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太田述正コラム#2528(2008.5.5)
<皆さんとディスカッション(続x130)>

<読者A>

 コラム#2526での返答ありがとうございます。

≫日本人のカロリー上の肉摂取率の伸びが1985年代後半から止まっていることから見ても、現在日本人に比べて10% ほど低い中共の人々の肉摂取率もやがて日本人の水準に追いついてそこで伸びが止まることを期待できます。≪

 おっしゃるとおりカロリー自体の増加量は止まるかもしれません。
 ですが、まだ消費する肉の比率に関しては変化の可能性がありそれによって、たとえば日本や韓国は、消費量についてだいたい豚肉2:牛肉1となっていますが、
日本:http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/index.html
韓国:http://www.wowkorea.jp/news/Korea/2008/0210/10040431.html(牛肉)
   http://www.maff.go.jp/kaigai/2006/20060315korea11a.htm(豚肉)
これに対して、中国はまだ、豚肉5:牛肉1にすぎません。
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=0413&f=keyword_0413_001.shtml
(一人当たり牛肉4kg)
 尚、日本のピークは2000年で一人当たり12kgを越えています。
http://worldfood.apionet.or.jp/graph/graph.cgi?byear=1960&eyear=2007&country=JAPAN&article=beefveal&pop=0&type=6

 肉1kgに対する穀物消費量は豚肉7kg、牛肉は11kgです。
http://www.maff.go.jp/hakusyo/nou/h15/html/SB1.3.2.htm
(諸説有り、倍としている所もある。)

 ですから、肉に関係する中国の穀物需要は増加する余地がかなりあると思います。
 それに記事中の中国の飼料穀物利用増加(1億9900万トン)がバイオエタノール(世界全体で去年1億トン?)の利用を超えていることも決して見過ごすべきではないとも思います。

≫それに、同じカロリーを肉類から摂取すると、直接穀物から摂取する場合より2〜5倍の穀物が必要になる勘定であるところ、米国の場合はそれが10倍以上に達しているときているのです。≪

 NYタイムスの記事では牛肉のことを言ってるようにみえますが・・。

≫その肉類の過剰な摂取を減らすことが求められているのであり、かつ、肉類の生産を、より環境負荷の小さい形で行うことが求められている、ということです。≪

 最近では負荷が小さいブロイラーの消費がかなり増えてるようですが、牛肉は横ばいみたいです。
 牛肉から鶏肉へ変化するだけでもかなり違うのでなんとか頑張って欲しいところです。
<太田>

 食糧問題は経済問題であり、ファイナンシャルタイムスや、同系列のエコノミスト誌が最も信頼に足る典拠となります。
 そこで、
http://www.ft.com/cms/s/0/64c69186-0952-11dd-81bf-0000779fd2ac.html
(4月14日アクセス)、
http://www.ft.com/cms/s/0/d8184634-07cc-11dd-a922-0000779fd2ac.html  
(4月16日アクセス)、及び
http://www.economist.com/world/international/PrinterFriendly.cfm?story_id=11049284 
(4月19日アクセス)を簡単にまとめて皆さんの便宜に供することにしました。

 過去何十年かの、ブラジルの農地開拓やタイの技術革新がもたらした、発展途上国における農業生産の飛躍的増大は、19世紀末に北米のプレイリーとアルゼンチンのパンパスの開拓によって小麦と牛肉に関して起きた農業生産の飛躍的増大になぞらえることができる。
 ところが、1980年代と90年代に先進国で農産物余剰が生じ、発展途上国にダンピング輸出が行われ続けたために、これらの発展途上国で農産品の価格が下がり、農産品投資収益率が低下してしまった。そのため、これら諸国における農業投資の全公共投資に占める比率は1980年から2004年の15年間に半減するに至った。
 農業の生産性を維持するためには、不断に品種改良を施していかなければならない。(新ワクチンもいずれ病原菌に耐性ができて効かなくなるので改良を続けることが不可欠であることを思え。)しかし、10年以上にわたって品種改良のための投資が不十分であったため、1960年代から1980年代にかけて年3〜6%であった主要穀物の生産量の増大は、現在では1〜2%と、需要の増大を下回るに至っている。
 また、世界中で農産品の巨大卸売業や農産品を取り扱うスーパーの普及が進んでおり、これらは本来、遍く価格メカニズムの普及をもたらすはずであるところ、均質かつ衛生的な農産品が求められるようになったことで、小規模農産品生産者は割を食うことになった。
 なお悪いことには、世界の多くの所で人口増に伴って農地が減少しており、支那とバングラデシュでは農家一戸あたり平均農地が1970年代の約1.5ヘクタールから現在ではわずか0.5ヘクタールに減少した。また、エチオピアとマラウィでは、1990年代の間に1.2ヘクタールから0.8ヘクタールに減少した。
 小規模になればなるほど、巨大卸売り業者との取引は困難になるし、小規模だとローンを組むにも、投資をして新品種導入等の技術革新を行うことも困難になる。

 さて、以上のような背景の下、昨年、発展途上国における農産物価格は60%近くも高騰し、各地で食糧暴動が起きるに至っている。
 その原因としては、支那とインドの人々が豊かになるにつれて穀物と肉をより沢山食べるようになったことによる需要の緩慢な(gentle)上昇と、突然起こった欧米のバイオ燃料への貪欲なまでの(voracious)需要増だ。
 これに、穀物の大生産国が輸出規制をかけたこと、穀物輸入国が慌てて買いに走ったとの噂が流れたこと、そして投機筋の暗躍、が拍車をかけた。
 本来は価格が高騰すれば、生産が増加するはずなのだが、農産品は収穫までに時間がかかるのですぐに増産できないものだ。
 しかも、国民の食糧を確保し、暴動を回避する目的で、発展途上国中の農産品輸出国は、急遽、農産品の輸出を禁止したり価格統制をしたりといった近隣窮乏化政策を導入した所が多い。これでは価格インセンティブが働かず、農産品増産がされないどころか、農民が生産抑制に動いている所まで出てきている。他方、発展途上国中の農産品輸入国は、補助金で農産品小売価格を抑えたり農産品生産を高めるための政策をとった所が多い。
 欧米の先進諸国では全く状況は異なり、農産品の卸売り価格が国際価格に近い上に、農業補助金が維持されており、しかも、商品先物市場や悪天候に対する保険制度が発達しているのでリスクがない、ときているので、農産品生産は飛躍的に伸びつつある。
 こういうわけで、農産品価格急騰を受け、データが得られる世界58カ国中、急遽48カ国が価格統制、消費者向け補助金、輸出規制、関税減免措置のいずれかまたは全てをとっており、総じて言えば、世界の農産品市場は、一層価格メカニズムが働かなくなっていると言えよう。
 これでは、この10年間の経済成長でせっかく世界で1億人貧困層が減ったというのに、一挙に10年前の状況に逆戻りしそうだと予想されている。

<雅>

≫ファシスト国家と自由民主主義国家の間で「住民の生活・経済の発展」においてどのような差があるのですか?教えていただければ幸いです。≪(雅。コラム#2515)
≫皆様どう思われます? ≪(太田。同)

に関して、まず民の幸せと経済の発展性が担保できる社会としてを考え、その上での政治システムを考えてはいかがでしょうか?

 「実質」がこうあればればよい社会になるのではと意見をあげてみます。

〜要旨〜
・ 人々が自由闊達に活躍し経済活動を営める社会であること
・ 人々が自由闊達に活躍できるまでの基礎・応用教育システムがあること
・ 財政状況がある健全であるということ
・ 社会全般が民(たみ)によってたっているシステムであることと、民自身がそう思っていること
・ 人々が自由闊達に活躍できる社会システムが確立されていること(事に政治的秩序・治安・法整備・インフラ・国防)
・ 開発者及び新規事業の創業に対する成果が担保されていること(自由競争と開発者・創業者に対するある程度の特典)
・ 社会に対する貢献度に対する信賞必罰に適したシステムが社会全般にある一定度あること
・ 有能な人物(学歴では無く実力的に)が社会の上に立てるシステムであること
・ 社会を維持できる産業があること
・ 社会(個々人)に多様な価値観が存在すること

 そのための社会の多様性であり、秩序であり、権威であり、軍事力であり、自浄能力システム、社会保険システム、首長制、民主主義ではないですか?
まあ、私は、一義的にモノを決めること自体は良くないことだと思いますので、多種多様な意見があればと思います。
 根拠と実例はいりますよね、、、わかりますが、出典に時間が掛かりそうなのでまずは要旨を書いてみました。
 みなさまいかが思われますか?

<太田>

 ファシズムの中共と自由民主主義のインドを比較して、「早晩インドが中共を抜くことだけは間違いないのではないか、という声が<欧米で>高まっている」とコラム#2527(未公開)で記したところです。
 日本の財界はどう思っているのでしょうね。

<KAZU>

 --ソ連の脅威は本当になかったのか?--

 ソ連の脅威なんてなかったなんてあっさり言われた人たちは、太田さん以外では小室直樹氏、山本七平氏、長谷川慶太郎氏しか覚えがありません(典拠ex.小室直樹の日本大封鎖KKロングセラーズ1981、4頁で小室氏、79頁で小室氏と山本氏、160頁で小室氏と長谷川氏、特にソ連の北海道侵攻はありえないという文脈で。なお小室氏は同本の78頁でアメリカは日本を属国と思っていると言明しています)。
 しかしながら、当時(1980頃)はやはりソ連の脅威論全盛期で、声高であった多くの評論家は別にしても、あの海原治氏も、1978年にソ連のタシケントで開かれたアジア太平洋地域の安全保障に関するシンポで、ソ連の脅威を前提として、ソ連に対して民族解放戦争のイデオロギーを捨て、かつ極東にある膨大な陸海空軍を縮小削減せよと提言していました(安全保障・日本の選択19996時事通信社208-209頁:極東の各国の兵力配備は同本213頁で防衛白書 1995を引用、)。
 ソ連の脅威がなかったという指摘は、それが間違いないことであるなら、(太田さんが)今後の日本の安全保障論議を正していかれるためにも、もっと日本の論争史上?の結論として残しておくべきものと思いますので、(太田さんは常識としてご存じだったのかも知れませんが)もっと詳しい議論(例えば、当時のソ連内部からの観点、国際政治力学、兵力配備の詳細、内外を含めた知識人で他に日本に対するソ連の脅威がなかったこと主張していたこと等)を、例えば本年ご出版予定のご著書にでもお書きいただければと切望するものです。(これまでは、リンクされている動画でしか確認しておりませんし、テレビなので、ご発言がダイジェストなのが物足りなく感じております。)

<太田>

 コラム#30、58と、これらコラムに関わるコラム#1420、1817、1825、1827、1918、2161、2162、2166で、既に相当詳しくご説明していますよ。
 なお、海原治氏は、旧内務省出身の防衛庁キャリアですが、彼の書いた著書はすべてソ連脅威論に立脚しているだけでゴミ箱行きです。しかも彼は念が入ったことに、その「ソ連の脅威」に対抗するに国民総武装論・・つまりはベトコン型抵抗・・を提唱して世間を惑わしたのですから、彼はその著書ともども、むしろブタ箱行きがふさわしいと言うべきでしょう。 
 彼に比べれば、宗主国米国の間接エージェントに過ぎなかった、接待好きの守屋なんていかに人畜無害かお分かりいただけるのでは?

<かたせ>

民主党が政権取ったとして、政治の混乱は起きないですかね?
 自民の腐敗は今更否定する気はないですけど政権与党として長年運営してきたからこそスムーズに行えている部分も多分にあると思うんですが?
 民主党が政権を取ったは良いが、ただ々政治の混乱を招いただけで何も出来ずにまた自民党が政権与党に返り咲く姿しか想像出来ないんですよね。
 まぁそんな事言い出したら何も始まりはしませんが引っ掻き回すだけなら大人しくしてろとも思うわけですよ。

<太田>

 構造的腐敗を抱えた政治は「スムーズに行えている」政治ではありません。
 ガソリン税をめぐるドタバタ劇は「政治の混乱」そのものではありませんか。
 衆参のねじれ現象を解消すれば、このような「政治の混乱」はなくなりますよ。

 --おまけその1--

 TVを見てると、何人もの「評論家」が「聖火=sacred flame」などと仰々しく呼んでいるのは日本だけで、他国はすべて単に「torch=たいまつ」と呼んでいるといまだに言い続けていますが、それを聞くたびに恥ずかしくなります。
 というのは、支那だって韓国だって「聖火」って呼んでいる(
http://www.chosunonline.com/article/20080502000033
。5月4日アクセス)からです。
 恐らく、1936年のベルリンオリンピックの時にtorch relay が始まった時、日本がそれを「聖火」と呼び、その新語が朝鮮半島や支那に普及したのでしょう。
 米ニューズウィーク誌掲載論説は、中共は無神論のはずなのに、聖火などと呼んでいると茶化してます(
http://newsweek.washingtonpost.com/postglobal/pomfretschina/2008/05/the_ugly_chinese.html
。5月2日アクセス)。

 --おまけその2--

 「医食同源」の本来の意味について記した
http://www.emaga.com/bn/bn.cgi?3407
は必読です。漢人ってホントに困ったものですね。
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太田述正コラム#2529(2008.5.5)
<韓国の親日ぶりチェック(その1)>

→非公開

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