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太田述正コラム#0264(2004.2.19)
<危機の韓国(その3)>

 (前回のコラム#263の、舌足らずであった一段落を拡充し、ホームページに再掲載してあります。)

(3)反日
 ア 反日感情のルーツ?
1948年の米軍政からの独立(注1)以来、歴代韓国政府は、一貫して韓国市民の反日感情を煽ってきたこともあって、(かつての北朝鮮や最近の米国という「ライバル」を除けば、)韓国市民にとって日本は一番嫌いな外国であり続けました。

(注1)蛇足ながら、対日平和条約発効(1952年)以前に、連合国(実態はそれぞれ米国とソ連)が韓国と北朝鮮の独立を認めたのは国際法違反(コラム#260参照)。

 どうしてそんなことになったのでしょうか。
英国は、インド亜大陸の地場産業を破壊し、原住民の大部分に基礎教育を施すことを怠り、彼らの大部分を凄まじい貧困のうちに放置したというのに、インドやパキスタンでは反英感情が殆どみられない(注2)ことを考えると、韓国の異常さが際立ちます。

(注2)1988年の秋、留学先の英国のCollegeから研修団の一員としてインドとパキスタンを合わせて一ヶ月の長期にわたって訪問した。その時、両国がどれほど旧宗主国の英国に敬意を抱いているかを身にしみて感じた。例えば、当時街全体がスラムのような趣のあったカルカッタでは、ビクトリア女王のインド皇帝就任を記念して建てられたVictoria Memorial館が、その名称のまま、ひときわ丹精を込めて維持されていた。とはいえ、さすがに、同館内の展示の半分はインド独立運動の英雄達についてものだった。そして、先の大戦中、インド解放を目指して日本と提携し、インパール作戦にインド国民軍を率いて参加したチャンドラ・ボースの展示スペースが、(地元出身ということもあってか、)ガンジーやネールよりもはるかに広かったことに、大いに感銘を受けたことを記憶している。

そうなった理由を適宜挙げてみましょう。
第一に、韓国の歴代政権が韓国市民統治の方便としてナショナリズムの高揚を図り、憎しみの対象に日本が仕立て上げられ、「活用」されたことです。
第二に、このやり方は、米国が南朝鮮を占領していた時のやり方・・同じことを北朝鮮でソ連がやりました・・を踏襲した、という見方もできます。韓国のジャーナリスト、キム・ワンソプが、著書の「親日派のための弁明」(草思社2002年)(注3)2頁でそう示唆しています。

 (注3)キム・ワンソプのこの本は、韓国における反日感情について、誤った歴史認識に基づく根拠のないものであって有害無益である、と根底的な批判を加えたために、韓国で青少年有害図書に指定された。しかし、その著者にして、歴史分析の方法論としてマルクス・レーニン主義を援用し、また韓国の歴代軍事政権に対して厳しすぎる評価をしている(翻訳者による解説。296頁)ことは、彼が実のところ、最近の韓国の知識人中の変り種に他ならないことを示している。

 第三に、先の大戦の頃までには朝鮮半島の人々が当時の大日本帝国(ナショナリズムを超えた存在)に、日本人以上に過剰同化しており、日本からの分離後、韓国の人々はアイデンティティークライシスに陥り、ここから快復するために、大日本帝国やその後継たる戦後日本を悪者にせざるをえなかったという、われわれの先入観を突き崩す興味深い説もあります。キム氏の上記著書の翻訳者の荒木和博拓殖大学助教授の説(同書294頁)です。

 しかし、朝鮮半島の35年に対して50年間も日本の植民地であった台湾では、朝鮮半島の人々以上に人々は大日本帝国に同化していたはずであり、中国国民党が台湾の占領者、かつ統治者として反日扇動を行ってきたという点でも韓国と状況は同じだったにもかかわらず、台湾では反日感情が殆ど見られません。
 従って、韓国の反日感情の真のルーツは、別のところに求められなければならないでしょう。

  イ 過激さを増す反日感情
 このところ日本文化の流入規制こそ緩和されてきていますが、かつての反体制派知識人の勢力伸張を背景として、広範な市民団体が協力する形で、植民地時代に日本に協力した朝鮮人を暴きだす大々的な研究が2006年完了を期して2002年から始まったことが示すように、韓国での反日機運は一層亢進してきています。
 この研究は、李承晩政権時代からの韓国の懸案であり、韓国内で混乱と政争を惹き起こしかねないことから、これまで実施されてこなかった経緯があります。それが、今回も一旦は政府による資金提供の話がなくなり、頓挫しかけたにもかかわらず、一般市民の寄付だけで研究実施に漕ぎ着けたことだけとっても、反日機運の程度が推し量れます。
 (以上、スコフィールドの論考3(http://www.atimes.com/atimes/Korea/FB04Dg01.html(2月4日アクセス)による。)

(続く)

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