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太田述正コラム#0079(2002.11.26)
<日本の核武装>
読売新聞が報じた世論調査結果によると、北朝鮮との交渉における最も重要な課題として、「核兵器やミサイル開発の中止」を挙げた人が日本では44%(米国では59%)に上り、「日本人拉致事件の解決」の37%を上回った(http://www.yomiuri.co.jp/01/20021125ia24.htm。11月26日アクセス)そうです。
まだまだ米国民に比べると甘いとは言え、日本国民は、初めて核の脅威を肌身で感じているようです。日本の全域をカバーするノドンミサイルを100基も持っている「ならず者国家」北朝鮮が、自ら核保有を認めたのですから、当然のことと言うべきでしょうか。
米ニューヨークタイムスは、このような日本人の意識の変化をとらえ、東アジア諸国の間で日本の核武装への懸念が広がっているとした上で、防衛大学校の西原校長にインタビューしたところ、西原氏が「日本国内では日本が核武装すべきだとの声は出ていない。」と語った旨報じました(http://www.nytimes.com/2002/11/11/international/asia/11MISS.html。11月11日アクセス)。
しかし、(そもそも、防衛庁の一機関である防衛大学校の校長にこの種問題について発言の自由があるかどうかはさておき、)日本人以外で、この西原発言を額面通り受け取る人は余りいないようです。
論より証拠。英高級紙オブザーバー(ガーディアンの姉妹紙)に掲載された英国の国立研究所RUSI(=the Royal United Services Institute)のダン・プレッシュ(Dan Plesch) 上級研究員の論考(http://www.observer.co.uk/worldview/story/0,11581,841965,00.html。11月17日アクセス)をご紹介しましょう。
「核軍縮が国際的優先課題ではなくなりつつあることから日本は核オプションを考慮している、と国際原子力機関(IAEA)の長官であるモハメッド・エル・バラダイ氏は語った」・・バラダイ氏は、国連監視・検証・査察委員会(UNMOVIC)委員長のブリックス氏とともにイラクの国連査察にあたることになっている人物です(太田)・・。
バラダイ氏は、「中国、フランス、ロシア、英国、そして米国がことごとく核兵器にしがみついているため、イラクと北朝鮮の核(武装)計画を阻止し、インドとパキスタン(の核武装の進展)を掣肘する努力が妨げられていると訴え・・「抑止」概念、と非核保有国における米国のいわゆる「核の傘」に頼る考え、とを問題視し・・このようなダブルスタンダードの世界は維持し続けられるものではない」としめくくった。
しかし、「ブッシュ政権は、「対テロ戦争」でパキスタンとインドの手を借りる必要があるため、両国(の核武装の進展)を見て見ぬふりをしている。いかに米国がパキスタンに影響力がないかを示すいい例が、パキスタンがミサイルを提供してもらう見返りに北朝鮮が(濃縮)ウランを製造するのを助けていたのについ最近まで気づかなかったことがあげられる。その北朝鮮から日本まではミサイルでほんのひとっ飛びだ。」
そこで、「米国の日本専門家による専門家パネルが、日本政府が(日本が)核武装すべきか否かについて国家的議論を開始していること、このことは必ずしも(米国にとって)悪いことではないこと、を慎重に指摘した。・・広島と長崎(の悲劇)が(反核の)国民的心情を醸成したため、長年にわたって日本は(核)軍縮に関する世界的議論をリードしてきた。しかし近年、(日本の)政府高官達は、明らかに日本が核武装した場合の国際世論を軟化させるねらいで、核武装の考えを繰り返し公にするようになった。日本の世論は(日本の)核オプションに対し依然絶対反対であるかもしれない。しかし、過去においてこれらの高官達が、米国の核部隊の日本への受け入れから民衆の目をそらすことに成功していることからすれば、日本の政治が保守化しているだけに、このより深刻な問題についても彼らは同様に立ち回ることができるかもしれない。・・このところ西側世界では、(核に係る)ダブルスタンダードを、西側世界が世界の残り(の国々)に比べて道徳的に優位にあるとして正当化することが流行している。英国ではロバート・クーパー(コラム#28参照)がこの理論の主唱者だ。」米国で「朴訥にこの立場を信奉するのが共和党のチャック・ハーゲル上院議員(ネブラスカ州選出)だ。・・ハーゲルは共和党の中で最も国際主義的な人物だが、その彼ですら肩をすぼめ、米国としては、米国自身及び米国の友邦は、(その他の国々に比べて)より責任感が強いので、核兵器を持つことが許されるのだと感じているとのたまう。しかし、この責任感あふれる(西側)世界は、まず日本によって、そしてその次ぎには多分韓国とオーストラリアによって、慰問(comfort)される日々を待ち望まなければならないのだ。」
私は、プレッシュは深読みをし過ぎており、とりわけ日本の政府高官を買いかぶりすぎていると思います。
ただ、一つだけはっきりしていることは、英米の政府関係者の中には、日本が核武装することに理解を示しつつ、日本が近々核武装するであろうと予想している人々がいるということです。しかも、私には彼らが決して英米の政府関係者の中で少数派ではないという確信があります。
当コラムの読者の中にはショックを受けた方もおられるかもしれません。
お前はどう考えているのかですって?
私は、日本は核武装する必要はないが、非核政策を今後とも維持するためには、政府の防衛政策を抜本的に転換しなければならないという立場です。そのことは後日、改めて詳しく論じる所存です。
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