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同時多発テロの中間総括・・日米英
1 日本
日本は、集団的自衛権の行使に向けての大きな一歩を踏み出したと英米は見ている。自衛隊内においても、そのように受け止めている人々が少なくない。
(おかげで、日米安保の危機的状況(拙著「防衛庁再生宣言」(日本評論社)参照)も、自衛隊の士気低下に伴う危機的状況(同じく、拙著参照)も、間一髪のところで緩和され、ことなきをえた。)
そして、この英米等の認識が、誤りでなかったということになれば、小泉総理は、(いわゆる「改革」ではかけ声倒れに終わったとしても、)戦後日本の歴史の大転換を(意図せずして)なしとげた政治家として、後生高く評価されることになろう。しかし、私はそのように楽観的には到底なれない。
2 米国
米国は、(母国たる英国との二度の戦争時を除いて)初めて本土に軍事的攻撃を受け、しかもそれが「NGO」からの非対称型攻撃であっただけに、軍事戦略の全面的見直しを余儀なくされることになった。そして、本土防衛のための統合軍の創設、軍と警察の機能の峻別の緩和等について議論がわきあがっている。当然のことながら、同盟諸国との関係は、一方的に米国がこれら諸国を守るという「片務的」なものから、「双務的」なものに変わって行かざるを得ない。頭の切り替えのできない同盟国は米国から切り捨てられかねない。また、これまで「疎遠」であった諸国であっても、米国の安全保障に寄与しうる国、例えばロシアや中国との関係は改善されることになる。その一方で、国連やNATO等、「決議」はできても、安全保障面で米国に実質的に貢献できない国際機関は、米国から疎略に扱われることになる。
3 英国
最も注目すべきは、ブレア首相率いる英国の対応だ。
英国は、同時多発テロが起こった瞬間から米国と一心同体となって積極的に対応に当たった。
そのねらいは、英米等のアングロサクソン諸国の一体性を国内外にアッピールすることによって、
ア 米国のふところに飛び込み、発言権を確保し、米国、とりわけブッシュ新政権の米国中心主義的な対外政策(unilateralism)の軌道修正を図ることによって 英国の国益、及びEUの利益を確保し、
イ 上記とあいまって、欧州における米国の「代理国」として、軍事面を中心に、欧州において、これまでの独仏基軸状況から、英国主導下の英独仏(伊)連 携状況への再編をなしとげ、
ウ 英国がEUに取り込まれ、埋没することはありえないと英国民を安心させ、(三分の二もの英国民が反対しているが経済上必要な)EU通貨同盟への加盟(ユーロの採用)を推進する
というものであり、今のところ、これらに見事に成功しつつあると言えよう。
太田述正
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