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太田述正コラム#2256(2007.12.25)
<さらば浩志会>

1 始めに

 週刊誌「アエラ」の知り合いの記者から同誌2007年12月31日〜2008年1月7日合併増大号が送られてきたので頁を繰ったところ、「「浩志会」の地下人脈」という記事(34〜37頁)が載っていました。
 私もこの会の会員なのですが、ついにマスコミが取り上げた、来るべき時が来た、と受け止めました。

2 浩志会について

 この記事には、浩志会(
http://www.z-koushikai.or.jp/
)とは「官庁と民間企業の交流を目的とした財団法人で、会員は1200人余、半分がキャリア官僚とそのOB、半分が大手企業社員とOB」であり、「会長は古川貞二郎・元内閣官房副長官。副会長は、本田勝彦日本たばこ産業前社長、理事には、武藤敏郎日銀副総裁、田崎雅元川崎重工業会長、森下洋一松下電器産業前会長・・・。政界では、細田博之元官房長官ら国会議員3人や麻生渡福岡県知事ら6府県の知事も会員。いずれも官僚OB組だ。・・会の設立は1981年。・・主な活動は、経済や政治をテーマとした月例の講演会や・・。会員は平日の昼休みや夜に、虎ノ門の会議室で、弁当を食べながら、議論するのだという。」と記されています。
 ちなみに、国会議員の3人はすべて自民党議員ですし、知事の中にも革新系の知事は一人もいません。
 また、この記事には、会員出身の省庁トップとして、但木敬一検事総長(前法務事務次官)、吉村博人警察庁長官、守屋武昌前防衛事務次官、広瀬勝貞大分県知事(元通商産業事務次官)、佐藤隆文金融庁長官らの名前が出てきます。
 (元社会保険庁長官でアイルランド大使を経て現在最高裁判事をしている横尾和子氏も会員です。)
 もう少しこの記事の紹介を続けましょう。
 「会の主導権は官側が握っている。理事らを選ぶ評議員会は、17人全員が官庁の人事などを担当する職員。民間側はゼロだ。・・民間側は「各業界の主導的地位を占め」(同会ホームページ)る36社。トヨタ自動車、鹿島、東京ガス、日本たばこ産業、日本生命保険、武田薬品工業、花王など大手企業ばかり。会員は課長級以上が大半で、社長や幹部級も多い。・・06年の年度収入は約8500万円。一人あたり約1万〜2万円という個人会員からの年会費があるほか、主な収入は参加企業からの賛助金だ。・・参加企業・・は毎年150万円を払っている<らしい。また、企業の個人会員の>年会費や研修時の出張費は会社側が立て替えている<らしい。>」
 会員の同好会活動も活発に行われており、ゴルフ大会が行われていたということも記事に出てきます。
 また、会員の国会議員や知事の選挙に同会が組織的関与をしている疑いもあるとこの記事は指摘しています。

3 所見

 飲み食いしたり、一緒に見学したり遊んだりして官僚と業者が意思疎通を図る意義そのものを私が否定していないことはご承知の通りです。
 しかし、一方で人事院主催の各種レベルの業者を交えた公的研修の充実や、他方での公務員倫理法・倫理規定の厳格化を踏まえると、形式的には明らかに公務員倫理規定や自衛隊倫理規定に触れる浩志会の活動を続けることは困難になったとかなり以前から考えています。

 第一の問題は、官側が恣意的に業界を区分し、それぞれの業界の一位ないし二位の業者にだけ声をかけて同会への入会を促してきたことです。
 例えば、NEC、富士通、松下、日立といった互いに激しく競争している企業がすべて参加企業なのですから官側による業界区分の恣意性は明かですし、日生や安田火災海上(損保ジャパン)のようにかつては生保業界と損保業界のそれぞれ一位と二位の企業であったところも、今や垣根が取っ払われて競争状態にあります。
 また、参加企業の中から雪印や長銀のように事実上潰れた業者が出現しています。
 浩志会は護送船団時代の産物ですが、世の中はすっかり変わってしまったわけです。
 いずれにせよ、問題なのは、官側が選んだ36社の業者以外は、参加企業が潰れて空きができたりして同会からお呼びがかからない限り、業者が自発的に浩志会に参加するすべがない閉鎖的な会であることです。
 この点が、参加する業者がはるかにバラエティーに富んでいて、しかも完全に情報公開されているところの、人事院主催の各種公的研修と決定的に違うところです。
 (人事院が浩志会の会員でないのは興味深いところです。)
 アエラの記事は、浩志会事務局が「会員でない同業他社が不利益を被っている事実が確認できない」と主張していると記していますが、果たしてそうでしょうか。

 第二の問題は、官僚たる個人会員は、支払っている個人会費をはるかに超える金銭的非金銭的便宜供与を参加業者から受けていることです。
 同じことが官側総体としても言えます。
 守屋は、この会の会員として会員たる業者・・その大部分は防衛関係業者でもある・・との間で、それら業者の便宜供与を受けながら飲み食いを伴うつきあいをする、といったことだけにとどめておればよかったものの、特定の(非会員たる)業者とのつきあいをしかも高頻度で行ったことによって、会員官庁たる検察庁ににらまれ、逮捕、立件されるに至ったということになります。

 第三の問題は、結果としてではあれ、次第に同会がいわば官業癒着構造の典型例から政官業癒着構造の典型例へと「発展」しつつあり、このままだと日本の政官業癒着構造の中核へと大化けしかねないことです。

4 終わりに

 私は1980年代半ばに、防衛庁の1971年入庁組としては最初に先輩諸氏の推薦で同会の会員になり、何年か経ってから同期の守屋も会員になり、後には自衛官の幹部も会員になるようになったのですが、私は最初から、この会は官業癒着の典型例であると思いつつも、会費がタダ(当時)で様々な人とネットワーキングができる同会の魅力には抗しがたく、積極的に活動に参加した一人です。
 しかし、仙台防衛施設局長になってから、防衛庁を飛び出して現在に至るまで、私は会費は払いつつも一度も同会の活動には参加していません。
 とっくの昔に退会すべきだったのですが、私は、この会のネットワークが、いざという場合、糊口を凌ぐために役に立つかもしれないという下心で会員であり続けてきました。
 しかし、こんなアエラの記事が出た以上、今年一杯で浩志会を退会することにしました。 
 長年にわたり、大変お世話になった浩志会よ、さようなら。
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太田述正コラム#2257(2007.12.25)
<1991年の政務次官随行中東訪問記(その1)>

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