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太田述正コラム#2282(2008.1.5)
<オバマ大頭領誕生へ?(その1)>
1 始めに
1月5日付の英ガーディアン(電子版)は、米国の新聞かと見まがうような、オバマのアイオワ州党員集会での勝利の記事一色でした。
そう言えば、ブット暗殺の翌日の12月28日のガーディアン(電子版)は、パキスタンの新聞かと見まがうような、ブット暗殺の記事一色でした。
これはちょっと考えば当たり前です。
パキスタンも米国も英国の元植民地で英国人の感覚からすれば自分の国の延長であり、ガーディアンはこのような旧植民地、しかも重要な旧植民地の大きな出来事を国内ニュース並に報道しているだけのことなのです。
実際問題として、英国とその重要な旧植民地との間では、人的にも物的にも広汎かつ密接な関係が現在なお継続しているのですから・・。
さて、このガーディアンや米国のワシントンポストやニューヨークタイムスを読むと、オバマが米民主党の大統領候補になる可能性が極めて高くなったという印象を受けました。
ガーディアンを中心に各紙の記事を引用しつつご説明をしましょう。
2 ガーディアン
ガーディアンは、事実上オバマに米民主党大統領候補当確どころか米大統領当確を打ったと言っても過言ではありません。
「オバマ(Barack Obama)の<アイオワ州での>勝利は民主党の支持層を動員した結果ではなく、支持層を変貌させた結果だ。彼の支持者の三分の一以上は30歳未満で党員集会にこれまでやってきたことがない者がほとんどだ。支持政党無し層が彼に群がることにより、民主党党員集会出席者数は4年前に比べてほとんど2倍になった。・・オプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey)<がオバマ支持を打ち出したことも大きい。>・・オバマが唱えているのは変化だ。過去8年間にわたって両極が塹壕に入ったように対峙してきた政治文化を癒そうというのだ。戦争に翻弄され、不況の可能性に直面しており、71%の人が悪い方向に向かっていると思っている米国において、彼の希望と変化というメッセージは明確に共感を呼んでいる。」(
http://www.guardian.co.uk/uselections08/barackobama/story/0,,2235741,00.html
。1月5日アクセス(以下同じ))。
「クリントン(Hillary Clinton)にとって致命的だったのは、彼女がオバマに敗れただけでなく、屈辱的にも、僅差とはいえ、ジョン・エドワーズ(John Edwards)の後塵を拝す3位の座に追いやられてしまったことだ。・・共和党支持層や支持政党無し層であった人がオバマに投票できるように大勢民主党員の登録をした。」
http://www.guardian.co.uk/uselections08/story/0,,2235665,00.html
「<アイオワ州の党員集会の結果は、>オバマ:合格、クリントン:不合格、ジョン・エドワーズ:合格<だ。>」
http://www.guardian.co.uk/uselections08/story/0,,2235727,00.html
「保守的法律家達が教官を勤めていることで有名なシカゴ大学の法科大学院で、オバマは憲法の上級講師だった。彼は今でも名簿にはとどまっていて長期休暇中ということになっている。このシカゴ大学から南方に50マイル離れた所に・・キリスト・トリニティー・ユナイテッド教会がある。これがオバマの行きつけの教会であり、その牧師は黒人解放神学(black liberation theology)の徒であるエレミア・ライト(Jeremiah Wright)博士(師)だ。オバマはこの過激な黒人教会と保守的な法科大学院という二つの機関のどちらの会員でもある。これは彼が希望と夢を掲げる大統領候補として埋めようとしている二極の隔たりの大きさがいかばかりかを示して余りあると言えよう。・・彼は死後の生活や<神による>創造を信じていない、いや完全に信じているとは言えないように思われる。・・<そんな彼が教会に所属しているのは、>「私の信条の支え(vessel)、特定の信仰共同体への帰属(commitment)がなければ、私は恒常的にある種疎外感、孤独感に苛まれることになるであろう」<からだという。>いつものことだが、このような慎重に説明された信仰告白は無神論者にも敬虔な信者にも共感を呼び起こす。・・エレミア・ライトの声はオバマが「希望の政治」を説き明かす際に彼の情感と表現の細部に宿り、話をクライマックスへと導く。・・聴衆が聴きたいのはオバマの外交政策や経済政策に関する練り上げられた考えなどではなく、<宗教的>説教なのだ。・・これは、共和党員でさえオバマに真剣に耳を傾ける気持ちになるほど米国の現状が嘆かわしいほど傷だらけになっていることを物語っている。・・オバマが大統領になれば、米行政機構がこれまでよりずっと超党派的なものになることを、米国民は多分間違いなく期待しているのではなかろうか。行政機構が、特定の党と手を携えている人々だけでなく政治的立場を異にする人々の知識経験をも生かすものとなることを・・。
http://www.guardian.co.uk/uselections08/comment/story/0,,2235747,00.html
→このラバン(Jonathan Raban)による論説は出色のできだと思います。(太田)
「多くの選挙民は、全ての新しいものを代表しているオバマと、過去15年間の有毒な空気の継続を代表しているクリントンの間の明確な感情的選択をつきつけられていると思っているのではないか。・・まだまだ苦しい道のりが待ち受けているが、現在のところ、民主党支持者達は経験より変化を、継続よりリスクを、そして何よりも散文より詩を選んでいるのだ。」
http://www.guardian.co.uk/uselections08/story/0,,2235508,00.html
「大統領への道はいつも平坦ではないが、今回アイオワ州が発したメッセージには真に瞠目させるものがある。2009年の1月にはホワイトハウスで黒人を見つけても不思議ではなくなったということだ。飲み物の給仕をしているのではなく大統領執務室(Oval Office)に座っている黒人を・・。」
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/story/0,,2235787,00.html
(続く)
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太田述正コラム#2283(2008.1.5)
<仙台防衛施設局時代>
→非公開
<オバマ大頭領誕生へ?(その1)>
1 始めに
1月5日付の英ガーディアン(電子版)は、米国の新聞かと見まがうような、オバマのアイオワ州党員集会での勝利の記事一色でした。
そう言えば、ブット暗殺の翌日の12月28日のガーディアン(電子版)は、パキスタンの新聞かと見まがうような、ブット暗殺の記事一色でした。
これはちょっと考えば当たり前です。
パキスタンも米国も英国の元植民地で英国人の感覚からすれば自分の国の延長であり、ガーディアンはこのような旧植民地、しかも重要な旧植民地の大きな出来事を国内ニュース並に報道しているだけのことなのです。
実際問題として、英国とその重要な旧植民地との間では、人的にも物的にも広汎かつ密接な関係が現在なお継続しているのですから・・。
さて、このガーディアンや米国のワシントンポストやニューヨークタイムスを読むと、オバマが米民主党の大統領候補になる可能性が極めて高くなったという印象を受けました。
ガーディアンを中心に各紙の記事を引用しつつご説明をしましょう。
2 ガーディアン
ガーディアンは、事実上オバマに米民主党大統領候補当確どころか米大統領当確を打ったと言っても過言ではありません。
「オバマ(Barack Obama)の<アイオワ州での>勝利は民主党の支持層を動員した結果ではなく、支持層を変貌させた結果だ。彼の支持者の三分の一以上は30歳未満で党員集会にこれまでやってきたことがない者がほとんどだ。支持政党無し層が彼に群がることにより、民主党党員集会出席者数は4年前に比べてほとんど2倍になった。・・オプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey)<がオバマ支持を打ち出したことも大きい。>・・オバマが唱えているのは変化だ。過去8年間にわたって両極が塹壕に入ったように対峙してきた政治文化を癒そうというのだ。戦争に翻弄され、不況の可能性に直面しており、71%の人が悪い方向に向かっていると思っている米国において、彼の希望と変化というメッセージは明確に共感を呼んでいる。」(
http://www.guardian.co.uk/uselections08/barackobama/story/0,,2235741,00.html
。1月5日アクセス(以下同じ))。
「クリントン(Hillary Clinton)にとって致命的だったのは、彼女がオバマに敗れただけでなく、屈辱的にも、僅差とはいえ、ジョン・エドワーズ(John Edwards)の後塵を拝す3位の座に追いやられてしまったことだ。・・共和党支持層や支持政党無し層であった人がオバマに投票できるように大勢民主党員の登録をした。」
http://www.guardian.co.uk/uselections08/story/0,,2235665,00.html
「<アイオワ州の党員集会の結果は、>オバマ:合格、クリントン:不合格、ジョン・エドワーズ:合格<だ。>」
http://www.guardian.co.uk/uselections08/story/0,,2235727,00.html
「保守的法律家達が教官を勤めていることで有名なシカゴ大学の法科大学院で、オバマは憲法の上級講師だった。彼は今でも名簿にはとどまっていて長期休暇中ということになっている。このシカゴ大学から南方に50マイル離れた所に・・キリスト・トリニティー・ユナイテッド教会がある。これがオバマの行きつけの教会であり、その牧師は黒人解放神学(black liberation theology)の徒であるエレミア・ライト(Jeremiah Wright)博士(師)だ。オバマはこの過激な黒人教会と保守的な法科大学院という二つの機関のどちらの会員でもある。これは彼が希望と夢を掲げる大統領候補として埋めようとしている二極の隔たりの大きさがいかばかりかを示して余りあると言えよう。・・彼は死後の生活や<神による>創造を信じていない、いや完全に信じているとは言えないように思われる。・・<そんな彼が教会に所属しているのは、>「私の信条の支え(vessel)、特定の信仰共同体への帰属(commitment)がなければ、私は恒常的にある種疎外感、孤独感に苛まれることになるであろう」<からだという。>いつものことだが、このような慎重に説明された信仰告白は無神論者にも敬虔な信者にも共感を呼び起こす。・・エレミア・ライトの声はオバマが「希望の政治」を説き明かす際に彼の情感と表現の細部に宿り、話をクライマックスへと導く。・・聴衆が聴きたいのはオバマの外交政策や経済政策に関する練り上げられた考えなどではなく、<宗教的>説教なのだ。・・これは、共和党員でさえオバマに真剣に耳を傾ける気持ちになるほど米国の現状が嘆かわしいほど傷だらけになっていることを物語っている。・・オバマが大統領になれば、米行政機構がこれまでよりずっと超党派的なものになることを、米国民は多分間違いなく期待しているのではなかろうか。行政機構が、特定の党と手を携えている人々だけでなく政治的立場を異にする人々の知識経験をも生かすものとなることを・・。
http://www.guardian.co.uk/uselections08/comment/story/0,,2235747,00.html
→このラバン(Jonathan Raban)による論説は出色のできだと思います。(太田)
「多くの選挙民は、全ての新しいものを代表しているオバマと、過去15年間の有毒な空気の継続を代表しているクリントンの間の明確な感情的選択をつきつけられていると思っているのではないか。・・まだまだ苦しい道のりが待ち受けているが、現在のところ、民主党支持者達は経験より変化を、継続よりリスクを、そして何よりも散文より詩を選んでいるのだ。」
http://www.guardian.co.uk/uselections08/story/0,,2235508,00.html
「大統領への道はいつも平坦ではないが、今回アイオワ州が発したメッセージには真に瞠目させるものがある。2009年の1月にはホワイトハウスで黒人を見つけても不思議ではなくなったということだ。飲み物の給仕をしているのではなく大統領執務室(Oval Office)に座っている黒人を・・。」
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/story/0,,2235787,00.html
(続く)
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太田述正コラム#2283(2008.1.5)
<仙台防衛施設局時代>
→非公開
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