太田述正コラム#0245(2004.1.31)
<自民党議員・元議員の自衛隊イラク派遣反対>

1 事実関係

イラク復興支援のための自衛隊の派遣承認案は1月31日未明、衆院本会議で野党欠席のまま与党単独で可決されました。
ところが、自民党内でかねてより自衛隊イラク派遣に慎重な姿勢を示していた加藤紘一、古賀誠両元幹事長は採決前に本会議場から退出して採決を棄権し、同じく亀井静香元政調会長は、本会議を欠席しました。
加藤氏は昨年11月の総選挙で復活当選した直後に、「米国内でもイラクから軍事的に手を引けとの意見が半分ほど出ている。米国(との関係)を大切にすることと、ブッシュ政権の政策を支持することは違う」とした上で、「イラク戦争は大量破壊兵器(WMD)があるからというのが大義名分だった。それで日本も米国に同調したが、WMDはなかった。大義はなくなった。・・<自衛隊イラク>派兵には反対だ」と述べている(コラム#199)ことから棄権したと考えられます。古賀氏の方は棄権の理由について、「平和が脅かされるような心配のあることには慎重の上にも慎重であってほしい」と語っています。
(以上、http://www2.asahi.com/special/jieitai/TKY200401300308.html(1月31日アクセス)による。)

亀井氏は、欠席の理由について、「特措法に基づいて自衛隊を派遣することに問題はない。問題は<テロや襲撃が続く>イラクの状況だ・・集団的自衛権に対する政府見解を変え・・て、法的裏付けを取って派遣すべきだ」と語っているところです(http://www.asahi.com/politics/update/0126/015.html。1月31日アクセス)。

また、1990年まで通算8期23年間衆議院議員を務め、この間に防衛政務次官、衆議院安全保障特別委員会委員長、郵政大臣などを歴任するとともに、自民党国防部会副部会長を長く務め、同党副幹事長も歴任するなど、防衛族の有力な一員として活躍した箕輪登元衆議院議員は、自衛隊イラク派遣は憲法並びに法律違反だとし、差止請求と慰謝料請求を行う訴訟を1月28日に提起しました。
箕輪氏は、イラク特措法及び基本計画に基づくイラク派兵は、自衛隊が他国による侵略行為がないのに、外国領土に出かけて「武力の行使」を行うものであり、わが国自衛のために必要な最小限度の自衛力の行使、すなわち「専守防衛」の域を超え、憲法第9条違反だと主張しています。
そして、箕輪氏は以下の理由から、今次自衛隊イラク派遣は法律違反だと主張しています。
自衛隊法は、「自衛隊は、その任務の遂行に必要な武器を保有することができる」と定め(第87条)、防衛出動の場合には「わが国を防衛するため必要な武力を行使することができる」とするが(第88条)、治安出動や自衛隊施設の警護等の場合には、一定の要件(警察官職務執行法の準用)の下に「武器の使用」を認めるに止まり、イラク特措法も、派遣自衛隊にかかる「武器の使用」のみを認めている。ところが、今回のイラク派兵にあたり自衛隊は、無反動砲や個人携帯対戦車砲など重装備の武器を携行し、交戦規則(部隊行動基準)を定めて臨んでいる。これは、「武器の使用」概念と比較しても明らかにこれを超え、「武力の行使」にほかならない。よってこれは、イラク特措法及び自衛隊法違反である。
かてて加えて、現在のイラク国内は全土が戦闘状態にありかつ国際法上交戦規程が適用される軍事占領下にあるのであり、イラク特措法にいう「非戦闘地域」の要件を充足しておらず、かかる状況下でイラクに自衛隊を派遣するのはイラク特措法違反である。
(以上、http://www.hg-law.jp/iraq/iraq-s.html(1月30日アクセス)による。)

2 批評

 (1) 加藤紘一氏と古賀誠氏について
 現在、米国で大統領選の予備選挙が行われていますが、野党民主党の候補者は誰一人として、現時点でイラクから米軍を撤退させよと主張していません。
 つまり、民主党候補者は全員、イラク戦争に反対し、或いはイラク戦争の大義や戦争にいたる手続き面に疑義を表明しているけれども、誰も米軍を引き続き駐留させてイラクを復興支援することに反対はしていないということです。
 そうである以上、日本が自衛隊を派遣しないことは、「ブッシュ政権の政策」に反対することになるだけでなく、民主党を含めた「米国(との関係)を」損なうことになるのであって、加藤氏の主張は論理的に成り立ちません。

  古賀誠氏の方は、「平和が脅かされるような心配のあることには慎重の上にも慎重であってほしい」ということだけでは何が言いたいのかよく分かりませんが、どうやら古賀氏は、吉田ドクトリンを墨守すべきだというお考えのようです。古賀氏はもともと加藤さんを領袖とする旧加藤派に属していた人であり、恐らく加藤さんのホンネも吉田ドクトリンを墨守したいということなのでしょう。
 旧加藤派は、その前身が旧宮澤派であり、更にさかのぼれば旧池田派です。橋本派の「先祖」の旧佐藤派とこの旧池田派は、いわゆる保守本流を形成してきました。保守本流とは、要するに吉田ドクトリンを信奉する人々です。
 私は、今でも自民党の過半は吉田ドクトリン信奉者だと推測しています。
 加藤、古賀両氏は、どちらも元幹事長という実力者であることから、自民党の過半の議員の暗黙の支持の下、総理及び自民党執行部に堂々と造反できた、ということだと解せばいいのです。
ちなみに、加藤氏は、2000年11月の森喜朗内閣に対する不信任決議案の採決を欠席し、古賀氏は2001年10月のテロ対策特別措置法案、昨年7月のイラク復興特措法案、同10月の改正テロ特措法案の採決で本会議を退席しましたが、両氏はいずれも処分されませんでした(http://news.msn.co.jp/newsarticle.armx?id=674836。2月1日アクセス)。

(続く)

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