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太田述正コラム#2070(2007.9.18)
<米国の対イラン攻撃はない(続)(その1)>
<KS>
仏在住の者ですが、日本はやれ安倍退陣だ、やれ福田総理だ、等と相変わらず緊張感がなく、がっくりしています。
仏外相が昨日、イラン攻撃も最悪ありうると発言していました。
このところ不気味に沈黙を守っている米国ではなく、仏がこのような発言をしたことはかなり危険な兆候だと私は見ています。
日本の石油需要の8割以上を依存している中東湾岸地域で仮にイラン空爆が実施された時のリスク、またそのようなリスクに対し日本は国としてどのように対応するか、日本の政治家や官僚が果たして考えているのでしょうか?非常に気になるところです。
<太田>
1 イランをめぐる情勢
フランスのクーシュナー(Bernard Kouchner)外相が16日ご指摘のような発言をしたことは事実です。その際、外相は、フランスのトタール(Total)やルノーのような大企業にイランと契約を締結しないように働きかけていることも明らかにしました。(
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/6997935.stm
。9月17日アクセス)
しかも同外相は翌17日、国連安保理は(ロシアや中共の反対により)より厳しい対イラン経済制裁措置をとることは恐らくないであろうから、フランスは英国やオランダらとともに、米国が既にとっている措置と同様の追加的対イラン経済制裁措置を独自にとることを考慮していると言明しました(
http://www.nytimes.com/2007/09/17/world/middleeast/17cnd-iran.html?_r=1&hp=&oref=slogin&pagewanted=print
。9月18日アクセス)。
そもそも先月、フランスのサルコジ大統領が、イラン問題は現時点における「最大の危機」であって、世界は「イランの<核>爆弾かイランに爆弾を落とすか、という究極の選択」を迫られている、と述べて物議を醸したばかりです。
また、17日には、英国の政府筋が、フランスの外相が「述べたのは当たり前のことだ」と言明したことで、ますますきな臭さが漂ってきました。
(以上、
http://www.guardian.co.uk/international/story/0,,2171395,00.html
(9月18日アクセス)による。)
フランスや英国よりもともとイランに対してより強硬な米国では、対イラン慎重派のライス国務長官から、対イラン強硬派のチェイニー副大統領に対外政策の実権が再び移りつつあるとされています(
http://observer.guardian.co.uk/world/story/0,,2170382,00.html
。9月17日アクセス)。
IAEAのエルバラダイ(Mohamed ElBaradei)事務局長は、先月イラン政府との間で、IAEAとしてイランがこれまで核物資を平和目的以外に転用したことがないことが確認できたとした上で、ウラン濃縮中止に言及しないまま、IAEAが提示したいくつかの疑問にイランが回答する、という了解に達したところです。
ところが米国だけではなく、このところフランスの首相や外相のほか英国の政府筋によってIAEAのハシゴをはずすような発言が行わ始めたことにエルバラダイは危機感を強め、17日、対イラン攻撃などもってのほかであり、そんなことをすればイラクで一般住民70万人が死んだ二の舞になる、と警告しました(ガーディアン及びオブザーバー上掲)。
またイラン外務省の報道官は17日、フランスの外相をたしなめる発言を行いました(
http://www.cnn.com/2007/WORLD/europe/09/17/france.iran/index.html
。9月18日アクセス)。
2 私の判断
(1)私の判断
このように昨今、フランスや英国まで、対イラン戦を口にしているわけですが、フランスや英国が対イラク攻撃を行うことは将来ともおよそ考えにくい上、米国もまた、ブッシュ大統領が在任中に対イラン攻撃を決行するようなことはない、と私は考えています。
米国がイランを攻撃しないであろう理由は、以前(コラム#1676、1680で)も述べたところですが、現在でもこの判断を改める必要があるとは思いません。
ただし、その時にも述べたように、イスラエルが単独で、この一両年中にも対イラン攻撃・・ただし核施設に目標をしぼった攻撃・・を決行する可能性は排除できません。
9月6日にイスラエルがシリアの、恐らくは核施設を攻撃し、破壊したことからも、このことはお分かりいただけると思います。なおこれは、イランへの警告であると同時に対イラン攻撃の予行演習であったと考えられています。(
http://observer.guardian.co.uk/world/story/0,,2170188,00.html
。9月16日アクセス)
それにしても、先月末、ブッシュ大統領が、今年米軍がイランの工作員によってイラクの過激派に提供されたイラン製の240ミリロケット弾を発見・押収した、と述べた(
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/6968186.stm
。9月17日アクセス)り、アフガニスタン駐留NATO軍が、イランからタリバンに渡されようとしていたところの、(路傍爆弾に用いられる)徹甲成型弾等を9月6日に押収したと発表する(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/09/15/AR2007091500803_pf.html。9月16日アクセス)等、イランが米国の敵に対する支援を活発に行っている可能性が取り沙汰されているというのに、なにゆえ私が米国による対イラン攻撃はないと考えているかを、この際改めてご説明しておきたいと思います。
(続く)
<米国の対イラン攻撃はない(続)(その1)>
<KS>
仏在住の者ですが、日本はやれ安倍退陣だ、やれ福田総理だ、等と相変わらず緊張感がなく、がっくりしています。
仏外相が昨日、イラン攻撃も最悪ありうると発言していました。
このところ不気味に沈黙を守っている米国ではなく、仏がこのような発言をしたことはかなり危険な兆候だと私は見ています。
日本の石油需要の8割以上を依存している中東湾岸地域で仮にイラン空爆が実施された時のリスク、またそのようなリスクに対し日本は国としてどのように対応するか、日本の政治家や官僚が果たして考えているのでしょうか?非常に気になるところです。
<太田>
1 イランをめぐる情勢
フランスのクーシュナー(Bernard Kouchner)外相が16日ご指摘のような発言をしたことは事実です。その際、外相は、フランスのトタール(Total)やルノーのような大企業にイランと契約を締結しないように働きかけていることも明らかにしました。(
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/6997935.stm
。9月17日アクセス)
しかも同外相は翌17日、国連安保理は(ロシアや中共の反対により)より厳しい対イラン経済制裁措置をとることは恐らくないであろうから、フランスは英国やオランダらとともに、米国が既にとっている措置と同様の追加的対イラン経済制裁措置を独自にとることを考慮していると言明しました(
http://www.nytimes.com/2007/09/17/world/middleeast/17cnd-iran.html?_r=1&hp=&oref=slogin&pagewanted=print
。9月18日アクセス)。
そもそも先月、フランスのサルコジ大統領が、イラン問題は現時点における「最大の危機」であって、世界は「イランの<核>爆弾かイランに爆弾を落とすか、という究極の選択」を迫られている、と述べて物議を醸したばかりです。
また、17日には、英国の政府筋が、フランスの外相が「述べたのは当たり前のことだ」と言明したことで、ますますきな臭さが漂ってきました。
(以上、
http://www.guardian.co.uk/international/story/0,,2171395,00.html
(9月18日アクセス)による。)
フランスや英国よりもともとイランに対してより強硬な米国では、対イラン慎重派のライス国務長官から、対イラン強硬派のチェイニー副大統領に対外政策の実権が再び移りつつあるとされています(
http://observer.guardian.co.uk/world/story/0,,2170382,00.html
。9月17日アクセス)。
IAEAのエルバラダイ(Mohamed ElBaradei)事務局長は、先月イラン政府との間で、IAEAとしてイランがこれまで核物資を平和目的以外に転用したことがないことが確認できたとした上で、ウラン濃縮中止に言及しないまま、IAEAが提示したいくつかの疑問にイランが回答する、という了解に達したところです。
ところが米国だけではなく、このところフランスの首相や外相のほか英国の政府筋によってIAEAのハシゴをはずすような発言が行わ始めたことにエルバラダイは危機感を強め、17日、対イラン攻撃などもってのほかであり、そんなことをすればイラクで一般住民70万人が死んだ二の舞になる、と警告しました(ガーディアン及びオブザーバー上掲)。
またイラン外務省の報道官は17日、フランスの外相をたしなめる発言を行いました(
http://www.cnn.com/2007/WORLD/europe/09/17/france.iran/index.html
。9月18日アクセス)。
2 私の判断
(1)私の判断
このように昨今、フランスや英国まで、対イラン戦を口にしているわけですが、フランスや英国が対イラク攻撃を行うことは将来ともおよそ考えにくい上、米国もまた、ブッシュ大統領が在任中に対イラン攻撃を決行するようなことはない、と私は考えています。
米国がイランを攻撃しないであろう理由は、以前(コラム#1676、1680で)も述べたところですが、現在でもこの判断を改める必要があるとは思いません。
ただし、その時にも述べたように、イスラエルが単独で、この一両年中にも対イラン攻撃・・ただし核施設に目標をしぼった攻撃・・を決行する可能性は排除できません。
9月6日にイスラエルがシリアの、恐らくは核施設を攻撃し、破壊したことからも、このことはお分かりいただけると思います。なおこれは、イランへの警告であると同時に対イラン攻撃の予行演習であったと考えられています。(
http://observer.guardian.co.uk/world/story/0,,2170188,00.html
。9月16日アクセス)
それにしても、先月末、ブッシュ大統領が、今年米軍がイランの工作員によってイラクの過激派に提供されたイラン製の240ミリロケット弾を発見・押収した、と述べた(
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/6968186.stm
。9月17日アクセス)り、アフガニスタン駐留NATO軍が、イランからタリバンに渡されようとしていたところの、(路傍爆弾に用いられる)徹甲成型弾等を9月6日に押収したと発表する(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/09/15/AR2007091500803_pf.html。9月16日アクセス)等、イランが米国の敵に対する支援を活発に行っている可能性が取り沙汰されているというのに、なにゆえ私が米国による対イラン攻撃はないと考えているかを、この際改めてご説明しておきたいと思います。
(続く)
太田述正ブログは移転しました 。
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