太田述正コラム#0494(2004.10.6)
<吉田ドクトリンの呪縛(その2)>

 (本篇は、コラム#491の続きです。なお、前回のコラム(#493)をめぐっての一読者とのやりとりがホームページ(http://www.ohtan.net)の掲示板の#739??742にあります。)

 (3)吉田ドクトリン克服オプション
 ア 米国政府の要請
米国のパウエル国務長官は8月の共同通信とのインタビューで、「もし日本が世界で十全な役割を果たそうと思い、かつ国連安保委で常任理事国になりたいのであれば・・憲法第9条は見直される必要がある・・ただし第9条が修正されるか否かは一にかかって日本国民の決定による」と述べ、日本に憲法第9条の見直した上で、積極的に国際軍事貢献を行うよう求めました(http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20040813/eve_____kok_____000.shtml。8月14日アクセス)(注2)。

(注2)このニュースに接した時、私はカーター政権末期の24年前の1980年12月にマスキー国務長官(当時)が時事通信とのインタビューで、NATOを拡大して日本もメンバーになるべきだ、日本が軍事大国になることに周辺諸国の若者達は懸念など持っていない旨語った配信を、防衛庁勤務中に読んで仰天した時のこと(コラム#30)を思い出した。このマスキー発言とパウエル発言との間に実に四半世紀近い歳月が経過しているが、依然として吉田ドクトリンの呪縛の下にあるという点で日本は全く変わっていない。

このニュースは海外のプレスでも注目されました(http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/3561378.stm。8月14日アクセス)。
 パウエル発言は、(2001年の9.11同時多発テロを契機に米国が始めた)対テロ戦争を日本にも積極的に担って欲しいという気持ちの表れでしょう(注3)。

 (注3)これに対しマスキー発言は、(1979年12月のソ連のアフガニスタン侵攻を契機に米国が始めた)第二次冷戦を日本にも積極的に担って欲しいという気持ちの表れだったに違いない。

  イ 台湾政府の要請
また、10月3日には、台湾の遊(Yu Shyi-kun)首相(行政院長)が、台湾は日本のシーレーンを扼しており、日米安保上重要な位置にあると指摘した上で、「日本が「普通の国」になって地域の安全と防衛問題に積極的な役割を演じるべきである」という論議が日本で起きているが、「我々もそう願っている」と発言しました(http://www.taipeitimes.com/News/front/archives/2004/10/04/2003205466。10月5日アクセス)。
中共の経済発展に伴い、その軍事力の整備が進み、例えば台湾を標的にした500個の弾道弾を配備する等、台湾に対する攻撃能力を急速に高めてきていますが、台湾はこれを相殺するような攻撃能力を現時点では保有していません(http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/3701114.stm。9月29日アクセス)。しかも、米国は台湾に対し、防御的武器の供給義務は負っていますが、防衛義務は負っていない、という点で安保条約によって守られている日本とは違います。
遊首相の発言は、日本にも台湾海峡の防衛を担って欲しいという切実な気持ちの表れなのです(注4)。

(注4)台湾では核武装が論議されるに至っている(http://www.taipeitimes.com/News/edit/archives/2004/08/13/2003198573。8月14日アクセス)。なお、台湾の民進党政権からすれば、米国という「占領当局」が「押しつけた」憲法の拘束下にある日本は、中国国民党という外来「占領当局」が「押しつけた」憲法の拘束下にある台湾とだぶって見えているはずだ。

このように、米国政府と同様、台湾政府も日本が憲法第9条を見直した上で、積極的な国際軍事貢献をするよう促しているわけです。

  ウ 韓国の状況
 「反米・反日」政権である(金大中からノ・ムヒョン政権へと続く)現在の韓国政府から、米国政府や台湾政府のような日本に対する意思表明が行われるわけはありませんが、韓国と米国との関係が険悪化している(コラム#473)状況下にあって、韓国政府内外の心ある人々は危機意識に苛まれ、日本の安保・防衛面での協力を切望しているものと思われます。
 危機意識がいかに大きいかを推測させるのが、先日最大野党の議員が暴露した、昨年韓国国防省の研究所がとりまとめた、北朝鮮が韓国を攻撃した場合を想定したレポートのショッキングな内容です。
 すなわち、攻撃開始と同時に、ソウルを射程に入れた1000門の北朝鮮の火砲が一時間で最大25,000発の砲弾をソウルに撃ち込み、市街の三分の一が破壊され、米空軍が出動しなければ、16日間でソウルが陥落する、というのです(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200410/200410040027.html。10月5日アクセス)。
 韓国が2000年に、核開発につながる、レーザーを用いたウラン濃縮実験を行った(http://www.asahi.com/international/update/0903/004.html(9月3日アクセス)。コラム#473参照)ことも、この文脈で理解することができそうです(注5)。

(注5)もっとも、韓国は1980年代にも、核開発につながる、プルトニウム抽出実験を行っている(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200409/200409090027.html。9月10日アクセス)。

(続く)

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