太田述正コラム#0194 (2003.11.25)
<イラク情勢と自衛隊の派遣問題(その3)>

2 自衛隊派遣問題

 各国の現在のイラク派兵状況は、米国が132,000人で米国以外が24,000人です。
米国以外の内訳は、英国10,000人(近々1,200人増派予定)、伊2,400人、ポーランド2,000人、スペイン1,000人、ウクライナ1,000人、タイ400人、ポルトガル128人等です(http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/3267451.stm。11月14日アクセス)。この数の中には、韓国が派遣した医務・工兵部隊のような部隊は含まれていないようです。

 日本が自衛隊を予定通りに陸上自衛隊を中心に海空自衛隊を合わせて1000人程度の部隊をイラクに派遣(http://www.asahi.com/special/parliament/TKY200306260387.html。6月26日アクセス)すれば、これは日本の「軍隊」(自衛隊)の戦後初めての「戦争地域」への派遣であり(http://www.nytimes.com/2003/11/14/international/14PREX.html。11月14日アクセス)、しかも戦後の日本「軍隊」(自衛隊)の海外派遣としては最大規模、ということになります。
 しかし、米軍等の「苦戦」が続いていることから、デンマークは部隊の追加派遣をとりやめました(冒頭のガーディアン)し、フィリピンは派遣済みの100人の部隊の引き揚げすら口にし始めていますhttp://www.yomiuri.co.jp/world/news/20031118id24.htm。11月19日アクセス)。
日本の小泉政権も、年内にイラクに自衛隊を派遣する方向であったところ、一転慎重な姿勢を採りは始めています(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A38195-2003Nov13.html。11月14日)
 この日本政府の様子を見て、諸外国のメディアは11月中旬、一斉に自衛隊派遣延期、あるいは棚上げと報道しました(http://news.msn.co.jp/newsarticle.armx?id=626881。11月15日アクセス)。政府内には海空自衛隊だけの派遣でお茶を濁そうとする動きも見られます(http://www.asahi.com/politics/update/1124/004.html。11月24日アクセス)。
 しかし、人道支援や施設の「復旧」より先に、まず、国連、赤十字、NGOの海外要員がイラクから国外に退避せざるをえない状況(http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-ngos15nov15235419,1,2842282.story?coll=la-headlines-world。11月16日アクセス)や、石油パイプライン等が破壊される状況(http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/3232032.stm。11月24日アクセス)を解消すべく、イラクの治安を回復しなければなりません。つまり治安の回復こそ、イラク復興の前提条件なのであって、私がかねがね力説している(コラム#124)ように、治安部隊の派遣こそが最も必要性が高いのです。
また、派遣されるのが治安維持部隊であれ、それ以外の部隊であれ、イラク国内で戦闘地域と非戦闘地域を線引きした上で、自衛隊を非戦闘地域に派遣する(「イラク復興支援特別措置法」参照)といった言葉遊びは、もうそろそろ止めるべきでしょう。
しかし、憲法問題や、自衛隊に犠牲者が出ることを恐れて最初から腰が引けている小泉政権に、今更そんなに多くを求めても仕方がありませんから、せめて既定方針通り、人道支援や施設の応急的復旧のための部隊派遣が行われることを期待しましょう。
ただし、最低限クリアすべき条件が二つあります。
一つは、前々からの懸案ですが、武器使用基準の緩和です(注6)。(集団的自衛権問題と何とか折り合いをつけて、他国軍の防衛のための武器使用も認めるのが本来の筋なのですが、これも今回は我慢しましょう。)

(注6)結局、イラク復興支援特別措置法では武器使用基準の緩和は行われなかった。現行の武器使用基準に基づいて自衛隊が海外派遣時用に初めて定めた部隊行動基準(Rule of Engagement=ROE。かつては「交戦規則」という訳語が用いられていた)は、テロ行為を行う疑いがある人物への対処について、まず制止の呼び掛けや口頭による警告を行い、その上で(??)警告を無視した場合は銃を構えて威嚇する(??)上空などに向けて警告射撃を行う(??)危害射撃を実施する??の3段階で武器使用を認める、という悠長なものだ(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031122-00000794-jij-pol。11月22日アクセス)。なお、コラム#83(このコラムの「その2」はない)及びコラム#124参照。

もう一つは、派遣部隊の中に治安部隊が含まれなければならないということです(注7)。

(注7)韓国はこれまでの700名に加えて3000人の部隊を追加派遣する方向だが、米国から、これまでと同様の医務部隊と工兵部隊だけでは米軍等による警備所要が増えて足手まといになるので、自らを守り、必要に応じて周辺地域に出撃できる部隊を含めた形で派遣するよう要請されている  (http://english.chosun.com/w21data/html/news/200311/200311180021.html。11月19日アクセス)。

(なお、アフガニスタンでも、アルカーイダ、タリバン、更には旧軍閥のヘクマティアル一味によるゲリラ活動が活発化しつつあることを忘れてはなりません。アフガニスタンで栽培、製造されるアヘンが豊富な資金源となっている(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A42606-2003Nov14.html。11月15日アクセス)だけにこちらの方がたちが悪いのかもしれません。ちなみに、日本と同じ先の大戦の敗戦国であるドイツは、イラクへの派兵こそ拒否していますが、アフガニスタンでは NATOの下、治安維持部隊を派遣しています。)

 お隣韓国の朝鮮日報は11月19日の論説で、「もし我々が部隊の<追加的>派遣を躊躇するようなことがあれば、テロリスト団体の脅迫に屈したことになるだけでなく、国際社会で笑いものになることは必至だ」としています(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200311/200311180019.html。11月19日アクセス)し、イラク戦に反対したフランスでさえ、保守系全国紙のフィガロ紙が10月31日の論説で、対テロ戦争の観点から「米国のイラクでの敗北はわれわれの敗北でもある」とする(メルマガJMM 244Su(2003.11.16)「 「補助兵士の視線」パリは燃えているか?」)など、米国側にエールを送る声が高まっています。
そこで、まことにしのびないことではありますが、日本国民の代表として、自衛隊の諸君にぜひともイラクに行ってもらいたいと思います。
既に日本もアルカーイダの標的とされており(http://www.sankei.co.jp/news/031117/1117kok026.htm。11月17日アクセス)、このアルカーイダの「脅迫」によるショックと政府の自衛隊イラク派遣方針のぐらつきを見て、日本の株価が下降を始めていることが端的に物語っているように、自衛隊のイラク派遣は決して米国のためではなく、日本自身のためなのですから。
  
(完)

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