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太田述正コラム#2579(2008.5.30)
<中共体制崩壊の始まり?(続々)(その2)>(2008.7.2公開)
一人っ子政策は、農民や少数民族や、一人っ子同士の夫婦は適用除外になっているので、実際には中共の家庭の36%しか対象になっていません。
ところが例えば、前出の都江堰(Dujiangyan)市の聚源(Juyuan)中学校の界隈は、農村地帯ではないので、一人っ子政策の対象ですが、都会とまでは言えず、農業を営む者も多く、年長者を敬うといった伝統的価値観が維持されており、父兄もまた子供達が農作業を手伝ったり老年期の支えとなったりすることを期待していることから、校舎崩壊で子供をなくした父兄の悲しみと怒りはとどまるところを知らないわけです。
(以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/05/25/AR2008052502686_pf.html
(5月27日アクセス)による。)
5月26日、四川省当局は、合法的に生まれた一人っ子を失った父兄は、18歳未満の非合法的に生まれた子供を合法化できるものとするとともに、非合法的に生まれた子供を失った父兄は、過去に支払った罰金は還付されないものの、未払いの罰金の支払いは免除されるものとしました。
もちろん、合法的に生まれた一人っ子を失った父兄は、新たに子供をつくることはできるわけですが、高齢の父兄の場合や、断種手術を受けた父兄はどうしようもないわけです。
(以上、
http://www.nytimes.com/2008/05/27/world/asia/27child.html?_r=1&hp=&oref=slogin&pagewanted=print
(5月27日アクセス)による。
まだ表面化はしていませんが、一人っ子政策なる非人道的な政策自体に批判の声が出てくる可能性は否定できません。
(3)工学士主導の政治
中共だけでダムの数は、実に世界全体のダムの約半数を占めています。
四川省もダムだらけであり、大震災の結果、69ものダムが決壊寸前となっており、このほか3,000近くのダムが何らかの被害を受けました。
支那人の多くは、今でも、自然災害によって人的被害が生じるとそれには犯人がいるに違いないと考えます。
これを必ずしも迷信と片付けるわけにはいきません。
というのは、1967年にインドのコイナ(Koyna)で発生した地震は、ダム湖の重さが引き金になったとされているからです。
今回の大震災から数日も経たないうちに、震源から30マイルしか離れていない彭州(Pengzhou)に建設予定であった石油精製・石油化学プラントの計画の再検討が発表されました。地震が起きるわずか数時間前に、建設抗議運動の活動家が騒擾扇動罪で逮捕されたばかりだったというのに。
四川省の環境保護論者達は、かねてからダム建設に反対してきました。
2003年には都江堰市で計画されていたダムの建設を、世界遺産に登録された2,000年前にできた灌漑施設・・震源から20マイル!・・が破壊されるとして、中止に追い込みました。
しかし、四川省の地震担当部門が、断層に近すぎるとして建設に反対したにもかかわらず、紫坪鋪(Zipingpu)ダムが2年前に完成しました。
案の定、今度の地震の結果、このダムには大きな亀裂が何本も入ってしまいました。このダムの建設に反対した四川省の地質学者は、このダムの建設が今回の地震を引き起こした可能性を調査すべきだと主張しています。
この巨大ダムの人造湖は100メートル以上の深さがあり、プレートに圧力を加えており、しかも断層の真上にこのダムは造られているので、地震を引き起こした可能性を排除できないというのです。
毛沢東の時代は自然を造り替える手段として、そしてトウ小平の時代からは市場経済下の欲望の象徴として、次々にダムが造られてきました。ダムをつくれば水力発電ができ、地方政府の懐も豊かになる、と。
(以上、
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-dams28-2008may28,0,7008000,print.story
(5月28日アクセス)による。)
振り返って見ると、これまでの30年間は、工学士が中共の政治に君臨してきました。
トウ小平らが経済改革を始めると、やがて工学士達がトウの後を継いで中共を経済大国へと導いたのです。
1987年には中共中央は、その中枢である政治局常務委員会に初めて工学士達を受け入れました。
そして、2002年までには同委員会は、胡錦涛(水理学)、温家宝(地質学)等、9名全員が工学士で占められるに至りました。
今や、中央銀行総裁だって化学工学専攻ですし、警察のトップは石油工学専攻です。
昨年の秋、常任委員会は、1987年以来、初めて新規の非工学士たる委員(法学士)を受け入れたのですが、これは大きなニュースになったほどです。
(以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/05/22/AR2008052203391.html
(5月25日アクセス)による。)
ダムがめったやたらに造られたのも当然です。
完成時には世界一の水力発電が可能となる三峡ダム(Three Gorges Dam)を、大規模な自然破壊を伴いつつ、最終的に230万人も立ち退かせる形で揚子江に造るなどという、とんでもないプロジェクトも進行しており、2011年には完成する予定です(
http://en.wikipedia.org/wiki/Three_Gorges_Dam)。
このような、工学士主導の政治そのものに対する疑問も、今後出てくる可能性があるのではないでしょうか。
(完)
<中共体制崩壊の始まり?(続々)(その2)>(2008.7.2公開)
一人っ子政策は、農民や少数民族や、一人っ子同士の夫婦は適用除外になっているので、実際には中共の家庭の36%しか対象になっていません。
ところが例えば、前出の都江堰(Dujiangyan)市の聚源(Juyuan)中学校の界隈は、農村地帯ではないので、一人っ子政策の対象ですが、都会とまでは言えず、農業を営む者も多く、年長者を敬うといった伝統的価値観が維持されており、父兄もまた子供達が農作業を手伝ったり老年期の支えとなったりすることを期待していることから、校舎崩壊で子供をなくした父兄の悲しみと怒りはとどまるところを知らないわけです。
(以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/05/25/AR2008052502686_pf.html
(5月27日アクセス)による。)
5月26日、四川省当局は、合法的に生まれた一人っ子を失った父兄は、18歳未満の非合法的に生まれた子供を合法化できるものとするとともに、非合法的に生まれた子供を失った父兄は、過去に支払った罰金は還付されないものの、未払いの罰金の支払いは免除されるものとしました。
もちろん、合法的に生まれた一人っ子を失った父兄は、新たに子供をつくることはできるわけですが、高齢の父兄の場合や、断種手術を受けた父兄はどうしようもないわけです。
(以上、
http://www.nytimes.com/2008/05/27/world/asia/27child.html?_r=1&hp=&oref=slogin&pagewanted=print
(5月27日アクセス)による。
まだ表面化はしていませんが、一人っ子政策なる非人道的な政策自体に批判の声が出てくる可能性は否定できません。
(3)工学士主導の政治
中共だけでダムの数は、実に世界全体のダムの約半数を占めています。
四川省もダムだらけであり、大震災の結果、69ものダムが決壊寸前となっており、このほか3,000近くのダムが何らかの被害を受けました。
支那人の多くは、今でも、自然災害によって人的被害が生じるとそれには犯人がいるに違いないと考えます。
これを必ずしも迷信と片付けるわけにはいきません。
というのは、1967年にインドのコイナ(Koyna)で発生した地震は、ダム湖の重さが引き金になったとされているからです。
今回の大震災から数日も経たないうちに、震源から30マイルしか離れていない彭州(Pengzhou)に建設予定であった石油精製・石油化学プラントの計画の再検討が発表されました。地震が起きるわずか数時間前に、建設抗議運動の活動家が騒擾扇動罪で逮捕されたばかりだったというのに。
四川省の環境保護論者達は、かねてからダム建設に反対してきました。
2003年には都江堰市で計画されていたダムの建設を、世界遺産に登録された2,000年前にできた灌漑施設・・震源から20マイル!・・が破壊されるとして、中止に追い込みました。
しかし、四川省の地震担当部門が、断層に近すぎるとして建設に反対したにもかかわらず、紫坪鋪(Zipingpu)ダムが2年前に完成しました。
案の定、今度の地震の結果、このダムには大きな亀裂が何本も入ってしまいました。このダムの建設に反対した四川省の地質学者は、このダムの建設が今回の地震を引き起こした可能性を調査すべきだと主張しています。
この巨大ダムの人造湖は100メートル以上の深さがあり、プレートに圧力を加えており、しかも断層の真上にこのダムは造られているので、地震を引き起こした可能性を排除できないというのです。
毛沢東の時代は自然を造り替える手段として、そしてトウ小平の時代からは市場経済下の欲望の象徴として、次々にダムが造られてきました。ダムをつくれば水力発電ができ、地方政府の懐も豊かになる、と。
(以上、
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-dams28-2008may28,0,7008000,print.story
(5月28日アクセス)による。)
振り返って見ると、これまでの30年間は、工学士が中共の政治に君臨してきました。
トウ小平らが経済改革を始めると、やがて工学士達がトウの後を継いで中共を経済大国へと導いたのです。
1987年には中共中央は、その中枢である政治局常務委員会に初めて工学士達を受け入れました。
そして、2002年までには同委員会は、胡錦涛(水理学)、温家宝(地質学)等、9名全員が工学士で占められるに至りました。
今や、中央銀行総裁だって化学工学専攻ですし、警察のトップは石油工学専攻です。
昨年の秋、常任委員会は、1987年以来、初めて新規の非工学士たる委員(法学士)を受け入れたのですが、これは大きなニュースになったほどです。
(以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/05/22/AR2008052203391.html
(5月25日アクセス)による。)
ダムがめったやたらに造られたのも当然です。
完成時には世界一の水力発電が可能となる三峡ダム(Three Gorges Dam)を、大規模な自然破壊を伴いつつ、最終的に230万人も立ち退かせる形で揚子江に造るなどという、とんでもないプロジェクトも進行しており、2011年には完成する予定です(
http://en.wikipedia.org/wiki/Three_Gorges_Dam)。
このような、工学士主導の政治そのものに対する疑問も、今後出てくる可能性があるのではないでしょうか。
(完)
太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/