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太田述正コラム#22
インド洋派遣自衛艦
「選択」2002年3月号のCAPSULE欄(編集部)114頁に、次のような記事が掲載されていました。
インド洋派遣自衛艦が秘密裏にやっている軍事協力
昨年11月に成立したテロ対策特別措置法を受け、基本計画が策定され、海上自衛隊の艦艇がインド洋に派遣されている(基本計画によれば、5月19日まで)。
これら艦艇は、基本計画によれば、補給、輸送、修理・整備、医療、港湾業務等の兵站業務に従事することになっているが、実はインド洋上では米軍などを攻撃する恐れのある不審飛行物体の発見、アルカイダやタリバン残党の洋上逃走の監視、そしてイラクへの禁制物資搬入が疑われる船舶の発見、の三つの業務にもっぱら従事している。イージス艦を送らなかったので、飛行物体発見はもともとやや荷が重く、タリバン壊滅から時間が経過した最近では最後の任務ばかりを担っているという。
確かに、後から出かけて行った自衛艦に兵站業務を行う余地があるわけがない。兵站の確保を最優先した上で作戦を開始するのが米軍の真骨頂だからだ。わざわざ自衛艦が米艦艇に補給しているところをマスコミに公開しているのは、本当にやっていることが別にあるからだ。
自衛艦の「監視」によって得られたすべての情報が、リアルタイムで米軍に提供されていることは言うまでもない。こと防衛問題に関し、政府の建て前と実態が乖離しているのは今に始まったことではないが、早くも米国のイラク政策にこっそりコミットしているというのは、米国によるイラク本格攻撃が公然と語られ始めている現在、穏やかではない。
この記事を読まれてどう思われましたか。いくら何でもそんなはずはなかろうですって?
それでは検証してみましょう。
「海上自衛隊の艦隊が・・米艦艇・・<や>英軍への・・補給活動を開始してから約三カ月。補給した燃料は既に38回、約五万九千キロリットル(約23億円)にのぼり、自衛隊としては空前の対米支援活動になった。」(日本経済新聞2002.2.28(朝刊))と報じられているところから見れば、自衛艦は補給活動も実際に行ってはいるのでしょう。
しかし、この補給活動だけでは、米国に対し、何の「貢献」にもなっていないことが、米国防総省が26日に発表した「対テロ戦争への国際社会の貢献」と題する資料で、対テロ戦争の支援国としてあげた26か国(それぞれの国による支援内容も紹介)の中に日本が含まれていなかったことから明らかになりました。
これに対し、外務省は不快感を表明しましたが、小泉首相は、来日したブッシュ大統領が、国会での演説でも日本の支援に感謝しているとして、冷静に対応する考えを表明しました。
では、ブッシュ大統領ら米国首脳のこれまでの日本の支援へのお褒め言葉は、単に日本の「憲法上の制約」等の事情を考慮した政治的リップサービスだったのでしょうか。
私にはそうは思えません。ブッシュ政権が、こと安全保障に関しては、いかに「ホンネ」で語る政権であるかは、先般のブッシュ大統領の「イラク等三カ国悪の枢軸」発言だけとっても明らかでしょう。
1991年の湾岸戦争では、日本は130億ドルものカネを提供したにもかかわらずイラクの侵攻を受けたクウェートが感謝表明した30か国に含まれなかったことは有名な話です。今度こそはそういうことのないようにと決意を固めて政府は対米支援のあり方を検討したと言われています。となれば、補給などの兵站活動(=考えてみればカネの提供と殆ど変わらない)以外の作戦行動を秘密裏にメインに行う、というラインで米側と話をつけていたはずだ、と考えるのが自然でしょう。
このことを裏付けるのが、今回、日本が支援国に含まれなかった経緯についての国防省筋の弁明です。同筋は、「日本がリストに含まれなかったのは手落ちだった・・<これは、>リスト作成にあたって国防総省内の日本担当部門に照会がなかった」からだと語ったと報じられています。これは、日本は実態においては「貢献」に値することをやっている(=このことは日本担当部門だけが知っている)のだけれど、公表ベースでは補給だけなので、「貢献」とはみなされなかった、と解釈できます。(事実関係は、http://www.yomiuri.co.jp/01/20020227it13.htm による。)
もう私の結論はお分かりですね。冒頭掲げた「選択」の記事は本当らしい、ということです。
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