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太田述正コラム#2759(2008.8.29)
<グルジアで戦争勃発(その12)>(2008.10.7公開)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<最新状況>
ロシアはグルジアでのご乱行のせいで、米国の主要メディアから、さんざんっぱら、からかいの対象になっています。
その一端をお示ししましょう。
1 上海協力機構に袖にされたロシア
8月27日にタジキスタンの首都ドシャンベ(DUSHANBE)で上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization。メンバーは中共、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン)の首脳会議が開催されました。
その27日、中共政府は北京で、ロシアのグルジアでの行動について「懸念(concern)」を表明しました。中共は新疆、台湾、チベットの問題を抱えているのですから、当たり前すぎるほど当たり前の反応です。
また、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタンをロシアは自分の勢力圏だと思っているところ、これら諸国もロシアの覇権をそれなりに認めてはいるものの、自分達の国の行動の自由を確保するために、それぞれロシアの影響力を制限することに腐心しています。
ですから、上記首脳会議において、どの国の元首もグルジア紛争に言及しませんでした。これは、彼らがいかに不快感を抱いているかを示して余りあるものがあります。
そして、共同声明では南オセチアへの言及がなされたものの、最終コミュニケからは落とされてしまいました。
(以上、
http://www.nytimes.com/2008/08/29/world/europe/29russia.html?_r=1&oref=slogin&pagewanted=print
(8月29日アクセス。以下同じ)による。)
2 プーチン陰謀論を語る
「・・<ティンヴァリを攻略したグルジア軍の中に米国人がいたのではないかという>私の憶測が裏付けられたならば、米国の誰かが状況を悪化させそれによって米国の大統領の座をねらっている候補者の一人を利得させようと意図的にこの紛争を発生せしめたのではないかという疑惑を呼び起こさせる。・・・小ちゃな、しかし勝利に終わる戦争が必要だったというわけだ。そしてもしうまく行かなかった場合は、われわれ<ロシア>に責めを負わそうとしたのだ。・・・」(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/08/28/AR2008082800489_pf.html)
こう語ったプーチンをワシントンポストは、呆れかえった筆致で紹介しています。
ロシアが世界中から総スカンを食っている状況に焦ったプーチンが、よりにもよって劇画的陰謀論を口にしたってわけです。
3 南オセチアとアブハジアの売り込みに必死のロシアサイド
南オセチアの「首都」ティンヴァリの新聞編集者いわく、「リヒテンシュタインとアンドラは、ほぼ南オセチアと大きさが同じだ。」
ロシアのラブロフ外相いわく、7万人の「南オセチアより少ない人口の国連加盟国が少なくとも1ダースの半分はある。確か、国連加盟国で一番人口が少ない国は人口9,000人だ。」(
http://www.nytimes.com/2008/08/29/world/europe/29ossetia.html?ref=world&pagewanted=print)
言うことに事欠いてよく言うよ、という感じでニューヨークタイムスがとりあげています。
4 最後(?)の主権国家間の戦争をやらかしたロシア
ロシア軍部隊がグルジア軍部隊に攻撃をしかけた瞬間、現代史において最も長い期間たる4年間も国家間の戦争がなかった記録が中断してしまいました。
2003年11月にインドとパキスタンが停戦協定に調印して以来、1,716日間戦争がなかったのに、今年8月8日、再びロシアが戦争を開始してしまったわけです。
ちなみに、それまでの記録は600日ちょっとであり、1958年の第二次台湾海峡危機の終わりから1960年のエチオピアとソマリアとの小競り合いの始まりまでの間でした。
実は、国家間の戦争が減少してきているだけでなく、内戦も叛乱も少なくなってきています。内戦や叛乱は1990年代初期には50も起こっていたのに、今では20しか起こっていません。
一般住民に対するテロ攻撃ですら20年前に比べると減っています。
そうは言っても、世界中で今でも毎年約50万人の人々が暴力的紛争によって命を落としています。これは毎年栄養失調で死ぬ人々の数とほぼ同じです。数的には、世界中で毎年亡くなる5,000万人の1%程度に相当します。
ただし、暴力的紛争、とりわけ戦争に向けられる高い関心にもかかわらず、戦争は次第にめずらしい存在になりつつあるのです。
(以上、
http://www.csmonitor.com/2008/0829/p09s01-coop.html
(8月29日アクセス)による。)
ロシアは時計の針を巻き戻してしまった、ということです。
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<グルジアで戦争勃発(その12)>(2008.10.7公開)
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<最新状況>
ロシアはグルジアでのご乱行のせいで、米国の主要メディアから、さんざんっぱら、からかいの対象になっています。
その一端をお示ししましょう。
1 上海協力機構に袖にされたロシア
8月27日にタジキスタンの首都ドシャンベ(DUSHANBE)で上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization。メンバーは中共、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン)の首脳会議が開催されました。
その27日、中共政府は北京で、ロシアのグルジアでの行動について「懸念(concern)」を表明しました。中共は新疆、台湾、チベットの問題を抱えているのですから、当たり前すぎるほど当たり前の反応です。
また、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタンをロシアは自分の勢力圏だと思っているところ、これら諸国もロシアの覇権をそれなりに認めてはいるものの、自分達の国の行動の自由を確保するために、それぞれロシアの影響力を制限することに腐心しています。
ですから、上記首脳会議において、どの国の元首もグルジア紛争に言及しませんでした。これは、彼らがいかに不快感を抱いているかを示して余りあるものがあります。
そして、共同声明では南オセチアへの言及がなされたものの、最終コミュニケからは落とされてしまいました。
(以上、
http://www.nytimes.com/2008/08/29/world/europe/29russia.html?_r=1&oref=slogin&pagewanted=print
(8月29日アクセス。以下同じ)による。)
2 プーチン陰謀論を語る
「・・<ティンヴァリを攻略したグルジア軍の中に米国人がいたのではないかという>私の憶測が裏付けられたならば、米国の誰かが状況を悪化させそれによって米国の大統領の座をねらっている候補者の一人を利得させようと意図的にこの紛争を発生せしめたのではないかという疑惑を呼び起こさせる。・・・小ちゃな、しかし勝利に終わる戦争が必要だったというわけだ。そしてもしうまく行かなかった場合は、われわれ<ロシア>に責めを負わそうとしたのだ。・・・」(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/08/28/AR2008082800489_pf.html)
こう語ったプーチンをワシントンポストは、呆れかえった筆致で紹介しています。
ロシアが世界中から総スカンを食っている状況に焦ったプーチンが、よりにもよって劇画的陰謀論を口にしたってわけです。
3 南オセチアとアブハジアの売り込みに必死のロシアサイド
南オセチアの「首都」ティンヴァリの新聞編集者いわく、「リヒテンシュタインとアンドラは、ほぼ南オセチアと大きさが同じだ。」
ロシアのラブロフ外相いわく、7万人の「南オセチアより少ない人口の国連加盟国が少なくとも1ダースの半分はある。確か、国連加盟国で一番人口が少ない国は人口9,000人だ。」(
http://www.nytimes.com/2008/08/29/world/europe/29ossetia.html?ref=world&pagewanted=print)
言うことに事欠いてよく言うよ、という感じでニューヨークタイムスがとりあげています。
4 最後(?)の主権国家間の戦争をやらかしたロシア
ロシア軍部隊がグルジア軍部隊に攻撃をしかけた瞬間、現代史において最も長い期間たる4年間も国家間の戦争がなかった記録が中断してしまいました。
2003年11月にインドとパキスタンが停戦協定に調印して以来、1,716日間戦争がなかったのに、今年8月8日、再びロシアが戦争を開始してしまったわけです。
ちなみに、それまでの記録は600日ちょっとであり、1958年の第二次台湾海峡危機の終わりから1960年のエチオピアとソマリアとの小競り合いの始まりまでの間でした。
実は、国家間の戦争が減少してきているだけでなく、内戦も叛乱も少なくなってきています。内戦や叛乱は1990年代初期には50も起こっていたのに、今では20しか起こっていません。
一般住民に対するテロ攻撃ですら20年前に比べると減っています。
そうは言っても、世界中で今でも毎年約50万人の人々が暴力的紛争によって命を落としています。これは毎年栄養失調で死ぬ人々の数とほぼ同じです。数的には、世界中で毎年亡くなる5,000万人の1%程度に相当します。
ただし、暴力的紛争、とりわけ戦争に向けられる高い関心にもかかわらず、戦争は次第にめずらしい存在になりつつあるのです。
(以上、
http://www.csmonitor.com/2008/0829/p09s01-coop.html
(8月29日アクセス)による。)
ロシアは時計の針を巻き戻してしまった、ということです。
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太田述正ブログは移転しました 。
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