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太田述正コラム#2509(2008.4.26)
<皆さんとディスカッション(続x122)>

<KAZU>

 コラム#2505で太田さんの正直な学生時代の情報公開を読み、さらに言論を信頼・支持する気持ちになりました。(うそでごまかさない人という意味で)
 ところで、高橋洋一さんの「さらば財務省!」という本を読んでいると、財務省の太田さん版ともいうべき孤軍奮闘振りが記述され、大変痛快な本です。この本を読んでいると、竹中さん、高橋さんがいかに官僚すべて敵に回して戦い続けたかがよくわかります。
 しかし、高橋さんが仕えた人である竹中さん、そしてその上の当時の総理である小泉氏は、アメリカに日本を売り飛ばした売国奴と揶揄されることもしばしばです。上記の本を読む限りそのような印象は受けませんし、よくいわれる年次改革要望書の話は江田憲治氏によれば、元ネタは全部、日本初のデフォルメとのことです。
 太田さんは、小泉さん、竹中さん等の改革(といわれた)路線をどのように評価されますでしょうか。

<太田>

 自民党は、権力を維持することだけを存在根拠とする政党であり、特段主義主張があるわけではありません。
 主義主張抜きで権力を維持するためには、宗主国米国の意向に従うことを大前提として、カネと票を集めるために、権益擁護集団を手なずける必要があります。そのためには権益擁護集団に国のカネを流したり、当該集団に対する国の規制に手心を加えたりしなければなりません。
 ところが、時代の進展につれて権益擁護集団には栄枯盛衰があります。
 いわゆる守旧派とは、経世会等に所属するところの、衰退する権益擁護集団に対して義理固い自民党政治家達のことであり、いわゆる改革派とは、清和会等に所属するところの、成長が見込まれる権益擁護集団にドライに乗り換える自民党政治家達のことです。後者の元締め格が小泉元首相であるということになります。
 さて、官庁中の官庁である旧大蔵省/財務省にとっては、財政再建が悲願であり、そのためには、税金を払ってくれることを期待できない、衰退しつつある権益擁護集団に対して流される国のカネをカットする必要があります。
 ここから財務省は改革派と手を握る一方で、守旧派及びこれら守旧派と癒着しているところの他省庁と反目することにならざるをえません。
 以上を踏まえれば、小泉改革の元ネタは、ことごとく米国ないし財務省が提供したと考えてよいでしょう。
 (現在の福田首相に至っては、米国と財務省の傀儡と言ってよいでしょう。)
 高橋洋一氏は、財務省が小泉氏に差し遣わした助っ人ということです。
 もとより同氏の著書は読んでいませんが、同氏は何と言うことはない、米国と財務省に忠義を尽くすとともに自民党の延命に力を貸しただけのことであり、竹中氏同様、私は全く評価する気にはなれません。
 なお、江田憲治氏の発言は米国の属国の官僚であることをわきまえぬ夜郎自大的発言ですね。官僚の中には宗主国米国に自分のアイディアをご注進に及び、それを米国が採用する場合がある、というだけのことです。(私だって、ご注進をやったことがあります。米国が採用してくれなかったけど・・。)

<遠江人>

 --日本メディアの報道姿勢について--

 日本在住のフランス人の方による、「日本の大メディアが報道するフランスや欧州の情報には誤りや偏りが多い、日本の読者にフランスの本当の姿を伝えたい」という主旨のフランスの実情を伝える興味深い記事を見つけました。よろしかったらどうぞ。

報道されないフランスの真実 (1)欧州に幻想抱く日本マスコミ−JanJanニュース
http://www.news.janjan.jp/world/0804/0803021827/1.php

 この記事のテーマの一つになっていることですが、欧米の良いところばかりを報道して悪いところはほとんど報道しない日本のメディア、というのは、確かにその通りだと思いました。
 国や文化に限らず相手のことを本当に知ろうと思えば、相手の良いところも悪いところも平等に知る必要があると思います。
 欧米の良いところや綺麗なところにしか興味がなく、欧米の悪いところ汚いところ不条理なところは知ろうとしない日本メディア、つまり日本人の大多数というのは、そもそも欧米のことを本当の意味で知りたいとも思っていないし、実のところ欧米を他者として尊重した見方もしていないように思います。
 日本人がもっぱら望んでいる欧米についての報道というのは、断片的一面的な情報に基づく理想化された欧米像と、欧米の良いところを日本と比較することで日本の諸々を批判する手段として利用することぐらいではないでしょうか
 。欧米の悪しき点や失敗事例に対して、分析、批判等をすることがそもそも日本人のニーズにないのだとしたら、ここ数十年の日本人の書いた海外に関する文章は価値がないという太田さんの言はまったく正しいところです。
 偏向報道ということでいえば、欧米のメディアだって日本に関する報道は、紋切り型で偏見や差別意識に基づいた偏りと誤りだらけの報道、といったイメージがありますが、本来そのようなイエロージャーナリズムは日本こそが先頭に立って批判していかなければならないところ、上記のような日本メディアの報道姿勢では望むべくもないのは、なんとも情けないところです。
 日本メディアの報道姿勢を考えることで、改めて縄文モード化した日本の病理を垣間見た気がします。

 日本と欧米のメディアの話という流れで、以下のメルマガもよかったらどうぞ。

【出たっきり邦人 欧州編】721 番外編・イギリス [まぐまぐ!]
「メディアにおける日英比較文化一考察(独断と偏見風)」
http://archive.mag2.com/0000023690/20080122190000000.html?start=20
【出たっきり邦人 欧州編】733 番外編・イギリス [まぐまぐ!]
「ゴシップ紙における日英比較文化一考察(独断と偏見風)」
http://archive.mag2.com/0000023690/20080304190000000.html

 日本と英国のメディアの違いが率直に語られていて面白いです。
 日本のマスコミもひどいがイギリスのマスコミも相当ひどいという話と、「デイリーメールは保守派の右派ですが、ちょっと大げさに分かりやすく言うと「イギリスがいちばん、イギリス人が一番」という身内びいきが激しい新聞。」といったアングロサクソン論にも多少関係するかもしれない話が興味深いです。

<太田>

 かなり以前(コラム#408で)、英米のメディア、とりわけ英国のメディアには個性がある、と記したところです。

<soudenjapan>

 先の大戦正義論から・・・
パット・ブキャナンも以前から疑問を投げかけておりますな。

Was WWII Really 'The Good War'?
http://antiwar.com/pat/?articleid=12630

<太田>

 なるほど。

・・・
at war's end in 1945, Britain was bled and bankrupt, and the great cause of Churchill's life, preserving his beloved empire, was lost. Because of the "Good War," Britain would never be great again.
・・・
Cohen contends that the evil of the Holocaust makes it a "good war." But the destruction of the Jews of Europe was a consequence of this war, not a cause. As for the Japanese atrocities like the Rape of Nanking, they were indeed horrific.
But America's smashing of Japan led not to freedom for China, but four years of civil war followed by 30 years of Maoist madness in which 30 million Chinese perished.
・・・
Is a war that replaces Hitler's domination of Europe with Stalin's and Japan's rule in China with Mao's a "good war"? We had to stop the killers, says Cohen. But who were the greater killers: Hitler or Stalin, Tojo or Mao Zedong?
・・・

ですか。ブキャナン偉い!
 繰り返しますが、後二声ですね。
 ホロコーストと南京事件とを並列にするな!
 そして、日本帝国は自由民主主義国、ナチスドイツはファシスト国!
 どこが「自由主義」国だって?
 だって支那事変以降の日本は戦時中だったのよ。
 どこが「民主主義」国だって?
 じゃ、吉野作造ばりに「民本主義」国と言い換えようか。

<クコ>

 --ロシアの体制シリーズを読んで--

コラム#2503「ロシアの体制(その1)」(未公開)の最後に、

「今やロシアにおいて、外国からの投資が盛んに行われており、生活水準
は向上し、プーチンの支持率は常に80%を超えている。」

とあります。

 それが事実ならば、コラム#2508「ロシアの体制(その3)」(未公開)の

 「こんなことは、17世紀に英国の東インド会社がアジアの全英領をその株主達の
ために統治した時以来のことだ。両者の共通点は、統治している領域の住民のことなどは蔑ろにし、その領域が輸出のための資源を供給できているかどうかにしか関心を払わないことだ。」

というところは、実態に合っていないのではないですか。

 ロシアでは住民の生活は向上していて、プーチンを支持していますが、インドでは住民の生活は悲惨を極め、東インド会社は支持されていませんでした。

 「結局FSBはこの本の出版を阻止できず、プリビロフスキーを「無力化」することもできなかったとからして、FSBの腕の程が推し量れます。」

とおっしゃっていることからも、ロシアの現状をFSB下の恐怖政治体制だと想像することはむずかしいです。
 それとも、ロシアの住民の生活は実際は向上しておらず、プーチンの支持率は偽の数字なのでしょうか。

<太田>

 シリーズのコラム#2506(未公開)で、
 「ロシアが繁栄しているとは言っても、二桁のインフレが続き、給与の上昇がかつかつそれに追いついている程度であることから、ロシアの一般庶民の生活は少しも向上していません。このこととも関連しますが、プーチンの人気が絶大だとされてはいるものの、ルーカス自身、政府の目が光っているため人々はモノを言うことを控えており、古い友人でも電話で話すことすら厭うようになってきていると記しており、こんな状況下では、世論調査の調査員に人々がホンネを明かすわけがない、と思わなければならないのです。」
と記したところです。

<まっさー>

 北朝鮮問題について聞きたいです。

http://www.nytimes.com/2008/04/25/world/middleeast/25korea.html?_r=2&ref=asia&oref=slogin&oref=slogin
をみました。リンク先の動画には北朝鮮がシリアに核技術を移転させたことを物語るホワイトハウスからのプレゼンテーションがありますが、これから米国が空爆なりなにか「直接的攻撃」をする可能性があるのでしょうか?
 私は、残念ですがヒル国務次官補が推し進めている政策にそって、このまま6カ国協議で何も「問題なく」テロ支援国家指定が解除されると悲観しています(
http://sankei.jp.msn.com/world/america/080425/amr0804251043006-n1.htm
)。
 福田首相もイミョンバク大統領が訪日なさったときに、「北朝鮮にボーナスがあると伝えて」とおっしゃった様ですから(
http://mainichi.jp/select/today/news/20080422k0000m010146000c.html
)、日本官邸の意思も米国のそれと同様に解除を受け入れる方針を固めていると思います。 
 私は、日本政府は勿論なのですがもう少し米国に強く出て欲しかったと思いました(それともこれは日本の属国根性丸出しの意見なのでしょうか・・)。

<日本>

 私は、かねてより、ブッシュ大統領は、人権擁護の観点から体制変革をめざす対北朝鮮政策を一貫して堅持してきている、と指摘してきました(コラム#は省略)。
 柔軟姿勢に転じたかのような印象を与えつつ、その実、金正日をなぶりものにしている、というわけです。
 私は、北朝鮮に核に関する全面的な情報開示を求める、というのはその体制変革を求めている、ということだと思っているのです。
 ただし、ブッシュ政権が北朝鮮に対して武力行使をすることはないでしょう。
 いずれにせよ、ご指摘のような最近の動きについては、何も目新しいことがないので、コラムで取り上げていないのです。
 属国日本の政府や、英米の高級メディアに比べて遜色のありすぎる日本のマスコミが何を言おうと、気にしてはいけません。
 金正日が、高騰する国際食料価格という状況下で、迫り来る北朝鮮の大飢饉(典拠省略)にどう対処するか、見守ろうじゃないですか。
 
<コバ >

 --英政府、日本を制裁へ?--

Jパワー株の買い増し中止を命じられた英国の投資ファンドが英国政府に日本への制裁措置を求めたようです(
http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/econ_news6.html?now=20080425213254
)。軍事や外交を放棄している日本が外資規制をめぐって安全保障や公の秩序のためとか言っているのは外国の人たちには不可解に思えるでしょうね。
 自分はこういう問題も全くの素人なのであれですが、これはやはり自民党が自民党らしく仕事をサボってきたということでしょうか。

<太田>

 英ファイナンシャルタイムスに関して言うと、
http://www.ft.com/cms/s/0/6b0efcd0-0caf-11dd-86df-0000779fd2ac.html
(4月18日アクセス)
のような、投資ファンド側に立った記事もなかったわけではありませんが、その後出た長編の記事
http://money.ninemsn.com.au/article.aspx?id=453018
(FTの非公開記事を転載したもの。4月25日アクセス)では、電力や空港に関してはこのところどの先進国でも安全保障上の観点から外資に厳しい姿勢を取り始めていることを指摘しており、むしろ日本政府側に立ったと言えるのではないでしょうか。
 いずれにせよ、英国政府が日本に対し制裁措置をとるなんてことはありえません。
 ただ、日本に関しては、ご指摘は鋭いのであって、安全保障に関心のない日本政府が安全保障上の観点を持ち出すのは、単に政官業癒着体制を維持したいだけだ、具体的には経産省として天下り先を維持したいだけだ、と言われても仕方がないでしょうね。 
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太田述正コラム#2510(2008.4.26)
<シリア北朝鮮核コネクション>

→非公開

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