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太田述正コラム#1851(2007.7.5)
<英国・パキスタン・イスラム過激派>(2007.8.13公開)
1 始めに
本篇は、コラム#1846と#1843の二つのコラムの共通の続編です。
最初にお断りです。
コラム#1846において、英国で「6月29日<と>翌30日に・・テロ事件が起き・・た。・・今回の2件は・・どちらも自爆テロではなかった」と記しましたが、6月30日のグラスゴーでのテロ事件は、自爆テロ未遂事件であり、この際、訂正させていただきます。
2 英国でのテロ
英国の当局は、上記テロ事件に関し、8名の容疑者を逮捕しました。
この8名全員が医療関係者であり、うち7名が医師ないし医師の卵、1名が医療技術士です。
この医師の中には、グラスゴーでの事件の際に全身に火傷を負って重体になって入院中の者や豪州のブリスベーンで逮捕された者(注)もいます。
(以上、特に断っていない限り
http://www.cnn.com/2007/WORLD/europe/07/04/london.investigation/index.html、
http://www.cnn.com/2007/WORLD/europe/07/04/london.alqaeda/index.html
(どちらも7月5日アクセス)による。)
(注)インドのバンガロール近郊で生まれ、バンガロールの大学で医師になり、英国のリバプールで医師として働いてから、昨年9月以来、豪州のブリスベーンで医師をしていた(
http://www.nytimes.com/2007/07/04/world/asia/04india.html?pagewanted=print
。7月5日アクセス)による。)
当局が正式に発表していないので断片的な情報しか得られていないが、このほか、イラクで医師になった者やパレスティナ系ヨルダン人の医師がいる(
http://www.guardian.co.uk/terrorism/story/0,,2117167,00.html
。7月3日アクセス)。
ところで、英国の医師23万9,000人近くのうち、外国で医師の資格をとった人が9万人もいます。
上記容疑者たる医師7名は、全員、中東やインド亜大陸で医師の資格をとった者ないしはこれら地域出身で英国で医師の資格をとろうとしていた者のようですが、安易にこういう人々を英国に招じ入れ過ぎてきたのではないか、という声があがっています。
また、そもそも人の命を救うことを目指しているはずの医師や医師の卵・・彼らは知識人でもある・・が多数の人を殺そうとした、という点でも英国の人々はショックを受けています。
なお、ロンドンのテロもグラスゴーのテロも爆弾が不発で失敗に終わったことに関し、彼らが医師であることを生かし、放射能や微生物を使ったテロを企画しなかったことに胸をなで下ろす声も出ています。
逮捕された8名は全員イスラム教徒であることが当然視されており、英国にやってくる以前から本家本元のアルカーイダないしイラクのアルカーイダ(Al Qaeda in Mesopotamia)にリクルートされていたのではないか、といった憶測を呼んでいます。
(以上、
http://www.nytimes.com/2007/07/04/world/europe/04cnd-britain.html?hp=&pagewanted=print
(7月5日アクセス)による。)
3 パキスタン政府、モスク制圧へ
一ヶ月もの間、パキスタン政府と首都イスラマバードのモスクに立て籠もったイスラム過激派との間でにらみ合いが続いていましたが、7月3日、ついに治安部隊と過激派の間で武力衝突が起こり、兵士1名とマドラッサの学生2名を含む9人の犠牲者が出ました。 治安部隊は、中にいる学生に脱出を促しており、外に出てきた者には一人約100ドルを提供することとしており、この誘いに応じた者は4日の夕方の時点で既に700名に達しています。
また、4日の夜には、女装して脱出しようとした、総帥たる聖職者が逮捕されました。
この聖職者は、ムシャラフ大統領に対し、イスラム法の採用とタリバンとの良好な関係の維持を求めてきた人物です。
この聖職者に唆された学生達は、今年3月には売春宿を経営しているとして3名の女性を拘引し譴責を加え、6月に入ると3名の警官を勾留し、更に6月末には支那人のマッサージ嬢6名を誘拐する、という乱暴狼藉を働いてきました。
ですから、一般のパキスタン人の間から、ムシャラフはこんな連中に対して手ぬるすぎると批判が高まっていました。
こういった声に促されて、ムシャラフもついに重い腰をあげたわけです。
(以上、
http://www.nytimes.com/2007/07/04/world/asia/04cnd-pakistan.html?_r=1&hp=&oref=slogin&pagewanted=print、
http://www.nytimes.com/2007/07/04/world/asia/04pakistan.html?pagewanted=print (どちらも7月5日アクセス)による。)
首都までこんなに麻の如く乱れた国で、暗殺の危険に四六時中直面しながら、大統領ポストのみならず、陸軍参謀長のポストまで頑として手放そうとしないムシャラフのタフさというか鈍感さに対し、ここでは敬意を表しておきましょう。
4 感想
英国でのテロで逮捕された容疑者中、素性が報道されている者は、ことごとく旧大英帝国領出身者です。
また、パキスタンもむろん旧大英帝国領です。
こんなイスラム過激派を沢山抱えた広大な領土を治めていた英国はすごいと考えるべきなのか、それとも、英国の施政に問題があったからこそ、旧大英帝国領で今やイスラム過激派が猖獗を極めるようになったと考えるべきなのか、ですが、恐らくこのどちらも正しいのではないでしょうか。
<英国・パキスタン・イスラム過激派>(2007.8.13公開)
1 始めに
本篇は、コラム#1846と#1843の二つのコラムの共通の続編です。
最初にお断りです。
コラム#1846において、英国で「6月29日<と>翌30日に・・テロ事件が起き・・た。・・今回の2件は・・どちらも自爆テロではなかった」と記しましたが、6月30日のグラスゴーでのテロ事件は、自爆テロ未遂事件であり、この際、訂正させていただきます。
2 英国でのテロ
英国の当局は、上記テロ事件に関し、8名の容疑者を逮捕しました。
この8名全員が医療関係者であり、うち7名が医師ないし医師の卵、1名が医療技術士です。
この医師の中には、グラスゴーでの事件の際に全身に火傷を負って重体になって入院中の者や豪州のブリスベーンで逮捕された者(注)もいます。
(以上、特に断っていない限り
http://www.cnn.com/2007/WORLD/europe/07/04/london.investigation/index.html、
http://www.cnn.com/2007/WORLD/europe/07/04/london.alqaeda/index.html
(どちらも7月5日アクセス)による。)
(注)インドのバンガロール近郊で生まれ、バンガロールの大学で医師になり、英国のリバプールで医師として働いてから、昨年9月以来、豪州のブリスベーンで医師をしていた(
http://www.nytimes.com/2007/07/04/world/asia/04india.html?pagewanted=print
。7月5日アクセス)による。)
当局が正式に発表していないので断片的な情報しか得られていないが、このほか、イラクで医師になった者やパレスティナ系ヨルダン人の医師がいる(
http://www.guardian.co.uk/terrorism/story/0,,2117167,00.html
。7月3日アクセス)。
ところで、英国の医師23万9,000人近くのうち、外国で医師の資格をとった人が9万人もいます。
上記容疑者たる医師7名は、全員、中東やインド亜大陸で医師の資格をとった者ないしはこれら地域出身で英国で医師の資格をとろうとしていた者のようですが、安易にこういう人々を英国に招じ入れ過ぎてきたのではないか、という声があがっています。
また、そもそも人の命を救うことを目指しているはずの医師や医師の卵・・彼らは知識人でもある・・が多数の人を殺そうとした、という点でも英国の人々はショックを受けています。
なお、ロンドンのテロもグラスゴーのテロも爆弾が不発で失敗に終わったことに関し、彼らが医師であることを生かし、放射能や微生物を使ったテロを企画しなかったことに胸をなで下ろす声も出ています。
逮捕された8名は全員イスラム教徒であることが当然視されており、英国にやってくる以前から本家本元のアルカーイダないしイラクのアルカーイダ(Al Qaeda in Mesopotamia)にリクルートされていたのではないか、といった憶測を呼んでいます。
(以上、
http://www.nytimes.com/2007/07/04/world/europe/04cnd-britain.html?hp=&pagewanted=print
(7月5日アクセス)による。)
3 パキスタン政府、モスク制圧へ
一ヶ月もの間、パキスタン政府と首都イスラマバードのモスクに立て籠もったイスラム過激派との間でにらみ合いが続いていましたが、7月3日、ついに治安部隊と過激派の間で武力衝突が起こり、兵士1名とマドラッサの学生2名を含む9人の犠牲者が出ました。 治安部隊は、中にいる学生に脱出を促しており、外に出てきた者には一人約100ドルを提供することとしており、この誘いに応じた者は4日の夕方の時点で既に700名に達しています。
また、4日の夜には、女装して脱出しようとした、総帥たる聖職者が逮捕されました。
この聖職者は、ムシャラフ大統領に対し、イスラム法の採用とタリバンとの良好な関係の維持を求めてきた人物です。
この聖職者に唆された学生達は、今年3月には売春宿を経営しているとして3名の女性を拘引し譴責を加え、6月に入ると3名の警官を勾留し、更に6月末には支那人のマッサージ嬢6名を誘拐する、という乱暴狼藉を働いてきました。
ですから、一般のパキスタン人の間から、ムシャラフはこんな連中に対して手ぬるすぎると批判が高まっていました。
こういった声に促されて、ムシャラフもついに重い腰をあげたわけです。
(以上、
http://www.nytimes.com/2007/07/04/world/asia/04cnd-pakistan.html?_r=1&hp=&oref=slogin&pagewanted=print、
http://www.nytimes.com/2007/07/04/world/asia/04pakistan.html?pagewanted=print (どちらも7月5日アクセス)による。)
首都までこんなに麻の如く乱れた国で、暗殺の危険に四六時中直面しながら、大統領ポストのみならず、陸軍参謀長のポストまで頑として手放そうとしないムシャラフのタフさというか鈍感さに対し、ここでは敬意を表しておきましょう。
4 感想
英国でのテロで逮捕された容疑者中、素性が報道されている者は、ことごとく旧大英帝国領出身者です。
また、パキスタンもむろん旧大英帝国領です。
こんなイスラム過激派を沢山抱えた広大な領土を治めていた英国はすごいと考えるべきなのか、それとも、英国の施政に問題があったからこそ、旧大英帝国領で今やイスラム過激派が猖獗を極めるようになったと考えるべきなのか、ですが、恐らくこのどちらも正しいのではないでしょうか。
太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/