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太田述正コラム#2333(2008.1.30)
<オバマ大頭領誕生へ?(続x3)>(2008.3.4公開)
1 始めに
オバマには28日、更に一人強力な助っ人が出現しました。
エドワード・ケネディ上院議員同様、クリントン夫妻と親交のある、ノーベル文学賞受賞者のトニ・モリソン(Toni Morrison。1931年〜)女史がオバマ支持を表明したのです。
彼女は、かつて黒人に大人気のビル・クリントンを「最初の黒人大統領」と呼んだことで知られています。
その彼女が、オバマの「創造的想像力」を褒め称えたのです。
オバマが5年前に対イラク戦に反対したことなどは、まさにこの「創造的想像力」の賜だったに違いありません。
(ちなみに、ケネディ上院議員も反対しました。)
(以上、
http://www.guardian.co.uk/uselections08/barackobama/story/0,,2248578,00.html
(1月30日アクセス)による。)
こんなことばかり書いていると、私をオバマ狂だと嗤う読者が出てきそうですね。
そこでこの際、オバマの弱点を指摘する論考についても私がそれなりにフォローしていることを明らかにしておきたいと思います。
2 オバマの弱点を指摘する論考
(1)信仰
お馴染みの米コラムニストのクリストファー・ヒッチェンス(コラム#175、727、1096、2023、2044)は、彼が根っから宗教嫌い人間であることから割り引いて耳を傾ける必要がありますが、オバマの属しているシカゴのトリニティー統一教会のウェッブサイトが進化論に対して否定的な話を掲げており、かつオンラインストアを展開している等、この教会はいかがわしい限りであると指摘しています(
http://www.slate.com/id/2181460/
。1月8日アクセス)。
(2)歴史認識
プリンストン大学の歴史学教授のウィレンツ(Sean Wilentz)は、自分がクリントン支持者である旨を断りつつ、オバマが、無党派層のみならず共和党支持者にまで触手を伸ばしていることもあってか、共和党は過去10から15年にわたって「理想主義的な党(party of ideas)」であったと共和党を持ち上げていることに噛みついています。
15年前というと1993年だが、共和党は、クリントン政権の下で野党に転落した1994年に「米国との契約(Contract with America)」という綱領を打ち出し、メディケア(Medicare。65歳以上の高齢者や身体障害者などに対する政府の医療保険制度)を攻撃して翌年同制度を一時停止に追い込み、また、供給重視経済学に基づく経済政策に固執し続けた結果、現ブッシュ政権の下で与党に復帰してから米国の経済・財政に現在の閉塞状況をもたらし、何よりも米国をイデオロギー的に偏向した存在にしてしまったことのどこが理想主義的だ、というのです。
オバマ陣営はオバマをジョン・F・ケネディによくなぞらえるが、執筆した歴史書でピューリッツァー賞を受賞したケネディに比べれば、オバマはその足元にも及ばない、とウィレンツは言いたい放題です。
(以上、
http://www.latimes.com/news/opinion/la-oe-wilentz26jan26,0,4498181,print.story (1月27日アクセス)による。)
(3)経済政策
アジアタイムスの匿名コラムニストのスペングラー(Spengler)は、南カロライナ州でのオバマの予想外の大勝利は、その直前の米株式市場の大暴落によって、同州の有権者達が狼狽し、経済通で手堅いクリントンから経済についてはシロウトであるけれどくじ運の強そうなオバマに票が雪崩を打って流れたためだ、と言ってのけます。
同州での予備選に勝利した後のオバマの演説を見よ、とスペングラーは続けます。
大儲けしている企業に減税をしてやるのではなく、借金を払えなくて困っている自宅所有者に金を与え、企業による海外雇用を止めさせ、米国の就労者全員の賃金上昇を図るべきだ、とオバマは言ったが、こんなことが実現可能なわけがない、企業大減税なくして企業が国内雇用増を図るわけがないからだ、というのです。
それに、企業に海外雇用を止めさせたら、その海外の国々からの米国への投資も大幅に減ってしまい、米国経済は一層苦境に陥ってしまう、というのです。
スペングラーは、しかしながらこんなオバマが、大統領に当選する可能性が高まってしまったけれど、オバマの経済政策は、レーガンによる小さい政府を追求するブードゥー経済政策とは対蹠的な大きな政府を追求する経済政策ながら、やはりカルト的経済学であり、こんな経済政策が実行に移されたら目も当てられない、とまで激白しています。
(以上、
http://www.atimes.com/atimes/Global_Economy/JA29Dj06.html
(1月30日アクセス)による。)
3 終わりに
長期間にわたって、鵜の目鷹の目で詮索され続ける米国の有力大統領候補者は大変だな、と同情を禁じ得ません。
ところで、オバマの対日政策はいかなるものなのでしょうか。
共和党の大統領候補者のジョン・マケインやルドルフ・ジュリアーニは、それぞれ日米関係重視を直接表明しているのに対し、民主党の大統領候補者のクリントンもオバマもほとんど日本に言及することはありません。
さすがにこれではいけないと思ったのか、クリントン陣営の外交政策を担当しているホルブルック(コラム#30)が先般日米関係重視を口にしましたが、オバマ陣営では全くそのような動きはありません。
(以上、
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/67/
(1月30日アクセス)による。)
しかし、日米関係についても、私はオバマの「創造的想像力」に期待しているところです。
<オバマ大頭領誕生へ?(続x3)>(2008.3.4公開)
1 始めに
オバマには28日、更に一人強力な助っ人が出現しました。
エドワード・ケネディ上院議員同様、クリントン夫妻と親交のある、ノーベル文学賞受賞者のトニ・モリソン(Toni Morrison。1931年〜)女史がオバマ支持を表明したのです。
彼女は、かつて黒人に大人気のビル・クリントンを「最初の黒人大統領」と呼んだことで知られています。
その彼女が、オバマの「創造的想像力」を褒め称えたのです。
オバマが5年前に対イラク戦に反対したことなどは、まさにこの「創造的想像力」の賜だったに違いありません。
(ちなみに、ケネディ上院議員も反対しました。)
(以上、
http://www.guardian.co.uk/uselections08/barackobama/story/0,,2248578,00.html
(1月30日アクセス)による。)
こんなことばかり書いていると、私をオバマ狂だと嗤う読者が出てきそうですね。
そこでこの際、オバマの弱点を指摘する論考についても私がそれなりにフォローしていることを明らかにしておきたいと思います。
2 オバマの弱点を指摘する論考
(1)信仰
お馴染みの米コラムニストのクリストファー・ヒッチェンス(コラム#175、727、1096、2023、2044)は、彼が根っから宗教嫌い人間であることから割り引いて耳を傾ける必要がありますが、オバマの属しているシカゴのトリニティー統一教会のウェッブサイトが進化論に対して否定的な話を掲げており、かつオンラインストアを展開している等、この教会はいかがわしい限りであると指摘しています(
http://www.slate.com/id/2181460/
。1月8日アクセス)。
(2)歴史認識
プリンストン大学の歴史学教授のウィレンツ(Sean Wilentz)は、自分がクリントン支持者である旨を断りつつ、オバマが、無党派層のみならず共和党支持者にまで触手を伸ばしていることもあってか、共和党は過去10から15年にわたって「理想主義的な党(party of ideas)」であったと共和党を持ち上げていることに噛みついています。
15年前というと1993年だが、共和党は、クリントン政権の下で野党に転落した1994年に「米国との契約(Contract with America)」という綱領を打ち出し、メディケア(Medicare。65歳以上の高齢者や身体障害者などに対する政府の医療保険制度)を攻撃して翌年同制度を一時停止に追い込み、また、供給重視経済学に基づく経済政策に固執し続けた結果、現ブッシュ政権の下で与党に復帰してから米国の経済・財政に現在の閉塞状況をもたらし、何よりも米国をイデオロギー的に偏向した存在にしてしまったことのどこが理想主義的だ、というのです。
オバマ陣営はオバマをジョン・F・ケネディによくなぞらえるが、執筆した歴史書でピューリッツァー賞を受賞したケネディに比べれば、オバマはその足元にも及ばない、とウィレンツは言いたい放題です。
(以上、
http://www.latimes.com/news/opinion/la-oe-wilentz26jan26,0,4498181,print.story (1月27日アクセス)による。)
(3)経済政策
アジアタイムスの匿名コラムニストのスペングラー(Spengler)は、南カロライナ州でのオバマの予想外の大勝利は、その直前の米株式市場の大暴落によって、同州の有権者達が狼狽し、経済通で手堅いクリントンから経済についてはシロウトであるけれどくじ運の強そうなオバマに票が雪崩を打って流れたためだ、と言ってのけます。
同州での予備選に勝利した後のオバマの演説を見よ、とスペングラーは続けます。
大儲けしている企業に減税をしてやるのではなく、借金を払えなくて困っている自宅所有者に金を与え、企業による海外雇用を止めさせ、米国の就労者全員の賃金上昇を図るべきだ、とオバマは言ったが、こんなことが実現可能なわけがない、企業大減税なくして企業が国内雇用増を図るわけがないからだ、というのです。
それに、企業に海外雇用を止めさせたら、その海外の国々からの米国への投資も大幅に減ってしまい、米国経済は一層苦境に陥ってしまう、というのです。
スペングラーは、しかしながらこんなオバマが、大統領に当選する可能性が高まってしまったけれど、オバマの経済政策は、レーガンによる小さい政府を追求するブードゥー経済政策とは対蹠的な大きな政府を追求する経済政策ながら、やはりカルト的経済学であり、こんな経済政策が実行に移されたら目も当てられない、とまで激白しています。
(以上、
http://www.atimes.com/atimes/Global_Economy/JA29Dj06.html
(1月30日アクセス)による。)
3 終わりに
長期間にわたって、鵜の目鷹の目で詮索され続ける米国の有力大統領候補者は大変だな、と同情を禁じ得ません。
ところで、オバマの対日政策はいかなるものなのでしょうか。
共和党の大統領候補者のジョン・マケインやルドルフ・ジュリアーニは、それぞれ日米関係重視を直接表明しているのに対し、民主党の大統領候補者のクリントンもオバマもほとんど日本に言及することはありません。
さすがにこれではいけないと思ったのか、クリントン陣営の外交政策を担当しているホルブルック(コラム#30)が先般日米関係重視を口にしましたが、オバマ陣営では全くそのような動きはありません。
(以上、
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/67/
(1月30日アクセス)による。)
しかし、日米関係についても、私はオバマの「創造的想像力」に期待しているところです。
太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
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