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太田述正コラム#2707(2008.8.3)
<中共の人権状況>(2008.9.15公開)
1 始めに
北京五輪の開幕が目前ですが、この際、中共の人権状況を概観しておきましょう。
2 北京五輪に係る報道の自由
IOCのスポークスマンのゴスパー(Kevan Gosper)氏は、IOCと中共当局との間でインターネットへのアクセス規制について合意が成立したと述べた自分や他のIOC幹部の発言を8月1日に撤回し、インターネットへのアクセスは完全に自由でなければならないと述べました(注)。
(注)一部メディアは、IOCのロゲ(Rogge)会長が、「外国メディアに対するインターネット検閲は行われない」と述べたと報じたが、IOCの幹部は、中共当局との間で合意が成立しているわけではないことを示唆しつつ、ロゲ会長はベルギー人であって、英語が母国語ではないことから、同会長の発言の細部に余り拘泥すべきではない、と述べている。
2001年に、北京五輪の開催が決まった時、中共の五輪担当当局は、「中共にやってきたメディアに対して完全な報道の自由を与える」と述べたのですが、「完全な報道の自由」に、「スポーツ以外の情報へのアクセスの完全な自由」が含まれるかどうかについて、IOCが詰めて考えていなかったことが、IOCのこのような迷走をもたらしたのでしょう。
報道に係る検閲は、むしろ10年前に比べて厳しくなった、とりわけ胡錦涛/温家宝体制になってからそうだ、という声さえある中で、中共当局としても、五輪期間中だけ、しかも外国メディアだけに対してだけではあっても、インターネット検閲を完全撤廃してたまるか、と思っているのでしょうね。
IOCの上記意向を受けてか、中共当局は、8月1日にBBCの漢語放送やアムネスティ・インタナショナルのサイト等へのアクセスを可能にしたと思ったら、更に2日には、1989年の天安門事件を取り扱うウィキペディアの英語サイトへのアクセスも可能にしました。
しかも、これらサイトへの五輪プレスセンター外からのアクセスも可能にしたのです。 しかしながら、依然として、ウィキペディアの「中共の民主運動」の頁や、非合法化された法輪功(Falun Gong)、あるいはチベット亡命政府、チベットと自由チベットのために国際キャンペーン(International Campaign for Tibet and Free Tibet)のサイトへのアクセスはできない状況です。
(以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/08/02/AR2008080201204_pf.html、
http://www.guardian.co.uk/world/2008/aug/03/china.humanrights、
http://www.taipeitimes.com/News/front/archives/2008/08/03/2003419319
(いずれも8月3日アクセス)による。
3 全般的な人権状況
北京五輪開催に藉口して、中共当局はこの夏、ありとあらゆる「不穏分子」を一網打尽にしました。
人権運動家達の多くは、既に拘束されている人だけで数千人にのぼるはずだと指摘しています。
これもまた、7年前に北京五輪招致委員会事務局長が、北京五輪開催は、中共経済の発展のみならず、教育、健康、そして人権といった中共のあらゆる社会的条件の向上に資するだろうと語ったことを裏切るものです。
ブッシュ米大統領は7月29日に中共の人権運動家達と面談して中共当局を内政干渉だと怒らせましたが、同大統領は7月8日の五輪開会式に出席することにしており、同じくこの開会式に出席するところの世界の他の指導者達同様、五輪は中共の人権状況を云々するのにふさわしい場ではないとする中共当局の主張の提灯持ちに堕してしまっています。
(以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/08/01/AR2008080103717_pf.html
(8月3日アクセス)による。)
4 終わりに代えて
こうした中、気になるのが、中共の人権状況はどんどん改善されつつあると考えているらしい中共国民のノーテンキぶり(
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/aug/03/china.olympicgames20081
。8月3日アクセス)です。
いや、何事によらず、現在の中共国民は、浮かれているという形容がぴったりです。
米国のピュー・リサーチ・センター(Pew Research Centre)の調査によれば、中共国民の96%が北京五輪は成功するだろうと考えている(
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/7521321.stm
。7月24日アクセス)ことはご愛敬だとしても、自分の国の方向が満足行くものであると考えている国民の割合が、恐らく中共が世界一高いというのですから・・。
すなわち、その割合は、中共:86%、ロシア:54%、インド:41%、フランス:29%、日本:23%、米国:23%、です。
中共国民は何も分かっていないと言わざるをえません。
中共国民の77%が中共は世界で人気があると思っているけれど、中共に好意を持っていない人の割合は、日本:67%、フランス:51%、インド:43%、米国:39%、ロシア:26%、、中共の人気はむしろ低い、ということからも、中共国民の無知さかげんは明らかだと思いませんか?
(以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/graphic/2008/07/26/GR2008072600672.html
(7月27日アクセス)による。)
<中共の人権状況>(2008.9.15公開)
1 始めに
北京五輪の開幕が目前ですが、この際、中共の人権状況を概観しておきましょう。
2 北京五輪に係る報道の自由
IOCのスポークスマンのゴスパー(Kevan Gosper)氏は、IOCと中共当局との間でインターネットへのアクセス規制について合意が成立したと述べた自分や他のIOC幹部の発言を8月1日に撤回し、インターネットへのアクセスは完全に自由でなければならないと述べました(注)。
(注)一部メディアは、IOCのロゲ(Rogge)会長が、「外国メディアに対するインターネット検閲は行われない」と述べたと報じたが、IOCの幹部は、中共当局との間で合意が成立しているわけではないことを示唆しつつ、ロゲ会長はベルギー人であって、英語が母国語ではないことから、同会長の発言の細部に余り拘泥すべきではない、と述べている。
2001年に、北京五輪の開催が決まった時、中共の五輪担当当局は、「中共にやってきたメディアに対して完全な報道の自由を与える」と述べたのですが、「完全な報道の自由」に、「スポーツ以外の情報へのアクセスの完全な自由」が含まれるかどうかについて、IOCが詰めて考えていなかったことが、IOCのこのような迷走をもたらしたのでしょう。
報道に係る検閲は、むしろ10年前に比べて厳しくなった、とりわけ胡錦涛/温家宝体制になってからそうだ、という声さえある中で、中共当局としても、五輪期間中だけ、しかも外国メディアだけに対してだけではあっても、インターネット検閲を完全撤廃してたまるか、と思っているのでしょうね。
IOCの上記意向を受けてか、中共当局は、8月1日にBBCの漢語放送やアムネスティ・インタナショナルのサイト等へのアクセスを可能にしたと思ったら、更に2日には、1989年の天安門事件を取り扱うウィキペディアの英語サイトへのアクセスも可能にしました。
しかも、これらサイトへの五輪プレスセンター外からのアクセスも可能にしたのです。 しかしながら、依然として、ウィキペディアの「中共の民主運動」の頁や、非合法化された法輪功(Falun Gong)、あるいはチベット亡命政府、チベットと自由チベットのために国際キャンペーン(International Campaign for Tibet and Free Tibet)のサイトへのアクセスはできない状況です。
(以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/08/02/AR2008080201204_pf.html、
http://www.guardian.co.uk/world/2008/aug/03/china.humanrights、
http://www.taipeitimes.com/News/front/archives/2008/08/03/2003419319
(いずれも8月3日アクセス)による。
3 全般的な人権状況
北京五輪開催に藉口して、中共当局はこの夏、ありとあらゆる「不穏分子」を一網打尽にしました。
人権運動家達の多くは、既に拘束されている人だけで数千人にのぼるはずだと指摘しています。
これもまた、7年前に北京五輪招致委員会事務局長が、北京五輪開催は、中共経済の発展のみならず、教育、健康、そして人権といった中共のあらゆる社会的条件の向上に資するだろうと語ったことを裏切るものです。
ブッシュ米大統領は7月29日に中共の人権運動家達と面談して中共当局を内政干渉だと怒らせましたが、同大統領は7月8日の五輪開会式に出席することにしており、同じくこの開会式に出席するところの世界の他の指導者達同様、五輪は中共の人権状況を云々するのにふさわしい場ではないとする中共当局の主張の提灯持ちに堕してしまっています。
(以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/08/01/AR2008080103717_pf.html
(8月3日アクセス)による。)
4 終わりに代えて
こうした中、気になるのが、中共の人権状況はどんどん改善されつつあると考えているらしい中共国民のノーテンキぶり(
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/aug/03/china.olympicgames20081
。8月3日アクセス)です。
いや、何事によらず、現在の中共国民は、浮かれているという形容がぴったりです。
米国のピュー・リサーチ・センター(Pew Research Centre)の調査によれば、中共国民の96%が北京五輪は成功するだろうと考えている(
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/7521321.stm
。7月24日アクセス)ことはご愛敬だとしても、自分の国の方向が満足行くものであると考えている国民の割合が、恐らく中共が世界一高いというのですから・・。
すなわち、その割合は、中共:86%、ロシア:54%、インド:41%、フランス:29%、日本:23%、米国:23%、です。
中共国民は何も分かっていないと言わざるをえません。
中共国民の77%が中共は世界で人気があると思っているけれど、中共に好意を持っていない人の割合は、日本:67%、フランス:51%、インド:43%、米国:39%、ロシア:26%、、中共の人気はむしろ低い、ということからも、中共国民の無知さかげんは明らかだと思いませんか?
(以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/graphic/2008/07/26/GR2008072600672.html
(7月27日アクセス)による。)
太田述正ブログは移転しました 。
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