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太田述正コラム#2437(2008.3.21)
<チベット騒擾(続x3)>(2008.4.26公開)
1 部分的にホントのことを言い始めた中共政府
中共の国営通信社の新華社(Xinhua)は、官憲は殺傷性のある武器を使ってはいないと言い続けてきたのですが、3月20日、四川省での騒擾の際、警察が抗議行動中の4名に発砲し怪我を負わせたと報じました。
もっとも新華社は、この四川省アバ県での官憲の行動は自衛のためだったとし、また、当初「暴徒」達は死亡したと報じた後、怪我をしただけだと訂正しました。
本当のことを言いすぎだとダメ出しがあったのでしょうね。
ちなみに、アバ(Aba)は中共政府による呼び方であり、チベット人はガワ(Ngawa)と呼んでいます。
また同じく20日、新華社は、それまでは騒擾が起こっているのはチベット自治区の中だけだと報じていたところ、初めて四川省や甘粛省でも騒擾が起こっていると報じました。
しかし、いまだに中共当局は、人民解放軍を投入していることを大っぴらにはしていません。
また、中共当局は、騒擾によりラサで16人が死亡したとしているのに対し、チベット人亡命グループは100人近くが、主として官憲の手で殺されたとしています。
(以上、
http://www.guardian.co.uk/world/2008/mar/21/tibet.china
(3月21日アクセス。以下同じ)による。)
2 米国の対応
米ブッシュ大統領は、公式には沈黙を保ちつつ、胡錦涛中共主席に私的メッセージを送り、自制を促し、米国のオブザーバーをチベットに受け入れ、逮捕した人々を公開法廷で裁くよう求めました。
これに対し、マケイン、オバマ、クリントンの3大統領候補者達は、全員厳しい声明を発表しており、マケインの声明に対しては、ダライラマが感謝の手紙を送ったほどです。
ブッシュ政権の圧力を受けて、この数年、中共は対北朝鮮、スーダン、イラン、やミャンマーに対する政策の大幅な軌道修正を行ってきました。
それだけに、ブッシュ政権は、チベット問題で表だって圧力をかけることを避けようとしているのです。
というのもブッシュ政権は、チベット問題では中共は絶対に柔軟姿勢に転じることはないと踏んでいるからです。中共にとってこの問題は国家主権に関わる最重要問題であり、かつ、かつてチベット自治区の共産党のトップであった当時に騒擾を容赦なく弾圧した胡錦涛にこの問題への強いこだわりがあると見ているからです。
ただし、このブッシュが、以前胡錦涛に会った時にチベット問題をあえて持ち出していることや、昨年ダライラマに米議会が最高の勲章を授与した時にわざわざ授与式に立ち会っている(コラム#2205)ことを忘れないようにしましょう。
(以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/03/20/AR2008032002346_pf.html
による。)
3 台湾総統選挙への影響
1月の立法院議員選挙では民進党が議席数で大敗したわけですが、明22日に実施される総統選挙においても、先週結果が公表された台湾でのいくつかの世論調査では、国民党の馬英九候補が民進党の謝長廷候補に20%の差をつけていました。
思わしくない経済状況や、高度成長を続ける中共との経済関係が進展しないことに台湾の人々が嫌気をさしていたからです。
ところが、総統選挙前の10日間は世論調査の結果を公にすることは禁じられているところ、両党がその後行っている世論調査では、謝候補が10%差くらいまで追い上げたという結果が出ていました。国民党の立法院議員4名が民進党本部にしのびこんだ事件が明るみに出たからです。彼らはこの本部ビルの賃貸借契約が、選挙法違反ではないかを調べようとしたのです。この事件を受け、馬候補は何度も謝罪する羽目になりました。
そこへチベット騒擾が勃発し、中共当局の容赦ない弾圧ぶりが報じられたわけです。
これで、親中共政策を掲げる馬候補は大きなダメージを受け、謝候補が逆転勝利する可能性さえ取り沙汰され始めました。
危機感を募らせた馬候補は、謝候補すら口にしていないところの、北京オリンピック・ボイコットの可能性を口にしました。
また、中共の温家宝首相が18日に、「台湾の将来は、台湾の住民だけでなく、台湾海峡両岸の人々によって決定されなければならない」と語ったのに対し、馬候補はこれに噛みつき、「容赦のない、非合理的な、傲慢な、馬鹿げた独りよがりのコメントだ」とまで言ってのけたほどです。
この分では、番狂わせが起こらず、馬候補が総統選に勝利したとしても、国民党政権によって台湾の対中共政策が大きく変化することを余り心配をする必要はなさそうです。
(以上、
http://www.nytimes.com/2008/03/21/world/asia/21taiwan.html?_r=1&oref=slogin&ref=world&pagewanted=print
による。)
<チベット騒擾(続x3)>(2008.4.26公開)
1 部分的にホントのことを言い始めた中共政府
中共の国営通信社の新華社(Xinhua)は、官憲は殺傷性のある武器を使ってはいないと言い続けてきたのですが、3月20日、四川省での騒擾の際、警察が抗議行動中の4名に発砲し怪我を負わせたと報じました。
もっとも新華社は、この四川省アバ県での官憲の行動は自衛のためだったとし、また、当初「暴徒」達は死亡したと報じた後、怪我をしただけだと訂正しました。
本当のことを言いすぎだとダメ出しがあったのでしょうね。
ちなみに、アバ(Aba)は中共政府による呼び方であり、チベット人はガワ(Ngawa)と呼んでいます。
また同じく20日、新華社は、それまでは騒擾が起こっているのはチベット自治区の中だけだと報じていたところ、初めて四川省や甘粛省でも騒擾が起こっていると報じました。
しかし、いまだに中共当局は、人民解放軍を投入していることを大っぴらにはしていません。
また、中共当局は、騒擾によりラサで16人が死亡したとしているのに対し、チベット人亡命グループは100人近くが、主として官憲の手で殺されたとしています。
(以上、
http://www.guardian.co.uk/world/2008/mar/21/tibet.china
(3月21日アクセス。以下同じ)による。)
2 米国の対応
米ブッシュ大統領は、公式には沈黙を保ちつつ、胡錦涛中共主席に私的メッセージを送り、自制を促し、米国のオブザーバーをチベットに受け入れ、逮捕した人々を公開法廷で裁くよう求めました。
これに対し、マケイン、オバマ、クリントンの3大統領候補者達は、全員厳しい声明を発表しており、マケインの声明に対しては、ダライラマが感謝の手紙を送ったほどです。
ブッシュ政権の圧力を受けて、この数年、中共は対北朝鮮、スーダン、イラン、やミャンマーに対する政策の大幅な軌道修正を行ってきました。
それだけに、ブッシュ政権は、チベット問題で表だって圧力をかけることを避けようとしているのです。
というのもブッシュ政権は、チベット問題では中共は絶対に柔軟姿勢に転じることはないと踏んでいるからです。中共にとってこの問題は国家主権に関わる最重要問題であり、かつ、かつてチベット自治区の共産党のトップであった当時に騒擾を容赦なく弾圧した胡錦涛にこの問題への強いこだわりがあると見ているからです。
ただし、このブッシュが、以前胡錦涛に会った時にチベット問題をあえて持ち出していることや、昨年ダライラマに米議会が最高の勲章を授与した時にわざわざ授与式に立ち会っている(コラム#2205)ことを忘れないようにしましょう。
(以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/03/20/AR2008032002346_pf.html
による。)
3 台湾総統選挙への影響
1月の立法院議員選挙では民進党が議席数で大敗したわけですが、明22日に実施される総統選挙においても、先週結果が公表された台湾でのいくつかの世論調査では、国民党の馬英九候補が民進党の謝長廷候補に20%の差をつけていました。
思わしくない経済状況や、高度成長を続ける中共との経済関係が進展しないことに台湾の人々が嫌気をさしていたからです。
ところが、総統選挙前の10日間は世論調査の結果を公にすることは禁じられているところ、両党がその後行っている世論調査では、謝候補が10%差くらいまで追い上げたという結果が出ていました。国民党の立法院議員4名が民進党本部にしのびこんだ事件が明るみに出たからです。彼らはこの本部ビルの賃貸借契約が、選挙法違反ではないかを調べようとしたのです。この事件を受け、馬候補は何度も謝罪する羽目になりました。
そこへチベット騒擾が勃発し、中共当局の容赦ない弾圧ぶりが報じられたわけです。
これで、親中共政策を掲げる馬候補は大きなダメージを受け、謝候補が逆転勝利する可能性さえ取り沙汰され始めました。
危機感を募らせた馬候補は、謝候補すら口にしていないところの、北京オリンピック・ボイコットの可能性を口にしました。
また、中共の温家宝首相が18日に、「台湾の将来は、台湾の住民だけでなく、台湾海峡両岸の人々によって決定されなければならない」と語ったのに対し、馬候補はこれに噛みつき、「容赦のない、非合理的な、傲慢な、馬鹿げた独りよがりのコメントだ」とまで言ってのけたほどです。
この分では、番狂わせが起こらず、馬候補が総統選に勝利したとしても、国民党政権によって台湾の対中共政策が大きく変化することを余り心配をする必要はなさそうです。
(以上、
http://www.nytimes.com/2008/03/21/world/asia/21taiwan.html?_r=1&oref=slogin&ref=world&pagewanted=print
による。)
太田述正ブログは移転しました 。
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