軍部も根絶や阻止作戦を行うことには地方の軍閥やアフガニスタンの芥子栽培農家を敵に回すことから消極的だからだ。その結果、今ではアフガニスタンは、世界全体のヘロイン供給量の95%を占めるに至っている。・・・」(
http://www.nytimes.com/2008/10/05/world/asia/05afghan.html?_r=1&oref=slogin&pagewanted=print
。10月7日アクセス)
「・・・先月アフガニスタンにおけるNATOへの権限付与を更に一年延長した国連は、今年の初めから9月の中旬までに1,445人の一般住民の死者が出ていることを明らかにした。これは2007年に比べると40%の増加だ。このうち多国籍軍に責任があるのは577名だ。その三分の二は空爆によって引き起こされた。・・・
・・・アフガニスタン人の多くは、恐るべき軍事力を持っている米国がずたずたにされたタリバン戦士一味をやっつけるのにこれほど手こずっていることが信じられず、また、いつまで経っても一般住民に死者が出るのを食い止めることができないことも理解できないのだ。
だから、アフガニスタン人の間で多国籍軍に対する疑念が生ずるのももっともなのだ:われわれ<アフガニスタン人は>は過去30年間に2度の占領で苦しめられた。一回目は1980年代において旧ソ連によって、そして1990年代においてタリバンを通じて間接的にパキスタンによって。一般住民の死亡を伴う軍事作戦の度に陰謀論が語られる。米国とその欧米の同盟諸国はこの地域における軍事的プレゼンスを維持するために混沌状態を維持したいと思っている、と。・・・」(
http://www.nytimes.com/2008/10/05/opinion/05nadery.html?ref=opinion&pagewanted=print
。10月6日アクセス)
「1月から多国籍軍の軍人230人以上が死亡したが、このままだと今年は対アフガニスタン戦が始まってから最も死亡者の多い年になりそうだ。7月だけで大胆不敵なカブールのインド大使館攻撃、ヌリスタン(Nuristan)州における戦闘詰め所における9人の米国人の死亡、そしてカブール郊外におけるフランス軍兵士10人の殺害があった。これに対し、2から4個旅団、すなわち8,000から16,000人の部隊をアフガニスタンに増派すべきだというのがコンセンサスになりつつある。・・・
平均的アフガニスタン人は収入の五分の一を賄賂に費やしている。だから、かくも多くの人々が積極的または消極的にタリバンを支持するのは不思議でも何でもない。
腐敗と戦うためには、ハミッド・カルザイ大統領はただちに三つのことをやらなければならない。
第一には、最も腐敗していると目されている閣僚、州知事、地区長らをクビにすることだ。そして、1990年代の内戦において軍閥として悪名をはせ、語るもおぞましい残虐行為を重ねたというのにカブールや各州において堂々と生活している連中を逮捕して起訴することだ。そして更に、政府と、この国の最大の産業である芥子取引との関係を絶つことだ。
第二には、アフガニスタン政府は、中央政府のコントロールを全国にあまねく及ぼすというアプローチを考え直すことだ。アフガニスタンの遠方の諸渓谷は、長らく外部権力への拒否反応を抱く部族の人々を匿ってきた。ところが、米国の後見の下で起草されたアフガニスタン憲法は、高度に中央集権的な政府を当然視しており、アフガニスタンの34の州知事達はことごとくカブールによって任命されカブールを見つめることとされている。州民を見つめることとはされていないのだ。・・・
第三に、アフガニスタン政府は、暴力を放棄してこの国の政治生活に復帰するとの誠実な意思をを示したタリバンのグループと交渉しなければならない。・・・ほとんどのアフガニスタン人は、アフガニスタン人たるタリバンとその他の反政府グループであるところの、アルカーイダ、アラブ人戦士、パキスタン人たるタリバンのメンバー、とを明確に区別している。」(
http://www.nytimes.com/2008/10/05/opinion/05fick.html?ref=opinion&pagewanted=print
。10月6日アクセス)
4 終わりに
どうやら、日本が、自衛隊をいかなる形にせよ、アフガニスタン本土に派遣するのは止めておいた方がよさそうですね。
そうなると、海上自衛隊艦艇のインド洋派遣を続ける、というオプションしか米国の要望に応える方法は残されていないことになります。
民主党、分かっているやろうね。
(完)
<アフガニスタンの憂うべき現状(その2)>(2008.11.24公開)
3 アフガニスタンの憂うべき現状
(1)総論
では、英国政府が以上のような画策を行うのはどうしてなのか。
アフガニスタンの憂うべき現状をご紹介しましょう。
(2)憂うべき現状
「・・・2001年に米国主導の対アフガニスタン戦が始まって以来、ブッシュ政権はアフガニスタンにおける麻薬取引に対して積極的な措置をとることを怠ってきたとの批判に晒されてきた。それは、一つにはカルザイ政権が反対するからであり、もう一つには、米国の軍部も根絶や阻止作戦を行うことには地方の軍閥やアフガニスタンの芥子栽培農家を敵に回すことから消極的だからだ。その結果、今ではアフガニスタンは、世界全体のヘロイン供給量の95%を占めるに至っている。・・・」(
http://www.nytimes.com/2008/10/05/world/asia/05afghan.html?_r=1&oref=slogin&pagewanted=print
。10月7日アクセス)
「・・・先月アフガニスタンにおけるNATOへの権限付与を更に一年延長した国連は、今年の初めから9月の中旬までに1,445人の一般住民の死者が出ていることを明らかにした。これは2007年に比べると40%の増加だ。このうち多国籍軍に責任があるのは577名だ。その三分の二は空爆によって引き起こされた。・・・
・・・アフガニスタン人の多くは、恐るべき軍事力を持っている米国がずたずたにされたタリバン戦士一味をやっつけるのにこれほど手こずっていることが信じられず、また、いつまで経っても一般住民に死者が出るのを食い止めることができないことも理解できないのだ。
だから、アフガニスタン人の間で多国籍軍に対する疑念が生ずるのももっともなのだ:われわれ<アフガニスタン人は>は過去30年間に2度の占領で苦しめられた。一回目は1980年代において旧ソ連によって、そして1990年代においてタリバンを通じて間接的にパキスタンによって。一般住民の死亡を伴う軍事作戦の度に陰謀論が語られる。米国とその欧米の同盟諸国はこの地域における軍事的プレゼンスを維持するために混沌状態を維持したいと思っている、と。・・・」(
http://www.nytimes.com/2008/10/05/opinion/05nadery.html?ref=opinion&pagewanted=print
。10月6日アクセス)
「1月から多国籍軍の軍人230人以上が死亡したが、このままだと今年は対アフガニスタン戦が始まってから最も死亡者の多い年になりそうだ。7月だけで大胆不敵なカブールのインド大使館攻撃、ヌリスタン(Nuristan)州における戦闘詰め所における9人の米国人の死亡、そしてカブール郊外におけるフランス軍兵士10人の殺害があった。これに対し、2から4個旅団、すなわち8,000から16,000人の部隊をアフガニスタンに増派すべきだというのがコンセンサスになりつつある。・・・
平均的アフガニスタン人は収入の五分の一を賄賂に費やしている。だから、かくも多くの人々が積極的または消極的にタリバンを支持するのは不思議でも何でもない。
腐敗と戦うためには、ハミッド・カルザイ大統領はただちに三つのことをやらなければならない。
第一には、最も腐敗していると目されている閣僚、州知事、地区長らをクビにすることだ。そして、1990年代の内戦において軍閥として悪名をはせ、語るもおぞましい残虐行為を重ねたというのにカブールや各州において堂々と生活している連中を逮捕して起訴することだ。そして更に、政府と、この国の最大の産業である芥子取引との関係を絶つことだ。
第二には、アフガニスタン政府は、中央政府のコントロールを全国にあまねく及ぼすというアプローチを考え直すことだ。アフガニスタンの遠方の諸渓谷は、長らく外部権力への拒否反応を抱く部族の人々を匿ってきた。ところが、米国の後見の下で起草されたアフガニスタン憲法は、高度に中央集権的な政府を当然視しており、アフガニスタンの34の州知事達はことごとくカブールによって任命されカブールを見つめることとされている。州民を見つめることとはされていないのだ。・・・
第三に、アフガニスタン政府は、暴力を放棄してこの国の政治生活に復帰するとの誠実な意思をを示したタリバンのグループと交渉しなければならない。・・・ほとんどのアフガニスタン人は、アフガニスタン人たるタリバンとその他の反政府グループであるところの、アルカーイダ、アラブ人戦士、パキスタン人たるタリバンのメンバー、とを明確に区別している。」(
http://www.nytimes.com/2008/10/05/opinion/05fick.html?ref=opinion&pagewanted=print
。10月6日アクセス)
4 終わりに
どうやら、日本が、自衛隊をいかなる形にせよ、アフガニスタン本土に派遣するのは止めておいた方がよさそうですね。
そうなると、海上自衛隊艦艇のインド洋派遣を続ける、というオプションしか米国の要望に応える方法は残されていないことになります。
民主党、分かっているやろうね。
(完)
太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/