太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/

太田述正コラム#1832(2007.6.24)
<自衛隊エレジー>(2007.8.7公開)

1 始めに

 軍事愛好家の皆さんのおかげで、このコラムで軍事を採り上げることが多くなりました。
 今回は自衛隊そのものを俎上に載せましょう。

2 イラクからも無事生還した陸上自衛隊

 2003年1月から始まって2006年9月に終わった、陸上自衛隊のイラクのムサンナー県サマーワへの派遣では、陸上自衛隊員に1人の犠牲者も出ませんでした。
 派遣地が、イラクの中で例外的に平穏な場所であった、というか、そういう場所を選んで自衛隊を派遣したとはいえ、決して危険がゼロだったわけではありません。
 人道復興支援活動だけを行った自衛隊と違って、同じムサンナー県で治安維持活動にもあたっていたオランダ軍は、2005年3月のイラク撤収までに死者2人を出しています。
 また、自衛隊だって危ない目に何度もあっています。
 宿営地に対して迫撃砲・ロケット弾(各1発〜3発程度)の攻撃が計13回も発生しましたし、2005年6月23日には、サマーワ郊外で路肩爆弾(IED)による攻撃があり、自衛隊の車両が破損しています。
 (以上、事実関係は、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%AF%E6%B4%BE%E9%81%A3
(6月24日アクセス。以下同じ)による。)
 ですから、自衛隊は運がよかったことは事実です。
 もとより、自衛隊が、危険を回避するために、情報収集活動や宣撫工作や安全対策を適切に行った、ということも忘れてはならないでしょう。
 しかし、ですよ。
 イラクで、2002年から今日までに、自衛隊員以外の日本人が5人も亡くなっています。 ご承知のように、うち2人は外交官ですし、1人は民間軍事会社の社員です。
 (以上、ウィキペディア上掲、及び
http://www.janjan.jp/world/0410/041029172/1.php
による。)
 思い起こせば、1992年から1993年にかけて陸上自衛隊の施設部隊等が派遣されたカンボディアでも、自衛隊員の犠牲者はゼロだったのに、国連ボランティアの日本人1人と文民警察官の日本人1人の計2人の非自衛官が殺害されたのでしたね。
 (以上、
http://www.mekong.ne.jp/directory/society/takada.htm
による。)
 もちろん、自衛隊員の犠牲者だって出ない方がいいに決まっていますが、誰かが言ったように、一般日本国民等を守るべき自衛隊が、一般日本国民等によって守られている、と揶揄したくなるような話です。
 戦後の吉田ドクトリンの下で、軍隊としての仕事をすることを期待されていない自衛隊の姿がここに端的に表れています。

3 荒廃している自衛隊

 今年2月には、海上自衛隊の護衛艦の暗号や訓練関係の文書など、秘文書も含まれる多数の資料が、護衛艦の通信員の私用パソコンからインターネット上に流出していたことが明るみに出ました(
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20060223nt08.htm
)。
 また4月には、やはり海上自衛隊員が、自分がかつて勤務していたイージス艦の構造図面などを持ち出していたことが明るみ出ました(
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%B2%E8%A1%9B%E7%A7%98%E5%AF%86%E3%81%AE%E6%BC%8F%E6%B4%A9
)。
 今月は陸上自衛隊の幕僚監部勤務の幹部(1佐)が、陸上自衛隊の野外炊具等の装備品納入をめぐる汚職容疑で逮捕されました(
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007062301000041.html  
。6月23日アクセス)。
 
 これらは、頻発している自衛隊の不祥事のほんの一部に過ぎません。
 しかも、これらの不祥事が、民間企業ならぬ自衛隊で起こっていることは、深刻です。
 なぜなら、自衛隊が軍隊だとしたら、本来卓越していてしかるべき情報管理面や兵站行政面で、自衛隊に致命的な欠陥があることが露呈したからです。
 改めて痛感させられますね。
 自衛隊は、まこと軍隊ではないと・・。

4 終わりに

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、昨年、中共に抜かれたとはいえ、日本の防衛費は世界5番目の大きさです( 
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/international/31575.html
。6月24日アクセス)。
 いつまで日本国民は、軍隊としての仕事をすることを期待されてない自衛隊、そしてまさにその期待通り欠陥だらけで軍隊としての仕事など逆立ちしてもできない自衛隊、を大金をかけて維持し続けるつもりなのでしょうか。

太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/