太田述正ブログは移転しました 。
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太田述正コラム#2795(2008.9.17)
<皆さんとディスカッション(続x248)>
<MS>
≫3、オバマのように演説で泣かせる候補者が凄いなら、金銭醜聞のジャクソン氏も泣かせのプロ。いつも黒人のおばさんが涙でぐしょぐしょでしたよね。≪(コラム#2793。大阪の川にゃ)
わたしの書き込みに関してコメントされているのだと思いますが、いったい何をおっしゃりたいのかさっぱりわかりません。
何か誤解されているようなのであえて申し上げますが、私がオバマの演説の映像を引用したのは、ただ単に自民党の総裁候補の演説がいかに稚拙かということを比較してわかってもらいたかっただけではありません。
涙をながすほど選挙に自分たちの未来をかけているアメリカ人の姿を見てもらいたっかからです。
大阪の川にゃ様は、自民党総裁候補の演説を見て頭にきませんか?
なめてんのか!とおもいませんか?
あなたはどうか知りませんが、これだけ自民党に馬鹿にされていながら、自民党に権益を保護してもらっているわけでもないのに、依然自民党に票をいれようと考えているような人がいらっしゃるようですね。
いったいどういう思考回路をしているのでしょうか?
なぜ素直に怒りを投票行動にぶつけないのでしょうか?
きっと奴隷生活が長すぎて感情も表現できない動物になってしまったのでしょう。
オバマの演説を聞いて涙を流している「人間」とは、「えらい違い」とは思いませんか?
<popper>
官僚と自民政治家の関係について考察する場合には、第一に自民党支配が共産党支配に類似している点を見逃してならないでしょう。認識にはクレムリン学的(Kremlinology)なアプローチが欠かせません。共産主義国家の特徴とは何か。それは党の序列が重要だということです。逆に言えば国家の職というのは従属的なものです(党高政低)。中国の外務大臣は、欧米の外務大臣より偉くありません(日本の外務大臣なみ?)。偉い場合には、党中央の序列でも高い順位にいた場合のみです(唐家旋など)。従って、大臣と次官あるいは幹部との関係を見たところで、表層的なものしかわかりません。役所にとって重要なことは、自民党内の部会と呼ばれる私的な機関において、いわゆる族議員から法案の承認を得ることであって、そもそも大臣など大した存在ではありません。大臣が部会でも大物と目されている場合には、地位と実質的権限の合致が現象しますが、いわば日食とか月食のような偶然の星の配列みたいなもので珍しい現象ですね。自民党議員も、ごく最近までは大臣よりも部会トップになりたがりました。なぜなら、前者は公的責任があるが、実質的権限がないのに対し、後者は公的責任がないにもかかわらず実質的権限があるからです。鈴木宗男議員が、役所の秘密資料にアクセスできたのも、こういう理由からです。このことを踏まえれば大臣の命令に官僚が従わないというのも、容易に理解できますし、そのことを政治と官僚との対立構造と捉えることは失当に過ぎます。なぜなら、大臣の命令に従わないという場合でも、自民党内の族議員などの支持あるいは黙認を得ているからです。従って大臣の命令が役所にとって不都合な場合は、役所は自民党内の応援団をテコに巻き返しに出ます。応援団は役所に「貸しをつくり」、役所はいつか「お返し」をすることで御恩と奉公的な関係が成立します。
さて、それでは政治と官僚との対立という図式が、何故出てきたのでしょうか?これを私は「勧進帳ごっこ」と呼んでます。『勧進帳』は、義経と弁慶が関所を機転によって突破する逃避行ですが、ここでは、義経が官僚、弁慶が自民党、関所の役人は有権者です。関所の役人は義経と弁慶の関係を疑いますが、弁慶が義経をその場だけボコボコに殴って、疑いを払拭して関所(選挙)を突破するわけです。
興味深いことに、ここでも対立構造の演出は他国の共産党支配と類似してます。たとえば、中国が人工衛星を打ち落とした時に、胡錦濤は知らされてなかったのだなどという話が流されるのです。その昔に中国の潜水艦が日本領海内に入った時も、そのような話が流されました。その結果、軍部VS胡錦濤という図式を刷り込まれ、胡錦濤は穏健派なのだから応援しなければならないという気持ちにさせられるのです。しかし、実際には胡錦濤が発案したかもしれないのですが。
<太田>
なかなか面白い見方ですねえ。
私自身は、自民党は、かつて華やかりし日本型政治経済体制(コラム#40、42、43)において見られた典型的な組織原理を今なお遵守している組織であるように思います。
典型的な組織原理とは、構成員(政治家・スタッフ)による戦略情報の共有とボトムアップの意思決定、等です。
官僚機構においても、自民党ほどではないけれど、戦略情報の共有とボトムアップ、等が今なお見られます。
ただし、このような組織であっても、そして、たとえ官僚の御輿に乗っているだけの無能な首相や大臣であったとしても、彼らが持っている形式的権限は、官僚機構に対しても、自民党の族議員に対しても強力ですよ。
<女性読者NS>
ブログを携帯メルマガにて拝読しています。
私は公共事業に係る業務をおこなう民間の中小企業で働いています。世間をにぎわす天下りや談合が身近に当たり前のようにある現状です。なんとかそれに立ち向かってはいますが、なかなか思うようにはいきません。防衛省のみならず、日本の再生は切に願うところです。
今回、太田さまの著書を読み視野を広げたいと思った次第です。
軍事に詳しいわけではなく全くの素人の私が恐縮ですが、申し込みさせていただきます。
よろしくお願いします。
<太田>
朝届いたばかりの、私と兵頭二十八氏との共著『属国の防衛革命』(光人社。1700円+税)が私の目の前にあります。近日中に店頭に並ぶはずです。
帯の文言は初めて目にしましたが、背表紙の部分には「日本は変われるのか!?」、表紙の部分には「真の独立国家とは?! 元防衛省のキャリア官僚<防衛審議官>と熱狂的読者を擁する軍学者がラディカルに斬り込む刺激的国防論!」、裏表紙の部分には「防衛省/自衛隊は本当に変われるのか。機能する「軍政・軍令機構」改革は可能なのか。沈静化していく一方の日本を再生するための新しい視座からの独創的提言、「自由主義」を一から考えようとする日本国民のための格好のテキスト。「防衛問題」をダイナミックに捉えた衝撃的論考。」と記されています。
また、私の2冊目の単独著である『防衛省への”最後通牒”』(仮題)(金曜日)が来月にも出版されます。
この2冊も、ぜひお読みください。
<コバ>
小林興起氏が、外国人受け入れのために、日本がアジアやアフリカに日本語学校を設立し、外国の若者が日本語の教育を受ける機会が得られるようにすることを対外援助の基本方針とすべきだと説いています(
http://m.ameba.jp/m/blogArticle.do?unm=kobayashikouki&articleId=10129139592&guid=ON)。
世界を席巻しているアングロサクソンの英語のように、日本語をアジアや世界に広めるには、やはり日本が米国から独立する(鎖国を止める!)ことが必須のように思います。
しかし、太田さんのコラムで、米国が移民や留学などで優秀な人材、若者を発展途上国から奪ってしまうのは新しい植民地主義だ、といった意見が紹介されていたと曖昧に記憶していますが、日本はその意味では、どのように外国人を受け入れるべきなのでしょう。
オーストラリアなどみたいに、世界で自然と日本語の人気や需要が高まってくれるといいのですが…。
<太田>
「日本・・・<は>外国人労働者や移民の受け入れについて包括的な国家政策<が>完全<に>欠如<している>る。移民政策を含めた人口政策がなければ、日本の国として の存続そのものが危うくなる・・・。」(
http://www.glocom.org/indexj.html
。9月15日アクセス)という認識の下、外国人学生・労働者・移民を積極的に受け入れる方針を打ち出すことが先決でしょうね。
そうすれば、おのずから世界中で日本語が学びたい人が増えるでしょうから、これらの人々の希望に応える形で、日本政府が日本語学習を支援する施策を推進すればいいのです。
<バグってハニー>
コバさん、日本がどうやって世界から優秀な人材を惹きつけるかを考えるのはすばらしいことだと思います。ただ、外国に日本語学校を作るというのは考え方が倒錯しているのではないでしょうか。
私は米国のアカデミアで働いているので、この業界に限った話ですけど、私のデパートメントではざっと見渡して半数が外国人、さらにその半分を中国人が占め ています。米国の研究機関ではどこも似たようなものだと思います。米国では建設作業員、ファスト・フードの店員、掃除夫、メイドといった単純労働を移民が 支えていますが、高等教育機関も外国人の存在抜きには成り立たなくなっています。太田さんがいつも主張する移民のハイ・ロー・ミックスというやつです。
それで、先日ドイツからドイツ人の博士号の学生さんが来ていたのですが、初めから英語が流暢なので聞いてみたら、英語でのプレゼンテーションが課せられていて、博士論文も英語で書くそうです。私は日本で博士号取りましたけど、英語教育は貧相の極みでまったく実用的でなかったのとえらい違いです。好むと好まざるに関わらず、英語は業界標準です。ドイツだと研究機関では基本的に英語で通すそうなので、世界から優秀な研究者を受け入れる素地がある。ドイツは移民獲得のゲームがどういうルールでプレイされているのか、わきまえているんですね。
中国人留学生もおおむね来た当初から英語ができます。少なくとも日本人留学生とは比べ物にならないです。聞いてみると、中国では学生は熱心に英語を勉強していて、TOEFLなんかでアホみたいな高得点を叩き出している。最近中国人留学生がやたらと目に付いて嫌だなあ、というような日本人をよく見かけるので すが、中国人学生はまず米国を目指すんですよ。米国に受け入れ先が見つからないような、言葉は悪いですが言ってみれば「二流」の中国人がしかたなく日本に 留学しているわけです。日本はこの「優秀な人材獲得ゲーム」で既にだいぶ負けていることを認識する必要があると思います。
(補足:最近では中国の高等教育機関も相当レベルが上がってきて必ずしも国外に出る必要はないそうです。)
英語第二公用語化、結論はこれに限るでしょう。役所、公共施設、教育機関で日本語に加えて英語が通用するようになれば、外国の優秀な人材に とって障壁が一つ取り除かれたことになります。逆に言うと、日本に行くためにはまず日本語を習得しなければならないというのであれば、誰だって行く気ゼロ になりますよ。
それで、そういう試みは日本ですでに始まっています。たとえば、理化学研究所は今RIKENの名前で世界的にプロデュースされてますけど、外国人がリーダーを勤めていて英語が日常的に使われている研究室が多数あります。
http://www.riken.go.jp/r-world/pi/index.html
あるいはこのページを読むとRIKENが外国人を多数受け入れているのがわかると思います。
http://www.riken.go.jp/r-world/riken/personnel/index.html
もう一つ、最近ようやくまともな形になってきた沖縄科学技術研究基盤整備機構。私の知り合いのベルギー人もいま沖縄に行ってますけど、ここも主任研究員の顔ぶれに多数外国人が入っていることがわかると思います。そういう研究室では基本的に英語でやり取りすることになります。
http://www.oist.jp/j/faculty_1.html
まあ、だから日本の「偉い人」たちもこの移民獲得のゲームがどういうルールでプレイされているのかわきまえていて、遅ればせながらそれに対応しようとしているわけです。日本人に必要なのは日本という国は日本人のためだけにあるのではなくて日本に住むすべての人のためにある、と考え方を変えることではないでしょうか。日本に来て働いてもらって、日本で業績出してもらって、日本に新しい産業立ち上げてもらって、日本政府に税金納めてもらうわけですから、いちいちけち付けちゃだめですよ。
<海驢>
バグってハニーさんへ。
英語の第二公用語化? それはそれは、絶対的に反対ですね。
まして「外国人受け入れのため」とは、本末転倒では?
言葉とは文化そのもの。歴史の連続性からいっても蓄積された文献・文学の質・量からいっても世界最高水準の「言靈の幸ふ國」の言葉(=日本語)を大切にするためには、第二公用語は有害と思われます。日本語すら最近は中途半端になっているところに(所詮、他国の言葉である)英語を入れたりしたら、それこそ文化の質的低下を招き、移民を惹きつける魅力を減じるだけでしょう。
日本は幸いにして白人侵略国家の植民地になることなく、スペイン語やポルトガル語や英語を強制されずに済んでいる、その忝なさに思いを至すべきです。
英語は英国の文化にとってかけがえのない価値があり(文字はローマからの借り物のようですが)、大英帝国の力に基づく多国間のコミュニケーション言語として高い価値があることは認めますが、日本においては英語を必要とする人が必要な場所で使うだけで十分でしょう。
それは、現代日本が世界第二位の経済規模を持ち、特許件数など知財分野でも上位であることからも明らかだと思われます。
※参考:特許:米国での取得件数、日本勢が圧勝 | WIRED VISION
http://wiredvision.jp/blog/epicenter/200801/20080116085124.html
しかし、そもそも移民を多数受け入れている米国では、英語を話せない人間が増えているのではありませんか? そのような移民が国家に寄与するかどうかはともかく、「言葉が通じるからその国に移民が来る」という因果関係でないことは明白な気がしますが。
※参考:livedoor ニュース - 英語を喋れない「アメリカ人」が増えている (上) http://news.livedoor.com/article/detail/2334849/
livedoor ニュース - 英語を喋れない「アメリカ人」が増えている (中) http://news.livedoor.com/article/detail/2339140/
livedoor ニュース - 英語を喋れない「アメリカ人」が増えている (下) http://news.livedoor.com/article/detail/2343353/
<太田>
バグってハニーさん、日本の理系の研究/教育機関で英語が使われる割合が増えていくのはごく自然なことですが、このことと、英語を日本の第二公用語にすることとは次元が全く異なる話ではないでしょうか。
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太田述正コラム#2796(2008.9.17)
<ナチスの占領地統治(その3)>
→非公開
<皆さんとディスカッション(続x248)>
<MS>
≫3、オバマのように演説で泣かせる候補者が凄いなら、金銭醜聞のジャクソン氏も泣かせのプロ。いつも黒人のおばさんが涙でぐしょぐしょでしたよね。≪(コラム#2793。大阪の川にゃ)
わたしの書き込みに関してコメントされているのだと思いますが、いったい何をおっしゃりたいのかさっぱりわかりません。
何か誤解されているようなのであえて申し上げますが、私がオバマの演説の映像を引用したのは、ただ単に自民党の総裁候補の演説がいかに稚拙かということを比較してわかってもらいたかっただけではありません。
涙をながすほど選挙に自分たちの未来をかけているアメリカ人の姿を見てもらいたっかからです。
大阪の川にゃ様は、自民党総裁候補の演説を見て頭にきませんか?
なめてんのか!とおもいませんか?
あなたはどうか知りませんが、これだけ自民党に馬鹿にされていながら、自民党に権益を保護してもらっているわけでもないのに、依然自民党に票をいれようと考えているような人がいらっしゃるようですね。
いったいどういう思考回路をしているのでしょうか?
なぜ素直に怒りを投票行動にぶつけないのでしょうか?
きっと奴隷生活が長すぎて感情も表現できない動物になってしまったのでしょう。
オバマの演説を聞いて涙を流している「人間」とは、「えらい違い」とは思いませんか?
<popper>
官僚と自民政治家の関係について考察する場合には、第一に自民党支配が共産党支配に類似している点を見逃してならないでしょう。認識にはクレムリン学的(Kremlinology)なアプローチが欠かせません。共産主義国家の特徴とは何か。それは党の序列が重要だということです。逆に言えば国家の職というのは従属的なものです(党高政低)。中国の外務大臣は、欧米の外務大臣より偉くありません(日本の外務大臣なみ?)。偉い場合には、党中央の序列でも高い順位にいた場合のみです(唐家旋など)。従って、大臣と次官あるいは幹部との関係を見たところで、表層的なものしかわかりません。役所にとって重要なことは、自民党内の部会と呼ばれる私的な機関において、いわゆる族議員から法案の承認を得ることであって、そもそも大臣など大した存在ではありません。大臣が部会でも大物と目されている場合には、地位と実質的権限の合致が現象しますが、いわば日食とか月食のような偶然の星の配列みたいなもので珍しい現象ですね。自民党議員も、ごく最近までは大臣よりも部会トップになりたがりました。なぜなら、前者は公的責任があるが、実質的権限がないのに対し、後者は公的責任がないにもかかわらず実質的権限があるからです。鈴木宗男議員が、役所の秘密資料にアクセスできたのも、こういう理由からです。このことを踏まえれば大臣の命令に官僚が従わないというのも、容易に理解できますし、そのことを政治と官僚との対立構造と捉えることは失当に過ぎます。なぜなら、大臣の命令に従わないという場合でも、自民党内の族議員などの支持あるいは黙認を得ているからです。従って大臣の命令が役所にとって不都合な場合は、役所は自民党内の応援団をテコに巻き返しに出ます。応援団は役所に「貸しをつくり」、役所はいつか「お返し」をすることで御恩と奉公的な関係が成立します。
さて、それでは政治と官僚との対立という図式が、何故出てきたのでしょうか?これを私は「勧進帳ごっこ」と呼んでます。『勧進帳』は、義経と弁慶が関所を機転によって突破する逃避行ですが、ここでは、義経が官僚、弁慶が自民党、関所の役人は有権者です。関所の役人は義経と弁慶の関係を疑いますが、弁慶が義経をその場だけボコボコに殴って、疑いを払拭して関所(選挙)を突破するわけです。
興味深いことに、ここでも対立構造の演出は他国の共産党支配と類似してます。たとえば、中国が人工衛星を打ち落とした時に、胡錦濤は知らされてなかったのだなどという話が流されるのです。その昔に中国の潜水艦が日本領海内に入った時も、そのような話が流されました。その結果、軍部VS胡錦濤という図式を刷り込まれ、胡錦濤は穏健派なのだから応援しなければならないという気持ちにさせられるのです。しかし、実際には胡錦濤が発案したかもしれないのですが。
<太田>
なかなか面白い見方ですねえ。
私自身は、自民党は、かつて華やかりし日本型政治経済体制(コラム#40、42、43)において見られた典型的な組織原理を今なお遵守している組織であるように思います。
典型的な組織原理とは、構成員(政治家・スタッフ)による戦略情報の共有とボトムアップの意思決定、等です。
官僚機構においても、自民党ほどではないけれど、戦略情報の共有とボトムアップ、等が今なお見られます。
ただし、このような組織であっても、そして、たとえ官僚の御輿に乗っているだけの無能な首相や大臣であったとしても、彼らが持っている形式的権限は、官僚機構に対しても、自民党の族議員に対しても強力ですよ。
<女性読者NS>
ブログを携帯メルマガにて拝読しています。
私は公共事業に係る業務をおこなう民間の中小企業で働いています。世間をにぎわす天下りや談合が身近に当たり前のようにある現状です。なんとかそれに立ち向かってはいますが、なかなか思うようにはいきません。防衛省のみならず、日本の再生は切に願うところです。
今回、太田さまの著書を読み視野を広げたいと思った次第です。
軍事に詳しいわけではなく全くの素人の私が恐縮ですが、申し込みさせていただきます。
よろしくお願いします。
<太田>
朝届いたばかりの、私と兵頭二十八氏との共著『属国の防衛革命』(光人社。1700円+税)が私の目の前にあります。近日中に店頭に並ぶはずです。
帯の文言は初めて目にしましたが、背表紙の部分には「日本は変われるのか!?」、表紙の部分には「真の独立国家とは?! 元防衛省のキャリア官僚<防衛審議官>と熱狂的読者を擁する軍学者がラディカルに斬り込む刺激的国防論!」、裏表紙の部分には「防衛省/自衛隊は本当に変われるのか。機能する「軍政・軍令機構」改革は可能なのか。沈静化していく一方の日本を再生するための新しい視座からの独創的提言、「自由主義」を一から考えようとする日本国民のための格好のテキスト。「防衛問題」をダイナミックに捉えた衝撃的論考。」と記されています。
また、私の2冊目の単独著である『防衛省への”最後通牒”』(仮題)(金曜日)が来月にも出版されます。
この2冊も、ぜひお読みください。
<コバ>
小林興起氏が、外国人受け入れのために、日本がアジアやアフリカに日本語学校を設立し、外国の若者が日本語の教育を受ける機会が得られるようにすることを対外援助の基本方針とすべきだと説いています(
http://m.ameba.jp/m/blogArticle.do?unm=kobayashikouki&articleId=10129139592&guid=ON)。
世界を席巻しているアングロサクソンの英語のように、日本語をアジアや世界に広めるには、やはり日本が米国から独立する(鎖国を止める!)ことが必須のように思います。
しかし、太田さんのコラムで、米国が移民や留学などで優秀な人材、若者を発展途上国から奪ってしまうのは新しい植民地主義だ、といった意見が紹介されていたと曖昧に記憶していますが、日本はその意味では、どのように外国人を受け入れるべきなのでしょう。
オーストラリアなどみたいに、世界で自然と日本語の人気や需要が高まってくれるといいのですが…。
<太田>
「日本・・・<は>外国人労働者や移民の受け入れについて包括的な国家政策<が>完全<に>欠如<している>る。移民政策を含めた人口政策がなければ、日本の国として の存続そのものが危うくなる・・・。」(
http://www.glocom.org/indexj.html
。9月15日アクセス)という認識の下、外国人学生・労働者・移民を積極的に受け入れる方針を打ち出すことが先決でしょうね。
そうすれば、おのずから世界中で日本語が学びたい人が増えるでしょうから、これらの人々の希望に応える形で、日本政府が日本語学習を支援する施策を推進すればいいのです。
<バグってハニー>
コバさん、日本がどうやって世界から優秀な人材を惹きつけるかを考えるのはすばらしいことだと思います。ただ、外国に日本語学校を作るというのは考え方が倒錯しているのではないでしょうか。
私は米国のアカデミアで働いているので、この業界に限った話ですけど、私のデパートメントではざっと見渡して半数が外国人、さらにその半分を中国人が占め ています。米国の研究機関ではどこも似たようなものだと思います。米国では建設作業員、ファスト・フードの店員、掃除夫、メイドといった単純労働を移民が 支えていますが、高等教育機関も外国人の存在抜きには成り立たなくなっています。太田さんがいつも主張する移民のハイ・ロー・ミックスというやつです。
それで、先日ドイツからドイツ人の博士号の学生さんが来ていたのですが、初めから英語が流暢なので聞いてみたら、英語でのプレゼンテーションが課せられていて、博士論文も英語で書くそうです。私は日本で博士号取りましたけど、英語教育は貧相の極みでまったく実用的でなかったのとえらい違いです。好むと好まざるに関わらず、英語は業界標準です。ドイツだと研究機関では基本的に英語で通すそうなので、世界から優秀な研究者を受け入れる素地がある。ドイツは移民獲得のゲームがどういうルールでプレイされているのか、わきまえているんですね。
中国人留学生もおおむね来た当初から英語ができます。少なくとも日本人留学生とは比べ物にならないです。聞いてみると、中国では学生は熱心に英語を勉強していて、TOEFLなんかでアホみたいな高得点を叩き出している。最近中国人留学生がやたらと目に付いて嫌だなあ、というような日本人をよく見かけるので すが、中国人学生はまず米国を目指すんですよ。米国に受け入れ先が見つからないような、言葉は悪いですが言ってみれば「二流」の中国人がしかたなく日本に 留学しているわけです。日本はこの「優秀な人材獲得ゲーム」で既にだいぶ負けていることを認識する必要があると思います。
(補足:最近では中国の高等教育機関も相当レベルが上がってきて必ずしも国外に出る必要はないそうです。)
英語第二公用語化、結論はこれに限るでしょう。役所、公共施設、教育機関で日本語に加えて英語が通用するようになれば、外国の優秀な人材に とって障壁が一つ取り除かれたことになります。逆に言うと、日本に行くためにはまず日本語を習得しなければならないというのであれば、誰だって行く気ゼロ になりますよ。
それで、そういう試みは日本ですでに始まっています。たとえば、理化学研究所は今RIKENの名前で世界的にプロデュースされてますけど、外国人がリーダーを勤めていて英語が日常的に使われている研究室が多数あります。
http://www.riken.go.jp/r-world/pi/index.html
あるいはこのページを読むとRIKENが外国人を多数受け入れているのがわかると思います。
http://www.riken.go.jp/r-world/riken/personnel/index.html
もう一つ、最近ようやくまともな形になってきた沖縄科学技術研究基盤整備機構。私の知り合いのベルギー人もいま沖縄に行ってますけど、ここも主任研究員の顔ぶれに多数外国人が入っていることがわかると思います。そういう研究室では基本的に英語でやり取りすることになります。
http://www.oist.jp/j/faculty_1.html
まあ、だから日本の「偉い人」たちもこの移民獲得のゲームがどういうルールでプレイされているのかわきまえていて、遅ればせながらそれに対応しようとしているわけです。日本人に必要なのは日本という国は日本人のためだけにあるのではなくて日本に住むすべての人のためにある、と考え方を変えることではないでしょうか。日本に来て働いてもらって、日本で業績出してもらって、日本に新しい産業立ち上げてもらって、日本政府に税金納めてもらうわけですから、いちいちけち付けちゃだめですよ。
<海驢>
バグってハニーさんへ。
英語の第二公用語化? それはそれは、絶対的に反対ですね。
まして「外国人受け入れのため」とは、本末転倒では?
言葉とは文化そのもの。歴史の連続性からいっても蓄積された文献・文学の質・量からいっても世界最高水準の「言靈の幸ふ國」の言葉(=日本語)を大切にするためには、第二公用語は有害と思われます。日本語すら最近は中途半端になっているところに(所詮、他国の言葉である)英語を入れたりしたら、それこそ文化の質的低下を招き、移民を惹きつける魅力を減じるだけでしょう。
日本は幸いにして白人侵略国家の植民地になることなく、スペイン語やポルトガル語や英語を強制されずに済んでいる、その忝なさに思いを至すべきです。
英語は英国の文化にとってかけがえのない価値があり(文字はローマからの借り物のようですが)、大英帝国の力に基づく多国間のコミュニケーション言語として高い価値があることは認めますが、日本においては英語を必要とする人が必要な場所で使うだけで十分でしょう。
それは、現代日本が世界第二位の経済規模を持ち、特許件数など知財分野でも上位であることからも明らかだと思われます。
※参考:特許:米国での取得件数、日本勢が圧勝 | WIRED VISION
http://wiredvision.jp/blog/epicenter/200801/20080116085124.html
しかし、そもそも移民を多数受け入れている米国では、英語を話せない人間が増えているのではありませんか? そのような移民が国家に寄与するかどうかはともかく、「言葉が通じるからその国に移民が来る」という因果関係でないことは明白な気がしますが。
※参考:livedoor ニュース - 英語を喋れない「アメリカ人」が増えている (上) http://news.livedoor.com/article/detail/2334849/
livedoor ニュース - 英語を喋れない「アメリカ人」が増えている (中) http://news.livedoor.com/article/detail/2339140/
livedoor ニュース - 英語を喋れない「アメリカ人」が増えている (下) http://news.livedoor.com/article/detail/2343353/
<太田>
バグってハニーさん、日本の理系の研究/教育機関で英語が使われる割合が増えていくのはごく自然なことですが、このことと、英語を日本の第二公用語にすることとは次元が全く異なる話ではないでしょうか。
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太田述正コラム#2796(2008.9.17)
<ナチスの占領地統治(その3)>
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