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太田述正コラム#0530(2004.11.11)
<第三国潜水艦の領海侵犯(その1)>
(私のホームページの掲示板に、以下のような「お知らせ」の掲示をしました。(なお、先月(9??10月)はの訪問者数は21,710人でした。)
10??11月(12日から10日)の本ホームページへの訪問者数は18,549人と激減し、4ヶ月前の5??6月の水準まで戻ってしまいました。累積訪問者数は、249,583人で約25万人です。
他方、メーリングリスト登録者数も1,182名と、一ヶ月でわずか9名の微増にとどまりました。
本ホームページの中心は時事コラムですが、このコラムを通じて日本人の意識変革を目指すという私の三年間にわたった試みは、失敗に終わったと言わざるを得ません。
ただし、当分の間、趣味の世界の手すさびとして、コラム執筆は続けるつもりですので、引き続きご愛読いただければと思います。)
1 始めに
10日午前4時頃、海上自衛隊の大戦哨戒機P-3Cが、中国のものと見られる原子力潜水艦(αとしましょう)が、石垣島と同島東側の多良間島の間の日本領海内を南から北に向けて潜水航行しているのを発見し、追跡していたところ、10日午前6時頃から同8時頃までの2時間弱(注1)にわたり領海侵犯した、というニュースが飛び込んできました。
(注1)朝日新聞(http://www.asahi.com/politics/update/1110/005.html)は約1時間、読売新聞(後掲)は約3時間、と食い違っている。
8時45分には小泉総理の承認を得て、大野防衛庁長官が海上警備行動を発令し、引き続き海上自衛隊のP-3Cと護衛艦(対潜ヘリ搭載)がこの潜水艦を追尾しているとのことです。
(以上、http://www.sankei.co.jp/news/041110/sei070.htm(11月10日アクセス(以下同じ))による)
私がまずサンケイの記事を引用したのは、サンケイの記事が一番細かい事実に触れていたことと、一番できがよかったからです。
2 技術的解説
最初に、少し技術的な解説をしておきましょう。
このサンケイの記事には出てきませんが、この潜水艦は午前4時に初めて発見されたわけではありません。
日本政府は、米国政府によって、米海軍の世界の海を覆う潜水艦探知ソナー網の日本周辺海域部分を日本の経費で整備・運用することとされており、日本が得た情報は自動的に米海軍に吸い上げられる一方で米海軍が得た情報は自動的には日本はもらえません。
このソナー網は、一定以上の深度の海中であれば、そこに潜む潜水艦のエンジン音やスクリュー音(音紋という)を検知することによってその潜水艦がどのあたりの海域にいるかを完全に探知できます。日本によって得られた音紋情報は日本政府のコンピューター、ひいては米海軍のコンピューターに全て蓄えられており、音紋情報さえあれば、これと照合することによって、その潜水艦の艦名まで分かります。その場合、当然国籍も原子力潜水艦か通常型潜水艦か等も分かります。
αはこうして探知され、ソナー網上で追尾されていたところ、10日の午前に出動を命ぜられたP-3Cによって機上から投下されたソノブイ(浮遊ソナー)を用いる(まず音を出さないソノブイを用いて範囲をしぼり、次ぎに音を出すソノブイを用いる)ことによって4時頃ピンポイントで位置がつきとめられた、ということなのです。
3 技術的におかしな報道
サンケイ以外の新聞には、訳の分からない報道がいくつか見られます。
例えば、東京新聞は、大野長官が「哨戒機から潜水艦に対し、浮上して旗を掲げるか、退去するよう要求した。できるだけ平和裏に解決したい」(http://www.tokyo-np.co.jp/00/detail/20041110/fls_____detail__019.shtml)と述べたと報じ、読売新聞は「海上自衛隊は、潜水艦が領海内にいる際、ソナー(水中音波探知機)を投下し、浮上して国籍を示す旗を掲げるよう通告した。反応がなかったため、領海外に退去するよう求めた。警告射撃はしなかった。」(http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20041110i206.htm)と報じました。
潜航したままの潜水艦に対し、航空機が無線通信をする手段はない(水上艦艇も同様)ので、音を出すソノブイを通信手段として(モールス信号的に?)用いたということなのかもしれませんが、護衛艦搭載ソナーならともかく、ソノブイをそんな形で使えるなどとは聞いたことがありません。
「警告射撃はしなかった」に至っては、潜水したままの潜水艦に対する銃砲撃など、やっても何の意味もありません。質問した方も答えた方もピンボケです。それに第一、P-3Cには対水上艦艇用のハープーンミサイルや対潜水艦用のアスロック(ロケット魚雷)は搭載できても、銃砲類は搭載できません。護衛艦なら銃砲は当然備えていますが・・。
毎日新聞の載せた前田哲男東京国際大学教授の談話、「仮に故障した船を潜水艦が助けにいっただけだとしたら、海上保安庁で十分対処できるはず。・・<海上警備行動など発令せず、>より抑制的に対応すべきだったのではないか」(http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20041110k0000e040086000c.html)には笑ってしまいました。潜水艦は「故障した船」が水上艦艇であれ潜水艦であれ、救助活動には全く役に立たないからです。
(続く)
<読者A>
私は太田さんのコラムの愛読者ですが、このコラムの読者数が少ないからといって日本人の意識改革に失敗したとは思いません。
非常に冷静に色々な可能性も探って分析されており、特に「米国とは何か」というコラムは、単眼的な視点からの見方しか知らない私からすれば、目からウロコのような内容で大いに勉強になりました。
しかし難点を挙げるならば「言葉は平易でも内容は難解」ということがあります。太田さんのコラムを理解するには忘れていた大学入試のレベルの知識を最充填読まねばならないのは事実です。
一流大学を出て研究生活をしたことがある環境の人々であれば普通のことであっても、毎日日々の職場の仕事を気にしているような人々には理解するにはかなり「体力」が要るのは事実です。(嫌味にとれたらお許しください)
しかしながら、太田さんのコラムを読むような「体力」を培うことを忘れた結果が現在の浮き草の如く「成り行き任せ」の群集であるともいえると思います。
ですから、今後もコラムを続けていただけば、固定読者であっても中身を深く理解して問題意識を持つようになるであろうと思います。
今後ともコラム執筆をお願いいたします。
<読者B>
配信されたメルマガが転送されたとき、受信者がこのメルマガを続けて読もうと考えたとしても、申し込み先が書かれていません。大抵のメルマガには、申し込み先アドレスが書かれていますので、容易に申し込みができます。申し込み先を調べて申し込もうとする読者は、相当熱心な方です。そのような方のみを読者と考えられておられるのなら、現在ままでもよいのではないか、と思います。
奈良への家族旅行のような記事は、読者は期待していないのではないでしょうか。
歴史については専門のサイトにアクセスすると思います。
それよりも、防衛専門家としての見解を知りたいと思ってメルマガを講読している読者が多いのではないでしょうか。今回の中国海軍のものと見られる潜水艦が日本領海を侵犯したときの記事など、読者は大いに期待していることでしょう。外交防衛の記事が多くなると、読者も増加するように思います。大学の一般教養的な記事が多くなると、読者は増加しないと思うのです。
<太田>
読者Bの、コラムにメーリングリスト登録先(URL)を記した方がよいとのご意見は、採用させていただくつもりです。
家族旅行のコラムについての読者Bのご意見にもおおむね同意です。
しかし、あの時は、旅行中コラムを上梓せきなかったので、コラム枠(一日一本)に空きがあり、これを一日にコラムを二本上梓することで埋めようと考えた次第です。その目的は、言うまでもなく、読者に投票を呼びかけるだけでは芸がないので、家族旅行という、書くのに余り時間をとらないテーマも取り上げさせていただいた(その冒頭で投票を呼びかけた)というわけです。
読者Bと読者Aは、私が「歴史問題」を取り上げるべきかどうかで対蹠的なご意見をお持ちです。
私は国内外情勢分析に当たって歴史的視点は不可欠だと考えています。残念ながら、私自身の国内外情勢分析に役に立つような歴史研究が日本では余りなされていないので、英米の研究成果を踏まえて、私自身が歴史的視点を形成しつつ、国内外情勢分析にあたらざるをえない、という点をぜひご理解下さい。
読者Bは、私がいわゆる外交防衛問題に専念すべきだ、というお考えのようですが、私の「国内外情勢分析」のウェートの大部分は「国外(国際)情勢分析」に置かれているので、ほぼ、外交防衛問題に専念している、と私は考えているのですが、いかがですか。
なお、いわゆる外交防衛問題に関心を持つ人が日本に沢山いる、とは私は全く思っていません。
私が「日本人の意識変革」というのは、日本人にもっともっと外交防衛問題に関心を持ってもらうことが第一番目の目的です。
このことを含め、私のこれまでの努力は余り実っていない、というのが私の実感なのです。
<高田雄二>
マスコミと違う視点を
私の感想では、太田さんの立場が、反体制、反ブッシュであるかぎり新規読者層は増えないような気がします。
もちろん、小泉総理やブッシュ大統領を必要以上に評価しろとはいいませんが、マスコミと違う視点で評価することも必要です。悪い点は、マスコミから耳にタコができるほど繰り返して聞かされるので、ネットの閲覧者はマスコミと同じ内容を繰り返すコラムは購読しません。
少なくとも、気持ち悪いほどマスコミが実力以上に持ち上げている民主党や韓流について、マスコミと同じ視点で執筆された太田さんのコラムは、読んでいて不快になる人が多いでしょう。
太田さんや、今のマスコミで実権を握っている団塊世代周辺の人は、常に体制を批判していないと、独裁者が登場して、言論が弾圧されると感じるようですが、その心配はありません。あの独裁国家、中国でさえ、ネットの隠語で言論の自由を広げています。
実は、私のような30代の人間にとって、インターネット登場以前のほうが、マスコミという独裁者に支配されていたという印象を持ちます。ここ3年でようやく自由にものが言えるようになったと実感しています。
マスコミという独裁者は、戦後、民主的な手続きで選ばれた首相を政策と関係のないことで葬り続けてきました。これこそ、まさにマスコミによるファッショ体制だったと実感しています。
といいましたが、太田さんのコラムは、十分、マスコミと違った視点も提供しているからこそ、これだけの読者がいるのだと思います。
<太田>
高田さんの「意識変革」を実現できていないことが、私の失敗を象徴しています。
私の考え方の核心はドグマの排斥です。
ドグマは事実に即した論理的な議論を不可能にするからです。
私が何よりも問題視するのは、権力を握っている側がドグマの虜になっている(虜になっているフリをしている)場合です。その国全てにおいて、事実に即した論理的な議論を行うことを不可能にしかねないからです。
だから、私は吉田ドクトリンというドグマを墨守してきた自民党に反対ですし、キリスト教原理主義というドグマを信奉するブッシュ政権に反対なのです。
ドグマ(イデオロギー)文明である欧州文明の問題性をアングロサクソン文明と対比する形で繰り返し取り上げてきたのもそのためです。
私は、以上のことを、私自身の体験と歴史的事実に即して(常に典拠を明らかにして)コラムで三年間にわたって一貫して指摘してきたつもりです。
その最大の目的は、特定のドグマの虜となっている読者に、自らの抱いているドグマと向き合い、そのドグマにとらわれているご自分を解放するという「意識改革」を行っていただくことです。
日本のマスコミもそれぞれのドグマ(社是)の虜になっています。
朝日・毎日と読売とサンケイの特定のイッシューに関する論調は、それぞれ読まない前から分かっています。だから、私は日本のマスコミの記事は参照しても、論説は無視することにしているのです。
私に「マスコミと違う視点を」とおっしゃる一点だけとっても、私としてはただただ、嘆息するほかありません。
<高田雄二>
太田さん、丁重な反論ありがとうございます。
太田さんの問いかけに読者数が伸び悩んでいるとありましたので、それを受けて、私が言いたかったことは、「読者数を増やすなら、自分の主張を曲げ読者のニーズをとらえるか、自分の主張を通すなら読者数は気にかけず一貫した姿勢をとるかのどちらか」です。
太田さんは、私への反論で後者を選んだのですから、あまり読者数を気にする必要はないと思います。
それに、実は、これこそ本質なのですが、ネットに詳しい人ほど、メール・マガジンに登録しません。メ・マガに登録すると、メール・アドレスという個人情報が漏洩する危険性が増えます。
余談ですが、私はパソ通から入り、ネット暦20年ですが、私の NIFTY のメ・アドは、一日に平均400通ものスパム・メールに晒されるというつわものです。(大学のときに友人とワクワクしながら、情報交換していたアドレスがこの惨状になるとは悲しいものですよ。)
私はメ・マガという手段よりも、はてなアンテナ(http://a.hatena.ne.jp ) で専用のリンク集を作ります。このサービスは自動的に各サイトの更新情報を管理するので、一日に一回アクセスすれば、太田さんのページの更新情報もわかります。
もし、太田さんが読者数を気にかけてるのなら、ホーム・ページのアクセス統計をとったほうがいいです。特にコラムごとに取れば、どのテーマに読者が関心を持っているかわかります。
最後のほうは専門的な話になりましたが、メ・マガの読者数なんてホーム・ページの評価とは全然関係ありません。
<太田>
インターネット事情をご教示いただき、痛み入ります。
しかし、高田さん。
この掲示板の#759や、コラム#530の冒頭部分を読まずに投稿されているようですね。
(というか、毎月一回のコラムでの読者数、訪問者数の報告を一切読んでおられない、ということのようですね。)
読者数はわずかとはいえ、伸びているのですから、HPへの訪問者数(アクセス数)の大幅な減少の方が問題であることは当然であり、そのことが分かった上で議論をされているのかと思っていましたが・・。
<高田雄二>
なるほど、コラム#530 はともかく、このスレの冒頭である #759 をみていなかったのは、失礼しました。
ところで、前々から疑問なのですが、吉田ドクトリンの受益者であった社会党の残党がいる岡田民主党と、日本に謝罪外交を強いたクリントン氏のいた米民主党を、小泉首相やブッシュ大統領より支持する理由はなんですか?
小泉氏やブッシュ氏本人はともかく、両氏が所属する森派や米共和党は、吉田ドクトリンと対極をなす勢力です。
私のような愚鈍な読者は、そのあたりの種明かしを、わくわくしながら待っていて、とても米仏の歴史的コラムなんて読む余裕がないのです。読者数が減ったのですから、私と同じ考えの人もいるかもしれませんね。
<太田>
「読者数」は減っていません!何度も言わせないで下さい。
それにしても、コラムをまともに読んでおられない人と議論するのはむなしいですね。
ご疑問には既に全部これまでのコラムの中で答えていますよ。
まあ、少しはサービスしますか。
吉田総理時代以降、初めて日本に(集団的自衛権行使を含む)本格的な再軍備要求をしてきたのは民主党のカーター政権です。また、日本経済破壊をも念頭に置いたプラザ合意は1985年で共和党のレーガン政権の時であり、文字通り日本経済破壊を目的としたBIS規制は1988年の同じく共和党のブッシュ・パパ政権の時です。共和党の現在のブッシュ大統領は、イラクのフセイン政権のような悪の枢軸国日本を戦争でたたきつぶし、民主主義を教えてやり、その結果日米は友好関係を築くことができた。この歴史の先例にのっとり、イラク戦争を敢行した、と繰り返し言っている人物です。
自民党の中のタカ派は、ハト派や社会党が反対するので再軍備はできません、と米国政府と日本国民に言い続けることによって、権力を吉田ドクトリン左派たるハト派と代わる代わる壟断してきた、吉田ドクトリン右派であり、それ以上でも以下でもありません。
<高田雄二>
>吉田総理時代以降、初めて日本に(集団的自衛権行使を含む)本格的な再軍備要求をしてきたのは民主党のカーター政権です。
ソ連のアフガン進行のころですから、米民主党でさえ、危機感は持つでしょう。
>また、日本経済破壊をも念頭に置いたプラザ合意は1985年で共和党のレーガン政権の時であり、文字通り日本経済破壊を目的としたBIS規制は1988年の同じく共和党のブッシュ・パパ政権の時です。
またまた、最近の反米評論家の受け売りですか?プラザ合意は基本的にアメリカ経済を立て直すためで、別に日本経済破壊が直接の動機ではありませんよ。確かに日本には苦しみを強いる条件もありましたが、自助努力で切り抜けなさいというスタンスです。
実際、その後、日本はハブルで多大なる恩恵を受けましたよ。
日本経済が破壊されたのはバブル終息時に下策を打っただけです。民間もハブルの利益を次の技術革新に回しませんでした。ハブル崩壊の責任はアメリカではなく日本人自身です。
>自民党の中のタカ派は、ハト派や社会党が反対するので再軍備はできません、と米国政府と日本国民に言い続ける
ハト派が現実に目覚めればいいだけでしょう。今の岡田民主党が現実的な提案をしていますか?
なんか、上記の説明をみても、太田さんてやっぱり反体制にとらわれていません?なんでもアメリカの陰謀、何でも自民党の策略じゃ、多くの人が訪問する気も失せますよ。
<太田>
>日本経済が破壊されたのはバブル終息時に下策を打っただけです。民間もハブルの利益を次の技術革新に回しませんでした。ハブル崩壊の責任はアメリカではなく日本人自身です。
バブル崩壊ではなく、バブル発生から現在に至る、日本経済の破壊(平成大不況)の話をしたつもりです。
高田さんの主張を聞いていると、先の大戦で日本が戦災の大惨禍を受けた責任は米国ではなく日本にある、という米国が占領下の日本人にインドクトリネートした神話を思い出しますが、高田さんはいまだにこの神話のマインドコントロールがとけていらっしゃらないようですね。
ひょっとして先の大戦で、米国が主要な対日参戦国であったことすらお忘れになっておられるのでは・・・。
これでは、国際情勢を理解する大前提は、世界は基本的に弱肉強食のジャングルだ、ということをいくら私が力説しても、分かって頂けないはずです。
日本が米国の保護国なるがゆえに、幸か不幸か日本が国際情勢の荒波から遮断され、ポリティコミリタリー的思考能力(政治家にとって最も大事な能力)が鈍磨してしまっている、という私の持論など、到底理解の外でしょう。
そうなると、一体高田さんは何が面白くて、時々、私のコラムの一断片を読んでおられるのか、不思議でなりません。
なお、私の書いた、
>共和党の現在のブッシュ大統領は、イラクのフセイン政権のような悪の枢軸国日本を戦争でたたきつぶし、民主主義を教えてやり、その結果日米は友好関係を築くことができた。この歴史の先例にのっとり、イラク戦争を敢行した、と繰り返し言っている人物です。
については、高田さんのコメントがありませんが、最後にこれだけはうかがっておきたいものですね。
<読者C>
はじめまして。
現在フランスに住んでいる女性です。
私は太田さんのコラムを愛読している者です。
太田さんのコラムの読者数ですが、全然少ないとは思いませんし、日本人の意識改革に失敗しているとも思いません。
読者数が何万にもふくれあがらないのは、そもそも太田さんの問題意識を理解する人がほとんどいないことが原因ではないかと思います。
つまり読者と太田さんのお考えが離れすぎているのです。
その原因は、太田さんが海外でたくさんの中身の濃い方々と交流されてきたためではないでしょうか。
そしてインターネットをする人々の中には、海外旅行にも行ったことのない人がたくさんいらっしゃいます。
田中宇のコラムなど、日本人の一般的な問題意識の中でしか考えることができていません。
そのため、そのわかりやすさから、読者数がふくれ上がっているのでしょう。
私が太田さんの問題意識をきちんと理解できているかというと、わかりませんし証明もできませんが、
外国で日々感じる疑問を、太田さんが明解に分析してくださっているのでとても参考になります。
欧米の学者ではできない論理の大胆さを感じることも多いです。
太田さんに必要なのは、太田さんの抱く問題意識を、もっと基本的なところからお話されることなのではないでしょうか。ご自身の体験を具体的にあげ、わかりやすく説明してくださると、ついてこられる日本の人も増えるのではないかと存じます。
太田さんの人生がいかに人と違ったものでも、具体的によく話してくださったら、理解できる人も多いと思います。
そうやって読者を育てていかれたら、最後には太田さんの最も伝えたいと思っていらっしゃることも、
理解する人が増えるのではないでしょうか。
はじめから問題意識を共有する人だけをターゲットにし続けることを選択されるかもしれませんが、その場合、今の読者数は本当に十分多いと思います。
ついでに、ひとつ質問をしてもよろしいでしょうか。
ユダヤ人についてです。欧米ではユダヤ人は差別されているといっても、アンタッチャブルのように蔑まれているわけではありません。妬まれているといった方が正確でしょう。
フランスの人たちは言います。
「映画やテレビでなにとユダヤ人は差別差別というけれど、向こうの方がずっと差別主義者だ。
結婚は今もユダヤ人同士にこだわるし、歴史的にはお金の貸し借りでユダヤ人同士は利子を取らないということがあった。選民意識が強烈で、だれよりも差別主義者じゃないか。」
というようなことです。アメリカでも「ユダヤ人の方がずっと差別主義者だ」というような意見を聞きました。
それについてどう思われますでしょうか。
お時間がありましたら、お考えをうかがわせてください。
大変失礼な余計なことを申し上げたかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。
これからもコラムを楽しみにしております。お体ご自愛ください。
<太田>
>太田さんに必要なのは、太田さんの抱く問題意識を、もっと基本的なところからお話されることなのではないでしょうか。ご自身の体験を具体的にあげ、わかりやすく説明してくださると、ついてこられる日本の人も増えるのではないかと存じます。
私としては、そのように心がけているつもりですが、私自身の身を守りながら、引き続き努力をさせていただきます。
(今まで、具体性・信憑性を担保するため、出会った外国人等の友人・知人の個人名まで場合によってはあげて私の体験を何度もコラムで語ってきており、彼らから絶交されるのではないかと実はひやひやしています。個人名をあげた日本人の一知人からは、ひどいしっぺ返しを食らいました。)
>「ユダヤ人の方がずっと差別主義者だ」というような意見を聞きました。
私も同意見です。特定の宗教と結びついた選民思想ほどはた迷惑なものはありません。
既に、ユダヤ人については、累次コラムで取り上げてきました。
将来、「ドイツ人とユダヤ人」を取り上げる時に、できればもう少しこの点を掘り下げようと思っています。
<読者D>
某所での記事紹介で参りました。
短気は損気です。
これだけ重厚な論陣を張られている方がいると知り、ちょっと感激しております。
メーリングリストへの登録はいずれしたいと思いますが、雫が石をも穿つように、初心を忘れずに御健闘ください。
ハルノート・他律史観と南部仏印進駐・自律史観の狭間での考察をお願いいたします。対米戦の原因を誰かのせいにしたがる情報収集分析判断能力に欠けた人物が多いため、「南部仏印進駐」が米国の虎の尾・龍の逆鱗に無自覚だが能動的に触れた結果の最後通牒であったことを想起させ、時流に流されたり・先送り体質・現状認識能力欠如の官僚主義(軍含む)がこの国を一度崩壊させていることを強く指摘して欲しいのです。
自国政府も批判できないほどの国民に対する自己決定能力潰しの愚民化教育が、森ヨシローまでに連なるクリプトクラシーの成果であることを指弾していただきたい。
結果として欧米列強や中華に対抗できる戦略的思考のできる人財が育たず、「分割統治」のための麻薬としての「靖国」に引きずりまわされていることを国民の心に沁みるように問うていただきたい。
反中日本人と反日朝鮮人の相似を指摘し、セクトやメディアを通じたマインドコントロールを浮き彫りにしましょう。溺愛は愛情にあらず。ポーズで愛国心を騙り私腹を肥やす盗賊国家勢力に警鐘を鳴らしましょう。
ちなみに月刊現代の最新号に旧式両論「英霊vs犬死」にまつわる「靖国」関連問題に関する誤解、保阪正康(作家)氏の「60年目の特攻隊論」が面白いです。ご参考までに。
http://kodansha.cplaza.ne.jp/mgendai/mokuji/200412/index.html
<太田>
せっかく暖かいご激励をいただいた方に以下のようなことを申し上げるのは気が引けますが・・。
>ハルノート・他律史観と南部仏印進駐・自律史観の狭間での考察をお願いいたします。
対米戦の原因を誰かのせいにしたがる情報収集分析判断能力に欠けた人物が多い(ハルノート他律史観)
「南部仏印進駐」<は>米国の虎の尾・龍の逆鱗に無自覚だが能動的に触れた結果の最後通牒であった(南部仏印自立史観)
>時流に流されたり・先送り体質・現状認識能力欠如の官僚主義(軍含む)がこの国を一度崩壊させている
前段については、はっきり言ってどうでもいいのではないでしょうか。
二点言わせていただければ、典型的な「南部仏印自律史観」論者(http://homepage2.nifty.com/Bokujin/ronbun/ronbun001.htm)を見ると、今の米国が狂った国である以上に当時の米国が狂った国であったことをお忘れのような気がしますし、また、当時の中国がどういう状況にあったかを捨象した議論をされているように思います。
後段については、戦前から戦後に至る高度成長をもたらした総力戦体制を構築した当時の官僚(軍官僚含む)の能力の高さをお忘れでは、と言いたくなります。
いずれにせよ、できれば私のコラムのバックナンバーにざっと全部目を通していただいた上で、改めて議論をさせていただきたいと思います。
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