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太田述正コラム#2294(2008.1.11)
<オバマ大頭領誕生へ?(続)(その2)>(2008.2.17公開))

 今回のニューハンプシャー州の予備選の場合、世論調査の段階で誰に投票するか決めていない人が20%もいたことは、ブラッドレー効果説を裏付けているとする者もいます(
http://www.guardian.co.uk/uselections08/story/0,,2238311,00.html)。
 投票する候補者名を偽ったり誰に投票するか決めていないと答える人には貧しく教育程度も低い白人が多いのですが、彼らは往々にして黒人に対して否定的な感情を抱いているというのです。
 ではどうしてアイオワ州では同じことが起こらなかったか。
 第一に、まだ、オバマが先頭走者にはなっていなかったからだというのです。
 (以上、
http://www.nytimes.com/2008/01/10/opinion/10kohut.html?ref=opinion&pagewanted=print
による。)
 そして第二に、オハイオ州では、党員集会形式なので、投票形式とちがって、実際に誰に投票したかが分かってしまうからだというのです。
http://www.guardian.co.uk/uselections08/hillaryclinton/story/0,,2238238,00.html
。1月11日アクセス

4 ブラッドレー効果説に対する疑念

 しかし、この説に対する疑念の声もあがっています。
 昨年行われた研究によれば、1980年代と90年代にはブラッドレー効果は顕著だったけれど、最近では効果が希薄になっている、というのです(前掲
http://www.guardian.co.uk/uselections08/story/0,,2238311,00.html)。
 それもそのはずであり、かつては米国で少数民族というと黒人だけでしたが、2006年には60歳より上の人の19.8%しか少数民族ではないのに、40歳より下の人では約40%が少数民族であることが示しているように、米国は急速により複雑で多人種的で多民族的な社会に変貌しつつあるのです。
 なるほどそうなら、米国人は急速に肌の色等に無頓着になりつつあるはずだと言えるかもしれませんね。
 (以上、
http://www.latimes.com/news/opinion/la-oe-brooks10jan10,0,7635803,print.column?coll=la-opinion-rightrail
(1月11日アクセス)による。
 こういうわけで、どうしてニューハンプシャー州で世論調査や出口調査が間違ったかについて、早急な結論は出せないし、出さない方がよいとする意見もあります(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/01/10/AR2008011003274_pf.html
。1月11日アクセス)。
 ただ、私個人はブラッドレー効果説に傾いています。

5 これからどうなる?

 ガーディアンは、あきれたことに、さっそく(一篇だけですが、)クリントンが民主党大統領候補に当確と言わんばかりの論説を掲載しました。
 そもそもオバマの黒人なるが故のメリットよりもクリントンの女性なるが故のメリットの方が大きいことが今次ニューハンプシャー州の予備選で明らかになった、また、今回の敗北でオバマの勢いが削がれてしまった、かてて加えて、今後予備選が戦われる大きな州では直接聴衆に訴えかけるのではだめで、TV広告や組織に頼った選挙戦を繰り広げなければならない、ことからクリントンが有利になったというのです。
 更に、オバマからオーラがはぎ取られた結果彼はより厳しい目で詮索されることになるだろうし、大きな州では党員集会形式でなく投票形式で予備選が行われることも、ブラッドレー効果を勘案すればオバマには不利だ、というのです(
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/story/0,,2238185,00.html
。1月10日アクセス)。

 しかし10日に、2004年の大統領選における民主党大統領候補であったケリー(John Kerry)上院議員がオバマ支持を打ち出したことで、再びオバマ有利とする論調が増えてきました。
 次はネバダ州で党員集会形式で、そしてその次は南カロライナ州で投票形式で予備選が行われるところ、後者の州のように登録された民主党員の半数近くが黒人であるような場所では、オバマが民主党大統領候補になったとしても、白人の反発をかって11月の本選では共和党の大統領候補に敗れるのではないかという懸念から黒人達がオバマへの投票を躊躇する空気があったのですが、白人有力政治家たるケリーのかくも早期のオバマ支持表明によってかかる懸念が払拭されるだろうというのです(
http://www.ft.com/cms/s/0/addde7de-bfba-11dc-8052-0000779fd2ac.html
。1月11日アクセス)。
 ケリーが支持したことのもう一つの大きなメリットは、ケリーが300万人もの民主党員名簿を持っており、オバマがこれらの民主党員に金銭的・政治的支援を新たに呼びかけることができるようになったことだというのです(
http://www.nytimes.com/2008/01/11/us/politics/11obama.html?_r=1&oref=slogin&pagewanted=print
。1月11日アクセス)。

6 感想

 昨年5月のオフ会でオバマが米大統領になるのではないか、と私が予想したのを参加者は覚えておられるでしょうが、私は一貫してオバマの人物と政策に共感を寄せて来ました。
 米国には有色人種に対する差別意識がまだまだ根強く残っており、その払拭のためにもオバマには当選してもらいたいと思っています。
 もちろん、女性差別解消のためにクリントンにも頑張ってもらいたい気持ちはありますが、日本人としては、米国が人種差別意識を払拭してくれる方が重要だ、ということです。
 
(完)

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