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太田述正コラム#2224(2007.12.9)
<防衛省キャリアの会計音痴(続)>

1 始めに

 石川島播磨重工業(IHI)の水増し請求の話(コラム#2163)を何人かの記者にしたところ、週刊金曜日2007.12.7日号と赤旗日曜版2007年12月9日号にそれぞれが取材した結果の記事が出たのでご紹介しておきましょう。

2 週刊金曜日

 週刊金曜日は、「IHIも水増し請求!?・・」という記事(10頁〜)の中で、IHIが1996年9月20日付で防衛施設庁(当時)に提出した資料をもとに、IHIが総額約33億円の見積もりをつきつけたとし、それを私(太田。当時防衛施設庁首席連絡調整官)が約18億円まで下げさせた、と記されています。
 本当はもっと下げられたのだけど、「防衛施設庁幹部から太田氏に「足が出る分は、次回のIHIとの契約に上積みせよ」と、これ以上の値下げ交渉を打ち切るように指示があり、具体的には、「次回のIHIとの護衛艦契約に上積み」せよとその幹部は言ったというのです。
 また、この記事は、「本来、査定にあたるべき調達実施本部はまったくやる気がなく、原価計算はほとんど、私がやり直しました。」という私の言葉もひいています。

 この防衛施設庁幹部とは、後に調達実施本部長(前職)時代の不祥事で有罪となる防衛省キャリアの諸冨増夫防衛施設庁長官(当時)のことです。
 諸冨さんの発言は驚くべきものです。
 調達実施本部における随意契約の積算などあってなきがごときものであることを告白しているに等しいからです。
 彼の言葉をより赤裸々に言い換えると、「太田よ、IHIの見積もりを叩いているらしいが無駄なことは止めろ。お前がIHIに値引きさせた分は、オレが調達実施本部に命じて別契約に上乗せさせることになるだけだ」という意味です。

3 赤旗日曜版

 赤旗日曜版は、一面で「水増し請求 証言」という記事を掲げています。
 私の登場する部分は次の通りです。

 「仙台防衛施設局長だった太田述正氏はこんな体験を語ります。ーー1996年に米軍艦船修理で浮きドックを借りたが、ある大企業が約50億円の見積書を提示してきた。調達実施本部にチェックを頼むと「大丈夫」という。ところが、私でも分かる二重計上などの水増しがあり、交渉の結果、十数億円になった。「値引き交渉をしていると防衛庁の装備担当者から『いいかげんにしてくれ』と圧力があった。癒着で水増しがまかり通る」」

 この装備担当者とは、防衛省キャリアの新保雅俊装備局艦船課長(当時)のことです。

4 コメント

 私の記憶では約47億円だったのですが、赤旗の記者の独自取材で約52億円であるという情報が出てきたため、記事では丸めて約50億円になっています。
 私自身約52億円という数字も思い出しました。思うに、52億円も47億円もそれぞれ根拠のある数字であったはずです。
 また、契約額については、私の記憶では約13億円だったのですが、週刊金曜日の記者や赤旗の記者の独自取材では約18億円であったため、赤旗の記事ではやはり丸めて十数億円になっています。
 実は約13億円という数字も根拠のある数字・・契約の基本的部分の金額・・であることがその後分かりました。
 結論的に申し上げれば、約52億円(契約の基本的部分か総額か不明)が私の交渉の結果約13億円ないし18億円に減額された、ということであったようです。
 残念ながら、約52億円の最初の見積もりがIHIから出てきた時点で私が見つけた三重計上(コラム#2163)も、私の記憶には鮮明に残っていますが、裏付けをとることはできませんでした。
 それもこれも、当時の私の日記(手書き日記から電子日記に変わった頃)がまだ「発見」されていないためです。
 逆に言うと、前にも申し上げたように、記憶していることにはそれなりの根拠があるけれど、記憶は確実ではない、ということです。
 それにしても、防衛庁はもの凄いところでしょう。
 こんなところで、積算を真面目にやる職員が育つわけがありませんよね。
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太田述正コラム#2225(2007.12.8)
<口利きリストの残された4名(その2)>

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