太田述正コラム#2337(2008.2.1)
<活字メディアへの登場(続)(その1)>

1 始めに

 月刊誌「自然と人間」2008年2月号(2月1日発行)に掲載された私のインタビュー(昨年末に行われたもの)を2回に分けて転載します。
 この雑誌は、旧国鉄職員の同人誌的な雑誌から出発し、カバーする対象も環境問題から次第に拡大して現在に至っていると承知しています。

2 インタビュー

   --防衛省をめぐる政官財癒着構造 問題の本質に切り込まない検察--
                                                                太田述正 評論家

 防衛省前事務次官守屋氏の逮捕につづく参議院防衛委員会の秋山氏の参考人招致。巨額の装備・設備費をめぐる利権構造と防衛省の体質は。検察は政治家にどこまで迫るか。守屋氏と同期入庁の評論家・太田述正氏に聞く。(聞き手・編集部)

                        
――守屋問題で揺れる防衛省ですが、本質的な問題はどこのあるのでしょうか。

政財官の癒着構造の核心は天下り 

 いま防衛省が問題になっていますが、外務省や厚労省、社会保険庁や、秘密のベールに包まれている警察はとくに堕落・腐敗の度合いが甚だしいと思います。
 この四つの省庁(防衛省、外務省、厚労省、警察)に限らず問題の根っこにあるのは政財官の癒着構造であり、その核心部分が天下りの問題だというのが私の認識です。このことは客観的に見ても間違いないと思っています。
 厚労省についてはさておき、防衛省や警察(公安)、それに外務省に共通しているのは、これらの省庁が広い意味で国の安全保障に関わる業務を行っていることです。
 ところが戦後の日本は安全保障を蔑ろにしているため、これらの省庁は本来の仕事をやっていません。だから堕落するのです。建前上は本来の仕事を行わなければいけないのだけれど、別にまじめにやらなくても誰も咎めない、政治家も国民も関心がないというところに問題があるのです。

安全保障という仕事

 以上は一般論ですが、防衛省、警察、外務省を個別に見ていきましょう。
 外務省は国内ではさえませんが、外国に行くと日本人村の中の貴族階級のようなものです。頂点に「天皇」である大使がいて、大使館の連中はその廷臣のような存在で、一般の商社とか観光客としてやってくる日本人は一番底辺にいるというピラミッド構造をつくっています。大使館の中でも外務省のキャリアは他の省庁から来た連中の上に君臨しています。だから外務省キャリアは若いときからスポイルされるわけです。
 警察のキャリアも同じで、入ってすぐに警部補になり、地方に行けば幹部で20代で警察署長になります。彼らも奉られて世間知らずになります。しかし警察は日常の犯罪捜査とか防犯などは市民生活と密接な関係があり、そこでは成果を問われます。つまり一般市民と日常的に接しているわけです。
 外務省も同じです。外交問題は安全保障の中でも防衛問題に比べれば国民の関心があります。しかもグローバル化して日本人がどんどん外国に出て行っていますがその時、領事業務をきちんとやってくれるのか、日本人を守ってくれるのか、サービスはどうかということなどは批判の目に晒されるわけです。
 ところが防衛省の仕事は日常的な市民との接点はまったくありません。事故が起きたとか、災害派遣をするさいには接点ができますが、それは日常的な場ではありません。もっぱら物とかサービスを購入する業者との接点があるだけです。当然、防衛省と取り引きをしたい、物を納入したいという業者は、下へも置かぬへりくだった態度で防衛省職員に接します。
 その上防衛省キャリアは若いときから自衛官に傅かれます。一方でキャリアを含む防衛省職員は常に国民の冷たい目に晒されつづけるわけですが、この防衛省の姿は現在でも基本的には変わっていません。ですから、防衛省キャリアの世間知らずの度合いが外務省や警察庁のキャリアと比べても甚だしいのは不思議でも何でもありません。
 これが、今回の守屋問題の背景です。

―防衛省における政財官癒着構造はどのようにでき上がったのでしょうか。

「浩志会」とその人脈

 昨年末の「AERA」(2007年12月31日号〜2008年1月7日号)に「『浩志会』の地下人脈」という記事が載りました。浩志会(※注1)は政官財の癒着構造の一つの典型ではないでしょうか。
 官僚が参加する「勉強会」は巨万とありますが、純粋にプライベートのものもあれば、特定の個人がいろんな業者から金を集めて「勉強会」的なものを組織するやり方もあります。他方で、浩志会のように法人(財団法人)が組織するやり方もあります。
 この浩志会の理事を選ぶ評議員は、各省庁の秘書課長等の人事担当課長クラスであり官僚だけです。理事は官僚OBと業者OBが半々ずつ入っています。「AERA」の調査によれば、収入の大半は会員企業36社が負担しており、各企業は毎年150万円ずつ支払っているということです。
 さらに浩志会出身の国会議員、知事が9人もいます。これは官僚の会員OBがたまたま政治家になったと言われればその通りかもしれませんが、「AERA」は浩志会あげての選挙を行っているのではないかと指摘しています。これぞまさしく政官業の癒着構造そのものです。
 しかも念の入ったことに、検察や警察の幹部も会員ですから絶対に浩志会は捕まらないわけです。会合は主として昼です。参加者は弁当代は負担するようになってきていますが、会場代など諸々のサービスは全部無償で受けているわけです。倫理規定によれば公務員であれ自衛隊員であれ、会費を負担したとしても関係業者と飯を食ってはいけないはずです。
 浩志会ならよくて、なんで守屋はダメかというと、山田洋行という特定の業者とばかりやっていて、しかも頻度が余りにも多くて目立ってしまったからです。

(注1)財団法人「浩志会」
   「日本の将来を担う官民の人材の向上及び相互理解の促進を図るた
   め、官民の職員に対し、各種啓発、養成活動を実施・・我が国社会
   の発展と国際社会への一層の貢献に寄与・・」を目的に1977年に設
   立された財団法人。会長は本田勝彦日本たばこ産業前社長。会員に
   は、現職国会議員、知事、各省の現職次官、検事総長、警察庁長
   官、金融庁長官など政界、官界の他、業界トップ企業の幹部級が顔
   をそろえる。会の実態は本文中の「AERA」に詳しい。

(続く)
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太田述正コラム#2338(2008.2.1)
<韓国次期大統領とキリスト教>

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