太田述正コラム#2356(2009.2.10)
<防衛省キャリアの会計音痴(続々)>

1 始めに

 防衛省にまともな積算・査定意思も能力もないことをIHIの事例を通じてこれまでご説明してきたところですが、別の資料をもとに、補足しておきましょう。

2 防衛省の積算・査定能力を物語る資料

         防衛調達をめぐる「水増し請求・過払い」について


会社名        過払い総額(延滞金等を含む) 過払い額返還対象期間(年度)
日本工機         約5.9億円         1988〜1992
藤倉航装         約3.6億円         1990〜1994
東洋通信機        約71 億円         1989〜1993
ニコー電子        約34 億円         1990〜1994
日本航空電子工業     約77 億円         1992〜1998
日本電気         約318億円         1992〜1998
日本電気電波機器
 エンジニアリング    約44 億円         1992〜1998
トキメック        約157億円         1993〜1999
富士通ゼネラル      約1.6億円         1994〜1997
東急車輌製造       約2.4億円         1993〜1999
富士写真光機       約23 億円         1994〜2001
日進電子         約0.34億円         1994〜1999
日本飛行機        約123億円         1997〜2002
大原鉄工所        約27.5億円         1999〜2004
日本無線         約231億円         1999〜2004
長野日本無線       約24.2億円         1999〜2004
 以上、16社      計1143.54億円          
富士インダストリーズ    調査中        
山田洋行          調査中


 (防衛省資料より作成 2007年12月13日 参議院外交防衛委員会 日本共産党
井上哲士 提出資料)

3 所見

 この表に出てくるのは防衛省絡みの水増し請求・過払いのほんの一部であろうことは容易に想像できます。
 よほど明白な水増し請求をやったか、内部通報が捜査当局やマスコミ対してあったかして、防衛省が重い腰を上げて過払いであると認めざるを得なくなった事例だけだと思った方がいいでしょう。

 ところで、以前、商社勤務経験のある読者から、海外メーカーから防衛装備品を輸入して防衛省に納入する商社の場合、メーカーからの仕入値で官と契約し手数料は契約金額高に応じて逓減し、例えば1億円の契約の場合、2〜3百万円の手数料しか認められておらず、国内及び海外に事務所と必要な人員等の経費を賄うには見積書の偽造しか方法はないという指摘が寄せられました(コラム#2215、2220)。
 しかし、この表だけ見ても、水増し請求は、商社に限らず日本のありとあらゆるメーカーが防衛省に対して行ってきたと考えた方がよさそうですね。

 興味深いのは、コラム#2355(未公開)に掲げた「(社)日米平和・文化交流協会の主な会員企業等の受注金額、天下り、献金」の表に登場する企業と上掲の表に登場する企業とがほとんどオーバーラップしていないことです。
 「ほとんど」というのは、日本電気(日本電気電波機器エンジニアリングは関連会社でしょう)と山田洋行はどちらの表にも登場しているからです。
 防衛省からの受注額が大きく、天下りを多数受け入れ、自民党への政治献金も多い大企業は、明白な水増し請求をやるなどという危ない橋を渡らなくても十分超過利潤を確保できるように防衛省が取り計らってくれるし、何かあっても自民党の防衛関係議員の大物が捜査当局やマスコミにもにらみをきかせてくれる、ということなのではないでしょうか。
 だから随意契約はダメなのだと言うのは簡単ですが、競争入札を増やそうたって簡単にはいきません。
 武器輸出禁止政策を緩和して日本のメーカーや商社が海外に防衛装備品を輸出できるようにして、彼らの市場を拡大してやることで参入メーカーを増やすことや、海外メーカーからの輸入についてはできるだけ特定の商社を介在させないようにすることを考える必要があるでしょう。
 いずれにせよ、防衛省に積算・査定意思を持たせ、その積算・査定能力を向上させることが不可欠なのですが、そのためにも、集団的自衛権行使を解禁した上で自衛隊の海外派遣の機会を飛躍的に増やすことで、自衛隊に軍隊としての明確なミッションを与え、そのミッションの遂行と防衛予算とを厳格にリンクさせることが望まれるところです。
 こうすれば、海外メーカーからの防衛装備品の輸入も増え、また、日本のメーカーと海外メーカーとの合従連衡も行われ、日本のメーカーの再編、経営の合理化が進むことでしょう。
 一方、武器輸出禁止政策は緩和しないし、自衛隊に明確なミッションも与えないというのであれば、自衛隊は大幅に規模を縮小させ、防衛予算にも大なたを振るうべきです。
 どちらを選択するか、日本の国民は決断しなければなりません。
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太田述正コラム#2357(2008.2.10)
<天下りについて(その2)>

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