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太田述正コラム#0298(2004.3.24)
<台湾の総統選挙(続々)>

3 陳水扁総統銃撃事件

 陳水扁総統は翌日が総統選というた3月19日午後1時45分(日本時間同2時45分)頃、台湾南部の台南市内を選挙カーで遊説中に銃撃され、下腹部に傷(長さ11センチ、幅2センチ)を負い、同乗していた呂秀蓮副総統は右ひざを撃たれました(1―2センチの外傷)(http://www.nikkei.co.jp/news/main/20040320AT2M1902V19032004.html。3月20日アクセス)。
 この銃撃事件が陳水扁陣営不利に振れていた選挙情勢を一挙に覆してしまった、と私は見ています。
 まさに、連戦陣営はそう考えたのでしょう。同陣営は、選挙の投票結果が確定しない段階で、早くも選挙無効を唱えた(http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20040325/mng_____kok_____000.shtml。3月25日アクセス)のです。(その時点で挙げられたのは銃撃事件に対する疑惑と票集計疑惑でしたが、後者については、再計算したところで結果が覆るわけがないことは、連戦陣営も百も承知しているはず(後述)であり、彼らの真のわだかまりは銃撃事件に対してであると思われます。)

 この銃撃事件を誰が仕組んだかについては、自作自演説が成り立ち得ないことだけは(命中精度の悪い手製銃による腹部の狙撃は危険すぎることから)はっきりしていますが、現段階で憶測をたくましくすることはさし控えた方が無難でしょう。

4 選挙の結果

 総統選の結果は、陳水扁陣営が6,471,970 (50.11%)、連戦陣営が6,442,452 (49.89%)、無効票が337,297、投票率が80.28%でした(http://www.atimes.com/atimes/China/FC22Ad01.html(3月22日アクセス):Laurence Eyton記者の記事3)(注4)。

 (注4)無効票が前回の総統選挙の時に比べて大きく増えたことについても、連戦陣営は問題にしているが、その理由ははっきりしている。第一の理由は、前回の総統選の時には、投票者が判を押す場所はどの陣営かさえ分かればどこでもよかったが、今回は、国民党も同意した法改正により、所定の場所以外に押すと無効になったことhttp://www.taipeitimes.com/News/taiwan/archives/2004/03/24/2003107527(3月24日アクセス)であり、第二の理由は、二つの提携関係にあるグループが、陳、連両陣営に不満を持つ人々に対し、上記法改正を踏まえ、投票用紙上の両陣営の候補者の口のあたりに判を押す形で無効票を投じるように呼びかけたこと(http://www.taipeitimes.com/News/taiwan/archives/2004/03/22/2003107253。3月23日アクセス)です。

 2000年の陳水扁、連戦、宋の三つどもえの総統選挙の際の陳水扁陣営の得票率39%に過ぎず、それが50%に増えた(http://www.taipeitimes.com/News/edit/archives/2004/03/22/2003107314。2月23日アクセス)わけですから、民進党にとっては大躍進であったと言っていいでしょう。

 ちなみに、台湾初の住民投票が二つの設問とも有権者の過半数以上の投票が得られなかった(注5)ため、成立せず、このことがあたかも陳水扁陣営にとって大きな打撃であったかのような報道がなされているところですが。住民投票が失敗することは、総統選がデッドヒートであることから、あらかじめ十分予想できたところです。

(注5)投票率は、中国の台湾向けミサイル配備に対し、台湾の国防を拡大することの是非を問う設問1が45.17%、中国との平和共存のための協議メカニズムをつくることの是非を問う設問2が45,12%だった(http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20040321/mng_____kok_____006.shtml(3月21日アクセス))。

 なぜなら、投票者が総統選の投票用紙と住民投票の二つの投票用紙の三つを一緒に投票箱に入れる原案が国民党の横やりで変更になり、総統選と住民投票とで投票箱が別々になったからです。今回の住民投票の設問内容であれば、反対する人は殆どいないはずであり、焦点は連戦陣営が呼びかけた住民投票棄権の呼びかけに連戦陣営支持者が従うかどうかでした。ところが、この棄権の呼びかけに応じたか否かは、住民投票の投票箱に用紙を投じるかどうかで判明してしまう・・住民投票に関しては秘密投票が認められない・・ことになってしまったのです。ですから、連戦陣営支持者の殆どは住民投票を棄権するであろう、(さもないと、国民党の利権から干されてしまう!)と予想されていたからです(http://www.atimes.com/atimes/China/FC20Ad07.html(3月20日アクセス):Laurence Eyton記者の記事4)。

いずれにせよ、住民投票の第一の設問については陳水扁陣営の得票数を上回る賛成票があった(台湾の声2004.3.24:【報告】李登輝友の会の選挙視察ツアーに参加して(木))勘定であり、総統選挙で連戦陣営に投票したか無効票を投じた有権者で、リスクを冒して勇気ある住民投票を行った人がいたことが注目されますし、何よりも住民投票の実施に向けて運動を盛り上げたことが、(銃撃事件のおかげでもありましたが、)陳水扁再選につながったことを忘れてはならないでしょう。

(続く)

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